どうせ転生するなら更識姉妹と仲良くしたい   作:ibura

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デート編後編です。


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刀奈と共にフードコートへと移動すると、そこには大勢の人でごった返していた。

 

「流石に凄い人だな」

「どうする?普通にお店に入る?」

 

大型商業施設なので、当然フードコート以外にも飲食店が入っている。

 

「いや、さっきちらっと聞いたけど、どこの店も結構並んでるらしい」

「まぁ仕方ないわね、休日のお昼だし」

「とりあえず、空いてる席を探そう」

 

フードコート内の空席を探して歩いていると、運良く食べ終わって席を離れる人達がいたので、入れ違いに俺達がその席に座る。

その後は俺と刀奈で交互に料理を頼み、受け取りに行った。メニューは俺がラーメンで刀奈がオムライスだ。

 

「そういえば、昨日は簪ちゃんと豊君が出掛けてたみたいね」

「みたいだな」

 

本音によると、昨日は弐式の制作を中断して豊と出掛けていたらしい。まぁデートだな。

それにしても……。

 

「あの2人、ようやく付き合いだしたんだよなぁ」

「ほんと、良かったわよね」

 

簪と豊は、ついこの前から付き合い始めている。先日、2人で夕食に行った時の帰りに簪が告白したらしい。

その事は、簪から送られてきたメールで知った。ちなみに、メールが送られたのは俺、刀奈、虚のみらしい。まさかの従者が知らされていない。

簪曰く「情報が漏れる可能性があるところには送っていない」そうだ。そう言われて俺も刀奈も納得した。

豊の方も楠姉妹がいるから大丈夫なのかと思ってメールを送ってみたが、まだ大丈夫だそうだ。藤丸さんにだけ伝えたらしい。

このカップル、俺達の経験から学習して、危ないところはきっちり抑えてやがる。

 

「従者なのに教えてもらえない本音がちょっと可哀想に思うけどな」

「確かにね。でも、これまでの事を考えたら仕方ないとも思うわね」

 

 

全ては自業自得だ。

といっても、いつかは公表しなければいけない時がくるんだ。そこはあの2人も分かってるだろう。

ちょうど来週京子さんの墓参りで人が集まるんだし、俺達の報告のついでに、あの2人も発表してしまっていいかもしれない。

 

 

「そのラーメン、美味しそうね。一口貰っていい?」

「いいぞ」

 

自分の器を差し出す。刀奈が俺のラーメンを食べるのを見てると俺も刀奈のオムライスが欲しくなってきた。

基本的に俺と刀奈は味の好みが似ているから、お互い頼んだものを一口分けてもらう事は昔からよくやっている。

 

「ありがと、翔平も食べる?」

「あぁ、貰っていいか?」

 

オムライスの器に手を伸ばそうとしたら、それを刀奈に制された。

刀奈は自分のスプーンで一口分のオムライスを掬い、それを俺の方へと差し出してきた。

所謂"あーん"ってやつだ。

 

見れば刀奈はニコニコしながら俺を見ている。

 

……少し躊躇したが、俺は観念して差し出されたオムライスを口にした。

 

「美味しい?」

「……旨いよ」

「なら良かった♪」

「お前パスタからオムライスに変えたのはこれのためか!?」

「気分が変わったのよ」

「目を逸らしながら言ってんじゃねぇよ」

 

俺と目を合わせず言う刀奈。

俺のラーメンみて「私パスタにしよ」って言って席離れたのに、戻ってきたらオムライスだったからおかしいと思ったんだよ。

麺類だとこっちは仕返しで"あーん"をやる事が出来ない。始めに俺の好きなラーメンチェーンがあるのを知らせたのは、この状況にするための布石か!?クソッ、やられた!!

 

「私の勝ちね」

「いまいち何の勝負なのかよくわからないけど、まぁ俺の負けだな」

 

刀奈は人を指揮するのも上手いが、人を操るのも上手い。

今のように、俺も手のひらで転がされることがたまにある。

 

けど、やられっぱなしってのも気に入らないな。今も刀奈は終始ご機嫌でオムライス食べてる。

……ん?

 

「刀奈、ちょっとじっとしといて」

「?」

 

ちょこんと首を傾げる刀奈の反応に、内心可愛いなぁぁぁと思いつつ刀奈の顔に手を伸ばす。

そして頬に付いていたチキンライスを取り、自分の口に入れた。

 

途端に顔を赤くする刀奈。チキンライスを頬に付けてしまっていたことと、それを俺に取られて食べられた事で余計に恥ずかしいのだろう。

 

米系はこれがあるんだよな。

刀奈がそれをやる事はほとんどないけど、"あーん攻撃"が成功して気を抜いてたな。

 

「……油断してたわ」

「詰めが甘いな」

 

これで1勝1敗のドロー、ってところか。

……いや、だから何の勝負なのだろうか??

