不死人、オラリオに立つ   作:まるっぷ

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投稿が遅くなりまして申し訳ありません。

年末で思いのほか忙しく、中々書く暇がありませんでした……。


第六十一話 覚悟

 

「時間は与えたつもりだったんだがな。少しばかり遅かったようだ」

 

「そんな……!?」

 

「っ!」

 

淡々と告げるグリッグス。彼の前には全身に痛ましい傷を刻んだロイエス騎士たち、そして彼らを取り囲んでいる闇の騎士たちの姿がある。

 

身を挺して時間を稼いでくれていた彼らの惨状に息を飲むレフィーヤを背に、リヴェリアは杖を構える。その顔を険しく歪めている彼女は、グリッグスの放った言葉の意味を正しく理解していた。

 

「この世界の魔術がどういうものなのか体験しておきたかったが、こちらも“王”の使命の為にある身だ。これ以上時間をかける訳にはいかなくてね」

 

そう言って、グリッグスは杖を掲げる。

 

放たれたソウルの矢は鋭く天を突き、周囲に散らばる闇の騎士たちは瞬時にそれに反応する。彼らの目を自らに集めた魔術師は、やはり淡々とした調子で静かに告げた。

 

「行け、“王”の騎士たち。我らの敵を殲滅しろ」

 

“王”の側近たるグリッグスの言葉。その重さを知る闇の騎士たちは即座に狙いを定めた。

 

幾人かの不死人、そしてリヴェリアとレフィーヤ。一塊(ひとかたまり)になっていた彼らを始末する事がこの場の最優先であると理解した彼らは、互いに互いを鼓舞するかのような雄叫びを上げ、猛然と突進してくる。

 

「ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」

 

その数は優に二十を超えていた。四方から押し寄せる髑髏の集団は、命を刈り取らんとする死神の如く武器を振り上げる。

 

剣を、槍を、槌を。そのどれもが血を求めていると言わんばかりの迫力に不死人たちは玉砕の覚悟を決め、リヴェリアは背後の弟子を庇うように片腕を広げ―――そしてレフィーヤは、高らかに詠唱を始めた。

 

「【誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。押し寄せる略奪者を前に弓を取れ。同胞の声に応え、矢を番えよ】!!」

 

「!?」

 

驚き、振り返ったのはリヴェリアだ。自身でさえ絶望的と感じる状況の中、遥かに年下の少女は即座に状況を判断し、己に出来うる最良の判断を下して見せたのだ。

 

しかし、それも賭けだ。レフィーヤの魔法は強大だがその分詠唱に時間がかかり、本来であれば前衛が敵を抑えていて、初めて成功する代物である。

 

しかし。

 

「【帯びよ炎、森の灯火。撃ち放て、妖精の火矢】!!」

 

「ッ!お前たち、ここまで走れ!!」

 

レフィーヤの詠唱速度に目を剥いたリヴェリアは身を屈ませ、咄嗟にそう叫んだ。すでに走り出していた闇の騎士たちとの距離は近いが、仲間の不死人たちはそれよりもずっと近い。彼らはその声に従い、一も二もなく二人の元へと駆け出した。

 

「【雨の如く降り注ぎ、蛮族どもを焼き払え】!!」

 

「伏せろッ!!」

 

半ば転がり込むようにして集まった不死人たち。

 

リヴェリアの声に従い姿勢を低くした彼らは、彼女らの視界の隅でレフィーヤの足元に現れた山吹色の魔法円(マジックサークル)が眩い光を発するのを目の当たりにする。

 

直後。

 

少女の詠唱は完成し、発動の引き金となる魔法名を口にした。

 

「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!!」

 

魔法円(マジックサークル)より放たれる火炎の豪雨。一つ一つが必殺であるそれらは迫り来る闇の騎士たちの数を遥かに上回り、今まさに駆け付けようとした敵兵たちにまで猛威を振るう。

 

その内の一つは、グリッグスにも向いていた。

 

「っ!」

 

弧を描いて飛んできた火炎弾に目を見開きつつも、グリッグスは即座に杖を振るう。解き放たれた魔術『強いソウルの太矢』は真正面からそれとぶつかり、互いの威力を見事に相殺し合った。

