ロクでなし魔術講師と超電磁砲   作:RAILGUN

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願わくばどうか、月の光に導かれるまま安らかに
RAIL 1


 

 退屈な病院生活とはすぐにおさらばすることができた。

 あばよ、看護師さん!

 なんでも医者が驚くくらいに治りがとても早かったらしい。

 主人公の隠された力が覚醒……とかじゃない。

 【ライフ・アップ】と電磁波治療を併用した結果だ。

 え、病院にいる意味無いって?

 そんなことないですよぉ〜。事実、入院したての頃は加減が分からずに悪化させたし。

 【ライフ・アップ】もやり過ぎは良くないみたいだ。細胞が死んでるとか言われた時には死ぬかと思った。

 しかし、どうしても休日を挟んで学校が始まる前に退院して起きたかった。

 

 このままじゃ、単位がやばい。

 

 出席日数的に各科目、あと一回休むと死ぬかもしれないところまで来ている。

 留年は嫌だ。俺はルミアと一緒に進級して明日を掴むんだ! 

 願わくば、俺とルミア以外は全員留年しろ。フハハハハ。

 

「じー」

 

 システィがいるから無理だよなーとか考えて公園のベンチで休憩してると視線を感じた。

 

「じー」

「……アホがおる」

 

 おいアホのことをリィエルって呼ぶのやめろよ!

 

 ってくらいにお間抜けな画が俺の前には広がっていた。

 公園の隅にダンボールで家を建てている家主、リィエル。

 宮廷魔道師をクビになったのか。

 残念だな、憐れリィエル。そんな目で見つめられても施しも慰めもやらん。

 だからハトみたいに群がってくるな、お前の近くは爆心地になるんだよ!

 

「家がない……」

「知るか、この野郎! どうせ、家があっても更地にするだろてめぇ!?」

「アルベルトがそう言えばラクスがどうにかするって」

「あの青髪クソイケメンスカし野郎がぁぁっぁぁ!!!」

 

 面倒事を俺に全部押し付けやがった。

 

「そんな義理も人情も俺には無いの!? 分かる?」

「うーん……あっ」

「やめろ、お前はきっと良くないことを言おうとしている」

「《万象に希う・我が腕手に・剛毅なる刃を》」

「だぁーくそぉ、やっぱりそうなるのか!」

 

 俺はリィエルの武器を高速錬成されている途中で叩き折る。

 

「あっ、なにをするのラクス」

「それはこっちの台詞だ、この脳筋娘が。つか、てめぇマジでなにをしてるんだよ。キャンプしに来た訳じゃないだろう」

「グレンを守りに来た。ついでにラクスも」

「意味不明なんだが。誰か翻訳機を貸してくれ」

 

 俺とグレン先生に宮廷魔道士の護衛なんざ必要ない。

 狙われる筋合いも、宮廷魔道士に借りを作った覚えもないし。

 

「護衛対象の名前は?」

「グレンとラクス」

「ルミアって子はいなかったか?」

「……分からないけど、私はグレンとラクスを守りたい」

「お前の気持ちをいつ聞いた!? 嬉しいけど!? その優しさにラクスさんやられちゃいそうだけど!」

「迷ったら自分の直感を信じるべき」

「それはアルベルトさんみたいな頭脳派がやっていいことで、お前はダメだ」

「なんで?」

「……もう疲れたよ、アルラッシュ」

 

 これまじで時給発生しねぇかな。

 リィエルの翻訳係とか一カ月も保たずにノイローゼになるだろ。

 アルベルトさんはすげぇな。再確認。だが、殴る。

 

「あっ……そういえば、思い出した」

「ん、なになに?」

 

 リィエルは珍しく使ってない脳細胞を駆使して物を思い出したらしい。くしゃくしゃになった紙を渡してきた。

 細かい要項がびっしり書いてあるが、くしゃくしゃでよく読めないが、目立つところが一つ。

 

「ねぇ、これ鷹の紋がついてるんだけど」

「なにそれ」

「お前んとこの人事異動の文章だよ。軍の最重要機密だよ!」

「?」

「え、なに。これ、キレていいよね?」

 

 なんで俺がこんなことを知ってるかといえば、一度経験しているからだ。

 肩書き的には外部協力者的なやつ。オブザーバーだ。

 アルベルトさんが言っていた『貢献』ってやつが関係してくるがそれはまた今度でいいだろう。

 今はこのバカをどうにかしなければ。

 えー、なになに。

 

 ……。

 

 以下の者をアルザーノ帝国魔術学院に編入させる。

 尚、目的はルミア=ティンジェルの護衛である。

 

 リィエル=レイフォード

 

「ねぇ、リィエル。お前まじで護衛に来たの?」

「最初からそう言ってる」

「うん、でもね。人には信じられることとそうじゃないことがあるんだよ」

「じゃあ、はやく私を信じて」

「お前の過去を振り返れぇぇぇえええ!!」

 

 頭に全力チョップを叩き込む。

 俺の手が痛い。

 頑丈なやつめ。

 つかなんで、リィエルはこれを俺に渡した?

