どうせ転生するなら更識姉妹と仲良くしたい   作:ibura

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すいません、お待たせしました。


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シャルロットとラウラが転校してきてから数日が経った。この数日は、シャルロットが女とバレることもなく、ラウラが何かやらかすこともなく無事に過ぎてくれた。今日の放課後にアリーナで一夏、シャルロットとラウラが一触即発だったらしいが、前もって注意しといてもらうように伝えておいたアリーナ担当の教師の迅速な対応によって事なきを得た。このイベントが起きたということは、明日か明後日にはセシリアと鈴がボコられるのでそちらの対応はできるようにしておきたい。

俺は簪と組んでタッグマッチに出るが、一夏・シャルロットとラウラ・箒が当たることを考えたら、あとは一般生徒だけになってしまう。さすがに一般生徒相手だとやる気が出ないので、何とかして原作ではボコられて出場できなかったあのペアをタッグマッチに出させたい。そのうえで刀奈に頼んで1回戦で俺たちと当たるようにしてもらおう。生徒会長権限で何とかなるだろう。

 

タッグマッチに向けて、俺と簪は特にこれと言って何か準備をしているわけでもない。精々簪が当日に使う訓練機の調整ぐらいだ。俺がこれまでタッグを組んだことがあるのは、実は刀奈じゃなくて簪のほうが多い。最近では、ようやく俺の実力も刀奈と同じほどになってきてはいるが、それまでは当然刀奈のほうが単純に強かった。当時は、俺からしたら化け物みたいなものだった刀奈にどうすれば勝てるか、よく簪と話し合って挑んだものだ。たまには勝てたけど、それでも2対1で負け越していた刀奈は本当に強かったと思う。3対1でも勝てなかった葵さんは、悪魔にしか見えなかった……。あの人ほんとに怪我で引退したのだろうか?現役でも全然いけると思うんだけど。

 

そんなわけで、俺と簪とでは今更チームワークも何もないので、試合前に軽く流せばそれで本番はばっちりだ。余裕で優勝できるだろう。1回戦しかないんだろうけど。

 

 

 

 

「今日も問題なし、と」

 

今は部屋で刀奈とコーヒーを飲みながら今日の報告などを行なっている。ちょうど俺が今日あった出来事を報告し終えたところである。ラウラが不安要素ということは刀奈にも伝えているし、伝える前から刀奈もそのことは感じ取っていた。

 

「明日からは私か翔平がアリーナで待機しておいた方が良さそうね」

「そうだなぁ。何かあってからは遅いし」

 

実際に数日後には何かあるんだし。

 

「フランスの方はどうだったんだ?」

 

確か今日、再びフランスで情報収集と調査を行なっていた仁さんからの報告が届く予定だったはずだ。

 

「デュノア社は真っ黒、フランス政府はグレーってところかしら」

「というと?」

 

実は俺、このシャルロットの問題が実際どうだったのかということを俺はほとんど覚えてないのだ。フランス政府にも、シャルロットの男装を見抜いた人物がいないはずがない。にもかかわらず、代表候補生という肩書きが与えられたのは、どういう背景があったのか…。

 

仁さんからの報告を刀奈から聞いて、まぁ色々と納得した。聞いてみたら簡単な話だった。

 

第3世代機の開発が上手くいっていないデュノア社は、経営がかなり危うい状況となっているらしい。そんな中で、どうにかして打開策を講じなければと社長含む上層部の一部の人間が焦っていたところにシャルロットの存在が知らされた。

そこからはもう暴走と言っていいのだろう。何を血迷ったか、俺と一夏という男性操縦者の発見というニュースを見て、シャルロットを世界で3番目の男性操縦者という形で学園に紛れ込ませて、俺や一夏のデータを盗むように指示した。普通は最低でも1年は男装の訓練が必要だと思うが、それを数ヶ月で切り上げて学園に送り込んできたところを見ると、相当切羽詰まっているのだろう。

一方でフランス政府は、デュノア社のそれらの状況を全て理解した上で、利用しようとしているようだ。そもそも上手くいくとは思っておらず、成功したのならデータは横流ししてもらい、失敗したのならデュノア社の暴走として政府は無関係を主張するつもりなのだろう。要は成功したらラッキー程度にしか考えておらず、既にデュノア社は捨て駒なのだ。

それだけ聞けばデュノア社に対して同情の気持ちも少しは感じるが、元は自業自得なので仕方がない。

 

「しばらくは様子見だな。彼女自身の気持ちが動かないと俺達は何もできない」

「そうね。彼女が今の状況から助かりたいという意思を示さないと私たちは何もできないわ」

 