 

 

その後は何事もなく、他愛もない話をしつつ食事を進めた。

 

 

「さて、これからどうしましょうか」

「そうだなぁ」

 

食べ終わった器を返却口へと返して、フードコートから移動する。

今日のデートで、具体的に予定を決めていたのは午前中だけだ。今からの時間に関しては、全くのノープランなのだ。

男として、きっちりデートプランを考えておいてエスコートするべきなのだろうが、別に刀奈とはそこまで気を使うこともないし、あらかじめ、昼からはその場でテキトーに決めようということで決まっていた。

 

 

「そういえば、ここのすぐ近くに結構大きいバッティングセンターがあったな」

「あ、それなら私もさっき張り紙を見たわ」

「食後の運動も兼ねてちょっと体動かすか」

「いいわね」

 

ということで、バッティングセンターへの向かうことになった。

 

「…ん」

「ふふっ、ありがと」

 

左手を差し出して、刀奈と手を繋いで移動する。この時期だと、昼間に外で腕組みは暑い。

刀奈は腕組みの方が好きらしいけど、暑いのは俺と一緒なので外では手を繋いで歩く。まぁ店の中とかだと腕組んでくるけどね。俺としてはどっちも嬉しいから万々歳なんだけどさ。

 

 

移動を開始して、少し歩いたところに目的地のバッティングセンターはあった。確かに近かったな。

 

中に入ると、そこそこの人数の客で賑わっていた。

最近のこういう施設は、やっぱり女尊男卑の影響を受けて女性向けが多い。

ここも同じように女性向けの球速が遅いゲージが多いが、店の規模が比較的大きいので球速が速いゲージも結構ある。170打てるゲージあるし。

 

「バッティングセンターなんて何年ぶりだろ」

「小学生の時にみんなで行ったことあったわよね」

「……あー!!あったあった」

 

クラスの数人で近くにあったとこに行ったんだよな。

 

「さて折角来たし、打とうかな」

「私も」

 

自動の販売機で一枚で何度か遊べるカードを購入する。

 

「お、ゲージによっては決められた本数以上のホームランを打てばもう一回ただになるらしいぞ」

「へぇ、狙ってみる?」

「そうだな」

 

結構条件厳しいけど、やってみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ打った打った」

「流石にやり過ぎたわね」

 

バッティングセンターに来てから約1時間後、俺達は満足したのでバッティングセンターを後にした。

 

 

俺も刀奈も、手始めに140km/hで2回遊び、慣れて来たので150、160、170と順番に1回ずつ打っていった。

 

ちなみに、例の1ゲームボーナスの条件は、

140km/h…7/10回

150km/h…6/10回

160km/h…5/10回

170km/h…4/10回

というものだった。

ホームラン判定される的も結構小さかったので条件はキツかった。

 

が、俺は140km/hの2回目と150km/hで、刀奈は150km/hでクリアした。

気持ちいいぐらいにポンポン打つ俺達を見て、周りの客は呆然としていた。俺達みたいにカップルで来ていて、彼女に俺を指差してあれぐらいやって見せてと言われていた彼氏が気の毒だったな。

 

 

1枚で5ゲームできるカードを購入してボーナスが追加されたのだが、2人とも5ゲームやって満足したので、余った分はまた次来た時に使うことにした。幸い期限とかは無いらしいし。

 

 

「意外と打てるものなんだな」

「……他の人にとっては普通では無いと思うけどね」

 

俺も刀奈は野球を普段やるわけでは無い。むしろほとんど初心者だ。

でも、ISに乗っていると嫌でも動体視力は鍛えられる。

それに加えて身体能力が化け物と言われる2人だ、打つぐらいなら慣れれば割といける。

 

剣道やってて身体能力もある一夏は、球技全然ダメだけど。

俺はどっちかというとサッカーの方が好きで、この前気晴らしにと一夏誘って軽くボール蹴ったんだが、全然だった。

後日セシリアに誘われてテニスもやってたけど、そっちも散々だったから、根本的に球技がダメなんだろう。

 

 

 

「それにしても、IS以外で久しぶりに勝負したわね」

「確かにそうだな」

「結局、また私が負けた訳だけど」

 