 

 と思って下の方を見ればなぜか俺の名前が。

 

 現地補佐としてアルベルト=フレイザーの推薦により以下の者を任命する。

 

 ラクス・フォーミュラ

 

「うあぁぁるぅぅうべぇぇるとぉぉぉぉおお!!!」

 

 自然と呼び捨てにしてしまったが許してほしい。

 これはあのイケメンスカし野郎が全て悪い。

 助けてグレン先生。あんたがまともに見えてきたとか世界が終わってるわ。

 

「リィエル、家は?」

「無い」

「……まじかよ。特務分室、滅びろ」

 

 これはアレか。俺の家に住まわせろということか。

 いつ爆発するかわからない爆弾と同じ屋根の下で寝ろと。

 いや、ルミアとシスティが仲良くなればワンチャン押し付けられる……ダメだ! システィはともかく天使様になにかあったら大変だ。

 

「よし、お手」

「わんっ」

 

 リィエルは俺の右手に左手を乗せる。

 よし、しっかり覚えているな。

 

「一回転」

「わんわんっ」

「お座り」

「わんっ」

 

 しゃがむリィエルの頭を撫でる。

 

「よし、いい子だ」

「ねぇ、ラクス。これはなにか意味があるの?」

「重要な儀式だ。このせいで俺は貧乏くじを引く羽目になった」

 

 ほんの思いつきだったんだ。

 が、やってみれば案外、簡単にできるもので。

 戦闘時以外ならリィエルの行動を強制的に止める事ができる。戦闘の時とか人の話を聞かないし。

 これを披露したらアルベルトさんとか強そうなおじさんとか若いクソイケメンに神を見る目で見られた。ちょっとドヤ顔を披露。

 ちなみに察しはついてるだろうが、俺と軍との繋がりは意外と薄い。宮廷魔道士の知り合いなんてリィエルとアルベルトさんくらいしかしらないし、イグナイト室長をチラッと見たくらいだ。

 

「よし俺の家に泊めてやる。扉の開け方から教えてやるから覚悟しとけ」

「なにを言ってるのラクス。扉の開け方くらい分かる。馬鹿にしないで」

「じゃ、鍵がかかってたら?」

「マスターキーで切り刻む」

 

 切り刻むあたりで察した。

 初心者講習から始めなくては。

 

「ちなみに着替えとかは?」

「学生服と制服と下着が1セット」

「金やるから速攻で見繕って買ってこい」

「ん、分かった」

 

 妹のようなリィエルが下着だの口にしても全く恥ずかしくないが売り場に行くのは別だ。

 あそこは聖域。入場券がないと入れないのだ。

 

「適当な作法は俺が教えるが、乙女の作法はルミアとかシスティに教われ」

「乙女の作法?」

「そう。例えば、ご飯はダイエット中だから摂生してるのーとか」

 

 俺も乙女の作法は知らないので適当にっぽいことを真似してる。世界中の女子学生に頭を下げる準備はできてる。

 

「ダイエット? それはよく分からないけど3日間は食べなくても平気」

「レベル違うから。基準を軍レベルにしないで、それは絶食って言うの」

「でも、ラクスは言ってた。飯なんて適当に食えばいいって」

「極端すぎないですかねぇ?」

 

 まぁ、食事を軍の支給品で済ませてしまうくらいに興味がないリィエルと俺の味覚は大体、似通ってる。

 腹に入ればいいのだ。高級でも低級でも味の違いなんて庶民の舌には分からない。

 

「とにかく、今日はしっかりと飯を食わしてやる。どうせ、お前のことだ碌に飯を食ってないんだろ?」

「うん、支給品は来る前に全部食べたから」

「アホか」

 

 俺は自信満々に馬鹿なことを口にするリィエルの頭を撫でてやる。

 まぁ、そのなんだ。

 口ではうるさいとかやかましいとは言うが、リィエルは妹分みたいなもので……そうだよ。

 俺はこれからの生活が少し楽しみだったりする。

 

