私立幻想学園   作:黒鉄球

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もうやだ、試験勉強なんてやりたくない……。そんな感じで書き上げましたw


8話 : 戻った日常と新たな物語

 あの騒がしく、そして痛みを伴った依頼は無事終わった。一気に二人も入部してくれて本当にラッキーだった。今ならラッキービーム撃てそうだわ。いや、むしろ逆か?まぁそんなことはいい。本当に今はどうでもいい。なぜなら……。

 

 「おはよう(ございます)、劉斗」

 

 「お、おう……」

 

 全クラスメートから注目を集めまくっていて落ち着かないからである。というのもただ、レミリアと咲夜が俺に真っ先にあいさつに来たからである。あのレミリアが、交流を拒みまくったレミリアが、クラス一の不良品たる俺にあいさつに来たのだ。そりゃ注目を浴びる訳だ。

 

 「なんであいつが……」

 

 「羨ましすぎるだろうが……」

 

 「目が腐ってる分際で」

 

 どうしようか、間違ってないから否定も出来ん。かと言って反応もしたくねぇ。ほんと、どうしようか。

 

 「どうかしましたか劉斗?何やら困った顔をなされているようですけど」

 

 どうやら顔に出ていたらしい。余計な心配をさせるとあれだから適当にごまかした。咲夜の目線が俺の顔から右腕にいった途端申し訳なさそうな顔をした。医者に診せたところ本当にヒビが入ってたらしく、無理なことさえしなければ全治一ヶ月らしい。一昨日のあの事件の依頼者は咲夜だし仕方ないと言えば仕方ないんだけど勝手に動いて怪我したのは俺だし引きずらないでもらいたい。あと俺の回復力は相変わらず高いようでホッとしたぜ。

 

 「よっすレミリア、咲夜!今日も仲良いなお前ら!」

 

 「うるさいわよ魔理沙。寝起きなんだから頭に響くじゃない」

 

 沈んだ空気を消し飛ばすように現れた魔理沙とこめかみを抑え、寝起きだという霊夢。魔理沙がうるさいのはいつもの事だし鬱陶しい事だが今回ばかりは助かった。あと霊夢は寝起きの俺を引っ張ってきただろうが。丁度四十分まえにな。

 

 『いい加減言起きなさい……』

 

 『あと五ふ……』ズルズル……

 

 ……あの時はお蔭でズボンがずり落ちて魔理沙にぶっとばされて目が覚めたわ。超理不尽だったけどな。まぁ何はともあれ笑顔でレミリアたちが登校してきたので許してやろう。感謝しろ魔理沙。心の中で一人語りをしているところでチャイムが鳴った。よし、これでひとまずは騒ぎは鎮まる。さぁ早く入ってこい紫さん!

 

 「はーい、みんな席について……ってちょっと劉斗!?どうしたのその腕!!また喧嘩!?ど、どどどどうしましょう!!?病院は!?」ギャーギャーワーワー

 

 はい、裏切ってきた♪ほんと、この騒ぎをだれか止めてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             ~~~~~~放課後~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝のHRが終わってからというもの俺はどうやら「レミリアを脅す変態」になったらしい。俺の怪我の原因がレミリアにあるという思考に至ったやつらがそれを餌にレミリアを脅しているという噂を休み時間の間に流しやがったからである。まぁ下位カーストに存在する俺からしてみればものすごくどうでもいい称号である……と昔の俺ならそういうだろう。生憎今はそういうわけにもいかん。そんな鬼畜野郎のいる学園生活支援部に依頼なんて来るだろうか?いいや、絶対こない。あと二日程度しかないというのにまったく、とんだ迷惑を被ったものだ。まぁ汚名返上は依頼解決で返すとしよう。と、いうわけで憩いの場である部室へ行くとしよう。

 

 「待ちなさい劉斗。その腕の事、まだ聞いてないわ」

 

 なんて気持ちを踏みにじったのは背後にいた紫さん。この人たまに暗殺者の如く気配消してくるから困る。いっそのこと十七代目ハサンにでもなってくださいよ。

 

 「そりゃ言ってませんからね。言う必要性もないかと思ったんで」

 

 事実要らないだろう。この人は俺の親でもなければ仮の親でもない。ただ俺の母親の親友というだけだ。それ以上でも以下でもない。俺は独りだし監督する人も家にはいない。ある意味この人が監督者かもしれないが俺には関係ない。昔の俺を見つけ出せず、手も差し伸べられなかった人には関係ない。

 

 「じゃあ俺はこれで失礼します。事情やら何やらは……スカーレット邸へ行って聞いてきてくれ。まぁ、いざこざはもう晴れてるから意味があるか分からないけど少なくとも紫さんの知りたいことは分かりますよ」