 

が、無事だったのは彼ぐらいだ。他の闇の騎士たちは悉く焼き払われ、レフィーヤたちのいる一帯の周辺は焦土と化している。地面は抉れ、陥没し、舞い上げられた灰が辺りを薄暗く染め上げていた。

 

その中心で立つは、レフィーヤただ一人。

 

力を込めた二本の足でしっかりと立って杖を握り締め、僅かに乱れた呼吸を整えた彼女は、真っすぐにグリッグスの事を睨みつけている。

 

「させません……!」

 

額に滲んだ汗を滴らせつつ、少女は確たる意思を以て言葉を突き付ける。

 

「貴方はここで、私たちが倒しますっ!!」

 

それは自らを、そしてリヴェリアたちを鼓舞するものであった。

 

窮地を救われた不死人たちはしばし呆然としていたが、やがてその言葉に口角を吊り上げ、今度はこちらの番だとばかりに闘気を高めてゆく。

 

そして、リヴェリアも。

 

「……本当に、良く育ってくれた」

 

戦場に似つかわしくない穏やかな微笑みを浮かべた彼女は、レフィーヤの隣に立ち―――。

 

「ああ、倒そう。私たち全員で」

 

「はいっ!!」

 

―――勝利を誓ったその瞳で、真正面からグリッグスを見やった。

 

 

 

 

 

「詠唱を始める、時間を稼いでくれ!」

 

リヴェリアは不死人たちに指示を出し、自らもまた詠唱の準備に移ろうとしていた。

 

「リヴェリア様、私は……」

 

「勿論、お前にもやってもらう事がある。重要な事だ、一度しか言わないからよく聞いてくれ」

 

そんなやりとりを行う二人を背後に、不死人たちは各々の武器を構える。

 

レフィーヤの魔法で敵の第一陣を倒したとはいえ、周囲にはまだ多くの闇の騎士たちがいる。先程の魔法が目印となったのだろう、一直線にこちらへ向かってくる彼らの足取りには迷いがなかった。

 

しかし、そんな事は些事に過ぎない。共に戦うと誓った以上、最後までやり遂げてこその協力者なのだから。

 

「さあっ、踏ん張るわよ!」

 

(でも、これ、ちょっとキツいんじゃ……?)

 

やる気十分といった様子の古い闇姫とは対照的に、フレイムは内心で焦りを感じてしまう。

 

無論逃げ出すつもりは毛頭ないが、押し寄せてくる敵兵に対してこちらの数とでは、余りに多勢に無勢。全力で立ち回ったとしても、すり抜けて突破してしまう者たちが出てしまうのではないか。

 

そんな不安が頭を過ぎった矢先……新たな増援が姿を見せる。

 

「うおおおおぉぉおおおおおおおおおっ!!」

 

野太い雄叫びと共にやって来たのは、髭を蓄えた偉丈夫であった。血糊に濡れてなお蒼く輝く大剣をしっかと両手で握り締め、驚いた顔を見せるフレイムたちを尻目に、闇の騎士たちへと果敢に立ち向かってゆくではないか。

 

次いで現れたのは、獣を模した兜を被った巨漢の勇士。赤錆の浮いた、肉厚の曲剣と直剣を左右に携えたその男は先の偉丈夫に続き、自身もまた敵兵の前へと身体を躍り出させる。

 

バンホルトとヴァンガル。武に秀でた二人の不死人が、この戦いへと馳せ参じた。

 

それだけではない。

 

周囲にいた不死人、そして今までバンホルトたちと共に戦っていた何人もの不死人が駆け付けてくる。武器と鎧をけたたましく鳴らし、それに負けない程の気迫を交えて参戦する彼ら一人一人は、正しく一騎当千の戦士であった。

 

「皆の者、(それがし)に続けえぇぇえええええええっっ!!」

 

「「「 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!! 」」」

 

「あ……何とかなるかも……」

 

「何を呑気な事言ってるの!私たちも行くわよっ!」

 

ホッ、と安堵にも似た息を漏らしたフレイムに一喝を入れ、古い闇姫もまた後れを取ってなるものかと動き出す。

 

数の差は埋まった。

 

