無限ルーパー   作:泥人形

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テンション上がって書こうとするが内容を覚えてないので読み返す→テンションが下がる→やる気を失う→またテンションが上がって(ry
の繰り返しだったからちょっと色々ぐだぐだ(真顔


偉大なるローマ@無限ループ

 主人公とは得てして困難にぶち当たり、またそれを乗り越える存在だ。

 常に奇跡を起こし、努力を重ねて自らの壁を打ち崩す。

 その様を見せることで周りにあらゆる感情を与える、人々の理想ともいえる。

 ここ、カルデアで言えば立香くん(ちゃん?)がそれにあたると言えるだろう。

 カルデアに集ったマスターの中で唯一偶然助かり、成り行きでデミサーヴァントと化した後輩と契約するとか羨ましいくらいに主人公ではないか。

 ましてやその後、流れるように二つの聖杯を回収するなんて尚更だ。

 しかし──いや、だからこそと言うべきか、立香くんは大きな壁の前で右往左往していた。

 それは凡人だから故の苦悩、天才とは言えない彼だからこそ思い詰めてしまった、悩むことのできたからこそ当たった大きな壁だった。

 一言でまとめるとしたらそれは”恐怖”

 己が傷つくことへの恐怖、仲間が倒れることへの恐怖、敵対する者への恐怖、これから何が降りかかるのかわからないことへの恐怖。

 ありとあらゆることへの恐怖が彼の行く先を阻み、また彼の心を縛っていた。

 きっとそれは第一特異点により生まれた物だろう。

 冬木の時と違い、冷静に物事を判断できる状態で臨み、そして目にした光景が焼きついたのだ。

 多くの死体を見ただろう、多くの死にゆく様を見ただろう、多くの敵を見ただろう。

 その一つ一つが彼を蝕んだのだ。

 

 

 まあ、つまるところ彼は──部屋に引きこもった。

 いやまあ、正確にはしばらく一人にしてくれと言われただけなのだが。

 異様なまでにマシュが心配しているしドクターも必死こいてケアを毎日行っている。

 まあ当然のように門前払いなのだが。

 結果的に今、カルデアは次の特異点探しと立香くんのメンタルケアの二つの難題を抱えていた。

 ぶっちゃけ立香くんに関しちゃ放置しかないと思うんだけど、どうなんだろうか。

 なーんて考えていたらその立香くんからお呼びがかかった。なぜゆえ……

 

 

 内容としては俺の考えていたことで概ね正解だった。

 立香くんは明らかに怯えていたし、恐れていた。

 それも当然だ。聞いた話、立香くんは適性があるってだけでスカウトからの半強制連行だったそうではないか。

 いや俺も同じ流れなんだけれども。そこは先に来てたことによる経験が活きてるっていうかね?

 彼の場合こっちに来た瞬間アレだったし。

 話を戻そう。彼は恐怖だけに苛まれていた訳ではなかった。

 プレッシャーだ。周囲からの期待に押しつぶされそうになっていた。

 人類を救わなければならない、そんな身の丈知らずな願いに縛られていた。

 正直なところ、俺にできることも言えることも何もなかった。

 それは彼自身の問題だし、本当に申し訳ないのだが俺も俺で自分のことで手いっぱいなのだ。

 だけれども涙を流して訴えかけてくる彼に俺は何もいう訳にもいかず共感を示しつつ一緒に頑張ろうな! みたいなそんな感じのことを言い含めて彼の部屋から立ち去った。

 全く、泣くまでため込んだりするなよな。

 いや、それも仕方ないと言えば仕方ないのだから、少しでも支えになりたいとは思わせられたのだった。

 

 

 歴史や魔術の勉強したりして一週間を過ごした後、彼はややきりっとした面持ちで部屋を出た。

 サーヴァントたちやドクターたちの努力のお蔭だろうか。

 まあ覚悟が決まったのなら文句はない。

 取りあえず戦力を増やそうか、というドクターの一言により俺たちは召喚サークルへと足を向けた。

 

 

 石を投げるのは立香くん──ではなく俺だった。

 またはぐれたときにサーヴァントいないとかやばくね? いややばいでしょ、という話し合いの結果によるものだ。

 超有難いが俺の手持ちはほんの12個。いざとなったら立香くんのを頂く方針だができればそうはしたくないものだ。

 コロコロと四つ投げるとサークルが青く輝く。

 爆発するようなフラッシュの後に現れたのは──

 

 「……物好きな人ですね。生贄がお望みでしたらどうぞ自由に扱ってください」

 

 高身長、腰まで伸ばした綺麗な紫髪。両目を隠したとても妖艶な女性だった。

 つーか冬木で見たやつとくりそつなんですけどぉぉぉ!?

 ただこっちの方がイカレてる感は感じられない。

 多分武器なのであろう鎖のついた大きめの釘(?)が鈍い光を放っていた。

 ま、まあ何はともあれ俺はついに自分のサーヴァントを手に入れたのであった、やったね!

 ふふふん、と上機嫌のまま残りの石を投げ放つ。

 二体目が来てくれても良いんだぜ!!

 ゴロゴロオンッ。

 玩具の魔法のステッキと色とりどりの石が落ちていた。何歳用の玩具じゃボケが!

 ペコペコ光るそれを俺は無機質な目でカード状にして懐へと差し込み立香くんと場所を交代した。

 

 

 立香くんは超幸運の持ち主だった──という訳でもなく、しかし俺より良いのは当然至極でサーヴァントがまた一人増えていた。

 金属の巨大な十字架を持った痴女(聖女)である。

 思わずポロッと口に出した瞬間笑顔で顔面を掴まれ訂正するよう”お願い”されたがそれはそれ。

 彼女はマルタと名乗った。

 因みに立香くんたちは彼女のことを知っているらしい。俺がいない間に戦ったとかなんとか。

 まあ過ぎたことは大して興味もないのだが。

 取りあえず戦力が強化されるのはとても良いことだ。

 

 

 紫の女性はクラスをライダー。名をメドゥーサと言った。

 んんんっ! マジで冬木の紫じゃねぇか!

 だがまあ冬木で会ったモ時に比べれば若干……いや結構ネガティブだ。

 自虐多すぎぃ!

 そんな自分のこと怪物とか言うなし……いや確かに冬木の方は超モンスターしてたけどライダーさんそうでもないじゃん……

 

 まあそんなこんなで新しい仲間を加えたカルデアは更に活気を見せて活動を始めた。

 目下のところサーヴァントたちの強化である。所謂霊基ってやつの強化(再生?)だ。

 何故そんなことをと言えばカルデアの召還方法ってのは完全完璧なものとは程遠いものらしいかららしい。

 簡単に言うならいっぱい召喚できるけどどんなに強いやつでもレベル1スタートだよ! って感じ。

 それを元の力に戻すのに種火とか言われる特殊な素材が必要なのだ。

 因みにこの種火、一定の敵からしか採取できない。そこら辺に落ちてるわけではないのだ。

 人の腕を模したような敵からしか取れないのだ。これが結構気持ち悪かったりする。

 レイシフト装置で腕の良く集まるところへ出張しては種火を持ち帰る日々だ。

 朝も夜も死んだ目で周回する様は割と気持ち悪かったに違いなかっただろうとだけ言っておこう。

 ライダーさんとの 絆が 深まった ! (と思いたい)。

 絆と言えば気のせいかもしれないが立香くんの距離が近い気がする。

 

 

 一世紀ローマ。

 今でこそ暴君と知られる皇帝ネロが国を治めていた時代であり、その中でも何か特筆するような戦いがあったような時代ではないらしいのだが、しかし今回のレイシフト先はそこらしい。

 何があったとかちょっと想像つきませんね……

 無機質的な女性の声を聞き流しながら俺は光に包まれた──ライダーさんの手を握りながら(チキン)。

 仕方ないだろ! またはぐれたら眼も当てられないだろぉぉぉ!?

