どうせ転生するなら更識姉妹と仲良くしたい   作:ibura

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すみません、お待たせしました。


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シャルロットが転校してきた日の放課後、俺たちは生徒会室にいた。今日は簪と本音も来ている。なんでも、必要な部品を出雲に取り寄せているので専用機の開発は中断しているらしい。

本音も一応生徒会の一員なんだが、いてもどうせ戦力にはならないので、基本的には簪の手伝いをさせている。

 

 

「そういえばお姉ちゃん、招待状は送り終わったの?」

「えぇ、昨日ですべて送り終えたわ」

 

簪が言った招待状とは、京子さんの墓参りとその後の宴会への招待状である。

今年も例年通り参加者全員で京子さんの墓参りを行い、その後全員で宴会を楽しむ。招待状を送ったのは更識家関係者と日本政府の一部のお偉いさん達、あとは京子さんと個人的に所縁のある人達である。基本的に招待状が届いた人は全員参加するが、毎年数人はどうしても外せない用事があって参加できないことがある。大抵その人は参加できないことを本当に残念がる。それほど、みんなこの行事を楽しみにしているのだ。

今朝、去年参加できなかった人が刀奈に参加することを電話で報告してきたらしい。招待状は郵送で、早くても今日の昼に届くはずなのだけど……。

 

 

ちなみに、時期的には学年別トーナメントが終わった後で、臨海学校の前に行う予定である。

 

そういえば、学年別トーナメントといえば…。

 

 

「学年別トーナメントは結局どうするのか決めたのか?」

「まだ考えてるところだけど、多分タッグマッチにするかな」

 

俺の質問に刀奈が答える。

原作を知っているからタッグマッチになることは知っているが、もしかしたら変化があるかもしれない。

聞くところによると、教師陣と刀奈とで例年通り個人戦にするかタッグマッチに変更するかを話し合い、最終的には刀奈が判断を下すらしい。

俺としては正直、個人戦の方が有難い。なぜかと言うと……。

 

「俺、誰と出よう……」

 

タッグマッチの場合、パートナーを探さなければいけないのだ。

これがもし、学年別という条件さえ無ければ迷わずに刀奈と組むのだけど……。あぁでも、それだと反則級の強さになってしまうか。

 

だとすればどうするか……。

 

俺の知り合いだと大体組み合わせが決まってるんだよなぁ。最終的にランダムでラウラと組む箒はある意味決まってないけど、俺そんなにあいつと仲良いわけじゃないしな…。

 

どうせ組むんなら、やっぱり昔からの付き合いがあるここのメンバーがいいよな。

学年別だから刀奈と虚はダメ。となると簪か本音になるんだけど、本音は実戦向きじゃないし……。となるとやっぱり。

 

「なぁ簪、俺と組んでくれない?訓練機でいいから」

「え、私?」

「刀奈と組めないってなると、1番やりやすいのは簪なんだよ。どうせ出るなら勝ちたいし。出るつもりなかったかもしれないけど、考えてくれないか?」

 

 

正直、俺1人でも勝てるだろうが、2対1の変則マッチだと手加減できずに本気でやってしまいそうで怖い。ただでさえ、これまでの試合で目立ってしまっているんだから、今このタイミングで派手に暴れるのは危険すぎる。いろいろと面倒なことになるだろうし、刀奈に迷惑をかけてしまう。

でも、やっぱり試合に出るのであれば勝ちたいと思うのも当然。ラウラの件で1回戦で終わることは知っているけど、たった1試合でも負けたくはない。何よりも更識の名前に泥を塗りたくはないし。

あれ、でも一夏・シャルロットとラウラ・箒が当たるんなら俺のペアはどこのペアと当たるんだろ?さすがに一般生ペア相手だとやる気が出ないぞ…。

 

まぁそのことは後で考えるとして、今はパートナーのことを優先しよう。

 

簪はしばらく黙って考えていた。多分弐式の完成を早められないかとか、無理だとして訓練機で出る場合のこととかいろいろと考えてくれているのだろう。

 

