俺の嫁は史上最強の剣士です   作:ネギ丸

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今回は番外編の短編集です。
5話で語れなかった話などを書きました。
それでは第6話お楽しみください。


第6話 : 番外編

【みんなの前では強くいたい】

朝の散歩を終えて、俺とシェリナは食堂へ向かっていた。時刻は7時前で丁度朝食の時間だ。

階段で二階へ上がり、廊下をまっすぐ進む。

食堂に近づくと、入り口で既にみんなが集まっているのが見えた。

 

「お、丁度来たぜ。おーい、お前ら遅いぞー。」

 

どうやらアルバートがこちらに気づいたようで大きく手を振っている。

 

「悪い悪い、ちょっと散歩に夢中になってな。」

 

俺は誤魔化すように頭をかきながらそう言った。

 

「おかえり、2人とも。朝の散歩はどうだった……て、シェリナちゃん、どうしたの!?目え赤いよ!?」

 

微笑みながらこっちへ寄って来たクレアがシェリナの異変に気がついた。

 

「あ、これはあれだよ!砂が目に入っちゃって、きっとそのせいじゃないかなあ。ね!オルト!?」

 

「へあ!?そ、そうだな。少し風が強かったからなあ。大丈夫かまだ痛いか?」

 

「ええ!大変じゃない!大丈夫だった?」

 

突然俺に話を振って来たので一瞬焦ったがどうにか誤魔化すことができたようだ。

浜辺で泣いたことはみんなに言わないようにと本人から言われている。やっぱり泣いたことを知られると恥ずかしいのかもな。

 

「ちょっと、オルトこっちに来て。」

 

クレアがこちらに手招きしながらそう言ったので俺はクレアに近づいた。

 

「朝の散歩でシェリナちゃんとなんかあったでしょ。」

 

クレアが顔を近づけて周りに聞こえないように小声でそう言った。どうやらバレてしまったようだ。

 

「実は、散歩の途中でシェリナが泣いちゃって、本人は誰にも言うなって言ってたんだけど。」

 

「あなたシェリナちゃんに一体何したの?」

 

クレアはさらに話を続ける。どうやら少し怒っていらっしゃるようだ。

 

「今までのことでちょっと心配させちゃったみたいで…。本人には口止めされてたんだけど……。」

 

そう言いつつ喋っている俺は口が軽いのかもしれない。

 

「…………。シェリナちゃんてさ、私たちが思っている以上に繊細で周りに気を配っていると思うの。」

 

クレアは少し神妙な顔で話し始めた。

 

「だってあの子、いつも笑顔で明るいじゃない?それってきっととても難しいと思うの。」

 

確かに、あいつの泣き顔を見たのは昨日が初めてなきがするし。

 

「けど、やっぱりあの子も不安や悩みを抱えていて辛い時はあると思うの。でも、きっと周りに心配をかけたくなくて、1人で抱え込んで、周りには明るくしようって思ってるんだと思うの。」

 

ああ、確かにそんな感じはするなあ。

 

「でも、今日の朝俺達を心配してるって言ったのは……」

 

「それはきっと私たちのことをよっぽど心配してくれてたんだよ。だから、勇気を振り絞って、本当の気持ちを伝えてくれたんじゃないかな?」

 

確かにあいつが話してくれるまで俺たちのことを心配しているなんて気付かなかった。

 

「だから、これ以上シェリナちゃんを心配させないためにも、これからのことをしっかりと考えないとね。」

 

クレアはそう言いながら明るい笑みを浮かべた。

 

「………ああ、そうだな。」

 

「2人ともー、何話してるのー?早く席に行こうよー。」

 

俺もクレアに笑みを返した直後、食堂の方からシェリナの呼ぶ声が聞こえた。

 

「ああ、今行く。それじゃあ、行こうか。」

 

「うん。」

 

俺たちはシェリナの後について行く形で食堂へ向かった。食堂の入り口に差し掛かったところで突然シェリナは足を止めて口らに振り向いた。

 

「2人とも、これからも末永くお幸せにね!」

 

そう言ってシェリナは眩しいくらいの笑みを浮かべた。

 

 

 

 

【神槍のダリオ】

クラーケンが浅瀬に出現した。それをクォーツくんとルーシーにまかせて私とシェリナちゃんは他のモンスターと戦っているアルバートのところへ向かっていた。

 

「アルバート、1人で大丈夫かな?」

 

