ロクでなし魔術講師と超電磁砲 作:RAILGUN
それからあれから。
夢と現実に右往左往してるとどっかの憲兵隊とかがやってきた。
ルミアとシスティは女性のメンタリストっぽい人に保護され、俺は治療を受けながら先生と一緒にむさい男を相手に事情聴取。
病院に搬送する準備が整い、むさい男がどこかに行くと同時にため息。やっぱりグレン先生とは気が合うみたいだ。
ヒューイ先生はすでに護送されたみたいだった。
ルミアとの会話で忘れてたけど、グレン先生がワンパンで沈めたらしい。
やはり、肉弾戦系魔術師だったかグレン先生。
アレンジを加えたていこくしきカクトージュツを使うらしい。よくわからん。
俺? フィジカルブーストでごり押しですが、なにか?
ともあれ、しばらくすれば面会もできるようになるらしい。コーヒーの約束を忘れてなければいいのだが。
病院では苦労することが多かった。
疲労のピークは二日目。マジで寝返りすらうてなかった。
なにせ全身の筋肉を損傷。腕も含めて全治二ヶ月。
魔術の恩恵を受けてなおこの期間である。
その痛み押して図るべし。
入院期間は1ヶ月。勉強は時たまきてくれるグレン先生や毎日きてくれたルミアにシスティが教えてくれた。
そんなわけで毎日飽きがなかったわけだが、クラスメイトにはグレン先生が適当に説明したのか盛大なヘマを踏んだことになってる。
時折かわいそうな子を見る目が背中に突き刺さる。
そんな中で私はちゃんと味方だよとアピールしてくれるルミアはやはり天使だ。グレン先生が懇切丁寧に教える根拠を完全に理解した。
そういえば、アルフォネア教授がグレン先生同伴でやってきた時はその場にいたルミアとシスティと一緒に驚いたものだ。それでまた肋骨が逝きかけた。
「階段の踊り場で使った魔術、塔に大穴を開けた魔術。あれはなんだ? 後者は【ライトニング・ピアス】など比じゃなかった。もしかして、お前は異能者か?」
「あれ、言ってませんでしたっけ?」
「「「はぁぁぁぁぁぁ!?」」」
嘘つく必要もないのでここでネタバラシ。
ルミア、システィ、グレン先生の声が病院中に響き、注意された。
マジですいません。本当に。
「今年は厄年だったか?」
アルフォネア教授のため息が突き刺さる。
なんか、ごめんなさい。余計な仕事を増やしたみたいだった。
あっ、そうだ。そういえば。
「えっと……」
「これかな?」
「おおっ、さすがだぜルミア」
「うん、このタイミングなら渡すと思ってた」
ルミアは俺の思考を読んでか、阿吽の呼吸で俺がまとめたレポートを渡してくれた。
ちなみに途中から俺が異能者であることを全面に押し出した内容に書き換えたので半分くらいは書き直した。
アルフォネア教授にレポートをすっと渡して、そこで気づくグレン先生とシスティの視線。
「なんですか?」
「いやぁ、今のやりとりが完全に夫婦のソレだった」
「ニヤニヤしてんじゃねぇよ、黒髭先生」
「割とブラックジョークだな!?」
「ハリネズミ先生のが良かったですかねぇ?」
「そこに直れ、【イクスティンクション・レイ】だ。五素に返してやる」
「上等だ。表でな。【超電磁砲】で果てまで飛ばしてやるぜ」
「いい加減にしろ、馬鹿ども」
「「あぐっ!?」」
ばちばち火花を飛ばしてるとアルフォネア教授に拳骨を落とされた。
くっ、BBAめ。
「ああん!?」
「「ひぃっ!?」」
鬼のような形相で睨まれ、グレン先生共々萎縮する。
美人が怒るとこわい。はっきりわかんだね。
「まぁいい。これは受け取っておく。ただし、事態が事態だ。このレポートはそのまま捜査資料として提出するかもしれないが、構わないな?」
「捜査資料ですか? まぁ、構わないですけど学院生が書いたもんなんて役に立つんですか?」
「普通はならないが、このレポートは出来がいい。私が少し手直しするだけで活用できるさ」
手直しとか言っちゃってるけど捏造する気満々じゃないですかぁ、やだぁ。
悪巧みしてる時の顔がどっかのハリネズミ先生と似ている。
「心配するな。これからは大人の仕事だ、養生しろラクス・フォーミュラ。それと、学院を代表して礼を言う。学院を……学院生を助けてくれてありがとう」
学院生のあたりでルミアをみるアルフォネア教授。
んー、なんかただの学院生に向ける顔じゃないなー。
「だが、こんな無茶はもうやめろ。わかっているな?」
「はい。こんなの何回もしてたら体が持ちませんよ。次は教室の隅でおとなしく丸まってます」
「はぁ……」
あい? なんだ、アルフォネア教授がため息ついたぞ?
