どうせ転生するなら更識姉妹と仲良くしたい   作:ibura

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気まぐれで書き始めたこの作品が、お気に入り1000件を超えたことに驚いています。

本当にありがとうございます。


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一夏のピットに到着すると、そこにはすでに箒とセシリアの姿があった。俺としては、この2人も反対のピットで待機している鈴も後から来るであろう2人も応援してやりたい気持ちはあるんだが、この前話を聞いた影響で少し鈴贔屓になってる感がある。

まぁ俺がどう思ったところで、頑張らなければいけないのは彼女たちだし最終的に決めるのは一夏なので、見守ることしかできない。

……というか、彼女たちの積極的なアプローチによって巻き起こる周りの被害をどうにかして食い止めることが俺には求められているような気がする。この前も、業者から生徒会長の刀奈に『どうして1025室のドアの修理依頼ばかりなのか』と苦情が伝えられた。3人でこれなのだ、これに後2人増えると考えると、生徒会役員として何かしらの対策が必要なのではと考えてしまう。

 

まぁそれは追々考えて、今は目の前の試合に集中しよう。

 

俺と箒、セシリアの激励を受けて一夏はアリーナへと出て行った。箒とセシリアは移動したので、今この場は俺一人だ。

しばらく経つと、俺のいるピットに刀奈が移動してきた。それと同時に一夏と鈴の試合が開始された。

 

試合は序盤から、鈴の専用機-甲龍に搭載されている衝撃砲による攻撃によって一夏が、回避に専念せざるを得ない状況となっていた。

 

「砲身も砲弾も見えない、ね。それにしては一夏君は結構躱せてるわね。前の試合でも思ったんだけど、彼結構動体視力と反射神経が良いわね」

 

刀奈はそう言いながら手に持つ扇子を開いた。そこには『意外』と書かれている。ずっと昔から思っていることだが、この扇子ってどういう仕組みなのだろうか?一度本人に聞いてみたが、秘密と言われてしまった。京子さんから貰ったということだけは教えてくれたけど。

 

「昔剣道やってたらしいからその時に鍛えられたんだろう」

 

初の試合となったセシリアとのクラス代表決定戦でも、その経験があったからこそ善戦することができたのだろう。元々身体は鍛えていたようだし、運動神経は世間一般の基準と比べても一夏は高いほうだ。あとは、もう少し頭の良さがあれば、セシリア戦でも勝てただろうし、今回の試合でも勝てるかもしれない。

 

「一夏君、何か仕掛けるつもりかしら?」

 

試合を見ていた刀奈が、そう呟いた。先ほど、戦闘中だというのに相手の鈴に話しかけるという余裕を見せた一夏が、何かを仕掛けようと機をうかがいながら旋回している。今のこの状況で有効となり、かつあいつが現在使える手段となると……。

 

「多分、瞬時加速だろうな」

「きちんと習得できたのね」

「一応な」

 

今日の試合に向けて、俺は一夏に瞬時加速を教えようとしたが、当然俺の教えでは一夏は理解できなかった。なので、仕方なく他にコーチを頼もうと思っていたら、その役を織斑先生が引き受けてくれた。あの人が、人に教えることができるのかという疑問は少しあったが、まぁ一応教師だし大丈夫だろうと判断して、一夏には瞬時加速の練習法などだけ伝えた。昨日成果を聞いたら、ある程度はモノになったと言っていたので、この試合でもそれを切り札にするのだろう。

そして、そのタイミングが訪れた。旋回する一夏を相手に、鈴が少し体勢を崩した瞬間を一夏が見逃さず、瞬時加速を発動させた。

 

奇襲は完璧に決まったと思ったその瞬間、何か(・・)がアリーナの遮断シールドを貫通し、地面で爆発した。

それは確認するまでもなく、原作に出てきたゴーレムだった。

 

「ほんと、翔平の嫌な予感って当たるわね」

「当たってほしくはなかったけどな」

 

 

ここまでは嫌な予感ではなく、想定通りの展開である。ここから、どうなるかは予測でしかないので対応できるようにしなければならない。

 

「俺は先に出ておくぞ」

「えぇ、状況確認と指示が終わったら私も行くわ。ひとまず、アリーナにいる一夏君と鈴ちゃんの安全を優先して」

「了解」

 

織斑先生のアナウンスを聞きながら、ベンダバールを身に纏いピットからアリーナに出る。そこでは、鈴を抱えた一夏が侵入してきたゴーレムから放たれるビーム兵器から逃げていた。

 

「お前ら、イチャイチャするのは後にしろ」

「翔平!?」

「い、イチャイチャなんてしてないわよ!!」

 

俺の言葉に、鈴が噛みつく。

 

「とりあえず一夏、鈴を離せ。それじゃ鈴が動けない」

「あ、あぁ悪い」

 