「大丈夫だよ!いつもはあれだけどやる時はやる奴なんだから!」

 

私の不安をかき消すようにシェリナちゃんは明るい声でそう言った。

私たちはようやくアルバートとモンスターが戦っているところまでやって来た。そこではアルバートが大勢のモンスターを相手に一歩も引かずに素手で戦っていた。

 

「おう、お前ら来てくれたのか!こいつら大したことねえが数が多すぎてキリがねえ、手伝ってくれ!」

 

アルバートはそう言いながら小さいイカ型のモンスターを蹴散らしている。

 

「うわー、すごい数だね。これは倒すのに一苦労しそうだ。」

 

「それじゃあ、早く片付けてルーシー達の援護をしましょう。」

 

私は近くにいたモンスターを攻撃した。モンスターは真っ二つになり、すぐに消滅した。これならいける。

 

 

 

私たちがアルバートと合流して数分がたった。しかし、モンスターは減るどころかどんどん増えて行く一方だ。

 

「くそ!これじゃあ本当にキリがないぜ!この人数だとどうしても倒しきれねえ!」

 

「やっぱり親玉のあいつを倒さないとダメなのかな?」

 

「くっ、一体どうすれば……。」

 

「真打登場!つってね。」

 

私たちがモンスターに苦戦している時に、突然その男は現れた。

モンスターの群れに突っ込むなり、彼はその手に持ったビーチパラソルでなぎ払った。モンスター達は激しく後方に吹っ飛び消滅した。

だが、他のモンスターはその男を標的とし、一斉に襲いかかる。

 

「おい!危ねえ!!」

 

しかしその男は手に持つ傘を巧みに使い、次々とモンスターを蹴散らしていく。

ビーチパラソルを槍のように扱うその男は、我が国が誇る聖騎士団の1人、神槍のダリオである。

 

「よっ、お前ら。傘を畳むのに少し時間が掛かったが、加勢に来たぜ。」

 

ダリオは聖騎士団「ホーリーナイツ」が誇るトップクラスの槍使いだ。さらに様々な強化魔法や弱体化魔法を使い、ホーリーナイツの中でも随一の戦力の1人である。ちょっと性格がひねくれてるけどね。

 

「よっしゃあ!ダリオが来たらこっちも百人力だあ!ちゃっちゃと片付けるぞ!!」

 

「「おーー!!!」」

 

こうしてダリオの加勢によって私たちはモンスターを一掃することができた。

 

「それじゃあ、早くあっちの3人に合流しましょう。」

 

私たちはクラーケンと戦っている3人の元へ急いで向かった。

みんな待っててね。今行くから。

 

 

 

 

【前を向いて】

無事にクラーケンを討伐して、俺は巨大包丁を貸してくれた海の家の親父さんに会いに行っていた。

 

「おお、お前さん!よくやったな!店の中からしっかりと見てたよ!」

 

俺が店に入ると、その親父さんは凄く嬉しそうな顔で出迎えてくれた。

 

「どうだ!?俺の愛刀は役に立ったか!?」

 

「ええ、とても助かりました。けど……。」

 

俺は手に持っていた包丁に目を向ける。その包丁は使い物にならないくらいまで刃がボロボロになっていた。俺の最後の一撃に耐えられず、こうなってしまったのだ。

 

「すみません、壊してしまいました。弁償は必ずします。」

 

「いや、そんなのいいって!こいつも役に立ったんだ。最後にあんな巨大なイカを着ることができてきっと本望だろうよ。」

 

親父さんは気にするなと大きく笑った。

 

「でも、とても大切な物だったんですよね?」

 

長年愛用していたと聞いている。それならかなりの愛着があったんじゃないのか?

 

「ああ、とても大切な物だったさ。どんなにでかい魚でもこいつでさばいてきたからな。」

 

その言葉を聞いて俺は胸が痛くなるのを感じた。

 

「けどな、にいちゃん。俺は嬉しいんだ。こいつのおかげで誰も傷つかなかったてことがよお。」

 

親父さんは俺の肩を軽く二回叩いてそう笑った。

 

「俺にとってお前さんのようなお客さんは命よりも大切なもんでな。大げさかもしんねえけど、長年この仕事をやってるとそうなっちまうもんでな。」

 

親父さんは時々笑いながら話を続ける。

 