後は各々が死力を尽くして戦い、勝利を掴み取るだけである。

 

 

 

 

 

「はぁ!ぜぁあッ!!」

 

真正面から激突した両陣営。不死人たちを率いて先陣を切ったのは、やはりバンホルトであった。

 

猛然と得物を振り回し、単身で敵陣深くまで斬り込んでゆく。自殺行為にも等しい戦いぶりだが、前後左右を敵に囲まれているからこそ、彼は己の培ってきた武を遺憾なく発揮できている。

 

同時に敵陣に突っ込んだヴァンガルもまた、凄まじい戦闘を繰り広げている。

 

恵まれた巨躯と膂力から放たれる二つの斬撃は、目の前の敵を片端から斬り飛ばす。組み付いて動きを止めようとする者たちもいたが、彼は構う事なく突き進み、やがて敵の集団に体当たりをかまして難なく振りほどいてしまった。

 

「おぉぉおおおおおッ!!」

 

多少の傷など気にも留めない。すでに死したこの身体に、今さら一体何の未練があろうか。

 

果てしなく続く静寂の中でささやかな語らいの時を共有し、彷徨い続けていた己の身体を倒してくれたファーナム(あの不死人)の助力になるのであれば……ヴァンガルは何度でも、かつての猛獣を解き放つのだ。

 

そんな二人の開けた()に、不死人たちが流れ込む。彼らはその勢いのまま、それぞれの得物を振るいながら敵陣深くへと侵入してゆく。

 

「押せ、押せぇぇええええええ!!」

 

「喰い破れえぇぇえええええ!!」

 

破竹の勢いとは正しくこの事。初手で優勢を掴み取った不死人たちは止まる事なく突き進んでゆく。

 

(うわ、滅茶苦茶だ。こうなったらもう……)

 

そんな中、ポツリと胸の内で小さく呟いたフレイムは、手中にあった黒鉄刀を消し去り―――『黒騎士の大剣』を掴み取った。

 

「これで行くしかない、かっ!」

 

集団戦となった今、複数を同時に相手取る戦い方をせざるを得ない。敵の攻撃を避け続けて隙を突いて反撃という手段が難しくなってしまった以上、ひたすらに目の前の敵を斬り潰す方がずっと効率が良い。

 

常人の身に余る特大剣を難なく振り回すフレイムに、生半な盾や防御などは意味を成さない。よしんば凌いだとしても、内包した炎の衝撃によって身体はよろめき、すかさずやって来た別の不死人たちによって闇の騎士たちは次々に打ち倒されていった。

 

「よし、この調子で……!」

 

「斜め下に構えて!」

 

このまま更に進もうとした矢先、フレイムの背後から飛んできた声。それは先ほど短い会話を交わした古い闇姫のものだった。

 

「へっ?」

 

振り返った視線の先にいた彼女は、なんとこちらへ急接近してくるではないか。

 

つい間の抜けた声を漏らしてしまうも、避ける気配など欠片も感じさせないその足取りに、フレイムの身体はその指示に従う事を選んだ。

 

「うわぁ!?」

 

驚くフレイムを置き去りに、古い闇姫は黒騎士の大剣の腹を蹴って跳躍。猫のように軽い身のこなしで彼女の頭上を通過すると、着地と同時に敵兵の背後を取った。

 

「がッ!?」

 

何が起こったのかも分からないまま、背中を袈裟斬りにされた闇の騎士が崩れ落ちる。

 

「なっ、なっ、なあっ……!?」

 

「ふぅ、ありがと。お陰で上手くやれたわ」

 

突然の事に目を白黒させていたフレイム。しかし、自分の武器を踏み台にされたという事実に今更ながら怒りが湧いてきたのか……古い闇姫に向け、この日一番の大声を上げた。

 

「か、勝手に人の武器を踏み台にしないでよ!?」

 

「あぁ、ご、ごめんね?でもちょうど良かったし、つい」

 

「僕は良くない!!」

 

「ごめんなさい!今度はもっと早くに言うから!」

 

「そういう意味じゃなくてっ!!」

 

戦場の真っ只中に響くフレイムの抗議の声。

 