 

卒業後の話は別として、学園に在学中の生徒は本人の同意がない場合は原則として外部の組織からの影響や干渉を一切受けない。したがって、俺や刀奈の力で外部から守ることができる。しかし、その生徒本人がスパイとしての立場を取るのであれば、学園側としても見逃すことは出来ない。学園を守る立場として、それ相応の対応を求められる。結局は、シャルロットがこのままスパイとして一夏や俺の情報をデュノア社に渡すのか、今のこの状況から助かりたいと願うのかで、こっちの対応も変わってくる。

 

 

「どっちにしても、男装がバレるのは時間の問題だろうな」

「そうね…」

 

あと数日もすれば一夏にバレるんだけどね。刀奈もそう予想しているようで、苦笑いを浮かべている。逆に一夏はよく同じ部屋で生活してて、数日間とはいえ気付かずにいられるもんだ。ラッキースケベ体質だったら確実にアウトだったな。鈍感だけど。

 

 

「そういえば、今日簪は豊と夕食食べにいってるんだっけ?」

「そうよ。この前豊君が学園に来た時に約束してたみたい」

「豊が?珍しいな」

「お膳立ては楠姉妹だけどね」

「あぁ、なるほど」

 

大方、どこかのレストランのチケットでも用意して豊に簪を誘うように押し付けたのだろう。その料金を払ったのが藤丸さんということまで想像できた。これで二人の仲が進展したら楠姉妹と藤丸さんのファインプレーだ。

 

「今日で何か進展すると思うか?」

「どうかしら……、するかどうかはともかくとしてほしいっていう思いはあるわね」

 

それは確かに思う。あんまり考えられないけど……。

いっそのこと、俺が学園に入学してきた時に簪が俺に送ってきたように、告白するように簪にメール送ってやろうかな。よしそうしよう。

 

刀奈にそのことを伝えてメールを打ち始める。ちなみに簪からのメールのことは、あれからしばらく経ってからいつものメンバーで昼食を食べているときに刀奈に伝えた。聞いた刀奈は呆れてたけど。

 

メールを送信し終えたとき、刀奈が何かを思いついたように「そういえば」と言ってきた。

 

 

「ねえ翔平、私達って付き合ってからまだデートした事ないわよね」

「確かに、言われてみればそうだな」

 

休みで授業がない日とかでも、お互い忙しいからデートらしいデートなんて出来ないでいる。といっても、同じ部屋だからほとんど同棲みたいなもんだし、不満というわけじゃないけど。

 

 

「だから、学年別トーナメントが終わったらデートしない?」

 

 

 

即答で了承しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、俺は終始機嫌良く授業を受けた。

元々は俺も学年別トーナメント後、というよりもシャルロットとラウラの問題が片付いた後に刀奈をデートに誘うつもりでいた。このタイミングを逃したら、その後は京子さんの墓参りがあって臨海学校と、イベントが立て続けに迫って来る。立場的にその準備は忙しくなるのは当然なので、自由な時間を過ごせるのはこのタイミングしかないのだ。

だからこそデートしたいと思ったのだが、同じことを刀奈も考えていたということが嬉しくてたまらなかった。単純にデートの予定が入ったことも嬉しい。

今日は朝から出会う知り合い全員に「何か良いことあったのか?」って聞かれてしまった。その度に刀奈とデートする予定が決まったということを伝えると、全員冷めた目で「あっそ、良かったね」と言われたけど、今日の俺はそんなこと気にしないほど機嫌が良くテンションが高かった。

 

「お兄ちゃんって本当にお姉ちゃんのことになったら単純になるよね」

「デートの予定が決まっただけであのハイテンションはね……」

「ちょっと舞い上がりすぎたと反省しています」

 

流石に男子高校生が鼻歌を口ずさみながら廊下をスキップは見苦しいものだったらしい。昼に刀奈から「少し落ち着きなさい」って言われたし。というか午前中の段階で2年のクラスにも俺が馬鹿みたいにハイテンションだったということが知れ渡っていたことに、この学園の噂が流れるスピードの異常さを改めて感じたよ。本当におかしいと思う。

 

今はそのことをネタに簪と本音から弄られながら、俺は生徒会室に、簪と本音は整備室に向けて移動している。このまま弄られ続けるのも嫌なので、こちらからも反撃することにする。

 

「そういや簪、結局昨日は告白したのか?」

「………」

 