 

 

 光に包まれ落ちた先は──もろ戦争地帯だった。

 あっせ、あっせい、ほうようぅぅぅ! とか叫んでる変態筋肉野郎が走り回る地獄だった。

 な、なんだここは……

 隣にいるライダーさんですら若干引いてるレベル。

 ていうか今回もはぐれたな。これでライダーさんもいなかったらマジで終わってた。

 正しく不幸中の幸いと言うやつだった。

 俺とライダーさんは顔を合わせ同時に頷いた。

 この場ですべきこと、それ即ち──闘争。ではなく逃走。

 キャッホイニッゲロォと言わんばかりに駆け出し途中で抱えられて風を切った。

 むしろ風になったまである。

 ぶっちゃけ宝具ぶっぱも考えたが奇声を上げて駆けまわっている変態、あれ多分サーヴァントだしスルーが一番賢いと見たのだ。

 現状じゃ人々を蹴散らしまくるゴリマッチョ。その強さはどこまでなのか測れない。すぐさま離れなくてはと危険を察知しまくっていた。

 兵士たちがゴミのように宙を舞ってく中走り抜け、声が大分遠くなったところで安心感を得る

 周りに兵士たちはいたがライダーさんがいる以上大した脅威ではない。

 それでもなるべく刺激しないよう通り抜けていく──つもりだったのだがやはり現実はそう甘くない。

 赤髪のえっちなお姉さんに声を掛けられてしまった。

 サーヴァントの痴女率高すぎないか?

 

 赤髪の女性はブーディカと名乗った。

 瞬間俺は令呪を切った。ライダーさんが困惑しながらも宝具を発動する。

 鮮血から生まれる白き天馬。それにライダーさんが乗り空を駆ける。

 太陽の如き白光を放つそれは一筋の光となって全て焼き尽くした。

 

 ブーディカ。勝利の女王ブーディカ。

 アーサー王伝説より前のブリテンにて女王の座についた悲劇の女王。

 かつてローマ帝国──それこそ今いる時代の皇帝”ネロ・クラウディウス”に恥辱の限りを尽くされた後に殺された女性だ。

 当然ながら史実しか知らないが個人的には結構好きな人物だった。

 だがまあ私情は持ち込むのはタブーだ。故に俺は彼女を敵と判断した。

 何故なら先程まで通信していた立香くんたちが──噂のネロ皇帝を助け、味方につけたと聞いたから。

 史実でいけばきっと彼女は敵対するであろう。いや、むしろ絶対と言ってもいいかもしれない。

 決めつけもいいとこだが障害は早めに消しておきたかった。

 だけど、だけど少しだけ──罪悪感が胸に残った。

 まあ取りあえずはライダーさんを労おう。驚きながらも令呪すら切った意味を察して宝具の発動をかましてくれた彼女には感謝しかない。

 天馬が消えたところでこちらを振り向いたライダーさんの元へ駆けよる。

 ライダーさんが悲鳴を上げて逃げてと叫んだ。

 ばっと後ろを向いたそこには──マッスルがいた。

 あっせい!

 

 赤髪の女性はブーディカと名乗った。

 めっちゃ抱きしめられた……汝に抱擁を! とか……言われて男(ましてやマッスル!)に抱きしめられる趣味はねぇ……

 多分あいつバーサーカーだし音と衝撃に引き寄せられたな。

 つまり宝具は使えない、しかし白兵戦だと周りの兵士が邪魔すぎる。

 ここは逃げるしか……? しかし逃げれば確実に背中を狙われる……

 もしかして地味にやばい?

 と思ったところで降ってきたものは意外にも武器ではなく言葉であった。

 更に言えば思いっきり予想外な言葉だった。

 ”あなたたちもはぐれサーヴァント? それなら私たちと一緒に戦わない?”

 すまないが事情説明プリーズ……

 

 

 

 時代は二つのローマで割れていた。

 即ち、ネロの収めるローマ帝国と歴代ローマ皇帝のサーヴァントたち率いるローマ連合。

 まあ間違いなくこれが今回の特異点たる由来だろう。

 立香くんたちとの情報のすり合わせもした結果この話は本当だというのも確信した。

 それにしても味方だったとか……申し訳ないの極み……

 あっせい! あい! ほうよおぉぉぉ! とか叫ぶ変態はやはりバーサーカーだった。

 その名をスパルタクス。

 ……教科書に載ってるレベルで実は有名な人物だ。

 しかしまぁ、なるべく近寄りたくはないよね。

 しかも何となく言ってることが分かる辺り最高に近寄りがたい。

 今回は序盤から一回しか死んでもいないし味方もすぐについたしかーなり出だしは好調だ。

 招かれたキャンプ内でブーディカに戦況や事情についてより詳しく話し合いをする。

 状況は割と深刻だった。

 兵士の半分ほどは敵さんに取られ、また敵サーヴァントの方が数が多いとかなんとか。

 ここガリアもまた苦戦地帯だった。というか現状一番の激戦区らしい。

 正直暴走するスパルタクスの手綱を取りつつ上手く兵士たちに命令を出すのが難しいってことだ。

 ブーディカも攻撃タイプではないし相手の猛攻を耐えしのぐのが精一杯だった。 

 まあでも、お陰で当面の目標は決まった。

 ガリアの戦線を押し上げる。

 激戦区であるらしいここにはどちらにせよ立香くんたちは来ることになるだろうし、ここでの協力体制を強化しておいて悪いこともないと見た。

 余談だが彼女たちはあくまでネロの味方になったつもりはないらしい。

 敵の敵は味方的な? そんな感じ。

 

 

 激しい金属音が、戦士たちの怒号と悲鳴が重なり微かに耳へと届く。

 そう、微かにだ。

 何故かと言えば俺は今回戦いに──参加していないからだ。

 いやもちろん俺は参加する気満々……だったという訳でもないが行く気ではあった。

 しかしそこでライダーさんに怒られたのだ。

 曰く──”てめぇすぐ死にに行くんだから後ろにすっこんでろ”と。

 そ、それでも指示出しとか……と粘ってみたが、乱戦になる中雑魚を守りながら戦う方が難しいとのことだ。

 いやまあ当然なんだよな。

 むしろ今まで最前線で戦ってた俺の感覚がおかしかったのだと思い知らされた瞬間であった。

 マジで開いた口がふさがらなかったぜ……。

 てことで俺は野営のキャンプで十数人の兵士たちとぼけっと周りの警戒をしていた。

 まあ特に何もないだろうしちょろいもんだよねー。

 ほわぁと大きくあくびをしようとしたら息の代わりに血が吐き出された。

 はい?

 

 激しい金属音が、戦士たちの怒号と悲鳴が重なり微かに耳へと届く。

 何故かお腹から剣が生えてくる案件勃発。

 いや意味が分からないんですけど?

 敵の暗殺者がこっそり近づいてきてたとか…?