「おい、ラクス」
「なんすか、グレン先生?」
「そんな笑顔で言うと次起きたらまた無茶しますって言ってるようなもんだぞ?」
「そんなつもりはないですけど……」
「それじゃ、ルミアがまた攫われたら?」
「悪・即・斬!」
「ダメだ、こりゃ」
たーじわかる。
「おい、グレン。生徒が無茶しないようにしっかり見張っておけよ?」
「こいつがおとなしくハウスするようなやつかねぇ?」
「俺は先生の犬じゃない!」
「めんどくせー!? 噛みついてくんな!」
ま、こんな感じで入院生活も悪くない。
が、さっさとこの体を治して魔術競技祭に備えなければ。
今年はグレン先生がいるから面白いことになりそうだ。
「ラクス。荷物はこれで全部か?」
「うぃっす。ありがとうございます」
退院当日。荷物をまとめて色々してるとグレン先生が手伝いにきた。
いや、普通に焦った。あんたそういうキャラじゃないでしょ?
「白猫がうるさくてな。あとセリカもな」
「心中お察しします。申し訳ない」
「やめろ。男に察せられても嬉しくねー」
「あんだと、こら? 人がせっかく心配してやってんのによぉ?」
「んだぁ、こら? んなこと頼んでねーし!」
「おん?」
「あぁ?」
こんな感じでピーチクパーチクして退院準備完了。
グレン先生との絆レベルがどんどん上がってく。
あとでシスティにルミア、男手でカッシュがきてくれるそうだ。ギイブル? こねぇだろ。
「あー、うん。そうだなー」
「どうしたんすか?」
「いやー、うんそれがな。あーっとな?」
なんだ歯切れがクソ悪い。まるでシスティに謝ったときみたいだ。
なにかを気にしてるのか?
「えっと、ルミアのことですか?」
「……ったく、人がせっかく茶を濁してるのによ」
「濁し方が下手くそすぎる」
「慣れてねぇんだよ、察しろ」
「超ウルトラミラクル頼れるぼっち」
「ぐはっ!?」
なんだこのノリのいい先生は!?
やはり絆レベルが上がりすぎて好感度メーターは振り切りこのままグレンルートに突入してしまうのだろうか?
「くっ……俺のことはとりあえずおいとけ。ラクス、お前はどうしてあんときにルミアのことを聞かなかった?」
「はぁ……どうと言われましても」
「どうも引っかかるんだよ。疑ってるわけじゃないが、お前は今回そこまで命を張る必要はなかったろ? あぁ、クラスメイトだからって理由は禁止だ。それはあまりにも常軌を逸してる」
それな。クラスメイトだからって命かけるほど俺はお人好しじゃないし。
好感度MAXのやつもいれば、ギイブルみたいに時折ガン飛ばしあうやつもいる。カッシュ? あいつはいい奴だったよ。
「だから、何かしら褒美とかを期待してるのかなって思ったわけだ」
「人が迂回してるのに直進してくるなよな……あれ、もしかして、今の俺って超絶に教師っぽい?」
「あー、っぽいっぽい」
最後の方がなければ割と完璧だったかもしれない。
勢い余ってグレン大先生と言ってしまうかもしれない。
あ、わかる人にはわかるがグレン先生は先生で、ルミアは大先生だ。そこんとこ間違えないように。テストでっから。
「確かに下宿先のシスティの家は名家だからなー。報酬とか貰えるでしょうね」
「なるほど、結局はそこか」
「ま、断りましたけど」
システィの両親は過保護だからな。当然、ルミアに対してもシスティ同様に過保護。
実は二人は入院して痛みがピークの二日目に来た。ルミアとシスティが来た時間をずらすようにして。
内容はグレン先生が言うように報酬の話。娘を助けていただきありがとうございますと言った内容の。
つか、ルミア補正で話に尾ひれがつき過ぎてた。内容の飛びかたがマグロ並みに速かった。
ともあれ、話の顛末はさっき言ったように断った。
「はぁ!?」
「世の中には金じゃ解決できないことあると思うんです。給料日から1週間でギャンブルで使い果たしそうな先生にそれがわかりますかねぇ?」
「そっ、そっ、そ、そんなアホみたいなことしたことねぇし!? 百戦百勝だし。練磨だし!」
「あんたマジかよ」