 

 俺はそういってその場を後にした。紫さんがどう言う風に捉えたか分からないが少なくとも俺は最低限の礼儀としての情報はあげた。これでいい、こう言えばあまり深入りもせず、必要な情報は与えられる。…………負担は、かけられないからな。

 

 「だからお願い!私に力を貸して魔理沙!」

 

 部室より約20mの所で女生徒らしき声が聞こえた。方向と魔理沙という名前からして十中八九部室からの声だろう。やれやれ、どうやら依頼が舞い込んできたらしいな。魔理沙の友達、サンキュー。

 

 「悪りぃなお前ら、遅れた。ちょっと紫さんに捕まっちまって……」

 

 「「「「あ………」」」」

 

 俺が入った途端に女子部員四人全員がおかしな反応を示した。なるほど、俺が入ってはいけない感じだったのか。理由は分からない。分からないが空気がそう言ってる。超絶いやな予感がする。特にそこにいるブロンドヘアーのやつから。

 

 「お、お、おおおお……」

 

 「ん?」

 

 「男ぉぉぉ!!?」

 

 「ぐぼぁ!?」

 

 見知らぬ女の子から理不尽にもぶん殴られ、そこで視界が暗くなった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 「……ひっでぇ目にあった」

 

 目を覚ますと真っ白な天井と頭に柔らかな感覚があった。どうやら俺は気絶していたらしい。あのブロンドめ、次会った時はただじゃおかんぶっとばしてやる。腕折れてるけどまぁ片手で勝てる。さて、そろそろ起きて事情をもろもろ説明してもらおうじゃあないか。

 

 「あ……」

 

 「………なんでいやがる」

 

 起き上がって机のある方を向いたら先ほど片腕がつかえないけが人を問答無用でぶっとばした奴がいた。しかも一人で。おい魔理沙なんでコイツと二人きりの空間を作ったんだ。またぶっ飛ばされんだろうが。奴にはあとで怪談話をしてやろう。題して「夜中にトイレへ行けなくなるの怪」。

 

 「あ、あの……」

 

 「あぁ?」

 

 何かを話そうとした奴相手には向けないであろう程の低い声が出た。そのお蔭で下を向いて超小さな声で「ごめんなさい」と聞こえた。何に対してのごめんなさいなのかは分からんが謝れる子だと分かっただけで良しとしよう。魔理沙も霊夢も謝らないからな。清々しいほどに。

 

 「………」

 

 「………」

 

 完全に黙ってしまった。しまったこれはさすがに話が進まないから逆に困ったぞ。困った上に空気が重くなったから超気まずい。誰か、誰でもいいからPlease help me。

 

 「さ、さっきは……ごめんなさい」

 

 ようやく本当にようやく口を開いた。時間にして10分。よくここまで耐えたな俺。自分で自分を褒め称えたい。ものすごく虚しいがな。

 

 「別にいい。理由は何となく分かったから」

 

 そう、俺は分かっていた。この女の子が何故俺を出会い頭に殴ってきたのか。恐らく彼女は男性恐怖症か何かだろう。そこまでいかなくても苦手意識を持っているか何かだ。アイツら四人が俺が入ってきたときの反応と彼女の開口一番に放った「男」という言葉。それだけで何となく察しはつく。納得はいかないがな。まだ顎痛いし。正直世界を狙える見事なアッパーカットだった。一歩のガゼルパンチ並みの威力はあったんじゃないかと思う。下手したらデンプシーロール打ってきそうなレベル。

 

 「え、分かったって一体……」

 

 「あんた、男性相手に苦手意識を持ってんだろ。+αで人見知りってとこか。ここに来た理由もそれ関連のことだろ」

 

 俺の推理が図星だったようでかなり驚いている。まぁそりゃそうだ。彼女でなくとも驚く。魔理沙なら「お前ストーカーか?キモいぞ」って言ってくる。自己分析でさえこんなことを言われる俺に涙そうそう。

 

 「よし、これで事なきを得たな!劉斗、お疲れだぜ!」

 

 ドアをガラッとあけたのは魔理沙。コイツ……。

 

 「事なきを得るなんて言葉よく知ってたな。馬鹿のくせに」

 

 「なんだと!お前は私を馬鹿にし過ぎだぜ!」

 

 プンすかおこる魔理沙。なんかちょっとかわいい気もするが口にはしない。コイツは馬鹿だからすぐにつけあがる。

 

 「仕方ないでしょ。あんた馬鹿なんだから」

 