 いやあり得ないんだけどそれしか考えられない。

 背後に警戒を寄せつつ支給された剣の柄を力強く握りしめた。

 不安と焦りから汗がダラダラと流れる。

 足音が聞こえた瞬間剣を抜き放って後ろを向いた──って味方かーい。

 休憩しようぜと飲み物を渡してくれる超好青年だった。最高かよ……

 両手で受け取りちびちびと飲み始める──ってなんだこれ何か美味しくな……景色が歪む……?

 全身が弛緩して力が入らない。

 あ、これもしかして毒──

 

 激しい金属音が、戦士たちの怒号と悲鳴が重なり微かに耳へと届く。

 これ裏切り者がいますね……

 あの好青年、笑顔で毒飲ませてくるとか中々やるじゃあねぇか……

 背後から近づいてくる足音を聞きながら剣を軋ませる。

 音が止まった瞬間剣を振り切った。

 真っ赤な血が広がり短剣を手に持つ男が驚きに顔を染めて力なくその場に倒れた。

 さっきの好青年じゃねぇ……二人組だったってことか……?

 最悪だ、と愚痴を吐いて好青年の割り当てられた場所へと赴いた。

 よう、と肩に手を置き振り向いた瞬間首へと剣をねじ込む。

 もうすっかり慣れた感触に不快感を感じることもなく死体を投げ捨てた。

 さーてこれ、どう説明しよっかなぁ。

 頭を悩ませながら元の場所へと向かって──剣を跳ねるように振りぬく。

 甲高い音と共に短剣が宙を舞った。

 もう一人──!?

 うっそだろど畜生が。

 離れていた距離を一気に縮める。魔術師なめんなよ。

 首筋をかっさばいてスルリと納刀。

 マジで慣れたもんだな、と薄く笑った。

 こりゃ他の奴らとか大丈夫なのだろうか、そう思い待機場所であるキャンプを覗いたそこは──血の海に沈んでいた。

 なん、だこれ。

 俺が殺したのが三人、ここにいるやつらが九。残りは二人。

 果たして残りは敵か味方か……音もたてずに九人殺したのだ、敵と見た方がいいな。

 裏切り者多すぎだろ……最悪だ。

 ドクターに連絡しようとしても何だかうまく繋がらないし。

 いや繋がるには繋がるんだがくっそ回線の悪いテレビ電話みたいな……ばっつばつで何喋ってんのかわからないレベルだしモニターはノイズ塗れで何も伝わらない。

 状況が悪すぎるだろ。フラフラとした足取りで出ようとした瞬間足元が吹き飛んだ。

 はぁ?

 

 激しい金属音が、戦士たちの怒号と悲鳴が重なり微かに耳へと届く。

 今度はスープを持ってきた好青年の首をすっとばしてすぐさまキャンプへと駆ける。

 じゃっ、と勢いよく布を開くとやはりそこは血の海と化していた。

 すぐさま飛び退き短剣を持った男の腹をかっさばいてから、悠々と見張りをしてるおっさんの頭をかち割る。

 残すは2人。柄を握る力が強まる、慎重に動かなければ。

 足音を立てることなく周りを探るが人影は見当たらない……

 てっきり俺を排除しに来ると思ってたんだがそんな様子も見られない。

 逃げられたか? だとしたら割と最悪だ。

 ただでさえギリギリの拮抗を保っていた状況が完全に瓦解してしまう。

 いて欲しくはないがいてくれよ~と頼みながら食糧庫へと足を向けた。

 

 

 ──いた。

 剣を血で濡らした男が二人。

 片方はここをブーディカに任された隊長である。

 世も末だなぁ、と思いながら俺は魔術を発動した。

 いつぞやの吸血鬼を彷彿とさせる光弾が宙を駆る。

 激しい衝撃音と共に血が飛び散った。

 片方が警戒するのと同時に剣を胸元に滑り込ませた。

 強張っていた身体から力が抜け切り地に落ちる。

 これで全部かぁ、とやり切った感を味わいながら野営の中心に戻ろうとして勢いよく飛びのいた。

 三……人……目……?

 いやおかしいだろぉぉぉぉと叫びながら互いの得物を打ち合わせた。

 今までに比べてあまりに軽い手ごたえ。

 まあいくら兵士と言えど人だし。この時代の人と言えど魔術で強化した体には敵わんよねー。

 当然当然、と打ち合うが攻めきれない。

 何か上手くね……? と思ったが現役兵士が剣の扱いに長けてるのは当たり前のことであることに遅まきながら気づく。

 当然、俺にはそれに適うだけの技量はない。ただそれなら力で押し込んでやる、と更に魔力を強めて叩き割った。

 いやーびびりましたね! と身包みを漁る。

 これ……うちのとこの兵じゃな──!?

 瞬間矢が目の前に突き立つ。

 俺は察した。超察した。

 これ敵さんの方が何枚も上手だ──!

 挟撃だ。気づかれない内に回り込まれていた。

 くそっったれが。

 令呪を切った。遠くにいるライダーさんに莫大な魔力量を流し込む。

 これが別れる際に決めた取り決めだ。

 俺一人ではどうにもならない事態になった時に送る緊急信号。

 敏捷の高い彼女なら十分かからず来られる故に決めたことだ。

 早く来てくれと願いながら俺は剣を握りしめた。

 

 

 甲高い音と共に血液が大地を濡らした。

 首をかっきりそいつの身体を矢からの盾にする。

 同時に二本の剣が体を貫いた。

 

 甲高い音と共に血液が大地を濡らした。

 いやこれ戦うと死しか見えませんねぇ…

 逃げちゃえ逃げちゃえと走り出すが背中を向けた瞬間あほみたいに矢が突き刺さった。

 

 甲高い音と共に血液が大地を濡らした。

 いや無理ぽ(^q^)

 どうすれば良いのかなぁ、と身体を強化し武具ごと敵を切り倒す。

 降りかかる矢は先ほどと同じように対処し力の抜けた身体を両手で投げ飛ばした。

 鈍い音と一緒に何人かが怯んだ。

 同時にその倍じゃ利かない数が押し寄せる。

 槍が剣が視界を占領した。

 

 甲高い音と共に血液が大地を濡らした。

 ふ ざ け ん な 。

 どうすんのこれ? どうしろってんの?

 盾代わりに死体を背負って逃げ出したが重すぎて追いつかれた、無念。

 

 甲高い音と共に血液が大地を濡らした。

 俺は気づいた。鎧剥ぎ取って逃げりゃいいんだよ! 

 剥ぎ取る暇はありませんでした──

 

 甲高い音と共に血液が大地を濡らした。

 詰んだ……

 どうにもならなくねぇかこれ?

 ここで終わりのない終わりを迎えてしまう未来(今?)しか見えない。 

 どうにかしなければ、焦燥感に駆られて叫びをあげた。

 しかしそれは虚しく消える。

 ところで気づいたんだけど俺ってば礼装ゲットしたんだったな……

 

 甲高い音共に血液が大地を濡らした。

 いや増えたって言っても少女が欲しがるような魔法少女☆みたいな玩具なんですけどぉぉお!?

 しかしまあ仮にも礼装。カードから具現化させて片手に握る。

 瞬間俺は光に包まれた──

 

 キラキラと光る真っ赤な衣装を身に纏い、魔法☆なステッキを握った男がそこにいた。

 ていうか俺。超俺。絶賛死にたい。

 早く、早く俺を殺せ!! 俺のメンタルがどうなっても知らんぞ!? 

