なんとか頑張って投稿していきます。
食堂に到着すると、すでに俺以外のクラスメイト全員が集まっていた。
「あ、上代君!!間に合ったんだ」
「生徒会の仕事が思ったより少なかったからな」
「あ、しょうちゃん来たんだ」
「………お前、手を出すの早いな」
俺に気付いたクラスの女子から声をかけられる。そこに、手にはお菓子を持った本音が近づいてきた。パーティーということで机の上にはお菓子やジュースが置かれているが、すでに本音はそれに手を出していた。
「それじゃあ上代君も来たし時間になったから始めますか」
その一言で、クラスの数人が手にクラッカーを持つ。
「織斑君、クラス代表決定おめでとー」
「「「「「おめでとー!!!」」」」」
掛け声とともに複数のクラッカーが鳴りパーティーが始まった。まだぶつぶつ言ってる一夏に対して、脇に座るセシリアが昼間と同じ理由を言って諦めさせている。
「いやぁセシリアは分かってるねー」
「せっかく男子がいるんだから持ち上げないとねー」
「上代君は生徒会があるから駄目みたいだし」
女子たちから矢継ぎ早に言われて、諦めた一夏。そして、女子にいろいろと言われるのを見て不機嫌になる箒。こういうところは相変わらずだ。まぁ別にそれに対して口は出そうとは思わないけど。
「はいはーい、新聞部でーす」
しばらくクラスメイトで話をしていると、シャッター音とともにそんな声が聞こえてきた。
……出たな
「しょうちゃん、今出たなって思ったでしょ」
「……顔出てた?」
「おもいっきり出てたよ」
これからは気を付けよう。
「噂の男性操縦者2人にインタビューしたいんだけど、いいかな?」
「俺は大丈夫ですよ」
「あ、敬語はいらないよ。同い年だって聞いてるから」
「じゃあ遠慮なく」
薫子に聞かれ、俺は了承する。俺の返答を聞いた一夏も渋々といった感じで了承した。
「じゃあまず織斑君から、いいかな?」
「はい」
まず一夏のインタビューが開始された。一般的な質問や、かなりプライベートな質問までされている一夏を見ていると、いつの間にか食堂に入っていた刀奈が近づいてきた。そういや来るって言ってたっけ。
「流石、仕事熱心な新聞部ね。インタビューに容赦がないわ」
「見てる分にはいいけど、次俺がインタビューされるって考えると……」
あんなに容赦なく聞かれるのか……。刀奈とのことは話すつもりだけど、あぁもぐいぐい聞かれるのも嫌だな。
「じゃあ次、上代君」
一夏へのインタビューが終わり、俺の番となった。腹は括った、どんな質問でも答えてやる。あ、更識家関連は無理だけど。
「いろいろと噂は聞いてるよ、上代君」
「奇遇だな、俺もいろいろと聞いてるよ」
2人してハハハと笑うが、目は笑ってない。周りの人たちは少し引いている。
俺は聞いたんだぞ、刀奈との噂を2、3年で広めた出所がお前だって。
「それじゃあインタビューを始めるけど、とりあえず例のカミングアウトについて聞いておこうかな」
「いきなりだな」
「だって、この学園の生徒全員が気にしてると思うよ。それで、自己紹介で言ったその好きな人とは、ぶっちゃけ今どういう関係なの?」
薫子がその質問をした瞬間、1組のクラスメイトも、たまたま食堂にいた生徒も、片付けが終わって帰ろうとしていた食堂の調理スタッフの人達も、たまたまそこにいた男運の悪いと噂の榊原先生も、その場にいた全員が俺の言葉に注目した。
……こいついきなり突っ込んできたな。
食堂にいる全ての人からの視線を浴びつつ、俺は口を開いた。
「この前から付き合い始めたな」
一瞬の沈黙の後、食堂がどっと湧いた。
「もう付き合ってるんだ」
「カミングアウトの後から付き合い始めたのかな」
「チャンスは完全に無くなったんだね…」
「いやいや、ここからが楽しいんじゃん」
「NTRだね、協力するよ」
「あんたら、そのうち捕まるよ」
食堂の至る所からひそひそと会話が聞こえてくる。榊原先生は調理スタッフの独身女性と一緒に涙を流していた。……というか、今時の女子高生って昼ドラみたいなドロドロしたやつばっか見てるわけ?やたらとNTRって聞こえてくるんだけど。
「ちなみに、その相手ってこの学園の人なの?」
「そうだけど、誰か分かって聞いてるだろ?」
「本人の口から聞かないと、確証はないからね」
「なら、簡単に噂を流すなよな」
「……ごめん、私もあんなに早く広がるとは思わなかった」
女子高生の怖さを感じていたら、薫子がさらに突っ込んで質問してきた。といっても、俺の彼女が刀奈だってある程度分かってて聞いてきてるのだろう。その上で、俺の口から言わせたいらしい。噂に関しては、まぁ俺がそもそもの発端だから許そう。
「俺の彼女はお前の想像通り、この学園の生徒会長の更識楯無だよ」
「その通り、私が翔平の彼女よ」
俺がそう言った瞬間、刀奈が後ろから抱きついてきた。首に回された手に持っている扇子には"恋人"と書かれている。
刀奈のいきなりの登場に呆気にとられる1組メンバー。ちなみに、つい直前まで気配を消してさりげなく1組のクラスメイトに紛れ込んでいた。多分それに気づいたのは俺と本音ぐらいだろう。
薫子はやっぱりかーという顔をしている。そして、最も反応したのはたまたま食堂に来ていた2、3年や榊原先生など、刀奈のことを既に知っている人物だった。
「「「「「えぇぇぇぇぇ!?!?」」」」」
そりゃ驚くだろうな。ただでさえ有名な俺の彼女が、生徒会長で学園内でも当然有名な刀奈だったんだから。でもそこまで動揺していない2、3年生もいる。多分これまでで俺と刀奈が一緒に歩いたりしているところを見たことがあるのだろう。というか、さっきより明らかに食堂に人が増えている気がする。何故だ?
