どうせ転生するなら更識姉妹と仲良くしたい   作:ibura

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俺がピットからアリーナへと出ると、ちょうどセシリアも出てくるところだった。

 

「さぁ、始めようか」

「試合を始める前に、少しよろしいでしょうか?」

「ん?」

 

あ、一夏と試合したから丸くなったのか。

 

「先日の発言は私の間違いでした。……これまでの私の考えが、間違っていました。本当に、申し訳ありませんでした」

 

そう言ってセシリアは頭を下げて来た。

人ってこんな短時間で態度を変えることができるんだな。もうほとんど別人じゃね?

 

「……確かに、これまでの発言でそれを不快に感じた人は多いだろうな。俺もその中の1人だ」

 

俺の発言にビクッと反応するセシリア。

 

「でも、お前は今ちゃんと謝った。なら俺は許すさ」

「あ、……ありがとうございます!!し、翔平さん」

 

パッと顔を上げて喜ぶセシリア。そして俺の呼び方が名前呼びに変わった。その反応に可愛いなと思っていると、悪寒を感じた。見えないけど、ピットにいる刀奈がこっちを睨んでるのは何となくわかる。

いや、違うんだよ。女子に対して言った可愛いじゃなくて、どっちかっていうと小学生ぐらいの妹に対して言うような可愛いだったんだよ。決してやましい気持ちはありませんでしたから。だから睨むのやめて、俺試合に集中できないから。俺にとって世界で一番可愛いのは刀奈だし、世界で一番好きなのも刀奈だから。

すると、感じていた悪寒は消えた。どうやら許してもらえたようだ。

 

 

許してもらえて一息ついたところで、俺はセシリアを絶望させなければならない。

 

 

「でも、織斑先生が日本人ってことを忘れるなよ。あの人結構怒ってたぞ」

 

喜んでいたセシリアの顔は一瞬で真っ青になった。自分が一番やらかしたことを理解したのだろう。

 

「あ、後で必ず謝りに行きますわ」

「それをおすすめする。ところでセシリア、一夏はどうだった?」

「……へっ!?」

 

一夏の話になった途端、さっきまで真っ青だった顔は瞬く間に真っ赤に染まった。慌てながらいろいろ言ってる。

 

 

 

ちょろイン、ここに在り。

 

 

 

 

『お前ら、そろそろ試合を始めろ』

 

セシリアの反応に呆れていたら、織斑先生から急かされたの試合を始めることにする。

まだ少し顔が赤いセシリアも織斑先生からの通信で、真剣な表情に変わった。

 

目の前にカウントダウンが表示される。

 

 

 

俺は右手にシロガネ、左手にクロガネという2種類のエネルギーライフルを展開する。

 

 

「先に言っておくけど、俺もビット兵器を使うから」

「あら、そうなのですか。ならこの試合はビット兵器同士の戦いということになるのでしょうか」

 

 

……そうなれば、いいな。

ビット制御しながら動き回る俺を何とかできるのなら……そうなるんだろうな。

 

カウントが3を示す。

 

「もう一つ言っておくけど」

 

 

「何ですの?」

 

 

「俺を見失うなよ?」

 

0、試合開始

 

その瞬間、俺はその場から消えた。

 

 

「なっ!?」

 

 

消えたと言っても、開始の合図とともに瞬時加速(イグニッション・ブースト)を行っただけだ。

ただ、それは相手のセシリアに向けてのものではなく、明後日の方向へのものだった。

 

まぁ目的としては、とりあえずセシリアの視界から消えることだったので方向はどこでもよかったのだ。

 

 

セシリアの周りをそこそこのスピード(・・・・・・・・・)で旋回しながら、シロガネとクロガネで狙う。

 

「このっ!!」

 

セシリアはシロガネ・クロガネから放たれるレーザーを避けながら、自身の持つレーザーライフルでこちらを狙ってくる。しかし、俺は簡単に避ける。というよりも、俺の動きに付いてこれなくて狙いが絞れていない。

 

「なら!!」

 