「……分かった。私もタッグマッチに出る」

 

簪は意外にあっさり了承してくれた。俺から頼んでおいてあれなんだけど、もう少し考えてその上で出ることを渋ると思っていた。この場にいる他の人たちも俺と同じ考えのようで、驚いた顔をしている。

 

「確かに、私は代表候補生ってことで、今回の学年別トーナメントの参加は免除されてる。でも、最近弐式の開発ばかりで、試合に出てないのもあるから、私は今回のトーナメントは出ておきたいって思ってた。何より……」

 

一拍置いた簪は、俺と刀奈の顔を順に見て続けた。

 

「お兄ちゃんがお姉ちゃん以外の知らない女子とタッグ組むのは嫌。それなら私が組む」

「簪ちゃん!!!」

 

 

簪の言葉に虚と本音はうんうん頷いて同意する。刀奈は嬉しくて簪に飛びつき、俺はそれを見て笑うしかなかった。ほんと、自慢の妹だよ。義理だけど。

 

「ありがとう、簪。じゃあ改めてよろしくな」

「よろしくね、お兄ちゃん」

 

こうして、俺のパートナーが決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺のパートナーが決まり、今日の分の生徒会の仕事が終了したので、今日は解散となり、一度部屋に戻って再び食堂で合流して夕食となった。生徒会室で仕事して.、終われば部屋に戻って、食堂でまた合流して夕食ってのが最近のパターンだ。簪と本音が弐式の開発していた日も、夕食は合流する。刀奈と付き合いだして昼は2人で食べることが多くなったけど、逆に夕食は昔から一緒のこの5人で食べることがほとんどだ。

 

というか、今日の仕事って言ってもほとんど俺がやって他のメンバーは虚が淹れた紅茶飲みながら話していただけだった。まぁ今日はパソコン使った作業がほとんどだったから仕方なかったけど。生徒会室にパソコン1台しかないし。

最近刀奈以外のメンバーも、俺の扱いが雑になってきた気がする。俺に仕事任せて自分たちはお茶してるし……。まぁ本当に忙しい時や俺が疲れてる時とかは、働いてくれるから別にいいけど。

 

今はいつも通り、刀奈といろいろ話しながらコーヒー飲んでまったりしてる。最近じゃこの時間が一番落ち着く。会話を誰かに聞かれるわけでもないし、変に気を使う必要もない。ただコーヒー飲みながら彼女と話すことができる。半分は更識の話なんだけど。

 

 

「そういえば、噂の転校生はどうだった?」

「理解できない」

「なかなか厳しい言葉ね」

 

いろいろと感想はあるが、まぁ一言で言うならばそれだった。

 

「あれで騙し通せると思ってる本人も理解できないし、あれでGOサイン出したデュノア社とフランス政府も理解できない。事前に聞いてなくても、俺ならあれが男装だって見抜いてたぞ」

「まぁそこは私も同じ感想よ。仕草とか細かいところがまるで女の子だったわ」

「部屋は一夏と同じにしたんだろ?また思い切ったことをしたな」

「決めたのは私じゃないわ。織斑先生よ」

「えぇ……」

 

織斑先生ももちろんシャルロットが男装している女子生徒ということは気づいている。わざわざそんなことをしてまで学園に転校してきたということは、何か目的があるということも推測できる。そんな中で、情報量が山ほどある弟と同室にするとは……。まぁシャルロットを見ていて、何かしでかす度胸があるように思えないけど。

 

「しばらく泳がしておくそうよ」

「……弟を餌にするなよなぁ」

「"何かあってもお前たちが何とかしてくれるんだろ?"って言われたわ」

「……俺達を認めてはくれてるんだな」

「一応はね」

 