「今はんなことはどうでもいい!」
かっこいい言葉だけど内容がなぁ。
「どうして断った? 目的はなんだったんだよ?」
「断った理由としてはダッセーからかなぁ?」
「あー、筋金入りの馬鹿だわ。青春って感じで」
「10代の特権ですから。そーっすね、目的としてはシスティにも言ったんですけど、ルミアの覚悟が気に入らなかったからなぁ」
「ルミアの覚悟は大したもんだぞ? おそらく、メンタルだけならクラスどころか学内随一だ。下手したら、俺を越えてるぞ?」
「強けりゃいいってもんでもないと思うんです。ルミアは死ぬ覚悟を決めていた。それを生きる覚悟に変えて欲しかったんですよ」
「そりゃ、どうしてだ? あいつがどんな覚悟してようがお前には関係のない話だろ?」
「話の流れで察っせませんかねぇ? 男が女のために命を張る理由なんて一つでしょう?」
「はぁ? そりゃ、小説の中とか舞台の上くらいのもんだろ……って、え? お前マジで?」
「言っときますけど、バラしたら
「パワーワードすぎんだろ、それ。まぁ、わかった。本当に青春してるわ」
「ありがとうございます?」
本当にニヤニヤすんのやめれ。
そういやシスティ、ルミアにカッシュってこの後来るんだよなぁ? 聞かれてないよな?
「あ、それと。ルミアの素性、本当に知らなくていいのか? あいつをそう想うならこれから120%巻き込まれるぞ? ちなみに20%はお前が巻き込まれに行くのを計算に入れてる」
「いいっすよ知らなくて。あんな苦しそうな顔で自己紹介なんてされても気分良いもんじゃないですし。なにより、ぽっと出の俺がそこらへんに口を挟むのもおかしな話ですよ」
「お前、実はタラシだったりする?」
「生まれてこのかた、彼女できたことないです」
「すまん」
「許さん」
お互いに肩に手を置いて慰め合う。
さぁ、俺とグレン先生の明日はどっちだ?
ん? なんか扉の外で物音がしたような……まっ、どうでもいいか。
◆
心臓が高鳴る。
この心音が大きすぎて周りにまで聞こえてしまうのじゃないだろうか?
あぁ、そうか。彼はそんなことのために命をかけてくれたのか。
互いに鈍感だなぁと想う。
そうだ。別段、何も想わないたかがクラスメイトに乞われもせず自ら勉強を教えに行くだろうか?
白状しよう。
―――あのノートを一緒に眺める時間が
―――図書室で資料を集める時間が
―――いっしょに過ごす時間が
今思えばそういうことなのかもしれない。
芽吹いていたのはずっと前からで今回の件でようやく気づいた。気づけた。
あぁ、だめだ。心臓が高鳴りすぎて病室の外からでも聞こえてしまう。
足早に去ろう。
するとしばらくして角でカバンを家に置いて身軽となったシスティにあった。
「あれ、ルミアどうしたの?」
「うん、みんな力仕事で疲れると思うからジュースを買いに」
「結構な量があると思うけど手伝いましょうか?」
「ううん、大丈夫だよ」
「そう、でもルミアってば顔が―――」
「もう行くね。肝心な時に水分補給しないと、ラクス君とかは特に脱水症状になっちゃうから!」
そしてルミア何かを思い出したかのように小走りでその場を後にした。
「ルミア、顔が真っ赤だったけど。大丈夫なのかしら?」
そこでシスティは納得した。
ルミア自身がなぜかは不明だが脱水症状になりかけていたのだと。
体調管理が優れるルミアには珍しいが、たまにはあることだろう。
優れた人ほど、難があるものだ。
グレンはそれが顕著である。
「〜っ!? どうしてあんな講師のこと!」
一人で悶絶する姿はまさに白猫である。
ちなみにシスティがこのことを病室で取っ組みあいをしていたグレンとラクスに話すと、ラクスは崩れ落ち、グレンは大爆笑するという彼女にとっては謎の構図が出来上がった。
とりあえず王女様救出まで書き上げたら投稿します。
このお話まで見ていただきありがとうございます。
首を長くしてお待ち下さい
そしてこの場を借りて誤字報告の感謝を申し上げます。
エクスプローラ様、ありがとうございます。