どうせ転生するなら更識姉妹と仲良くしたい   作:ibura

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利き腕を怪我してしまって投稿が遅れてます……。




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「あぁ……疲れた」

 

自室のベッドに座って、そう呟いた。現在夜の21時だ。

 

ゴーレムの侵入を撃退した後、生徒会室で報告書の作成と溜まっている書類整理を行った。その途中、織斑先生から呼び出しがあったので、刀奈と共に学園の地下へと移動した。そこでは織斑先生と山田先生が回収したゴーレム3機の分析を行っていて、簡単に情報共有を行った。山田先生曰く、やはり俺を狙っていた2機の方が武装の攻撃力は高かったらしい。ほんと、勘弁してほしい。

地下から生徒会室に戻る際に、織斑先生から今回の襲撃の首謀者に心当たりがないか聞かれたので、兎の名前をそれとなく出しておいた。まぁ原作と変わってきているところもあるし確証はなかったので断言はしなかった。それでも、織斑先生も兎の仕業だろうと思っていたらしく、特にそれに関してさらに聞かれることはなかった。

 

結局、地下から戻って来たのは夕方で、一応は生徒会室に戻って書類を片付けていたが食堂が閉まってしまう時間になったので、残りは明日に持ち越した。その後、食堂で夕食を食べて自室に刀奈と帰って来たのがついさっきである。

 

「さすがに今日は疲れたわね」

「最後の書類地獄がいらなかったんだよなぁ」

 

順番にシャワーで汗を流し、部屋着に着替えてコーヒーを淹れて一息つく。

 

俺たちが疲れてるのはどちらかといえば身体的よりも精神的にである。その原因は明らかに書類が、より詳しくいえば最後に手を付けた書類の内容が、俺たちの頭を悩ませ、疲れさせた。

 

「フランスの代表候補生ねぇ」

「あとドイツの代表候補生」

 

フランスとドイツの代表候補生がそれぞれ転校してくる。俺たちが最後に手を付けた書類の内容はそんな感じだった。

 

「2人とも来週から転校してくるんだっけ?」

「えぇ。予定通りならそうなるはずよ。手続きの都合上ドイツの……えっと、ボーデヴィッヒさんだったかしら。彼女が1日遅れるらしいわ」

 

転校してくるのはもちろん、シャルロットとラウラの2人である。生徒会ということで、他の生徒達よりも先にこの情報を知ることができたらしい。俺たちが頭を悩ませているのは、俺が原作を知っているということを差し引いても分かるほど、明らかに問題を持ち込んできそうな存在だということである。

 

「明らかに訳ありなのよね、二人とも」

「まぁ織斑先生が絡んでるから大丈夫だとは思うけど」

「ドイツのボーデヴィッヒさんはドイツ軍にいたみたいだからその頃に、織斑先生と繋がりがあったようね」

「フランスの方も、転校前に織斑先生との面談とかがあるだろう。そこのフィルター突破したなら、まぁしばらくは様子見だな」

 

実際にシャルロットはほっとけば勝手にボロを出すのだし。

問題があるとすればラウラの方だけど、そっちもどうしようもないからなぁ……。

 

でもまぁ2人が学園の生徒となるのであれば、刀奈は全力で守るだろう。刀奈は学園の生徒を守るということに全力をかけている。なら俺も学園の生徒を守るのは当然だ。

 

「とりあえず、今日は考えても埒が明かないわ」

「仁さんの報告待ちだな」

 

仁さんは刀奈からの指令で、現在ヨーロッパに向かった。転校してくる2人、特に()()()()に関する情報収集を行っている。彼女たちが転校してくるころには戻ってきて報告してくれるだろう。

 

「今日はもう寝ましょう」

「あぁ、そうだな」

 

刀奈に言われてお互い寝る準備をする。

そして俺は布団に入ったのだが、刀奈も自然な動作で()()布団に入ってきた。

初めの頃は寝るときはまだ自分のベッドで眠っていた刀奈だったが(朝起きたら結局俺のベッドにいる)、最近は寝る時から普通に俺のベッドで寝るようになっている。

 

「……お前自分のベッド使う気もうないだろ」

「いいじゃない別に。昔はよく一緒に寝たじゃない」

「小学生の頃の話だろ、それ。俺達もう高校生なんだよなぁ」

「気にしない気にしない。それとも何、翔平は私と一緒に寝るのは嫌?」

「全然嫌じゃない。むしろ嬉しい」

 

俺の即答に隣の刀奈は顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。そんな反応が可愛いなぁと思ってつい笑みがこぼれてしまう。

 

「もう…笑わないでよ」

 

俺が笑っていることに気付いた刀奈がほっぺを抓ってくる。地味に痛い。

 

「謝るから抓るな。悪かったって」

「じゃあキス、してくれたら許してあげる」

 

俺たちの関係が恋人同士になってから、刀奈はよく甘えてくるようになった。他に人がいる場ではこれまでと同じだが、二人きりになるとよく甘えてくる。あと、ちょっとキス魔なところがある気がする。いや、まぁ嬉しいけどさ。

 

目を閉じて待っている刀奈の唇にキスをする。すると、刀奈は満足そうな表情を浮かべて許してくれた。

 

 

「ほら、寝るぞ」

「ふふっ、お休み、翔平」

「お休み」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴーレム襲撃から数日が経ち週が明けた今日、2人のうち先陣を切ってシャルロット--シャルル・デュノアが転校してくる。

