まさかこんなに付けてもらえるとは思ってなかったです。
ちょっとグダグダになってしまいましたが、刀奈の想い2はこれで終わりです。
またちょくちょく挟みたいです。
簪視点とかも書いてみたいなと思う。
ちょっとしたトラブルはあったものの、私と翔平は気を取り直して昼食を食べるためにフードコートへとやってきた。
休日のお昼時なだけあって、フードコート内は人でごった返していた。
別の飲食店の方へと行くことも考えたが、翔平がそっちも人が多くて並んでいるということを聞いていたので断念した。
しばらく翔平と空席が無いかを探しながら歩いていると、運良く食べ終わった2人組が席から離れたので、私達はその席に座った。
2人とも席を離れる訳にはいかないので、順番に料理を購入しに行くことになった。
まずは翔平が行くことになったので、私はさっき見つけた翔平が好きなラーメンチェーン店があることを教えると、翔平は即決でそのお店のラーメンを購入しに行った。
やっぱり、あの即決できる性格は羨ましい。私や簪ちゃんは大体は悩んでしまう。3人で外食した時は私と簪ちゃんが頼む料理を悩む中、翔平はものの数秒で決めてしまい、私達を待つということがほとんどだ。
さて、私は何をしようかなとフードコート内を見渡す。規模が大きいショッピングモール内のフードコートだけあって、店舗数も豊富に揃っている。翔平が向かったラーメンも気になるけど、どうせ翔平が頼んだものを一口貰うだろうから別にしよう。
そう考えていた中で、有名なパスタのチェーン店が目に付いた。翔平がラーメンなら私はパスタにしようかな。
翔平がブザーを受け取って戻ってきたので、入れ違いに私が注文しに移動する。
そして、目的のパスタ店の前に到着したのだが、隣に有名なオムライスチェーン店があった。
それを見た私は、新たないたずらのネタを思い付いた。
私達が外食する時は、大抵の場合お互いの料理を一口ずつ貰う。
もしも、私がここでオムライスにした場合、翔平が一口欲しいと言ってきた場合は、所謂"あーん"をする事ができる。そして、翔平が選んだラーメンは麺類なので"あーん"はできない。
つまり、翔平にだけ恥ずかしい思いをさせることができる!!
顔を赤くする翔平を想像して、私は料理をオムライスに変更した。
その後2人とも頼んだ料理を受け取り、昼食を食べ始めた。
そして、私の目論見通り顔を真っ赤にした翔平は私が差し出したオムライスを食べ、自分はラーメンを選んだためにやり返せずに翔平はこっちに文句を言ってきた。
ここまで上手くいくとは思っていなかった私は、上機嫌に残りのオムライスを食べた。
ちなみに、使っているスプーンは翔平にあーんをしたので必然的に間接キスになるのだが、今更そんな事をいちいち気にする仲じゃない。
翔平の事が好きだと自覚した頃に、意図せず間接キスとなってしまった時は、恥ずかしくて内心どうにかなりそうだった。表には出さないようにしたけど。
最近翔平に聞いたら、翔平もそうだったらしい。多分、普段ならお互い隠そうとしてもバレていただろうが、その時は2人とも余裕が無かったようだ。
そんな昔の事を思い出していたためだろうか、目論見が成功したためだろうか、はたまたその両方か。
とにかく、私は油断していた。そして油断していた私は、翔平の「じっとしといて」という言葉に素直に従い、顔に向かって伸びて来る翔平の手に反応出来なかった。
私の頬に付いていた米粒を取り、それをそのまま食べた翔平と固まる私。
何が起きたか理解した瞬間には、私の顔は真っ赤になっただろう。
見れば翔平はニヤニヤしながらこっちを見ている。
……やり返された。
翔平に「詰めが甘い」と言われて、ホントにその通りだと思った。
昼食を食べ終えた私達は、その後の予定を予め決めていなかったので、その場でどうするかを話し合った。
その結果として、たまたま2人が別の場所で近くのバッティングセンターのチラシを見ていたので、食後の運動でそこに行く事にした。
バッティングセンターに到着して店内に入ると、私達と同じようにチラシを見た人もいるのか、思っていたより多くの人が訪れていた。
近年の女尊男卑の思考の影響で、こういった施設は女性向けの設定がされているものが多く男性向けは少ない傾向だが、今日訪れたバッティングセンターは女性向けが多いものの、男性向けの球速設定にしてあるレーンもしっかりと設けられていた。といっても、私は女性だけど使うのは男性向けレーンだけど。
折角来たので、2人で交代で打ち始めた。
私も翔平も野球を特にやったことがある訳ではないのだけど、持ち前の身体能力と動体視力で、ポンポン打っていった。近くで見ていた彼女連れの男性が彼女に、翔平を指差して「貴方もあれぐらいやって見せて」と言われていたのは、ちょっと可哀想だった。
小学生の頃、クラスメイトと一緒にバッティングセンターに行った事がある。もちろん翔平も一緒だった。
私も翔平もバットを握ったことも無かったけど、1ゲーム目である程度目が慣れてからは、私達は周りが唖然とする中打ちまくった。
そのあと、野球のクラブに入っていたクラスメイトの1人から熱烈に勧誘された事が懐かしい。私も翔平も断ったけど。
一度、そのクラスメイトの話を聞いたチームの監督の人が家にまで勧誘しに来たみたいだけど、更識本家の外観に圧倒されて怖くなって逃げたらしい。
