普通とはかけ離れた奴が学院に紛れ込みました。   作:DaTa 23°

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どうも、冷えたどらごんです。
今、絶賛テスト週間中なのですが、早い学校はもう終わっているのではないのかと思われます。
では、どうぞ。


どうやら非常勤講師がやる気を出し始めるそうです。

教室にいつもの時間に登校して、教室に入るとそこには、

ありえない光景が目に入った。

あの、レーダス先生が遅刻をせずに教室にいるのだ。

ただ、それだけではない。昨日のことを謝っているじゃないか。一体どうしたんだ?何か薬をやって普通になってしまったとかか?

そんな、くだらないことを考えながら自分の席に着く。

レーダス先生は黒板に背を預けて目を閉じていた。

すると予鈴が鳴る。

 

「じゃ、授業を始める」

 

えっ、授業を始める? レーダス先生が何それ面白そう。

周りがどよめいており、誰もが顔を見合わせる。

俺?顔を見合わせる人がいません。

 

「さて……と。これが呪文の教科書……だったっけ?」

 

レーダス先生が教科書を開いてぱらぱらとページをめくっていく。めくるごとに顔が苦い物になっていっているが大丈夫か?やがて、レーダス先生は露骨にため息をついて教科書を閉じた。

何事かと構える周りの生徒達の前で、レーダス先生は窓際へとずかずか歩み寄り、窓を開き……

 

「そぉい!」

 

窓の外へとその教科書を投げ捨てた。

※授業中です。

 

あれの教科書どうするんだろう?

後で拾いに行くのかな? 俺だったら叩きつけてるな。

周りは、その行動を見て、失望のため息と共に各々自分の好きな教科書を開いた。だが、俺は開かない。

まだ、レーダス先生の行動は終わっていないからだ。

 

「さて、授業を始める前にお前らに一言言っておくことがある」

 

再び教壇に立ったレーダス先生は一呼吸置いてーー

 

「お前らって本当に馬鹿だよな」

 

なんかとんでもない暴言を吐いてきた。

 

「昨日までの十一日間、お前らの授業態度見ててわかったよ。お前らって魔術のこと、なぁ〜んにもわかっちゃねーんだな。わかってたら呪文の共通語訳を教えろなんて間抜けなしつもんでてくるわけないし、魔術の勉強と称して魔術式の書き取りやるなんていうアホな真似するわけないもんな」

 

うん、そうだね。それは、思った。なんで、魔術式の書き取りやってんの?

 

「【ショック・ボルト】程度の一節詠唱もできない三流魔術師に言われたくないね」

 

誰が言ったか。 しん、と教室が静まり返る。

そして、あちらこちらからクスクスと押し殺すような侮蔑の笑いが上がった。

お前ら、使わなかったという考えにはならないのかよ。

 

「ま、正直、それを言われると耳が痛い」

 

あっ、できなかったんだ。いや、嘘ついているかも知れない。

 

「残念ながら、俺は男に生まれたわりには魔力操作の感覚と、あと、略式詠唱のセンスが致命的なまでになくてね。学生時代は大分苦労したぜ。 だがな……誰か知らんが今、【ショック・ボルト】『程度』とか言った奴。残念ながらお前やっぱ馬鹿だわ。ははっ、自分で証明してやんの」

 

周りが…周りが苛立ちでヤバイでござる。

口調が変わるくらいは。

 

「まぁ、いい。じゃ、今日はその件の【ショック・ボルト】の呪文について話そうか。お前らのレベルならこれでちょうど良いだろ」

 

うわぁ。めっちゃ上から目線じゃん。

でも、まぁ一番よく理解しているのは経験豊富なレーダス先生だからなぁ。

 

「今さら、【ショック・ボルト】なんて初等呪文を説明されても……」

 

「やれやれ、僕達は【ショック・ボルト】なんてとっくの昔に究めているのですが?」

 