 ◇

 

 そして運命のリィエルを伴っての久しぶりの登校日。

 グレン先生を見つけ次第、襲いかからないように神経を張り巡らせている。

 つーか、あれだなグレン先生ってば特務分室出身か。

 リィエルに話を聞けば、私とグレンが組めば敵なしらしい。

 はっ、ふーんって感じだ。

 特務分室のエース様が言うことだから本当のことなんだろうが、やっぱアルベルトさんの万能さと言ったらもう。

 特務分室最強ペアの話とかになれば絶対にアルベルトさんが入ってるに違いない。

 

 ってな脳内ランキングを作成してるとルミアが見えた。システィもだ。

 あれ、リィエルは?

 

「お座り!」

「わんっ!」

 

 俺は反射的に口にしていた。

 さすがはリィエルの高速錬成。既にグレン先生が白刃取りを行なっていたとは。

 リィエルは先生の腹の上でお座りしている。剣を振り下ろしながら。

 

 これ、間に合わねぇなぁ。

 

 少なくとも俺の反射神経が足りない。

 リィエルはグレン先生に会えたのが嬉しいようで楽しくシェイクされたりしてる。

 

「楽しそうですね。グレン先生」

「オススメの眼科を紹介してやるよ。現地補佐殿」

「《駆け抜けろ・紫電の流星よーーー」

「ちょっと、それは洒落にならないぞ!?」

「えいっ」

「いだいっ!?」

 

 詠唱は【超電磁砲】、実態は【ショック・ボルト】のパーティ魔術を披露しようとしたら後ろから何者かに抑え付けられた。

 つか、声と背中に当たる……うん、雰囲気で分かった。

 

「グレン先生に護身術を少しだけ教えてもらったの。ダメだよ、ラクス君。そんな危ないものを使っちゃ」

 

 な……に……!?

 

「グレン……貴様、こんな恐ろしい技を教えたのかぁぁ!!??」

 

 常人なら昇天してしまうぞ!? 一度経験してる俺でも鼻血が出そうなのに。

 

「言わんとしてることは分かるけどな、基礎しか教えちゃいねぇよ。そんなことしたら落雷がピンポイントで降ってきそうだからな」

「任せてください」

「任せぇねぇよ。あと、先生だ」

「ルミア先生、グレンがちょーしくれてます」

「ラクス君?」

「いだいだだいいい!? グレン先生、今日もかっこいいですね! 博打で決めようとして磨った男って分かります。面構えがちがう!」

 

 事実、また痩せこけてるし。

 あのパーチーが想像以上の出費でしたか。

 

「こっちはこの前のパーティで失った取り分どうにかしようと躍起になってんの! お馬さんがいいかなとか、お船もいいなとか……くそっ、そこに直れ、【イクスティンクション・レイ】だ」

「その熱意を仕事に向けてくださいってば……リィエル、GO!」

「わんっ!」

「てめぇ、ラクス、それはズルいぞ!」

 

 はははっ勝てばいいのだよ、勝てば。

 リィエルとグレン先生が追いかけっこしながらシスティもそれを追う。

 俺はというとルミアの天使のような感触を……雰囲気を感じた拘束が解かれ、ゆっくりと並んで歩いている。

 

「にしても、どうして護身術なんか? グレン先生の口ぶりじゃセンスはあるみたいだけど、急に始めたには理由があるんだろ?」

 

 ルミアは俺の言葉を聞くと、少しだけ微笑み走ってくるりとその場で一回転。

 

「私、待っているだけの女の子にはなりたくないの!」

 

 花の天使だった。

 まじで天使だった。

 いい女過ぎるよルミア。

 これは天の智慧じゃなくても狙いますわ。把握。

 あれか、奴らの目的は感応増幅者じゃなくて天使の確保か。

 あぁ、真の目的に気づいてしまった俺は早々に組織に消されてしまうのか!

 

「なんかまたお馬鹿さんなことを考えてる顔だ」

「酔っ払いよかマシだろ?」

「えっ……もーっ! あれは忘れてって言ったのにぃ!」

「はっはー、電気を扱う体だからな。細かいことはよく吹き飛びやすい。それでも忘れてないのは大事なことだからじゃね?」

「確か関節を押さえて……こうっ!」

「暴力に訴える系ヒロインは嫌われると思うんだ」

 

 肩がミシミシ言ってる……ちょっとルミアさん聞いてます!? つか、効いてます!