 ああ無理きつぃ……

 人としての尊厳が著しく失われて行ってる気がする……

 一周回って段々テンションが上がってきた俺はステッキをぶんすか振り回した。

 瞬間およそ魔術とは言えない純粋な魔力が放射状に閃いた。

 それに触れたやつらがさくさくと切り裂かれていく。

 ……?

 俺は思考を停止させてステッキを二度三度と振り回した。

 やはり魔力が色々な形となって敵を叩きのめしていく。

 最高かよ……

 何が起こったのかちょっと良く分からないが魔術の質まで高められているようで、接近戦でも先ほどよりぐっと楽に戦えている。

 バカスカと魔力を撃ち放っているにも関わらず自分の魔力を使っている感じはしないのが少し不安だが、それよりも高揚感が打ち勝っていた。

 まだまだ行くぜーと大きく振りかぶると同時に視界が揺れる、鈍器で殴られた──?

 自動的に発動された障壁がそれを防いだが衝撃を逃がし切れずに思わず後ずさった。

 その隙を縫うように多くの剣や槍が押し寄せてくる。

 ステッキで弾くが如何せん数が多すぎる。

 今までとは比べ物にならない程の速さで対処はするがそれでも尚足りない。

 ピシリとステッキに罅が入った。

 同時に礼装としての効力を失ったように光を失い俺の姿も元に戻る。

 ちょっちまずいですねぇ……

 どう動くべきかと思考を巡らせた瞬間切っ先が眼前を支配した。

 あっ無理でーす。

 まあ次は上手くやるさ。

 諦めると同時にドドォン! と鈍い音が響いた。

 瞬間ぐいっと何かに引っ張られる感覚。

 咄嗟に抵抗しようとしてその手がライダーさんのものだと気が付いた。

 な、ナイスタイミング……!

 残った敵兵もライダーさんの手によりみるみると姿を消していく。

 それを見ながらようやく助かったことを実感して膝をついた。

 

 

 やがて戦いを終えてきたブーディカ達と俺は傷を癒しながら事情を説明し合った。

 まずあちらの結果は上々……これまでにない程の快勝だったとのことだ。

 サーヴァント一人で戦力が大幅に違ってくるというのを如実に現わしている。

 また、次辺りで相手のサーヴァントも出てきそうとも言っていた。

 だがまあそんな朗報ばかりともいかない現実だ。

 良いニュースには大体悪いニュースがつきもので、当然ん悪いニュースはこちらのことだった。

 俺以外の兵は裏切りにしろだまし討ちにされたにしろ全員戦死。

 更には敵さんの部隊が襲い掛かってきたせいで設備も無事とは言い難かった。

 あれだけ暴れたし当然ともいえるだろう。

 その点についてはすまなかったが仕方なかったと許してほしいね!

 テヘペロと謝り事なきことを得た。いやペロってはいないけれども。

 ところで今戻ってきた兵士どもに裏切り者とかいない? 俺もうそこら辺超疑心暗鬼なんだけど……

 何だか色々と話してくれたが要約すれば正直信じるしかないよねーといったものだった。

 いやまあ確かにそうなんだけれども。

 今後はライダーさんから離れられねぇなと確信したのであった。

 ついでに今回の反省も踏まえてライダーさんとは極力離れないということで話は固まったのであった、まる。

 そういえば通信は復活していた。いやおそい……

 

 

 小さな小競り合いを繰り返し数日を過ごした後にやってきた立香くんたちと合流し、更に勢いをつけた俺たちはガリアの敵本陣へと攻め込むことと相成った。

 いやーさくさくと進みますねぇ……

 敵兵をちぎっては投げちぎっては投げを繰り返すように進撃していく。

 合計で四人ものサーヴァントがいるのだからそれも当然のことではあるのだが。

 そこにダメ押しのようにブーディカとスパルタクス達がほとんどを引き付けているのだから、楽なことこの上なかった。

 むしろ俺とかマジで何もしてないレベル。

 精々あっちから敵来てるぜ! とかほざいてるだけなまである。

 だって言わなくてもどうにかしちゃうもんだから仕方ないよね!

 そんな風に調子に乗っていたらドクターが回線を開いた。

 魔力反応ありとのことだ。それはつまり人以外の敵がいるということ。

 サーヴァントかぁ……やだなぁ……とため息を漏らしながら走れば現れたのは岩で出来た歪な人形だった。しかもでかい。

 初見だし何してくるか分らんけど取りあえず先手必勝、何かする前に殺しゃ良いっしょという脳筋的発想を元に俺は光弾を打ち込んだ。

 パァッと弾けて表面を削る……あっ、これ俺単体だとダメなやつでーす。

 ライダーさんの鎖付きの短剣(釘じゃなかった)が突き刺さる。

 鎖で雁字搦めにした後に持ち前の怪力で破壊しつくした。

 粉々ですよ粉々。

 流石だぜっ! と褒め称えるのも束の間。

 次々と湧き出てくるそいつらに俺は目を死なせた。

 

 岩の人形──ゴーレムは脆くはあるがその分一撃が苛烈かつ強大だった。

 受けたら俺は当然死ぬとしてもサーヴァントまで軽くはないダメージを受け怯んでしまうだろう。

 てことでつまりはやられる前にやれ、というシンプルかつ簡単ではない攻略法が確立されてしまった。

 攻略方法とは一体……と思うが現状これが一番なのだ。

 まあ戦うのはサーヴァントたちなのだが。

 俺と立香くんはちょい離れて指示とか援護である。

 正直俺必要なくね……? となりそうになるがそれはそれ。

 こんな俺にでもできることがあるはず……! なんてかっこつけながらピュンピュンと魔術を飛ばしてみる。

 全く効いてる気配がないので顔を狙っているが、はたして役に立っているかと問われれば即答せざるを得ないだろう。役には立ってない!

 でもなんかしたいじゃん……

 そんな無駄なことをしている内に戦闘は次々と進み、いつの間にやら本陣へと踏み込んでいた。

 そういえば地味にネロ皇帝ってサーヴァントじゃないらしいんだけどめちゃ強いな。化け物やん。

 

 

 自らを皇帝と名乗る赤いデブがいた。あれでセイバーらしい。つ、強くなさそう……

 そんな嘗め腐ったことを思いながら戦闘は始まった。

 見た目に反してふくよかな腹をした男は恐ろしい強さを持っていた。

 完成された剣技、計算されつくされた戦略。

 うーん攻めがたい。

 これが赤デブを全員で叩くならまだしも、当然のように護衛としていた兵やゴーレムがうざすぎる。

 単純に数が多いのだ。

 今度ばかりは周りに大きく戦力を裂く訳にもいかないし、自然と俺たちを守るのがマシュちゃんで立香くんサーヴァントが赤デブを相手にし、ライダーさんが周りの殲滅を基本とするように戦い始めた。

 

 

 熾烈な戦いだった。

 上手いこと赤デブと戦えない。周りの兵たちを動かすのがうますぎる。

 つーかゴーレムとかいつの間にか増えてんだけど、どっから出てきてんだよ。

 ある程度自衛のできる自分より立香くんを中心に守ってもらい、代わりにドクターのナビをこちらに回してもらう。

 マシュの盾により気絶に追いやられた兵の剣と兜を奪い強化をかけて前を見据える。

 といっても積極的に攻め入ることはせずに精々近寄ってきたアホどもを蹴散らすくらいだ。

 立香くんへの影響を考えて殺しはしない。

 いやもう既にたくさん見てるかもしれないが、あまり見るべきものでもないのも事実だ。

 鞘にしまったままの剣で頭を狙って振りかぶる。

 俺はなるべく対人だ。 

 ゴーレムなんてマシュたち任せである。

 岩の欠片が飛び散りその上に人の身体が力なく崩れ落ちていく。

 あの赤デブの護衛なだけあって一人一人の練度が高くて困る。

 相手の技術を魔術ありきの力押しでねじ倒す。

 さぁ次々と振り返った瞬間に岩の拳が突き刺さった。

 何故唐突に現われたし……

  

 

 岩の欠片が飛び散りその上に人の身体が力なく崩れ落ちていく。

 何か……地面から生えてきたんですけど……

 え? なに? 自然発生的なあれなの?