……ふはっ。あはははははは!今あいつなんて言った。

やれやれ、僕達は、【ショック・ボルト】なんてとっくの昔に究めているのですが?キリッだって。

あははははははは‼︎やっべ、普通に使えるだけで究めたって、ぷふふ」

 

ん?どうしたんだ。みんなしてこっち見て。

 

「……はいはーい、これが、黒魔【ショック・ボルト】の呪文書でーす。ご覧ください、なんか思春期の恥ずかしい詩みたいな文章や、数学や幾何学図形がみっしり書いてありすねー、これ魔術式って言いまーす」

 

こちらを見てくる。周りは、レーダス先生の言葉を聞こうと向きを元に戻す。

 

「お前らコイツの一節詠唱ができるくらいだから、基礎的な魔力操作や発生術、呼吸法、マナ・バイオリズム調節に精神制御、記憶術……魔術の基本技能は一通りできると前提するぞ? 魔力容量も意識容量も魔術師として問題ない水準にあると仮定する。 てなわけで、この術式を完璧に暗記して、そして設定された呪文を唱えれば、あら不思議。魔術が発動しちゃいまーす。これが、あれです。俗に言う『呪文を覚えた』って奴でーす」

 

レーダス先生は壁の方を向いて左指を指し、呪文を唱えた。

 

「《雷精よ・紫電の衝撃以て・打ち倒せ》」

 

レーダス先生の指先から紫電がほとばしり、壁を叩いた。

 

「さて、これが【ショック・ボルト】の基本的な詠唱呪文だ。魔力を操るセンスに長けた奴なら《雷精の紫電よ》の一節詠唱でも詠唱可能なのは……まぁ、ご存知の通りじゃ、問題な」

 

レーダス先生はチョークで黒板に書いた呪文の節を切った。

 

《雷精よ・紫電の・衝撃以て・打ち倒せ》

三節だった呪文が四節になった。

 

「さて、これを唱えると何が起こる? 当ててみな」

 

クラス中が沈黙する。

なぜそんなことを聞くのかという困惑の沈黙かな?

まぁ、分からないのだろう。だって正しい方法でしか魔術を使ってきていないのだから。

 

「詠唱条件は……そうだな。まぁ、最も基本的な唱え方で勘弁してやるか。さ、誰かわかる奴は?」

 

沈黙が教室を続いて支配していた。

答えを口に出す奴は誰一人いなかった。

優等生なフィーベルさんでも、悔しそうに黙っています。

えっ?お前はだって?答え知ってますよ。

だって、俺もやったことあるし。

だが、答えない。 答えない方が良いと思った。

 

「これはひどい。まさか全滅か?」

 

「そんなこと言ったって、そんな所で節を区切った呪文なんてあるはずありませんや!」

 

あれは、ナーブレスさんですね。 よかった覚えてた。

そんな、ことを言ったウェンディに対してレーダス先生は

 

「ぎゃーーはははははッ⁉︎ ちょ、お前、マジで言ってんのかはははははっ!」

 

なんか、すごい笑った。

 

「その呪文はマトモに起動しませんよ。必ず何らかの形で失敗しますね」

 

クラスで今のところフィーベルさんに次ぐ成績をもった男子生徒のギイブルくんが立ち上がり、眼鏡を押し上げながら負けじと応戦する。

あの、眼鏡を押し上げる動作もう素晴らしいね。

 

「必ず何らかの形で失敗します、だってよ⁉︎ ぷぎゃーーははははははははっ!」

 

「なーー」

 

「あのなぁ、あえて失敗された呪文を違えてんだから失敗するのは当たり前だろ!? 俺が聞いてんのは、その失敗がどういう形で現れるのかって話だよ?」

 

ギイブルくんは打ちひしがれたようにうつむきましたまる

 

「何が起きるかなんてわかるわけありませんわ!