一夏が鈴を離したことを確認したところで、2人に指示を出そうとしたとき、悪寒が走った。

すぐさまその場から移動した直後、そこに先ほどと同じビーム兵器が通った。

 

「刀奈の言う通りだな」

 

嫌な予感が当たってしまった。俺を狙ったビーム兵器は、アリーナの外から放たれたもので、初めと同じようにアリーナの遮断シールドを破ってきた。

そして、そこから新たに2機のゴーレムが侵入してきた。

 

「なっ!?」

「嘘でしょ!?」

 

それを見て一夏と鈴が驚愕の声を出す。初めの1機と合わせて、合計3機のゴーレムがアリーナに侵入してきたことになる。

 

「一夏、鈴!!お前ら、アリーナから脱出しろ」

「お前はどうするんだよ!?」

「俺はあいつらの相手する」

「1人でなんて無茶だ!!俺も残って戦う!!」

「そうよ!!」

 

俺の指示に一夏と鈴が反発する。まぁここで2人がこう言ってくることは予想通りだ。

 

「なら、俺が後から来た2機を相手にするから、お前ら二人で最初の1機の相手をしてくれ」

 

3機を相手に出来なくもないが、それは後から来たゴーレムが、原作通りのレベルだとすればである。後から来た2機は、明らかに俺を狙っているのだが…。

俺からの指示を了承した一夏と鈴は、動き出した敵ISに応じて散会、応戦しだした。

 

それを確認しつつ、後から来た2機から放たれるビームを回避する。

 

2機のゴーレムは一夏と鈴は気にせず、俺だけを狙って攻撃を仕掛けてきた。やはり、狙いは俺のようだ。と、言うことは、この2機は篠ノ之束の、俺に対するアクションということになる。そう考えたら、気が重くなった。やられるつもりはないが。

 

 

シールドビット、ライフルビットを展開する。2機のゴーレムから放たれるビーム攻撃を、出来るだけ躱し防ぎきれないもののみシールドビットで対応する。シールドビットがあるからといってそれに頼りすぎるのはシールドエネルギーが勿体無い。予想外に対処するためには省エネが大切だ。

敵の攻撃をしっかりと防ぎながら、シロガネ・クロガネ、ライフルビットで迎撃する。が、ジリ貧だ。果たして、あのゴーレムにシールドエネルギーという概念が存在するのかも分からない以上、チビチビ攻撃していても埒があかない。

幸い、今闘っている感じだとこの2機も無人機のようなので、遠慮はする必要はないのだが。

こういう時、白式の零落白夜は羨ましい。あれだと手っ取り早く終わらせることができる。あぁ、でも手数が無くなると考えたら何とも言えないな。

 

やっぱりバリア無効って反則だよなぁと思っていると、ピットから刀奈が専用機-霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)を纏ってアリーナへと出てきた。

 

「ごめんなさい、遅れたわ」

「大丈夫だ。それよりも、見て分かる通りちょっとばかし面倒な状況だ」

「そのようね」

「こっちは大丈夫だから、先に一夏と鈴が相手しているのを潰してくれ」

「分かったわ。ちなみにあれ、人乗ってるのかしら?」

「やってる感じだと、無人機だろうな」

「謎の無人機が3機侵入してきた、ね……」

「これ終わったら報告書が待ってるな……」

 

生徒会室の机に積まれるであろう大量の書類を想像したら、やるせない気持ちになった。と、同時にやり場のない怒りが沸き起こってきた。いや、まぁ原因は分かってるんだからそこにぶつけたらいいんだろうけど、残念ながらその手段がない。

 

「じゃあ、私一夏君達の援護にまわるわね」

「とっとこっち手伝ってくれよぉ、こっちはジリ貧なんだから」

「緊急事態だし、防御壁があるから観客席からこっちは見えないから、奥の手(・・・)使っていいわよ」

「…マジで?」

 

いや、確かに今この戦闘を見ているのはこの場にいる一夏と鈴と、管制室にいる織斑先生達だけだろうけど……。篠ノ之束がどこからか、見てそうなんだよなぁ。いや、でも奴のことだからすでにベンダバールのあれ(・・)とかあれ(・・)はもう知られてるのかも…。そう考えたら、ここは使ってもいいのかもしれない。刀奈の言う通り緊急事態だし。というか使うの控えるように言われてた刀奈本人から使ってもいいという許可もらったし。派手にやってスカッとしたいし……。

 

「やっちゃうか」

「軽いわね…、まぁいいけど」

 

刀奈は俺とのプライベート・チャネルをとじて、一夏と鈴と通信しながら2人の援護に向かった。

 

 

 

「さて、こっちも終わらせようか」

 

そう呟いて、仕掛けようとした瞬間---

 

「一夏!!!」

 

そんな声が、アリーナに響き渡った。その声の主に視線を向けると、ピットに箒が立っていた。

 