ライフルではどうしようもないと判断したセシリアが予想通り、ビットを展開してきた。

そのタイミングで俺はシロガネとクロガネを量子化し、右手に羅刹(らせつ)、左手に征宗(まさむね)という2つの刀型の武装を展開する。一応状況に応じて使い分けているが、基本的には俺は羅刹と征宗を主力武装としている。

そして、右肩にあるシールドを"分離"させて"展開"する。これが、ベンダバールが搭載しているビットのうちの一つである、シールドビットである。

 

「なっ!?ビットの制御中でも動くことができるんですの!?」

「まぁな」

 

物凄くセシリアが驚いているが、気にしない。

 

セシリアのビットからのレーザーによる攻撃をシールドビットで防ぎながら、セシリアに近づいて羅刹と政宗で切り付け、セシリアから離れる。離れたら自力で攻撃を避けながら、今度はシールドビットの小型のレーザー砲で攻撃する。

 

これをひたすら続ける。

 

「クッ!?」

 

確実にセシリアのシールドエネルギーを削っていく。相手に考える隙は与えない。

 

俺のISでのスタイルでは、基本的に動きを止めることがない。

任務で敵地強襲とかやってたし、俺のISの情報を相手に与えたくないという理由から、高機動の中でのヒットアンドアウェイが基本的な戦闘スタイルになっている。相手が動揺しているうちに、とっと方を付けるのが大抵である。

 

ビットの扱いも自信を持っているが、俺が一番IS関連で自信を持っているのが機動技術である。鬼教官監修の元、どんな体勢でも攻撃を放てて、避けることができるようになっている。というか、一対複数が得意なので、この試合は俺に分がありすぎるのだ。

 

 

試合前の会話で、上がっていたテンションが落ち着いていた俺は、一度動きを止めた。

多分会話がなかったら、刀奈からの"頑張って"でやる気出し過ぎて試合を終わらせてしまってただろうな。

 

 

「男も捨てたもんじゃないだろ」

「えぇ……悔しいですがビットの扱いは完全に私の負けのようですわ」

 

セシリアは素直に認めた。もっと動揺するかと思っていたが、意外と落ち着いている。

まぁでもシールドエネルギーは半分を切っているだろう。

ベンダバールの欠点は、高威力の攻撃手段が少ないので、地道に削っていくしかないというところだ。一応、高威力の攻撃をしようと思えばできるが、数秒間動きを止めなくてはいけないし、自分のシールドエネルギーも使うので、俺はあまり使わない。まぁそのかわりかなりの威力は出るが。

 

ひとまず、今は目の前の試合だ。

 

「次で決める」

「耐えて見せますわ」

 

どうやらセシリアは、この試合で自分が勝つことは不可能だと分かったようだ。そのうえで、少しでも長く耐えてやろうと言っている。俺としても付き合ってやりたいが、この後の試合もあるしとっとと終わらせようと思う。

 

俺は展開していたシールドビットを右肩に戻す。そして、両足の先にあるクローを展開してエネルギーの刃--エスパーダを展開する。両手に持っている羅刹と征宗と合わせて四刀流となる。

 

「いくぞ」

 

俺は試合開始の時と同様に、瞬時加速で仕掛ける。ただし、今度はセシリアに突っ込んだ。

いきなり突っ込んできた俺に対して、セシリアは残していたビットからミサイルで迎撃する。俺はそれを空中で宙返りしながら、両足のエスパーダでそれぞれ破壊する。

 

「そんな!?」

 

至近距離でのミサイルはさすがに直撃すると思っていたのか、驚いているセシリアを四本の刃で切り裂く。

ビットからの攻撃も体を捻ったり宙返りしたりして躱しながら、攻撃を続ける。

 

ビットを使っていないので集中できるっていうのもあるが、それにしても我ながらでたらめな機動だと思う。

この動きの正体は、両手両足にある小型のスラスターをそれぞれ動かしながらの機動を行っているからで、それに加えて刀奈と特訓したカポエイラの動きも取り入れているので、相手からしたら予測不能な動きになっているだろう。この前一度刀奈から、「こんなことなら、私一人でカポエイラ習えばよかった」と言われてしまった。ちなみに、ピットでスキップした時は足のスラスターを使って微調整した。多分使ってなかったら盛大に倒れていたと思う。

 

「インターセプタ―!!」

 

さっきから何かをしようとしていたセシリアが、急に叫んだ。

あぁそういえばこいつ、ほとんど近接武器を使わないから、呼び出すのに時間がかかるんだっけ?