「だから、お前さんもこいつの事は気にせんでいいから、その、なんだ……。うまく言えねえけどよ。お前さんも前向いて歩けよ!」

 

親父さんはそう言って飛びっきりの笑顔を見せた。

結局親父さんが言いたい事はよくわからなかったけど、俺も親父さんを見習いたい。何故かそう思った。

 

 

 

 

 

 

【入浴タイム】

海での騒動が起きた日の夜。

 

「いやあ、今日は一段と疲れたわね。」

 

「そうね。まさか旅行先でこんなことになるなんて思わなかったわ。」

 

私たちは湯船に浸かりながら今日の出来事について振り返っていた。

 

「それにしても、オルトの最後のアレには驚かされたわねー。まさか、あの化け物を一撃で倒すなんて。」

 

「あれはね、オルトの最終奥義だよ。今までに何回か使ったとこ見たことあるし。」

 

シェリナちゃんは自慢げに胸を張った。どうしてシェリナちゃんが自慢げなのだろう。

 

「でも、あれってかなり危険じゃないの?下手したら魔力切れで倒れちゃうかもしれないし。」

 

魔力切れはかなり危険で、最悪な場合では命に関わることもあるらしい。

 

「まあ、確かにあれは危険ね。今回は大丈夫みたいだけど。」

 

ルーシーも意外に心配屋なところがあるのね。

確かに今回は無事だったけれども、これからはあまり使って欲しくないな。でもオルトのことだしみんなが危ない時には使っちゃうんだよなあ。

 

「まあ、その話は置いといて……。クレアさん、今日も一段といい身体をしてますねえ。」

 

突然ルーシーはそう言うと手をわきわきとさせながら私の方をじっと見てきた。慌てて私は自分の体を腕で覆う。

 

「ちょ、ちょっと何言ってるのルーシー?顔と手つきが、その…いやらしいんだけど。」

 

嫌な予感がする。私の第六感がそう警告し始めた。

 

「その体、触らせろーーー!!」

 

嫌な予感は的中した。

ルーシーは勢いよく私に抱きついて私の体のあちこちを触ってきた。

 

「ちょっと、ルーシーくすぐったいからやめてっ!あっ、そこはダメ!」

 

「やめないわよー!全くどうしてこんな立派なものが2つもついてるのかね?」

 

そんな取っ組み合う私たちを見て、シェリナちゃんは無表情で自分の胸にそっと手を置いた。

 

 

《一方その頃、男湯では》

 

「はあー、今日はめちゃくちゃ疲れたー。」

 

「お疲れ様。一時はどうなるかと思いましたが、こうして皆さんが無事でよかったですね。」

 

「にしても、クラーケンが現れた途端シェリナのやつかっ飛んで行きやがって、俺1人でよくもったもんだぜ。」

 

「まあ、その後俺がかっこよく登場して無事にモンスターを片付けたがな。」

 

俺たちは湯船に浸かって今日の疲れを癒していた。

 

「はあ。」

 

「おや?どうしたのですか、オルト?」

 

クォーツは心配そうにこちらに寄ってきた。

 

「いや、俺ってみんなに心配されてばかりだなと思って。」

 

今日1日シェリナとクレアに凄く心配をかけてしまったからなあ。これ以上心配されないように強くならないと。

 

「確かにオルトは無茶しがちですからね。私もいつも心配させられますよ。」

 

クォーツはいつものように表情を和らげながらそう言った。

俺ってそんなに無茶してるかな?

 

「でも、これ以上みんなを心配させないようにもっと強くならないと。」

 

「フフッ、オルトらしいですね。」

 

ここ笑うところか?

 

「しかし、オルト。あなたがどれだけ頑張ろうと必ず限界はあります。」

 

結構きついこと言ってくれるなあ。

 

「けれど、その時は少しは周りに頼ってもいいんですよ。今日のクラーケン戦の時みたいに、誰かに指示を出して戦う。これが一番オルトらしいですね。」

 

クォーツは今度は少し苦笑しながらそう言った。

俺はこんなにいい仲間を持ってとても幸せだと感じた。

 

「それじゃあ、今後も迷惑かけるかもしれないけど、一緒に戦ってくれるか?」

 

「ええ、もちろん。」

 

俺たちは仲間であり友達、どうしようもない時はお互いを頼って、これからも一緒に頑張っていこう。

俺は改めて仲間というものを再認識した気がした。




これからも時々番外編書こうと思います

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