織斑先生は更識家をそこまで信用はしていないと思っていた。まぁ実際そこまで信用していないのだろう。それでも、俺という存在はある程度は有能であるということは思ってもらえてるみたいだ。言い方は悪いけど、"使えるものは使う"ってところだろう。別にその考えは否定しないし、何なら俺だって刀奈からの頼みを実現するためにはその考えに従って行動するので、他人のことは言えない。

 

「ひとまず、フランスの方は大丈夫そうね」

「あぁ。ドイツの方は?」

「予定通りに明日の朝こっちに到着するから、そのままホームルームで紹介ってなるわね」

「了解。面倒なことにならなければいいけど……」

「十中八九、何か起きるでしょうね」

 

今から考えても、頭を抱えたくなる。シャルロットは裏でゴタゴタするだろうし、ラウラは表で派手にやらかすのだろう。

俺の危惧を察したらしい刀奈が隣に来て頭撫でて励ましてくれた。うん、元気出た。

 

「そういえば、学年別トーナメントだけど」

「ん?」

「簪ちゃんには改めてお礼言わないとね」

「そうだな。最悪一人で出るしかないかと思ってたし」

「私としても、知らない女子生徒が翔平と組むっていうのは思うところがあったからね。簪ちゃんなら安心できるわ」

「明日から弐式の開発一旦止めてトーナメントに向けての調整に入ってくれるみたいだからなぁ」

 

学年別トーナメントに専用機の弐式は間に合わないようなので、簪は訓練機の打鉄を使うことにした。打鉄の基本武装は刀型近接ブレードなのだが簪は基本的に刀よりも薙刀なので、弐式に搭載予定の夢現をパッケージとして訓練機の打鉄に搭載して試合に臨むとのこと。普通はそんなことできないと思うが、簪が彩さんに電話して事情を説明したらオッケーが出たので力業で何とかなった。何であの人たちは簪のお願いは無償で受けるのだろうか。俺が頼んだら絶対に見返り求めてくるのに…。

 

「でも、よくよく考えてみたら翔平と簪ちゃんのペアってある意味反則よね?1年生の専用機持ちの中では簪ちゃんが実力は一番だろうし」

「確かにな」

 

原作と比べて、簪のISの実力は上がっているように思う。原作のように弐式の開発に追い込まれることがなかったので、開発を行いながらもISの訓練は行い続けていたし。なにより刀奈との仲が悪くなかったということで、普段からよく模擬戦とかしていたし、俺が加わってからは悪魔的な強さ(当時の俺と簪から見て)の刀奈に対して簪と2人で何とか勝てるように四苦八苦してたこともあった。

今思えば、今回はあの頃以来の簪とのコンビになる。当時は何とか刀奈に勝つために簪といろいろ試行錯誤してやってたので、コンビネーションは問題ない。簪が訓練機を使うということを差し引いても……うん、これはこれで反則だ。

 

「まぁでも、まだ弐式じゃなかっただけマシじゃないか?」

「……確かにそうね」

 

弐式に搭載予定の武装は俺も知っているが、あの6機×8門のミサイルと俺の2種類のビットで連携しながら攻撃されたら、さすがに試合にならないだろう。多分、相手からしたら逃げ道なんてないと思う。

 

「出るからには勝つさ。簪ともそう話したし」

「あんまりやりすぎちゃ駄目よ」

「分かってるよ」

 

 

どうせなら俺が簪のサポートに入った方が良いかもな。

 

 

その後は他愛のない会話を続けて、良い時間になったのでベッドに入って寝た。刀奈も当然俺のベッドだった。もう気にしない。

 

 

 

次の日のホームルーム、一夏がおもいっきりビンタされるのを見て俺は頭を抱えた。

 

 

 

 




「久しぶりに台詞があった」

「いいなぁかんちゃん、これから出番増えそうだし。私は結局出番だけだったし」

「本音もチャンスはあるんじゃない?」

「そう思いたいな……。でも、誰が一番不遇って言われるとお姉ちゃんだよね。ここにも呼ばれてないし」

「作者もこの前ふとそう思ったそうよ」

「いつも紅茶淹れてくれたりしてるのに…」




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