 マジかよドン引きです……

 これ実はライダーさんの近くにいた方が安全なんじゃね?

 そう考えた俺はライダーさんにひしっと引っ付き援護をしていた。

 俺がいないことでマシュは立香くんを守ることに集中できるし、意外と良い案だとは思うのだが。

 人ならざるものを新礼装──ルーンストーンで破壊していく。

 戦う手段がないよぉ……と思ってたらライダーさんに礼装使えよと言われてハッとしたのは言うまでもない。

 にしてもこの石めっちゃ便利だな……

 いつぞやのキャスニキを彷彿とさせるような炎とか出ちゃうし最高かよ……

 しかも普通に強化するよりずっと強力な力を得られるしちょっとこれは流れが来てますね。

 スルリとほぼ抵抗なしに岩を切り裂きライダーさんが砕いていく。

 ただやはり拳だけはまともに打ち合ったら腕がイカれるのでパスの方向で……

 粗方片づけた。

 兵は地に伏しゴーレムはただの瓦礫と姿を化していた。

 残った赤デブもそろそろ満身創痍といったところだった。

 ところで赤デブの名前はユリウス・カエサルらしいんだけどそんな事実認めたくなかったのは俺だけではないと思う。

 あのカエサルがあんなにピザとコーラが似合いそうな体型とかマジ……

 だがそんな彼もやはりサーヴァント。その剣の腕前は並み以上なのは確かだった。

 といっても戦力に差がありすぎる。良く抵抗した方だと言うべきだろう。

 カエサルは黒幕の存在を匂わせる発言をしながら美女に倒されるのは悪くない、と姿を消した。

 これまだ敵がいっぱいいるってことですよねぇ……思わず白目をむいた。

 ついでにネロは目を見開いていた。か、カエサルだとぅ……!? 的な。

 

 

 翌日。俺は何故かエキサイティングな船の上で顔を真っ青にしていた。

 いやマジこれ無理吐きます……

 口から虹を吐き出しながら俺はネロ公を恨んだ。

 何故なら今船を動かしているのはネロなのだから。

 何か帰り道の最中農夫に神様でるだべ! とか言われたから詳しく聞いたところ、海を挟んだ島に神様が出るらしいのだ。

 右へ左へ何で横転しねぇんだと疑問を投げかけたくなるような挙動をする船は、しかし見事に噂の地へとたどり着いた。

 因みに現実的に考えて神様はちょっとあり得ないらしい。

 ドクターが小難しいことを並べて否定していた。

 ──のだが現実は小説より奇なり、という言葉は本当なんだなって。

 神はいた。ロリっぽい神が。

 紫の髪を二つにまとめた妖艶とも言えるような美少女(神)がそこにいた。

 いわゆる神霊ってやつなのだとか。英霊より格上と考えていいのだろうか。

 ところでさっきからライダーさんが震えているのは何でだろうか?

 お姉さま? ん? 誰がかな?

 え、そこの神様がお姉ちゃんなの? ということはつまりライダーさんは神だった……?

 ステンノと名乗った神はライダーさんの真名──メドゥーサ──を呼び思わず総毛だつような笑みを浮かべた。

 ちょっとフルフルしながらライダーさんは彼女の元へと行こうとしたので腕をひっつかんだ。

 いやうちのサーヴァント誘惑するのやめてくれます?

 キリッとした感じで言ったらめっちゃ睨まれた漏らしそう助けてくれ。

 た、助けてぇぇぇと立香くんたちの後ろに隠れようとしたがぶっちゃけ怖くて足が動かなかった。

 そのまま話を聞いていたら何か洞窟にお宝を取りに行く話になってしまった。

 本当ならライダーさんを嗾けたいけど何か変なのいるし今回は諦めるぜ! 何てことを言っていた。

 

 

 洞窟はじめじめとしていて更にはモンスターが蠢いていた。

 何か……囲まれてね?

 うきゃぁぁぁぁと叫びながら戦闘を始めた。

 周り暗すぎわろえない……

 おっふ。

 

 洞窟はじめじめとしていて更にはモンスターが蠢いていた。

 暗闇って意外とやばいのな。

 マジ何も見えないから、いやほんとほんと。

 戦闘の際の火花とか、魔術が散る光とか、そんなんしか光ないから。

 サーヴァントのやばさを改めて実感することになったといえるだろう。

 ていうかガード重視で前に出てなかったはずなのに狙われるとか俺の集敵率高すぎやんな?

 もう少し控えめに、俺が立香くんを守りそんな俺をマシュが守るという奇妙な陣形で戦いが始まった。

 俺の人気がやばすぎる。物量にマシュが押されてる。

 ついでに言うなら俺も押されてる。

 ライダーさんたちは意外と余裕そうなのでライダーさんに助けてもらった。

 上姉様に喧嘩を売るから……とか言われても売った覚えないんですけど…

 何度かヒヤッとしながらも奥まで辿り着いたら何か……尻尾が蛇で牡牛なライオンが出てきた。

 何あいつ絶対ヤバいやつ……と後ろに下がったら超高速で光弾が追いかけてきた。

 

 洞窟はじめじめとしていて更にはモンスターが蠢いていた。

 いやどっから光弾だしたお前ぇえ!?

 流石に予想だにしないんですけど……

 完全に身体を盾に隠して先へと進む。

 俺の使う光弾の百倍はありそうな光弾がマシュの盾にぶつかり音が大きく反響した。

 最初は恐ろしく抵抗をされていたが、尻尾が一本千切れ飛んでからは勢いは終息していき、やがて首が宙を舞った。

 あっさりと言ってるが地味に疲弊してるし何ならサーヴァントたちも血を流していたりする。

 応急回復で誤魔化してはいるが今までの戦闘の傷もありぶっちゃけかなりきつい。

 さっさと戻ろうと洞窟を抜け出した。

 

 

 すっかり日は暮れていて、ステンノはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべていた。

 超疲れたわーとか言ってたらナチュラルに自称アイドルと猫耳生やした犬がいた。いややっぱり猫?