 

「わ、私がラクス君のヒ、ヒロイン……」

「妙なところでショートするなぁぁぁ!?」

 

 そのあと、ルミアが正気を取り戻すまでに肩が二、三度外れかけたのは言うまでもない。

 しょんぼりとするルミアの肩に手を置いて慰めたら、二度としないことを誓ってくれた。ええ子や。

 

 つか、始業時間もう少しやんけ。

 

「いっけなーい、遅刻ぅ遅刻ぅ!」

「て、てっを繋いで……ッ!?」

 

 ふざけながらもルミアの手を取り、全力疾走した。

 無意識に手を取ったルミアの手から感じる体温はとても高かった。

 

 んで、学校に着いて早々に手は離した。

 名残惜しかったが。えぇ、とても。

 しかし、しょうがない。眼鏡とかソフトモヒカンに煽られるのも面倒だし。何より女性同士の方がめんどくさいだろうし。よくわかんないけど。

 

「グレンはわたしの全て。わたしはグレンのために生きると決めた」

 

 リィエルが自己紹介でさっそく、爆弾を投下してくれた。

 グレン先生も頭を抱えているが、しょうがない。そいつはそういうやつだってわかってただろう?

 

「あと、ラクスも」

 

「「「殺す」」」

 

「ちょっと、待て待てぇ! 取って付けたように言ってるから! きっとなにかの誤解だからぁ!?」

「……ラクスは私のこと嫌い?」

「グレン先生は何を吹き込んでるじゃボケェ!!」

 

 リィエルは耳元で囁かれた言葉を再生するアンプと化してた。しかも音源は大魔王グレン先生だ。

 

「お前、割と役に立つからこういうときじゃないと、虐めれないし」

「てめぇ、それでも教師か!?」

「えぇー、ラクス君ってば誰のおかげで単位取れてるか知らないのぉ?」

「ぐぬぅぅぅぅ」

 

 そうだグレン先生はめんどくさいからという理由で定期テストをしない。授業態度、課題をグレン先生の独断で評価をされる訳だ。

 

「まぁまぁ、ラクス君。私は信じてるよ」

「ルミアぁ……」

 

「「「ちっ、死ね」」」

 

 まさしく大天使である。

 敵意と殺意を隠さないクラスメイトなぞどうでもいい。

 

「でも、リィエルのこと。あとで聞くからね? 詳しく」

「信じてないよね!?」

 

 クラスには敵しかいなかった。

 ことの顛末はうるさいとかでハーレイ先生が乱入して本日の授業予定が大幅に狂ったと叫ぶグレン先生といういつものやつ。二人とも仲が良いな。

 やけくそになったグレン先生は次の授業を急遽、実技魔術演習とした。

 あ、いや。リィエルのことを馴染めるようにしてるのか。うわー先生っぽい。

 

「《雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち払え》」

「おぉ、さすがだな白猫。六分の六。全弾命中だ」

 

 今日の演習は200メトラ離れたターゲットを6回のチャンスで撃ち抜くというもの。

 勝った。雷撃系なら下手くそでも上手く異能を使えば誤魔化せ……ないわ。監督、グレン先生だし。一瞬でバレる。

 にしてもシスティはすげぇな。

 最近、グレン先生と一緒にトレーニングを始めたらしいがここまで急激に成長するとか泣きそう。

 俺? グレン先生曰く、専門外過ぎて教えられないから暇になったら格闘訓練だけはしてくれるとのこと。

 うん、もともとそういうスタンスの方が合ってるし、それを見抜かれたんだと思う。グレン先生が専門外とか嘘くせぇし。

 

 このクラスはフツーにすげぇな。

 システィ、ギイブルは全弾命中。

 次点でナーブレス。でも、こいつは撃つ直前にくしゃみをしたからで実質は全弾命中と言っていいだろう。

 問題はリンだな。全弾外したカッシュはたまたまだとしてリンは撃つときに目を瞑るから当たるもんも当たらない。

 これは個人指導だなーとかグレン先生が呟いていた。

 

「よし、次はリィエルだ」

 

 なんか嫌な予感がする。

 

「リラックス、リラックス!」

「固くなりすぎですわ。もっとこう、しなやかに手を伸ばして」

 

 そうだね。予想通りだね。

 リィエルは時に空へと、ある時は地面へと何処を狙ったらそうなるのかと言われる狙撃を披露してくれた。

 残りは一回。

 すると、リィエルはグレン先生と話し込み、十字剣を錬成した。

 

 十字剣を錬成した。

 