 

 

最後の170km/hのゲームでは、刀奈の提案で勝負することになった。それまでの打撃で、俺と刀奈の周りには結構なギャラリーが集まっていて、ラストの勝負ということで盛り上がった。

内容としてはシンプルで、ホームランの的に多く当てた方が勝ちというルールだった。

結果は10球中俺が2回、刀奈が1回で俺の勝ちになった。

 

 

「食後の運動も済んだし、どこに行く?」

「夕食まで結構時間あるしなぁ」

 

今日の夜は、更識と繋がりのあるレストランを予約してある。

今日のデートは、2人とも自衛が出来るという事で護衛をつけていない。お互い立場が立場なので護衛をつけるべきなのだが、デートをジロジロ見られるのも嫌なので、今日は誰もつけていない。

そのかわり、2人ともデートを楽しみつつも常に周りに注意を向けている。

けど最後の食事ぐらいはゆっくり食べたいので、安心出来る場所を選んだ。

 

 

「確かこの近くに海があったわよね」

「あぁ……あったな。バイクで10分ぐらいだろ」

「じゃあそこに行きましょう」

 

刀奈の提案で、俺たちはバイクに乗り海へと移動した。

 

 

浜辺近くの駐輪場にバイクを停めて、刀奈と並んで手を繋ぎながら浜辺を歩く。

海開きもまだなので、浜辺はほとんど人がいなかった。

 

 

「翔平、ありがとう」

 

特にテーマも決めず、日常の事とかを話しながら歩いていると、隣を歩いていた刀奈が突然感謝の言葉を伝えてきた。

 

「どうした、急に?」

「……特に理由はないわ。何となく、今伝えたくなったの」

 

足は止めずに話し続ける刀奈の言葉を聞きながらついて行く。

 

 

「私はね、今がとても充実してる。楯無として大変な事も多いけど、それ以上に毎日が楽しいと思えてる。それは翔平のおかげよ」

 

 

刀奈の手が、少し強く俺の手を握る。

 

 

「翔平のおかげで、"刀奈"としての自分を残していられる。きっと翔平が居てくれなかったら、"刀奈"としての私は"楯無"としての私に潰されていたわ。……だから」

 

 

刀奈が立ち止まって俺の方を向く。

 

 

「翔平、ありがとう」

 

笑顔で言う刀奈は、あの時見せてくれたように、とても綺麗だった。

 

 

「そう言ってくれるのなら、俺としても嬉しいよ。それに、俺も刀奈には感謝してる」

 

え?という顔をする刀奈。

刀奈が、最近悩んでいることは分かってた。その理由も薄々感づいていた。恐らく、自分だけ色んなものを貰って、支えてもらっていいのだろうか、という気持ち。

確かに昔から今まで、俺は刀奈のお願いも我儘も、俺ができる範囲てでほとんど叶えてきた。けど、それは刀奈の為であるのと同時に自分の為でもある。

 

 

俺は刀奈が笑顔でいてほしい。その為に自分を頼ってほしい。

それが俺の願いなのだから。

刀奈が笑顔でいてくれると、俺だって幸せに感じられる。

 

 

「俺だって今の生活が充実してるし、幸せと感じられてる。それは刀奈から色んなものを貰ってるからだ」

 

 

俺の言葉を聞く刀奈の頬に涙が流れる。そんな刀奈の頭を撫でる。

 

 

 

「俺は刀奈が笑顔でいてほしい。ただそれだけだ」

 

 

 

それだけで、俺は幸せに感じられる。だからこれからも笑顔でいてほしい。

 

これまでも、刀奈は俺の側で笑ってくれた。それは俺の心を支えてくれた。きっと刀奈は気づいていないだろうけど。

 

だからこそ、伝える言葉はこれしかない。

 

 

「ありがとう、刀奈。愛してる」

 

 

 

流れる涙は止まらないが、それ以上に俺の言葉に嬉しそうに笑顔になってくれる。

 

 

「私も、愛してるわ」

 

 

あぁ、やっぱり俺は、この笑顔があるから頑張ることができる。

だからこれからも、この笑顔を守る為に俺は全力を尽くす。

 

それが今の俺の生き方だから。

 

 

人気の少ない浜辺で、俺たちはキスをした。

 

 

 

 

 

 




「おめでとうございます簪」
「ありがとう、虚」

「…………」zzz


デート編はこれで終わりです。
次回は墓参りと言う名の宴会です。

そろそろ刀奈目線を挟みたい。


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