 ぞろぞろと帰ってくる部員たち。こいつら……さては覗いてやがったな。幾らなんでもタイミングが良すぎる。よし、こいつらにも「夜中にトイレへ行けなくなるの怪」を聞かせてやろう。まぁ霊夢は巫女だしそういうの慣れてるからリアルな話をしてやろう。

 

 「落ち着いてください魔理沙。本題はここからなんでしょう?あ、劉斗、紅茶です」

 

 いつの間にか紅茶を用意していた咲夜。わりと本気で思う。この部室で一番まともなのはコイツだ。成績優秀で容姿端麗、運動も出来て気も効く。完璧すぎて本来下位カーストにいる俺には高嶺の花の存在。まぁお嬢様への忠誠心が強すぎるのが難点だがそこは目を背けよう。人間、変なとこの一つや二つあっても問題なし。咲夜への報復は止めてあげよう。

 

 俺は咲夜に礼を言って紅茶を一口貰った。というかいつの間に茶道具セット持ってきたんだ。あ、今日か。

 

 「ほんで、本題ってのはなんだ。男性恐怖症の改善じゃないのか?」

 

 「いいえ、残念ながらそうじゃないのよ。実は……」

 

 霊夢の説明を聞く限りじゃ彼女、アリス・マーガトロイドは極度の人見知りらしい。同性相手ならまぁ何とか話せるらしいのだが異性が相手になると口より手が出てしまうらしい。非常にはた迷惑である。そんな事もあるのにもかかわらずアリス・マーガトロイドは幼稚園児相手に人形劇をするなどという暴挙とも思える行動に出ようとしているというのだ。あえて言おう。馬鹿じゃねぇの?コイツの性格も相まって上手く出来ないという結論に至り、ここにお手伝いの依頼をしてきたらしい。

 

 「お前人見知りのくせになんでそんなことを?」

 

 「それは……」

 

 「あぁ、それはあれよ。慧音先生からの依頼よ」

 

 ……今此奴なんて言った?霊夢の口から慧音先生(・・・・)っつったか?おい待てあの人は……。

 

 「どうしたの劉斗?急に頭なんかおさえて……」

 

 「だってあの人ガキ相手に平気で頭突きかましてくんだぞ!ありゃ一種のトラウマだわ!」

 

 俺が世話になった[白沢幼稚園]園長兼先生の上白沢慧音先生。いつも大人しく凛としているのだが如何せん手が早い。悪いことした奴(主に俺)にはお仕置きとして脳天カチ割れ一歩手前の頭突きをかましてくる。そのせいで出来たたんこぶの数は数知れない。多分一番最後に頭突きを食らったのは魔理沙と霊夢の喧嘩を止めるために二人を泣かしたときだっただろうか?

 

 『止めろとは言ったが誰が泣かせろって言った!!!』

 

 今思い返せば鬼畜極まりない先生だったな。俺達の後輩は食らったのだろうか……できれば食らわないでほしい。マジでヤバいから

 

 「それはあんたが馬鹿やってたからでしょ。慧音先生は悪くないわよ」

 

 「そうだぜ!お前が私らを泣かせたりするからだバーカバーカ!」

 

 「いや!魔理沙も食らったことあるだろうが!」

 

 「そうだっけか?もう忘れちまったぜ!」

 

 どうやら魔理沙の頭は鳥頭の為忘れてしまったようだ。もういい、諦めるわ。それにしても幼稚園で人形劇……ねぇ。人形……人形……ん?コイツもしかして。

 

 「アリス、お前もしかして幻想小出身?」

 

 「え、そうだけど……」

 

 思い出した。コイツ教室の隅っこで人形で遊んでたやつだ。性格は魔理沙と真反対だったくせに仲が良かったあの少女か。そういえば小学校で話題になってたな。なんか人形作りの天才がいるってのと同時に男子が怪我しまくったって言う話。そうか、あれの犯人はコイツか。

 

 「ついでに言うと幼稚園も同じよ」

 

 それは知らなかった。というか実際いうと興味もない。だって俺からしてみれば全く関わりなかったし関心もなかったからな。

 

 「んでこの依頼受けるのか?部長?」

 

 一応確認をとる。だが俺としてはぜひともやめていただきたい。やってもいいけど俺はフェードアウトしたい。

 

 「当たり前だぜ!もちろん全員参加だぜ劉斗」

 

 ちっ!心を読まれた!この野郎、活き活きとした顔しやがって。どうやらこいつには「夜中トイレへ行けなくなるの怪」よりも「夜眠れなくなるの怪」のほうがいいようだな。そうだな、実際にあった一家惨殺事件をしてやる。それも事細かにな!

 

 

 

 

 

 




不定期投稿ですがまぁ、気長に待っててください

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