「て、ちょっと待てぇ!? おすわーーー」

「いやああぁぁああああ!!!」

 

 ヒュンヒュン、グサってなってドカーン。

 うわー、ガチガチの戦闘魔術(物理)じゃないですか、嫌だー。

 

「ん……六分の六」

 

 ドヤ顔しながら言い切るリィエル。

 俺は困り果てるグレン先生にリィエルの頭を撫でながら近づいた。

 

「どうするんですか、クラスの奴らびっくりっていうかドン引きですよ?」

「素の力が常人とは比べ物にならないからな。あいつらにはリィエルが怪物に見えてるんだろうよ。どうしたもんか」

「俺にルミアが天使に見えるようなもんですかね?」

「あいつらは正常。おまえは頭がおかしい。ここ、違うから。試験に出すから覚えとけ」

「試験やらねぇくせにディスってんじゃねぇよ」

「……俺らが喧嘩してる場合じゃないな」

「なっ……」

 

 グレン先生が珍しく俺より先に大人しくなった。

 しかし、確かに俺らが喧嘩をしてる場合じゃない。

 傍目でルミアは俺に手を合わせてどうにかしてってお願いしてきた。

 さすがは学内メンタルランキング1位。肝が据わってるな。これくらいじゃ驚かないか。

 

「お前を最後にしたのも保険だったしな。どうにかしろ、多少は目を瞑ってやる」

 

 つまりは異能の使用許可だ。

 確かに全力でやるのは構わないが、午後の授業は全身筋肉痛で受けないといけない。

 

「評価は最大にしてやる」

「くっ……背に腹は変えられないがーーー」

 

 俺がまだ躊躇っているとルミアが大きく手を振りながら声援を飛ばしてきた。

 

「ラクス君! 頑張ってー!」

「任せろ、とっておきを見せてやるぜ!!」

「お前の扱い方は完全に把握したわ」

 

 俺は未だにぼーっとしていたリィエルの頭を撫でるのをやめて、ターゲットから200メトラ離れた位置に立つ。

 カッコつけた手前、ダサいのはいけない。

 軍用魔術も一部の人間はトラウマなのでアウト。

 なので、リィエルが使った十字剣を拝借する。

 

「重いっ」

 

 こんなもんを振り回された方はたまったもんじゃないないな。グレン先生、少しだけ同情します。

 決して俺が軟弱なわけじゃないから!

 

 よし。それじゃ行きますか。

 心の中で【ラウザルク】!

 

「おい、ラクス。体がバチバチ言ってるぞ。詠唱を間違えたのか?」

「いいや、これが正解だよ、カッシュ」

 

 ルミアとかシスティは何度か見たことがあるので異能を使ってると気づいただろう。

 ギイブルあたりなんかはこの前の【砂鉄操作】の延長線上だとか思うだろう。無駄に頭が回るし。

 

「よっしゃ、行くぞ!! 《雷精よ・紫電の足技以て・蹴り飛ばせ》!」

 

 俺はそのまま十字剣の柄を蹴り飛ばした。

 超電磁砲のスーパー下位互換だ。つまり物理で殴り、少しだけ雷撃で強化する。

 ちなみにこの合わせ技は俺の【超電磁砲】に次ぐ破壊力。さすがに威力差があるが、200メトラ先にある壊れかけのターゲットを粉々にして学校の塀を破壊するぐらいは簡単だ。

 

「ふっ……先生、六分の粉々ですよ」

「やり過ぎだ馬鹿野郎!? 修繕費を誰が出すんだよ!」

「痛いっ!? 生徒を叩くなんてPTAに行くぞこの野郎! つか修繕費は学校に出させろ! そのための書類諸々だろうが!」

「お前は天才かっ!?」

「褒め過ぎだぞ、先生!」

「一緒に書類をでっちあげるぞ!」

「望むところですとも!」

 

 俺と先生はガシッと握手を交わして、事務をどうやって騙そうかを考えていた。

 

 えぇ、もちろん。グレン先生はシスティに俺はルミアにたしなめられました。

 

 




ロクアカが終わってしまったショックがでかすぎるぅ……更新遅れてすいません、ロクアカ成分をどうやって補給できるか考えてました。
まだ、途中を描ききれていないのでまばらな更新になると思いますが、ご容赦ください。
それとルミアを可愛く描く為に描いている途中で思ったことがあります。
作者が登場人物にセクハラをするつもりで描けばいいと。
これから頑張ってルミアにセクハラしまくります。よろしくお願いします!

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