まぁ翔平がチームに加われば日本一も難しくなかっただろうから、勧誘する気持ちも分からなくはないけど。
翔平は元々身体能力が高いのもあって、こういうスポーツも得意としている。多分、その気になれば何でも出来るんじゃないかしら。
本人はサッカーが好きだって前に言っていたけど。この前、一夏君に付き合ってもらって何処からか持ってきたボールを蹴っていたけど、その時の翔平はとても楽しそうだった。
……一夏君の球技のセンスが絶望的すぎて私も翔平も困惑したけど。
恥ずかしさと情け無さでメンタルがボロボロになった一夏君に代わって私が付き合ったけど、あれはあれで楽しかった。
普通にボールを蹴る私を見て一夏君が、さらに落ち込んでたけど。
そういえば昔、翔平が一人でブツブツ言いながらボールを蹴っていた事があった。
"えたーなるぶりざーど"とか言いながら、色々と四苦八苦していた。近づいた私が、それがどういうものなのか聞いてみると、口に出てた事に気付いていなくて、私に聞かれてとても恥ずかしそうだった。
顔を赤くしている翔平に改めて聞いてみると、"空中に体を3〜4回転させながら飛び上がり、そのままボールを蹴る技"らしい。ボールをその場で凍らせる事が出来たら100点だとか。
……そんな事できる人間は人間をやめていると思う。でも翔平なら1、2回転なら出来そうな気もする。
2人で満足するまで打って、バッティングセンターを後にした。
最後に久しぶりに翔平と勝負したのだが、やっぱり今回も勝てなかった。これまで、私の全敗という訳ではないけど、私が大きく負け越しているということは事実。
悔しいけど、この事を嫌と思うことは無い。
私は、翔平が現れるまでは何をやっても1番だった。努力をした結果なのだから、嬉しくない訳ではない。でも、どこかつまらないと感じていたのも確かだった。
そんな中で翔平が私の前に現れ、そして私は彼に負けた。
とても悔しかった。けど、それ以上に嬉しかった。
それからは、どんな内容でもどんな結果でも、翔平と勝負する事が凄く楽しかった。それは今でも変わらない。好きな人と何かをするという事は、楽しくて堪らなく嬉しいのだ。
バッティングセンターを出た私達は、夕食の時間までに時間があったので翔平のバイクで近くの海に向かった。
シーズンではないので人はあまりいなかったが、直前に迫る海開きに向けて海の家を営む人達が、その準備をしていた。
別に海に入る事が目的で来たわけではないので、他愛もない話をしながら翔平と並んで浜辺を歩く。
その途中、話していた内容が途切れてほんの少しの空白の時間が生まれる。横目で翔平を見ると、次の話の内容を考えているようだ。
翔平はコミュニケーション能力が高いし、気配りもできる。なので彼といると話が途切れることはない。私から話を振ることももちろんあるし。
なのでほんの少しとは言え、会話が途切れることは珍しい。別にそれをとやかく言う訳ではないけど。
波の音を聞きながら、歩く。
恐らく、すぐに彼は何か新しい会話のテーマを見つけるだろう。
私が退屈と感じないように、彼は私を楽しませてくれる。
繋いだ左手越しに、彼の暖かさを感じる
気づいた時には、翔平に感謝の言葉を伝えていた。
確かに伝えようとは朝から考えていたけど、それを抜きにして、本当に無意識に出て来た言葉だった。
突然言われた翔平は、キョトンとした顔で聞き返してくる。
当然だろう。このタイミングでは、説明しないとなにに対する感謝なのかが分からない。
なので私は翔平に伝えた。
今日のデートで感じた、これまでに感じた感謝の想いを翔平に伝えた。
貴方が居てくれたから、貴方が私の隣に立っていてくれたから、私は私としていることができた。
その気持ちを、彼に伝えた。
私の話を聞いた翔平は、恥ずかしいのか目線を外しながら嬉しいと言ってくれた。
さらには、驚いた事に翔平も私に感謝の言葉を伝えた。
曰く、自分も私から多くのものを貰っている、と。
昔からずっと考えていた。
翔平と一緒にいて、私ばかり沢山のものを貰ってしまっているのではないかということを。
私の小さな我儘を嫌な顔をせず聞いてくれて、大事な時には側にいて支えてくれる。
翔平は私の力になってくれている。それは紛れも無い事実だ。では逆に、私は彼の力になれているのだろうか……。
そんな疑問が最近の私の中にはあった。
だからこそ、翔平に感謝の言葉が出て来たことに私は驚いた。そして、たまらなく嬉しかった。
2人でいることが翔平にとっても幸せと感じて貰えていることに、私は嬉しくて、気づいたら目から涙が流れていた。
翔平が私の頭を撫でる。そして、
ありがとう、愛してる
翔平はこう言ってくれた。
翔平は私が笑顔で自分の隣に居てくれることが嬉しくて、それを望んでいるらしい。
ならば、私は笑顔で言葉を返さなければいけない。
私も、愛しているわ
気づいたら周りに人は居なくて、浜辺には私たち2人だけだった。
そこで翔平としたキスは、これまでで最も幸せなものだった。
「ねぇかんちゃん!!最近ゆー君とはどうなの!?」
「本音うるさい。あなたには絶対に話さない。虚はまた相談に乗ってほしい」
「大丈夫ですよ。順調そうで良かったです」
「え?お姉さんちゃんには相談して、私には何も教えてくれないの?……酷くない!?」
何とか月一更新……。
けど来月はどうなるか……。
デート編の後編の最後を少し修正しました。
感想評価等よろしくお願いします。