 当然のように戦闘が始まった。

 いや話し合いしようよ……とも思ったが少なくとも片方は頭がぱっぱらぱーだったな、すまない。

 それどういうことよぉぉぉぉ! と叫ばれ戦闘が激化した。

 真実は時として人を傷つける。つまりはそういうことなんだなって。

 何やかんやでエリザベートの戦闘パターンは読めるのだが、猫耳生やした方が大分やばい。

 言動が狂ってるのが二人もいると頭のおかしさが二倍どころか二乗で話を聞いてるだけで頭があぽーんとなりそうだった。

 ただまあ本気で殺しにかかって来ていたわけでもないのか、宝具も使わないのでぎりぎりの状態でもなんとか抑えることに成功した。

 いやそれでもセイバーとかめっちゃ息切らしてるけどね。それが弱いからって訳ではないが。

 何故なら立香くんサーヴァントたちのメインアタッカーはセイバーでマルタはそのサポート、マシュは守りに徹しているからだ。

 まあぐだぐだ並べたが一番は種火が足りなかったってのが一番の要因だろう。

 てことでセイバーに消えてもらっても困るので後ろに下がってもらうことになった。

 ついでに犬猫とエリザベートと仮契約を結ぶ。頭はおかしくても実力はあるからな。

 何で俺かと言えばぶっちゃけ立香くんの体力が限界を迎えていたからである。

 この前まで普通に学生していた子がこの強制行軍を余裕でこなせる訳がなかったのだ。

 俺より魔術を使いこなせていないし当然だ。

 しばらくは休んでようか等と今後について話していたら、奇声を上げながら敵さんがすっとんできた。

 要約すればネロだいしゅき! 可愛いぃぃいい! とか言ってる。

 控えめにいって恐いじゃん?

 戦闘が始まった。

 ぱんちがいたいっ

 

 しばらくは休んでようか等と今後について話していたら、奇声を上げながら敵さんがすっ飛んできた。

 何だあいつの拳剣を貫通したぞ……

 しかもがっちり強化してたのに……

 交代するように犬猫──タマモキャットを前衛に押し上げた。

 奇天烈な動きで創る隙にエリザベートの槍とかネロの剣が身体に突き立つ。

 ダメージが通らないな……

 いや感覚がイカレでもしてるのかクリティカルヒットでもしないと怯みすらしない。

 狂い過ぎぃ! と周りを警戒しながらも魔術を使ったりと色々援護をする。

 まあこのままボコればいけるっしょ、なんて思っていたら敵の加勢。

 音に寄ってきた野生のモンスターが集まり始めていた。 

 暴力聖女による雑魚殲滅時間の開始である。

 

 肉を断つ感触が剣を通して良く感じられる。

 血が舞い肉と骨がごとごとと地面に落ちた。

 俺にかかればざっとこんなんですよ! どやっ!

 調子に乗った瞬間死ぬ。

 ここまできて俺はそれを忘れていたとだけ言っておこう。

 

 肉を断つ感触が剣を通して良く感じられる。

 剣を引き抜き──?

 身体が動かない、魔力がすっからかん……?

 

 肉を断つ感触が剣を通して良く感じられる。

 (((謎の死)))

 しかし過ぎたことだと断じ、一切の油断なく骨を穿ち狼人間を引き裂いた。

 やけにどろっとした血が肌にこびりつく。

 汚いなぁ……としか感じられないくらいにはもうそれに慣れ切っていた。

 少し離れたところでは杖で物理的に殴打している女がいた。

 十字架をなんだと思っているんだあいつは……

 叔父上と呼ばれた変態は既にダウン寸前もいいとこだった。

 明らかに息苦しそうに血を吐いている。

 余裕だな! と不敵に笑みをこぼしてみた瞬間強烈な声音が響いて全身が硬直した。

 目の前には骨が。

 おわた^^

 

 肉を断つ感触が剣を通して良く感じられる。

 あれ絶対宝具じゃん……

 使われる前に殺せし……とか思うけど皆そうしようとは思っていたのだろう。

 そういう日もあるさ、次行こ次。

 聖女は十字架を捨てて敵を殴り飛ばしていた。何をやっているんだ……

 頭をスライスして振り向きざまに柄で頭を砕く。

 同時に令呪を切った。

 音には音を。

 暴力的な声には壊滅的な声を。

 ぶつかり合って空間が完全にカオスに飲まれた。

 選択ミスったかも(^p^)

 でも生きてた自分に驚きを隠せない。

 周りのモンスター軍団は全滅してたし叔父上バーサーカ──―カリギュラは、最後にネロに何かを言い残して消えていった。

 やっと死んだかあ、とサーヴァントたちに労いの言葉をかけてたら、ステンノが敵さんの首都を教えてくれた。

 戦力は増えた、し敵の本拠地も教えてくれるとか実は本気で幸運の女神なんじゃね? とも思ったが獲物を見る目で睨まれたことを俺は忘れない。

 

 

 凱旋。凱旋である。栄光あるローマへの帰還である。

 俺は初めてなのでちょっとばかし興奮したのは確かだ。

 多くの人にキラキラとした瞳で戦功を称えられるのは少しばかりくすぐったかった。

 久しぶりに自分が何の為に戦っているのかを感じさせられた気がした。

 

 

 翌朝。いつもならもう昼食を済ませてるような時間に目を覚ました俺は、取り合えずネロの元へと向かった。

 荘厳な装飾のされた扉を何も考えずにドーンと開け放ったらそこには白い女と赤髪のゴリラがいた。

 いつからここは動物園に……

 思い返せばあまりにも失礼なことを言い放った俺を立香くんが必死にフォローしていた。すまない…

 何か増えてた二人は別行動をしていた味方だとかなんとか。

 俺が寝てる間に、敵さんとドンパチしながら帰って来ていたところを助けにいってそのまま事なき事を得たらしい。

 本当なら俺もいくはずだったのだがビンタしようが何をしようが決して目を覚まさなかったので置いて行かれたとのことだ。

 叩かれても起きないとかどんだけ……

 本当に済まない。

 俺の睡眠への意地汚さが証明された瞬間だった。

 ま、まあ疲れてたんだよ! とか適当に言い訳して話をそらした俺が流石すぎると言えるだろう。流石!

 

 

 我々は破竹の勢いで進撃していた。

 サーヴァント計十人。負ける訳がない。圧倒的戦力差だ。

 最早障害にすらなることなく蹴散らしていく。

 次々と敵は湧いてくるのだが滑稽でたまらないほどだ。

 いけいけぇーと突き進むとサーヴァント反応が。

 2m越えの巨体。二振りの斧。真っ黒な肌。その眼はギラギラと光っていた。

 お前どこにでも出てきやがるなおい……

 何か寝てたら復活してた令呪を素早く切った。  

 ライダーさんの宝具が目の前の巨人を敵兵ごと焼き払う。

 うーん、流石……!