 

 

「あの馬鹿」

 

アリーナでそんなにも大きな声を出して、注目されないほうがおかしい。俺が相手にしているゴーレム2機は相変わらず俺しか見ていないようで、箒の大声にも無反応だが、一夏と鈴が相手にしているゴーレムは違う。ピットの先に立つ箒に向けて腕の発射口からビームを放とうと狙いを定める。

シールドビットをそちらに回そうかとも考えるが、おそらく間に合わない。一夏が何かしようとしているが、それも恐らく間に合わないだろう。が、俺に焦りはなかった。

 

 

「生身の女の子を狙うなんて、それはちょっと酷いんじゃない?」

 

そう言った刀奈が展開した水壁によって、ゴーレムの攻撃は完璧に防がれた。

流石というか何というか、何度見てもあの防御力は凄いと思う。模擬戦するときはあれを何とかしないといけないのだ。そりゃ勝つのは大変だ。

 

刀奈の援護あり、あちらは大丈夫と判断して、俺は目の前の敵に集中する。といっても、もう敵の動きは読み切っているし、被弾することもない。油断はしないが、完全に俺のペースだ。

 

「一夏と鈴が敵に集中している間に、とっとと片づけてしまうか」

 

 

旋回しながらシロガネとクロガネを連結させて、まずは1機のビームの発射口を狙う。さっきから、片方は威力の低い連射で、もう片方が連射はしてこないが威力の高いビームで、それぞれ俺を攻撃してきている。俺は先に、連射してくる方を狙って破壊する。これで、弾幕はかなり薄くなった。

その時点で俺は、それぞれのビットを連結させた。シールドビットにディフェンスモードがあるように、ライフルビットにも連結させたモードがある。

 

「シールドビット、ディフェンスモード。ライフルビット、アサルトモード」

 

4基あるライフルビットを連結させたアサルトモードでのチャージビーム。打つのに数秒間のチャージが必要となるが、その分かなりの威力を出すことができる。まぁベンダバールの中での最高威力ではないんだけど。

 

威力が高い分、有人機相手だと気を遣うのだが今回の相手は無人機だ。そこら辺は気にしなくてもいい。

 

 

「くたばれ」

 

 

再び分離させたシロガネとクロガネでの攻撃で動きを止めたゴーレムを、チャージビームで狙う。もう片方のゴーレムが、チャージ中に狙ってくるがディフェンスモードで防いでいるので問題はない。

 

 

「まず1機」

 

チャージビームによって貫かれたゴーレムはそのまま地面へと落ちていった。

残る1機も、先ほどと同じようにビームの発射口を破壊して攻撃力をなくす。そして、1機目と同じようにチャージビームで仕留めた。

 

「ふぅ」

 

地面に降りて撃墜した2機を見ると、まだ少し動いた。

羅刹と征宗を展開して起動系統らしきところを片っ端からぶった切ったら、ようやく動きを完全に止めた。

 

一夏の方も片付いたらしく、油断しきっていた一夏が狙われそうになるも刀奈がそれをしっかりと防いで無力化していた。

 

これで侵入してきた3体を全て、撃破することができた。

 

 

 

「お疲れ、翔平」

「あぁ、お疲れ」

 

 

近づいてきた刀奈と、お互いの専用機のこぶしを合わせて労った。

 

 

 

今回の襲撃で分かったことは、篠ノ之束が俺のことを良くは思ってないということだ。一夏達が相手にしていたゴーレムと比べて、俺が相手にしていた2機のゴーレムは攻撃の威力が高かった。しかも、狙いもスラスターであったり手に持つ武装であったりと、なかなか嫌な狙い方をしてきた。

一夏がどのくらい白式を使いこなしているかの確認のためのお試しのゴーレムではなく、本気で撃破しようとしてきたゴーレムを見ると、篠ノ之束からしたら俺は邪魔なのかもしれない。

 

 

まぁ、詳しくは本人に聞いてみないと分からないが。

 

 

 

 

 

 




「前から思ってたんだけど」

「どうしたの、かんちゃん?」

「お兄ちゃんって基本的にお姉ちゃんのお願いは断らないよね」

「あぁ…確かに」

「楯無としての指令はともかく、個人的なお願いもほとんど全部断らないって、どうなんだろう」

「まぁでも、しょうちゃん本人がお嬢様からお願いされることに喜んでる感があるから、いいんじゃない?」

「将来、尻に敷かれるんだろうな」

「ていうか、もう敷かれてない?」

「…確かに」

「そして、本人はその状況を受け入れていると」

「……お兄ちゃんがそれでいいなら、私は何も言わない」







ゴーレムが3機に増えるも、チート2人の活躍で事なきを得る。
何だかんだで、翔平の影響を受けて刀奈も原作より能力上がってたり。


翔平は、束さんに目を付けられています。




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