昨日、ヨーロッパから仁さんが帰還して報告を受けた。さすが更識というか、さすが仁さんというか……、デュノア社長に実の子供はいないということを調べた結果として報告があった。その報告を受けたうえで、刀奈はシャルル・デュノアはデュノア社社長、アルベール・デュノア社長とその愛人の間に生まれた子供ではないかと予測を付けた。これが当たってるんだからすごい。この話を聞かされた時、驚いたことを表情に出してしまった。刀奈はシャルルが愛人の子供ということに驚いたのだと思ってくれたようだったが。

 

「とりあえず、1日様子を見て頂戴。何かあったら報告して。ないとは思うけど一夏君が危なくなったら実力行使で構わないわ」

「了解」

「じゃ、また放課後に」

 

刀奈と話しながら寮から移動し、それぞれのクラスへ向かうために別れるタイミングで刀奈から指示を受ける。それを了承して、刀奈は2年生のクラスのほうへと向かった。この時はいつも、寮の部屋が一緒なのは良いが、やっぱりクラスも一緒だったらなぁと思ってしまう。

 

 

教室に入ると、女子たちが何やら話をしていた。一夏はまだ来てないようだ。

 

「おはよう」

「あ、上代君。おはよう」

 

挨拶もそこそこにまた女子たちは会話に戻った。そのことを不思議に思っていると、本音を含む女子3人が教室の隅でうなだれているのに気付いた。

 

「本音、お前今度は何したんだ?」

「何で私がやったこと前提なのぉ!?」

「やってないのか?」

「やってないよぉ!!……多分」

 

詳しく話を聞いてみると、先日箒が"学年別個人トーナメントで優勝すれば付き合ってもらう"という約束を一夏と交わしたらしい。それを偶然目の前の3人が聞き、本音がそれを噂で流したらしい。が、どういうわけかクラスで流れている噂は"今月に行われるトーナメント戦に勝つと一夏と付き合うことができる"という噂で、要は誰であろうと優勝すれば一夏と付き合うことができるということになっていた。

 

「いや、まずお前が噂流したのがそもそもの原因じゃねぇか」

「それは……あははは」

「お前いい加減その何でもかんでも言いふらす癖やめろよ。ろくなことにならないんだから」

「そ、そうだね」

 

2度のお菓子禁止期間を経験して反省したかと思っていたらこれである。まぁ今回は俺と関係ないし別にどうもしないけど。こういう時、刀奈との関係を公表しといてよかったと思う。変に巻き込まれないから。

 

一夏が教室に入ってきた瞬間に、一斉に噂話をやめる女子達を呆れながら見ていると、織斑先生と山田先生が教室に入ってきてホームルームが始まった。

 

「今日は何と、転校生を紹介します」

 

ホームルーム冒頭、山田先生がそう切り出した。そして山田先生の言葉の後に、男子用の制服姿のシャルロットが教室に入ってきた。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。皆さんよろしくお願いします」

 

シャルロットが自己紹介を終えると、クラスは沈黙に包まれる。その隙に俺は耳栓を装着する。今回は本音も自分で用意したようだ。

 

「……お、男?」

 

沈黙の中、クラスの誰かがそう呟いた。

 

「はい、こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国から……」

 

誰かのつぶやきにシャルロットが律義に説明しだしたが、最後まで言い切ることは出来なかった。

 

「「「「「キャァァァァァ!!!!!」」」」」

 

発動される音響兵器。耳栓装備の俺と本音は無傷、対策なしの一夏は大ダメージ、そして前に立っていたシャルロットにも少なからずダメージを受けたようだ。

 

「男子!!3人目の男子!!!」

「しかもうちのクラス!!」

「美形!!守ってあげたくなる系の」

 

クラス内は騒然となる。が、織斑先生の一言ですぐに沈静化された。

その後、前もって言われていた通り今日はこの後すぐに第二グラウンドで2組と合同でIS実習を行うらしい。そのことが改めて織斑先生の口から説明された。

 

「それから織斑と上代、デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子同士だ」

 

「解散!」という織斑先生の言葉で、各々の生徒が準備を始める。今からこのクラスは女子の更衣室となる。つまり男子である俺と一夏や、一応今は男子のシャルロットがここにいてはいけない。

 

「翔平行くぞ」

「あぁ、俺寄るところあるから先行っててくれ」

 

別に特に寄るところなんてないが、あの2人と行くと確実に女子生徒の集団に囲まれるので、俺は別行動とする。

前の席で自己紹介をしようとしているシャルロットを一夏が遮って教室から連れ出すのを確認して、俺は一夏達とは別ルートでアリーナまで行くことにした。

 

「あ、上代君。噂の転校生がどこにいるか知らない?」

「さぁ。こっちには来てないと思うぞ」

 

遠回りした分時間が少し危ういので小走りで更衣室を目指していると、廊下にいた女子生徒に声をかけられた。俺が答えると、「こっちじゃないか、じゃあやっぱり更衣室に行く道で待ち伏せたほうが良かったみたいね、行きましょ」と言って、何人かの女子生徒を引き連れて走って行った。予想通り、今頃一夏達は囲まれているんだろ。というか、お前ら授業の準備とかしなくていいのかよ。

 

結局、遠回りした俺と一夏達が更衣室に到着するのは同時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「本音、あなたまた噂流したの?」

「えぇ!?もう4組にまで話いってるの??」

「今朝、ホームルームの前に数人が話してるのをみんなが聞いた」

「てことは4組みんな知ってるじゃん…」

「でも、本当に優勝すれば織斑と付き合えるの?」

「いや、それは……」

--説明中--

「どこでそうなったのよ…」

「私にも分からないよぉ…」






刀奈と同じベッドで寝るとか羨ましい。


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