どうせ転生するなら更識姉妹と仲良くしたい   作:ibura

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長いので2話に分けました。
シャルロット問題の前半です。


25

VTシステムによるラウラの暴走がひと段落した後、俺はラウラが運ばれた医務室に向かった。

医務室に到着し中に入ると、そこには既に織斑先生の姿があった。

 

「……上代か」

「お疲れ様です」

 

織斑先生に一言挨拶し、まだ眠っているラウラを見る。見た感じだと体調に問題は無いように見えるし、考えていることを察した織斑先生から大丈夫だという言葉を頂いた。

 

「ドイツ軍には調査が入っているようだが、どこもかしこも知らないの一点張りだそうだ」

「まぁ当然でしょうね」

「お前達は何か掴んでいるんじゃないのか?」

 

まるで試すように、織斑先生はニヤリとしながら俺の顔を見て言ってくる。実際に仁さんの調査では()()()()のところまで調べているが、別に俺達はそれでどうこうする気はない。

 

「他国のごたごたに介入しようとは思いませんよ」

「だがこいつが再び巻き込まれそうになれば助けるのだろ?」

 

そう言って、眠っているラウラの頭を撫でながら織斑先生は言ってくる。起きないところを見ると、ラウラはよほど深い眠りについているのだろう。

 

IS学園(ここ)の学生であるのなら、全力で対処するでしょうね」

 

生徒会長として、更識の長として、刀奈は学園の生徒は必ず守る。その意思は固いし俺も勿論協力していくつもりだ。

 

「頼もしいな」

「そう言っていただけるのなら何よりです。それじゃあ俺は行きますね」

 

ここに来たのは、ラウラの状態の確認なのでまだ眠っているのならさっさと退散しよう。

医務室を出ようとしたところで織斑先生に呼び止められる。

 

「上代」

「はい?」

()()1()()()()もよろしく頼む。何かあれば私に言うように」

「……了解です」

 

もう1人、つまりはシャルロットのことだろう。

実は学年別トーナメントが行われた数日前から、明らかに一夏のシャルロットに対する扱いが変わった。細かいところの口調や心配りから察するに、シャルロットが女であることがバレたのだろう。そりゃあんな完成度で一緒に暮らしていたらバレるのは当たり前だし、ラッキースケベ体質が少し入ってる一夏が何かやらかした可能性も高い。

というわけで、一夏はシャルロットが女という事を知っていて、恐らくシャルロットは自身の事情も説明しているのだろう。

俺の見立てでは今日あたりに俺と刀奈に泣きついてくると思っている。

 

 

医務室を後にした俺は生徒会室へと移動して、刀奈と合流して一度自室に戻るために移動した。

その道中刀奈と共に寮の通路を歩いていると、偶然出会った山田先生に話しかけられた。

 

「あ、上代君!!良いところに」

「どうしました??」

「何とですね、今日から男子も大浴場が解禁になりました!!」

 

お、まじか。確かにそろそろ部屋のシャワーだけじゃ物足りなくなってきてたんだよな。シャワーだけでも良いっちゃ良いけどたまには湯船に浸かりたいだよね。

山田先生の話では今日はボイラー点検で学生の使用は禁止になっていたが、それが早く終わったために男子生徒3人が使っても良いとのことだった。

……まてよ…。

 

 

「山田先生、一夏達にもそれって伝えたんですか?」

「はい、先ほどお伝えして、今はもう大浴場に向かっているはずです」

 

それを聞いて固まる俺と刀奈。

いや、まさか一緒に入るなんてないよな?あれ、でも原作では何だかんだ入ってたような……。

 

……嫌な予感しかしない。

 

「今日は遠慮しておきます。生徒会の仕事も自室でやる分が残っているので」

「そうなんですか、残念ですね……」

 

仕方がないということで、明日以降の男子の大浴場の詳しい使用時間はまた明日連絡するということで山田先生とは別れた。

誰が好き好んでいかにもトラブルが起きそうなところに行くか。

 

 

「上手く断ったわね」

 

自室に着いてから刀奈がさっきの事について言ってきた。

 

「そりゃあそうだろう」

「翔平ってお風呂好きなんじゃなかった?」

 

刀奈が言う通り、比較的俺は風呂が好きだ。一夏ほどじゃないが、ずっとシャワーだけという生活は辛いものがある。

 

「俺は風呂に入って疲れを取りたいんだ。余計に疲れそうな風呂には入りたくない」

「あぁ………それもそうね」

 

 