だけど、その隙は命取りだ。

 

結局俺はその後、接近戦用のショートブレードを取り出したセシリアと一応形だけ刀を合わせたが、そもそも一刀対四刀では勝負にならず、懐に入られ動かないわけにもいかないのでビットも使えず、セシリアは成す術なくシールドエネルギーは0になった。

 

 

「お疲れさん」

「完敗ですわ」

 

試合が終わり、俺はセシリアと握手してピットに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピットに戻った俺は、次の対戦相手である一夏の準備が整うまで待機していた。セシリアとの試合は被弾が0で、スラスターやエスパーダの使用に使った程度しかシールドエネルギーの消費がなかったので、インターバル無しの連戦でも良かったのだが、予想以上に俺が速く試合を終わらせてしまったので一夏の準備がまだできていなかった。なので、待機である。

 

 

今は、ピットにあるベンチに座ってドリンクを飲んでいる。隣には刀奈も座っている。

 

「一応、ちゃんとした試合にはなったわね」

「公開されてる試合なんだから当然だろ。やりすぎたらいろんなところから睨まれる(・・・・)

 

 

俺がISを動かせることが判明したのは一夏よりも後ということになっている。更識繋がりで企業所属となってからは、出雲に籠っりきりで訓練したということで日本を含めた各政府には納得してもらうようにしていが、あまりやりすぎると怪しまれるのだ。

まだ何の干渉もしてきていないが、あの兎(・・・)に目を付けられるのも面倒だし。

 

織斑先生と山田先生は先ほどピットに訪れたがまたすぐに、管制室に戻って行った。

その際に、織斑先生が目を輝かせながら「噂には聞いていたが、専用機だとあそこまでの機動力を発揮するとはな。今度は専用機同士で模擬戦をしてみたいものだ」と言ってきた。機会があるのなら、俺もやってみたい。

 

入試の時の織斑先生との模擬戦では、公平を保つためということでお互い訓練機だった。良い勝負は出来たと思うが、地力に差が出たので負けてしまった。あれは悔しかった。

山田先生からは「織斑先生と一時間も互角に戦えたのですから、もっと自信を持ってください!!私なんて……」とフォローされて、なぜか落ち込み始めた山田先生を慰めることになってしまった。

 

 

 

「それにしても翔平、またスラスターの使い方上手くなってない?」

「カポエイラの動きをやるには、スラスターの使い方で何とかするしかないからな」

「……まずISであの動きをやろうとすること自体がおかしいのよ。私は出来なかったわ」

 

 

刀奈に呆れられていると、一夏が準備できたという知らせが届いた。

 

 

「じゃあさっさと勝ってくるか」

「うん、頑張ってね」

 

 

 

……よし、頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「暇ね」

「暇だねぇ」





翔平と刀奈であれば、通信機など必要がない模様。
相手が見えていないのにも関わらず意思疎通が可能なようです。


ベンダバールの武装
・エネルギーライフル(シロガネ・クロガネ)
・刀(羅刹・征宗)
・両足のエネルギー刀(エスパーダ)
・シールドビット  

ライフルはストフリのライフルよりもちょい小さめのイメージ。
エスパーダはイージスガンダムのビームサーベルのイメージ。
シールドビットはケルディムのビットのイメージ。


後もう一種類のビットがあります。
翔平君は近距離、遠距離両方いける感じです。あと機動お化けです。



セシリアは試合前の会話によって、本人の知らないところで何とか命拾いしました。

そして刀奈の"頑張って"で本気になった翔平が、一夏にも届けられます。





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