Fate/stay night Ideal alternative(アイディール・オルタナティヴ) 作:紗代
今日は久々に学校に登校しようと準備を済ませて家を出る。だれもいないいつもの通学路を歩き、交差点に差し掛かる、とそこには刹那がいた。
「おはよう兄さん。今日はどこか行くの?」
「おはよう、刹那。今日は久しぶりに学校に行こうと思ってさ、ほら。あんまり休みすぎると進路とかに関わるし」
「行っちゃだめ」
「え?」
最初に会ったときよりも柔らかい雰囲気をした刹那。しかし俺が学校に行くことを伝えると途端に顔色を変えた。
「今日は、ううん・・・しばらくは学校に行かない方がいい。」
「学校に、何かあるのか」
「・・・一昨日あたりから、この冬木一帯に結界が張られてるの。一つは柳洞寺から、もう一つは、たぶん兄さんの通う学校から」
「!」
「柳洞寺の方は薄く広く。けど学校の方は範囲が狭い分濃度は柳洞寺の比じゃない。一度発動すれば取り返しのつかないことになるかもしれない。だから」
「行かないで」と袖を強く引かれる。けど。
「でも、俺が行かなくても他の戦争に関係ない大勢の生徒や教師がいる。遠坂だって今日は登校してるんだ。———————ごめんな、刹那。」
「そっ、か。そうだね、敵の私に忠告されても素直には聞いてもらえないか。うん」
今にも泣きそうな顔でやりきれなさそうに、まるで自分に言い聞かせるように言う彼女に少しでも安心してもらおうと声をかける。
「大丈夫だ、遠坂もいるしきっと戻って――――「できるかどうかも分からないような約束なんてしないで」!」
ひどく冷たい声に遮られた。刹那の目には感情なんてものはなく、ただ俺だけを見つめている。
「みんな、みんなそう。賭けみたいな約束をして、私を置いていくの。もうそんなのいらない。待つ方の気持ちも知らないで、勝手に死んで、消えて。もう私に期待させないで、守れる保証のない約束なんて最初から取り付けないでよ」
「———————」
言葉に詰まる。もしかしたらこれが彼女の無表情の根底にあるものの一部、なのだろうか。そう思いながら動けずにいると刹那は何かを取り出して俺の手首に巻いた。それは白いリボンだった。
「それ、あげる。対魔力を上げるのと精神汚染から身を守る効果がある礼装。常時発動型でちょっとした浄化機能もついてるから。じゃあ兄さん私はこれで。—————————ごめんなさい。」
その言葉と共に刹那は俺の腕から手を離した。そしてそのまま俺に背を向けて去っていく。彼女を引き留めようとして伸ばした腕は、彼女に触れることなく空を掴んでそのまま下ろされた。