「それは、お兄ちゃんが食堂で恋バナするっていう情報が寮で回ってきたから」
「簪…いきなり現れて、さらっと人の心を読まないでくれ」
刀奈に抱きつかれて、背中に感じる胸の感触に気を取られていて簪の接近に気がつかなかった。そしていきなり心を読まれてしまった。最近はもう諦めている、この姉妹に心を読まれるのは。
その後、馴れ初めなど刀奈とのエピソードを色々と聞かれ、答えられる範囲で答えた。
「せっかくたっちゃんがいるんだし、彼女さんにも質問していいかな?」
「別にいいけど、そんなに色々聞いて記事にまとめきれるの?」
「大丈夫、特別号で出すから」
何と、俺と刀奈の話だけで新聞1つ作るらしい、マジかよ。そこまで注目されてるのかなぁと思ったが、周りの生徒が目を光らせているのを見ると、注目されてるんだなと思う。
「幼馴染みたいな存在だったってさっきの話で聞いたんだけど、たっちゃんから見て上代君ってどんな人なの?」
「そうね…」
特別号のため、今度は刀奈に質問した薫子。この質問に対する刀奈の言葉は、俺も興味が出る。俺も含めたその場の全員が刀奈に注目する。
「気遣いもできて頼りになる存在ね。私が落ち込んでたりしたら優しい言葉で励ましてくれたし。イケメンよ」
多分楯無就任の時のことを言っているのだろう。嬉しいけど、とても嬉しいけど、すごく恥ずかしい。女子達はキャーキャー言ってる。復活した独身女性陣も混じってキャーキャー言ってる……。
「あと私関連で彼を怒らせたら、大変なことになるわ」
「どういうこと?」
「この前翔平と2人で外出していて、彼が席を外した時にガラの悪い男連中に私がナンパされたのよ。鬱陶しいし、その頃はまだ付き合ってなかったけど私も翔平のことが好きだったから断ってたけど手を掴んできてね。そしたら翔平が戻ってきてその光景を見ちゃったの」
「それで、どうなったの?」
薫子が息を飲んで尋ねる。周りの人たちも興味津々に聞いている。
「翔平、私の手を掴んでたその男を見てブチギレちゃって。結局その男達全員病院送りにしちゃったのよ。特に手を掴んでた男は酷かったわね。ほとんど半殺しだったわ」
あの時は冷静じゃなかったと今でも思う。葵さんからは「お前は楯無が絡むと途端に冷静さを失う」と言われ、仁さんからは「お前普段は大人っぽいのに、楯無関連になるとたまに子供っぽくなるよな」と言われてしまった。全くその通りなので何も言い返せなかった。
「基本的にはかっこいいけど、可愛いところもあるわね。普段はしっかりしているように見えて、たまに抜けてるところがあるからそのギャップが可愛いわ」
「ほほぉ…、例えば?」
「例えばそうねぇ……小学校の時翔平が毎日学校に行くときに挨拶していたおじさんが実はただの案山子だったのは笑ったわね」
これは全く嬉しくない。ただただ恥ずかしいだけだ。
「他には?」
「そうね…」
「もうやめてくれ!!!」
さらに追い打ちをかけられそうになるので必死に抵抗する。これ以上、心を抉らないでほしい。恥ずかしくて死にそうになる。
「じゃあ最後に2ショット写真撮らしてもらってもいいかな?」
ようやく、インタビューは終わりらしい。最後の刀奈への質問でどっと疲れた。
当然のように2人で焼き増しを頼んで写真を撮り、俺と刀奈へのインタビューは終了となった。
その後、専用機持ち3人でも写真を撮ることになったが、何故かクラス全員とさらに刀奈と簪まで入ってきていたが、薫子がOKを出したので大丈夫だろう。
翌日、一夏と専用機持ちとしての俺へのインタビューに関する記事が載った通常盤の学内新聞と、俺と刀奈へのインタビューに関する記事が載った特別版の学内新聞がそれぞれ掲示された。
後記の新聞の方が人だかりが倍以上あったらしい。さらには新聞部への問い合わせが殺到し、結局各クラスに一部ずつ配布することになったと、疲れ果てた薫子が生徒会室にやってきて語った。
ちなみに職員室と食堂スタッフからも一部ずつ発行してほしいと言われたそうだ。
「転校生?」
新聞部からインタビューを受けてから数日が経ち、クラス対抗戦が近づいてきたある日の朝、教室へやってくるとそんな話をクラスメイト達が話していた。
「あ、上代君おはよう」
「おはよう」
1組では、何か話題があると一夏の席の周りに集まるのが恒例となっている。今も一夏を中心に人だかりができている。
あぁ、そういやそろそろ鈴が転校してくる時期か。
「専用機持ちは1組と4組だけらしいから、楽勝だよ」
「その情報、古いよ!!」
1組の誰かが言った言葉に誰かが反応し、教室内にいた俺たちは全員、入り口に立つツインテールの小柄な人物に注目した。
原作は、着実に進んでいる。
「出番が…出番が…」
「本当に、久しぶりに出番回ってきたね」
「良かった……」
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