反応から察するに、結局告白できずに帰ってきたようだ。

別に俺は昨日送ったメールでは、以前簪から送られてきたメールのように「もし今日告白できなかったら…」みたいな脅し文句は書かなかった。俺としても中々告白に踏み切れないというのはよく分かるので、あまり強く言えない。といっても、このまま簪がズルズルいくのであればそれ相応の対応はするつもりだけど。というか……。

 

 

「かんちゃん今日から三日間アニメ禁止ね」

「そんな……」

 

 

俺がしなくても、本音が勝手に罰を与えたようだ。簪にとって三日間アニメを見れないということはそこそこの罰になってると思う。一週間なら発狂するだろうけど。本音にとってはお菓子禁止の恨みを晴らした結果なのだろう。本音のお菓子禁止は自業自得なんだけどさ。

項垂れる簪を励ましながら移動し、途中整備室に向かう2人と別れた。

 

2人と別れ、生徒会室へ向かう。その途中、曲がり角の先から見知った声が聞こえてきた。

 

「お願いです教官!!ドイツに戻ってきてください」

「昼にも言ったはずだ、私には私の役目がある」

 

聞いてみると、織斑先生とラウラの2人だった。ラウラが織斑先生にドイツ軍に戻ってきてほしいと懇願しているんだろう。織斑先生は聞く耳持たずって感じだけど。

 

「今から会議がある、話がそれだけなら私は行くぞ」

 

織斑先生のその言葉でラウラは去っていった。

そして、織斑先生がこっちを見ていることに気付いた。

 

「今日はよく盗み聞きされるな。この学園の男子生徒は盗み聞きが趣味なのか?」

「そ、そういうわけではないですよ。俺はたまたまです、織斑先生」

 

その言い方だと一夏も立ち聞きしたみたいだな。

さっき昼って言ってたからあいつがトイレに行ってた時にでも聞いたんだろう。というか、ラウラはその時にも追い返されて、さっきもまた頼みに来たのか。その執念にはちょっと賞賛するよ。

 

「お前達の事だ、あいつの事も少なからず調べてるんだろう?」

「そこそこは、と言っておきます。といっても相手はドイツ軍ですからね…」

「お前が更識に頼まれたらドイツ軍相手でも、片っ端から調べそうだがな」

「それは当然です」

「お前あれだな、更識の犬だな」

 

あ、呆れた顔された。まぁ呆れられるんだろうけど、仕方ないじゃん。俺にとって刀奈からの頼みごと以上に重要な事なんてないんだし。

 

「この後はアリーナで待機してくれるのだろう?」

「その予定です」

「何かあれば担当の教員に言って私を呼び出せ、私も向かう」

「何もない事が1番なんですけどね」

 

織斑先生もさっきのラウラの反応から、何かやらかしそうだと感じてるようだ。実際そうなのだから、織斑先生の洞察力は凄い。

改めて「よろしく頼む」と言わせて、織斑先生は歩いて行った。

 

 

織斑先生に言ったように、この後はラウラのセシリア・鈴襲撃を警戒するためにアリーナの管制室で待機する。

先に生徒会室で軽く連絡事項を報告し合った俺と刀奈はすぐにアリーナの管制室に向かう事になっている。IS学園にはアリーナやグラウンドといった施設は複数存在しているが、今の段階では1年生にはアリーナは2箇所しか使用許可が出ていない。2学期からは全ての施設が使用可能となるが、入学してあまり日が経っていないこの時期は一部の施設に限定されている。

なので、ラウラが2人を襲撃するアリーナは1年生に開放されているアリーナのどちらかということになる。そこで、それぞれのアリーナに俺と刀奈がスタンバイして、何か起きた時に即対応できるようにしようということだ。

原作をきちんと覚えていたら、どのアリーナでセシリアと鈴が特訓するか分かったかもしれないが、生憎覚えていない。可能性があるアリーナが2箇所で助かった。

 

生徒会室で軽く話し合い、今日の分の書類仕事を虚に任せて俺と刀奈はアリーナへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 




「かんちゃんのヘタレー」

「うっさい本音。大体、普通は男が告白するものでしょ」

「ゆーくんが出来ると思う?」

「……無理」

「でしょ?だからかんちゃんが頑張らないと」

「そうです!!」

「え、虚!?」

「お姉ちゃん!?」.

「私にも出番と台詞をください!!」





学園にあるアリーナの数とかをちゃんと把握してないので、独自設定を入れました。内容におかしいところが出てきたら修正するかもしれないです。

これからも、出来るだけ早めに更新できるよう努力していきます。よろしくお願いします。

感想評価等もよろしくお願いします。


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