 煌々と燃ゆる大地を見て、ほっと息をついた瞬間明らかな高魔力反応が現われた。

 同時に多くの兵が現われる──宝具か。

 今ので仕留めきれなかったのは驚愕だな……

 焼き尽くした敵の代わりにサーヴァント染みた敵兵がわんさか出てきて白目ものである。

 ラスト令呪切るべきかと悩んでいたら聖剣の光が全てを引き裂いた。

 セイバーと立香くんかっこよすぎかよ……

 見渡す限りいた敵が塵も残さず消し飛ぶ様は爽快であった。

 それにしても俺のトラウマがこんな一瞬で吹き飛ぶとか成長を実感してしまう。

 ガチモンのサーヴァントですらこの有様ならもう今回余裕のよっちゃんだな。

 奢りでもなくそう思ったその時、味方の兵より悲報がもたらされた。

 サーヴァント:ブーディカの拉致。

 またバーサーカーである赤髪ゴリラとスパルタクスが敵に誘われ戦線を離脱してしまっただとか。

 まあどう考えても敵さん──顕現してるサーヴァントは皇帝と呼称してるらしい──の策だろう。

 さてどうするか。優しい立香くんのことだしきっと助けに行くとか言い出すだろう。

 だけれどもそれは時間のロスだし明らかに誘われてる。

 よし、代わりに俺が助けに行こう。その間に敵の本拠地を一気に叩いてほしい。

 では健闘を祈る。

 

 

 やはりというかこちらはあまり敵の数は多くはなかった。

 いや、単純な量という訳ではなく戦力が足りていない。

 サーヴァント三人+雑魚とはいえ魔術師一人。

 百人二百人来ようが割とどうにかなっていた。

 といっても囲まれたら本気で洒落にはならないので一点集中突破しかしていないのだが。

 如何にも王子様みたいなオーラの放つ紅髪の少年。その隣に佇む社畜オーラを放つ男。

 どちらもサーヴァントなのは明白だろう。

 ただ、あの……ネロに来てほしかったのに……としょんぼりするのはやめていただけないだろうか……

 普通にやる気落ちるんですけど……

 つってもやる気ないからとかしょんぼりしてるとかが理由で戦闘が始まらない、なんてことはあり得ないのだ。

 仮にも戦争。短剣同士がぶつかり合って火花を上げた。

 な、何か火とか岩とかが降り注いでくるぅぅうう!?

 

 

 仮にも戦争。短剣同士がぶつかり合って火花を上げた。

 キャスターって光弾しか出せないんだと思ってたけど違うんですね……

 社畜キャスター(多分)が地味にうざい。

 めちゃくちゃ嫌なタイミングで攻撃が来る。

 俺なりに支援するのだがレベルが段違いだ。

 また敵の兵もいなくなったわけではない。

 キャットに抑えてもらっているがいっぱいいっぱいだった。

 ちょーっと不味いかもしれない。

 さっさと押し切りたいのに中々攻めきれない。

 ──仕方がない、力づくで消し飛ばそう。

 合図と共に、キャットが宝具を展開した。

 巨大な猫の幻影が宙に浮く。

 ニャァ~と気の抜けた声が響いた瞬間周りが血に染まった。

 これで一気に叩ける。

 そう考えたのと同時に黒と赤の柱が八本、地に降り立った。

 身体が動かない──?

 反射的に令呪を切った。

 ライダーさぁぁぁぁん!!!

 天駆ける白馬が太陽に染まり──そして恐ろしい程の威圧を放つ馬に乗り、バチリバチリと雷音を散らせた筋肉質な男がそれを受け止めた。

 は、ぁ──?

 

 仮にも戦争。短剣同士がぶつかり合って火花を上げた。

 こちらに宝具があるのだからあちらにも宝具がある。当たり前であることを失念していた。

 もうちょっと使いどころを見極めなければならない。正直、宝具に頼り過ぎていた。

 令呪は切れば魔力が爆発的に増えるが、数に限りがある。慎重に使わなければ。

 基本戦力はこちらが勝っているはずだ、だからもっと冷静に敵の動きを読まなるべきなのだ。

 エリザベートの宝具を開く。壊滅的な音声が空間を轟かせ人々を眠らせた(物理)。

 いや……マジでいつ聞いても凄まじいな、と遠い眼になりながら降りかかってくる岩を転がり避けた。

 やっぱり英霊は一筋縄ではいかないか。

 魔力を大きく消費したエリザベートを下がらせてキャットを押し出す。

 アレキサンダーと名乗った少年が雷を纏いながらライダーさんとキャットを捌く。

 何か……時間を追うごとに筋肉質になってない? あいつ……

 しかもそれと比例するように美少年からおっさんと化していっている気がする。

 ついでに言えば戦力も増加されている。

 もうそれだけでうざいのに社畜軍師もうざいしうざいの二乗だわくそったれが。

 どっかから出てきたのか分からん八卦炉から放出されるビームをエリザベートが切り裂き飛ばす。

 どんどんとアレキサンダーが力をつけていく。

 まーた短期決戦だよ……

 ライダーさんとキャットの二人がかりだというのに抑えられるとか……

 ちょっと洒落になっていない。

 仕方ない、瞬間強化で一度態勢を立て直そう。

 ライダーさんの身体の周りが燃ゆるように光りアレキサンダーを吹き飛ばした。

 一気にたたみかけ──ようとして、八本の柱が落ちてくる。

 だけどまぁ、それは読んでいた。

 即座に令呪を切ってキャットの自由を力づくで解き放つ。

 同時に宝具だ、さぁぶちかませ。

 気の抜けるような猫の叫びと同時に、高速で動いたキャットの爪がギラリと光り、雷がそれを防いだ。

 早すぎだろ……

 キャットが潰された今、自由の効かない俺たちに成すすべが無かったのは言うまでもないだろう。

 

 

 仮にも戦争。短剣同士がぶつかり合って火花を上げた。

 勝てる材料はある、けれども俺の采配が悪すぎるな。

 取りあえず周りの雑魚を歌声で蹴散らしエリザベートを近くに置く。

 これからどうしようか。普通に戦ってたんじゃさっきと同じだ。

 令呪がもう一つあればごり押しでぶち抜けたかもしれないというのに……

 柱が次々と現れる。

 あっ、無理でーす。

 頭が真っ白に燃え尽きた。

 

 仮にも戦争。短剣同士がぶつかり合って火花を上げた。

 あの雷野郎をどうにかして止められれば……

 一瞬で良い、ほんの少し止められればキャットの宝具でやれる……

 しかしそれは妄想に過ぎない。

 ライダーさんの宝具は凌ぎきられ雷音が耳朶を掠める。

 反射的に瞬間強化で振るった剣がガツンと弾き合って打ち上げられた。

 緊急回避を使う寸前首を握られる。

 大きく吐き出た息を吸い込めない。

 締め上げられる力が高まっていきどんどんと視界が霞んでいく。

 あれ、これデジャヴ……

 

 仮にも戦争。短剣同士がぶつかり合って火花を上げた。

 そうだよ石化だ。ライダーさんだ。

 姿は違えど同じメドゥーサ。

 ただしタイミングが重要だ。下手したら普通に外してできた隙でやられかねない。

 アレキサンダー早すぎんだよ……

 エリザベートとキャットの狂ってるコンビに任せてライダーさんと手短に言葉を交わす。

 でも俺の言うことほいほい信じてくれるとかマジ天使だよね……

 音が空間を揺らして悲鳴が上がる。

 タイミングは俺が瞬間強化を使った瞬間だ。

 そこで一撃で沈める。

 雷をちらつかせてライダーさんと一際大きくぶつかり合う──瞬間強化。

 同時にライダーさんの眼──キュベレイの魔眼というらしい──がギラついた。

 ガクンとその場に縫い付けられたように動きを止めたアレキサンダーの首元に短剣がねじ込まれた。

 悲鳴を上げた軍師の腸をキャットがぶち抜いた。

 勝った──張りつめていた空気が一気に弛緩する。

 長く息を吐く。あぁ、緊張した。

 徐々に消えていく二人はそこそこ悔しそうだった──突然視界が黒に染まった。

 馬……?