結果はランダムです!」

 

ナーブレスさんは、負けじと吠え立てていますね。

 

「ラ ン ダ ム⁉︎ お前らこの術、究めたんじゃないの!? 俺の腹の皮よじり殺す気かぎゃははははははははっ! やめて苦しい助けてママ!」

 

あっ、そうだ。一応答えを紙に書いておこう。

 

右に曲がるっと。

「答えは右に曲がる、だ」

 

四節になった呪文を唱えると、レーダス先生の宣言通り、狙った場所へ直進するはずの力線は大きく弧を描くように右に曲がって壁へと着弾した。

 

「さらにだな……」

 

《雷・精よ・紫電の・衝撃以て・打ち倒せ》

さらに節を区切る。

 

「加えて射程が三分の一くらいになるかな」

 

これも宣言通り。

 

「で、こんなことをすると……」

 

《雷精よ・紫電 以て・打ち倒せ》

今度は元に戻して、呪文の一部を消す。

 

「出力が物凄く落ちる」

 

レーダス先生が一人に向けて呪文を撃った。

だが、撃たれた生徒は何も感じなかったようで目を白黒させる。

 

「ま、究めたっつーなら、これくらいはできねーとな?」

 

見事なまでのどや顔のレーダス先生。

だが、こちらに目線が来たかと思えば、一瞬表情が戻ったがすぐにどや顔になった。

俺も勉強になった。俺は、初めのやつしか試していないからな。

 

「そもそも。お前ら、なんでこんな意味不明な本を覚えて、変な言葉を口にしただけで不思議現象が起こるかわかってんの? だって常識で考えておかしいだろ?」

 

「そ、それは術式が世界の法則に干渉をしてーー」

 

とっさにこぼれたギイブルくんのそんな発言を、レーダス先生は即座に拾う。

 

「とか言うんだろ? わかってる。 じゃ、魔術式ってなんだ? 式ってのは人が理解できる、人が作った言葉やすうしきや記号の羅列なんだぜ? 魔術式が仮に世界の法則に干渉するとして、なんでそんなものが世界の法則に干渉できるんだ? おまけになんでそれを覚えないといけないんだ? で、魔術式とは一見なんの関係もない呪文を唱えただけで魔術が起動するのはなんでだ? おかしいと思ったことはねーのか? ま、ねーんだろうな。それがこの世界の当たり前だからな」

 

驚いた。 まさか、あそこまで魔術を嫌っていた先生が魔術のことをここまで考えていたとは。

これからは、この先生の授業は今までとは変わってくるのだろう。

 

「つーわけで、今日、俺はお前らに【ショック・ボルト】の呪文を教材にした術式構造と呪文のど基礎を教えてやるよ。 ま、興味ない奴は寝てな」

 

あー、これからが楽しみで仕方ない。

これからの授業を受けていれば。

ふふっ。

 

 

 

 

ルミアside

 

私が、今気にかけているのは、もうそろそろこのクラスに来て、二ヶ月経つ、アライ=シュウ君なのだけど。

 

「あっ、また行っちゃった。」

 

彼は授業が終わるとすぐにどっかに行ってしまう。

そのためかクラスの中に馴染めていない。

それが気にかけてお話して解決しようと思ったのだけど。

 

「ルミアは、本当に優しいわね。まだ、彼を気にかけてるの?」

 

「あっ、システィ」

 

「どーした?白猫にルミア。何かあったか?」

 

「グレン先生も…、実は……」

 

私は、グレン先生に自分が思っていることを話した。

すると先生は、

 

「アライ=シュウ? あー、あの時の。」

 

「あの時のってなんですか?」

 

「いや、俺が授業をし始めた時に【ショック・ボルト】の問題を出しただろ? あの時生徒が驚いた表情をしているなか一人だけ驚かなかった奴が、あいつなんだよ。」

 

「えっ⁈ 彼、あの問題わかっていたんですか⁉︎」

 

システィが声を大きくして驚いた。

私も声には出していないがとても驚いている。

あれは、今までやったことのないやつだ。

つまり、彼は入学前に知っていた、またたまたま見つけたなどだろうか。

そうすると、彼はこの帝国に来る前は何をしていたのだろう?

考えても、考えても答えは本人以外には誰も分からない。

 

 

 

 




最後まで見ていただきありがとうございました。

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