俺が毎日報告しているせいである程度の一夏の性格を知っている刀奈は、納得したように呟いた。

 

「まぁでも、そろそろ俺に相談に来るだろう」

「そうね、正体バレたのならこれまでの経緯も説明してるでしょうし」

 

世界に2人しかいない男性操縦者であろうと、国の代表候補生であろうと、この問題はただの学生には解決出来るようなものじゃない。更識家のように特別な力でもない限り、解決は難しいだろう。

というか、俺たちが解決しようとしたところで、国際問題に発展しかねないから危険であることは間違いないんだけど。

それでも、学園の生徒が助けを求めるのであれば俺達は助ける。それが俺と刀奈の考え方だ。

 

いつものメンバーで夕食を済ませて、刀奈と2人で順番にシャワーを使う。

山田先生には咄嗟にああ言ったものの、実は今日はもうやらなければいけない仕事はない。いや、やることはあるにはあるんだけど明日に回せばいいか、ということになった。

 

刀奈とコーヒーを飲みながらまったりしていると、部屋の扉がノックされた。

こんな時間に誰だ?

と思ったけど、時期的に十中八九シャルロットだろう。風呂入って決心でもついたか。

 

刀奈に了承を得てから扉を開けると、そこには予想通りシャルロットと、ついでに一夏の姿もあった。

ひとまずシャルロットを部屋の中に入れ、適当に座ってもらう。と言ってもそこまで座るところがある訳でもないので、シャルロットを俺の椅子に座らせて俺は自分のベッドに、刀奈は自分の椅子に座った。一夏に関しては部屋に戻ってもらった。これからの対策とかも話し合うかもしれないから、あいつには悪いけど聞かせる事は出来ない。

悪いようにはしないと伝えると、渋々戻ってくれた。

 

 

「さて、あなたが私達の部屋に来たということは、覚悟が決まったという事でいいのかしら?……シャルロット・デュノアさん」

「っ!?」

 

刀奈の言葉に明らかに動揺するシャルロット。

本当に気付かれてないと思ってたんだな……。

 

シャルロットはどういう事だと言わんばかりに俺の方を向いてくる。

 

「俺も知ってたぞ」

 

さも当然かのように俺が言うと、シャルロットは頭を抱えた。ある程度の自信があったんだな、あれでも。

 

「はい。私はシャルロット・デュノアです。これまで男装をして学園で生活していました」

 

しばらくフリーズしてたシャルロットだが、意を決したように顔を上げて生徒会長の刀奈に名乗った。

そして、彼女は男装を()()()()と言った。していた、つまりは過去形だ。ということは、これからは女子生徒としてこの学園で生活したいのだろう。

 

そこから、シャルロットはこれまでの経緯を俺と刀奈に説明した。既にそこのところの話は知っていたが、あえてその事は言わずに話を聞いた。

内容的には仁さんの調べた結果と一致している。ただ、一部だけシャルロットが話した内容に間違いがあった。というか、俺と刀奈もつい最近まで知らなかったことだ。

デュノア社がシャルロット関連でやらかした事は仁さんの調べで分かったので、仁さんには任務完了という事で帰国してもらおうと思いその事を伝えた。

しかし、仁さんはまだ気になることがあると言ってヨーロッパに残った。そしてつい先日、仁さんから新たな報告が刀奈に届けられた。

 

「貴方はこれからどうしたいの?」

 

話し終えたシャルロットに、刀奈は聞いた。

自分がどうしたいのか。

 

「私達にどうしてほしいの?」

 

俺たちにどうしてほしいのか。

 

その問いに対するシャルロットの答えは、

 

「助けて、ほしいです…」

 

涙を流しながら、助けを求めるものだった。

恐らくは、自分でもう一度口に出して説明して、自分がどうしようもない立場に立たされていることが分かったのだろう。

今の状況を受け入れるのではなく、自ら助かりたいという気持ちが芽生えた。

そして、自分の前には、自分の力ではどうしようもない障害がある事に気付いた。

能天気な一夏のことだから、この学園にいるうちは学園の特記事項で大丈夫だとでも言っただろうが、頭の良いシャルロットは理解しているのだろう。

学園を卒業すれば、自分に未来などないことを。

 

その事実は、助かりたいと願う今のシャルロットに絶望を与えるのは簡単だった。

 

涙を流しながらも、こんな状況に追い詰められていることが悔しいのか、唇を噛み締めながら俯いていた。

さて、何て声をかけようかと悩んでいると、刀奈が立ち上がり、座って俯くシャルロットに近づいていった。

 