 

 仮にも戦争。短剣同士がぶつかり合って火花を上げた。

 肉も骨もごっちゃのぐっちゃとかマジやべぇ…

 あいつの宝具(多分)の馬がとんでもない速さで突進をかましてきた。

 身体が薄れていたから最後っ屁ってやつだろう。

 やっぱ気抜いちゃダメなんだなって。

 ライダーさんの魔眼が発動して動きを止め……られない……?

 外した!? うっそだろ、畜生が、と叫ぶ。

 さっきは上手くいったのに……!

 現実は中々甘くないな。

 宝具で目潰しと攻撃を同時に行う。

 草葉が焼き焦げる匂いが鼻に付く。

 当然のように柱が落ちてきた。

 緊急回避ぃいい!!

 エリザベートを掴んだ瞬間ごうんっ! と凄まじい勢いでその場を離脱した。

 宝具でも避けられるとか万能すぎ……

 全くカルデアの技術力は最高だぜ!

 地を滑るように転がった。

 仮で繋いだパスが一本消える感覚が伝わる。 

 同時に令呪を切った。用途は純粋な魔力の増加。

 超高速でエリザベートがアレキサンダーとぶつかった。

 激しく鬩ぎあう二人の戦いは、しかし俺が火だるまになったことで終わりを迎えた。

 

 

 仮にも戦争。短剣同士がぶつかり合って火花を上げた。

 魔眼を外したら打つ手がない件について。

 これは何としても当てなくては……

 社畜は相も変わらずマスターである俺を狙ってくる。

 エリザベートは自分以外への攻撃に若干鈍い所があるので普通に全力警戒だ。

 瞬間強化と同時に魔眼が発動する。

 ビキリ、と動きを止めた彼の左胸に短剣が滑り込んだ。

 柱が落ちてくる前に一気に仕留めよう。

 キャットの魔力が勢いよく練り上げられ超高速で走る猫が全てを血に染めた。

 かろうじて生きている軍師に槍が突き立つと同時、宙に現れた八卦炉がエリザベートを貫いた。

 重なり合って倒れた二人とアレキサンダーは霞の如く消え始めた。

 応急回復を使おうとするがもうそれでどうにかなる傷ではなかった。

 完全に急所を射抜かれた。やり直そうと思った時エリザベートに声を掛けられた。

 子犬呼びは未だに許せんが後は任せたと言われたら頑張るしかないじゃん……

 落ち着いた俺は縛られてる割にはすやすやと気持ちよさそうに眠るブーディカをパチパチ叩いて起こす。 

 ほわぁ? と寝ぼける彼女は可愛かったとだけ言っておこう。

 

 

 立香く……ちゃんに追いついたと思ったらげっすい顔したレフ教授がやば気なセイバー(多分)を召喚した瞬間そのセイバーにレフ教授がレ/フにされていた。

 情報量が多い!

 いやマジで状況把握できてないんだけど何なの?

 そのまま戦闘となるかと思いきや、セイバーは窓をぶち破ってローマに向かって歩いて行ってしまった。

 と、止めなければ! と追いかけることになった。

 だから状況説明をだな……

 

 

 虹色に輝く剣が鞭のようにしなって暴れまわる。

 あまりにも力強いそれは盾ごとマシュを弾き上げた。

 追い打ちをさせないように振り下ろしたネロの真っ赤な剣と、アルテラと名乗ったサーヴァントの剣が重なり合う。

 あまりの打ち込みの強さにネロが大きく後退した。

 そこに振り込まれる虹をアルトリアの聖剣が受け止め弾く。

 ついさっき戦闘を終えたばかりだってのに余裕で動き回れるとか、マスターとしての質の差を感じちゃうなおい。

 ふらつくキャットを援護に回らせライダーさんを前に出す。

 高速で動き回るライダーさんで隙を作ろうとするがそれに虹が迫りくる。

 くそつっよいなマジで。

 今まで戦った中でさいつよかもしれない。

 いや絶望感はセイバー・オルタの方が上だったけれども。

 取りあえず魔眼で動きを──効かない!?

 一瞬効いたかと思ったらパワーで押し破られた感がある。

 止まったのはコンマ数秒だ。

 えぐいなぁ。

 ライダーさんに蹴りが入り大きく吹き飛ぶのをキャッチする。

 振り落ちてきた剣をライダーさんの短剣で受け止め、けれども弾けずそのまま地面にめり込んだ。

 身体が軋んで吐血する。

 骨が幾つかイッてそうだ。上手く力が入らない。

 視界には二度目の剣が。

 無理でーす。

 ガァン! と眼前で火花が走った。

 キャットの爪とブーディカの剣が虹と拮抗して跳ね上げる。

 ナイス過ぎる……

 応急回復でライダーさんを回復させ、マルタと入れ替わりで前に出た。

 防御を崩されたアルテラの小さな隙に、幾本の鎖付きの短剣が突き立ちその鎖で縛りあげる。

 驚きに顔を歪ませたところを聖剣と真っ赤な剣が差し込まれ──弾かれた。

 螺旋を描くように虹の光がアルテラを包んで邪魔なものを破り飛ばす。

 虹の光が、地を滑ってやってきた。

 ブーディカとマシュが宝具を開く。美しい巨大な盾と幾つもの燃ゆる車輪が展開された。

 激しい炸裂音が響いて辺り一帯が更地と化した。今の拮抗で二人は足元さえおぼつかない。

 俺と繋がっていたパスは完全に切れていた。残りは仮契約のキャットのみ。

 立香ちゃ……君もマシュとマルタしかいなかった。ネロももう、いない。

 世界が歪む。全員が全員摩耗しきっていた。勝ちの目はもうなくなっていた。

 俺はこの時、初めて自らやり直しをした。

 

 ガァン! と眼前で火花が走った。

 応急回復をかけてライダーさんを送り出す。

 鎖で縛りあげられたアルテラが顔を歪ませた。

 同時に令呪を切った。

 流星の如き光の天馬と全てを砕く虹の光が正面から鬩ぎあう。

 あー……こりゃ勝てないな。

 徐々に徐々に、しかしはっきりと分かるくらいにはライダーさんは削られていた。 

 ライダーさんに念話で一言謝ると、彼女は俺の考えを何も言わずとも理解したのか早くやりなさいと俺を急かした。

 良い女過ぎませんかね……

 立香くんに叫ぶ。

 ライダーさんごと宝具を撃て、と。

 動揺するもあまりに必死の俺の顔を数度見た後に令呪を切った。

 爆発的に増えた魔力をそのまま解き放つように極大の光が虹と流星を飲み込んだ──

 

 

 アルテラは少し嬉し気に頬を緩ませ空気に溶けた。

 ころりと金の杯──聖杯が落ちる。

 ネロが寂し気に別れを告げた。

 ブーディカが泣いても良いと言ってくれた。

 でもまだ泣く訳にはいかないのだ。そんなことを言って涙を流したのは完全に黒歴史だ。

 そんな束の間も本当に短く俺たちは元の時代へと帰還した。

 

 戻って最初に目に入ったのは、ライダーさんの笑顔だった。

 俺はまた涙を流したのであった、まる。

 

 

 ──Order Complete――

 

 

 

 

 

 

 

 

 




きっとその内修正はいるかもしれないかもしれない(入れない)
→すまん文章整形・ちょい加筆修正等入れた。
それでも変なところあったらこっそり教えてくれな!

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