そして、何も言わずにシャルロットをそっと抱きしめた。

 

 

 

「大丈夫よ」

 

 

 

刀奈は優しく、シャルロットの頭を撫でる。

 

 

 

 

「学園の生徒を守るのは生徒会長の役目よ」

 

 

抱きしめるシャルロットを一度離し、シャルロットの目を見ながら刀奈は最後に言った。

 

 

 

「IS学園生徒会長として、私は貴方を助けるわ」

 

微笑みながら刀奈に言われたその言葉に、シャルロットは泣き崩れた。声をあげて泣くシャルロットに刀奈は苦笑しつつも、シャルロットの頭をもう一度抱きしめた。

その光景は昔、楯無の重圧に押しつぶされそうになって泣いていた刀奈と、どこか似ているところがあった。

あの時の事を言うと、恥ずかしいのか刀奈は怒るので口にはしないが、意外とこの2人は似ているのかもと思った。

 

 

「すみません、もう大丈夫です」

 

しばらく泣いていたシャルロットだが、落ち着き恥ずかしくなったのか顔を赤くしながら刀奈から離れた。

 

「じゃあ、これからの事を話そうと思うけど、その前に一つ訂正しておくわ」

「訂正?」

 

赤くさせた目を瞬かせながら聞き返すシャルロット。

 

「貴方の父親、アルベール・デュノア社長についてよ」

 

シャルロットの父親、デュノア社のトップ、アルベール・デュノア

これまで俺たちはデュノア社長の指示で、シャルロットが男装をして学園に来ることになったと思っていた。シャルロット本人もさっきそう言っていた。

だが、事実は少し違っていたようだ。

 

「貴方をこんな状況に追い込んだのはデュノア社長よ。それはさっき貴方が言った通り」

 

顔を歪めるシャルロット。まぁ実の父親にこんな事されたんじゃ当然か。けど、だからこそシャルロットは本当の事実を知っておかなければならない。

 

「デュノア社長は、貴方を男として学園に送る事は最後まで反対していたそうよ」

「えっ!?」

「今回の事を発案したのも、デュノア社長の反対を押し切って強行したのも全てデュノア社長夫人、ロゼンダ・デュノアが裏から操っていたのよ」

 

追加で送られてきた仁さんからの報告はこの事だった。調査を行なっている中で、デュノア社長の動きに不自然な点があったらしい。調査を続けたところ、デュノア社の中におけるデュノア社長の影響力はほとんど失われていて、実質はロゼンダ・デュノアがほぼデュノア社を支配している事が分かった。

そんな中でデュノア社の経営は悪化したことから、ロゼンダ社長夫人は焦ったのだろう。何とかして、他社よりも数段上のレベルのIS機体を開発しなければならない。

そこで、今回の案を思いついたのだろう。ロゼンダ社長夫人からすれば邪魔な存在でしかないシャルロットを家から追い出すことができ、かつデュノア社の経営を改善することができるとでも踏んだのだろう。

 

明らかにバレるであろう男装でシャルロットを送り出そうとする、ロゼンダ社長夫人をデュノア社長は止めようとしたそうだが、発言権が殆ど残っていないデュノア社長ではどうしようもなかったのだろう。

 

シャルロットは父親であるデュノア社長とはロクに会話をしたことがないと言っていたが、実際は話すことが出来なかったようだ。

 

 

「じゃあ僕は、あの女のせいで……」

「デュノア社長は最後まで貴方にこんな事をさせないように動いてたそうよ」

「そんな……」

 

 

これまで憎んでいた父親が、実は自分を助けようとしていた。

そんな事を急に言われて、混乱しないほうが難しいだろう。

 

 

「一度、ゆっくり話してみたらいいわ」

 

 

結局は、自分の事を相手に分かってもらうには話すことが1番なのだ。

シャルロットは戸惑いながらも、頷いた。

 

 

 

 

 




「何だかんだ言って、仁さんって凄いよね」

「他国の企業とか軍とかの内部調査しちゃうからねぇ」

「普通に考えて無理な事も、"仁さんだから"で済ませいますね」

御都合主義です、すみません。


色々と調べてデュノア社長と社長夫人の名前が分かったけど、これって合ってるんですかね??
原作知識が乏しい作者は不安です……。

個人的にシャルロットは父親とは和解してほしいと思ってます。
ここからは独自解釈とか御都合主義が入ってくると思いますが、ご容赦ください。


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