必死に弁明しようとし、火に油を注ぐ古い闇姫。

 

余りにも場違いなその光景に、周囲にいた闇の騎士と不死人たちは『何やってんだ、あいつら?』という共通の感想を抱くのであった……。

 

 

 

 

 

闇の騎士たちと不死人たちとの衝突から一拍遅れて、リヴェリアの詠唱は始まった。

 

「【―――終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に(うず)を巻け―――】」

 

一言一言を噛み締めるようなその詠唱速度は酷く遅いものだ。しかし彼女を起点として巻き上がる魔力の流れは、質も量も普段とは比べ物にならない。まるで別次元の魔法を行使しようとしているかの如きその背に、レフィーヤはごくりと生唾を飲み込んだ。

 

(っ、気後れしちゃ駄目!)

 

が、次の瞬間には己の役目を思い出し、弱気になりかけた自分を意識の外へと追いやる。

 

やれるかどうかではない、やるのだ。成し遂げなければ、ここにいる全員の想いを無駄にする事になってしまうから。

 

スゥ、と大きく息を吸い込み、静かに吐く。リヴェリアの教えである『大木の心』を胸に、レフィーヤもまた自分のすべき事だけ見据え、前を向いた。

 

 

 

 

 

「―――っ!」

 

リヴェリアの練り上げる魔力の高まりは、離れた場所にいるグリッグスにも伝わっていた。

 

視界を埋め尽くす闇の騎士たちと不死人たち。そんな中、()()だけ色が付いたかのようにはっきりと分かる。魔術師として『闇の王』に付き従ってきた彼だからこそ、リヴェリアが放とうとしている魔法(魔術)の強大さに気が付く事が出来た。

 

「まさか、これ程とは……」

 

グリッグスは己の中での認識を改める。見縊(みくび)っていた訳ではないが、それでも予想を遥かに上回る敵の存在に、とうとうこちらも本気にならなければと理解したのだ。

 

「師よ……使わせて頂きます」

 

そうして取り出したのは、一本の杖。

 

ヴィンハイムで広く使われているものと材料を同じくしながら、偉大なる魔術師が永きに渡って使用した事により鍛えられた、至高の杖―――『ローガンの杖』だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔術の叡智に満たされた書庫。そこに至る事こそがローガンの長年の目的であり、至上の喜びである。

 

しかし、師は白竜の妄執に飲まれてしまったのだと、彼は言った。

 

『だから……君は、殺したのか……』

 

『ああ』

 

祭祀場の片隅にてグリッグスにそう伝えた彼は、静かに頷く。

 

上級騎士の鎧に身を包み、兜によって阻まれた顔は表情を読ませない。恰好同様、以前とはまるで変わってしまった雰囲気は、彼にもまた何かしらの変化があったのだろうと察するには十分だった。

 

『そうか……ありがとう』

 

やがて、沈痛な面持ちのグリッグスの口から出たのは感謝の言葉であった。

 

『何故、感謝など……』

 

『師は……老ローガンは、確かに公爵の書庫へと至った。だがそれで終わりじゃない。その叡智を全て吸収し、更なる魔術の研磨こそが師の目的だったんだ。それが正気を失い、ましてや狂気に飲まれるなど……そんな醜態、あってはならない』

 

『………』

 

『だから、ありがとう。老ローガンを……偉大な魔術師を、狂気から解き放ってくれて……ありがとう』

 

口ではそう言っていても、震える手がグリッグスの感情を雄弁に述べている。

 

悲しみ。後悔。そして己の不甲斐なさ。もっと自分が力を付けていれば共に連れて行ってくれたのではないか。共に公爵の書庫へと至り、手遅れになる前に師を救えたのではないか。

 

それが思い上がりにも似た、厚かましい感情である事は承知している。それでも、考えられずにはいられない。

 

もしもあの時、もしもあの時、もしもあの時……幾つもの()()()がグリッグスの心に去来するも、過ぎ去った時は戻らない。時間を逆行する術など、どこにもありはしないのだから。

 

そんな己の無力さに震える魔術師に、彼は自身のソウルより一本の杖を取り出した。

 

『っ、これは……!?』

 

『ああ、ローガンの使っていた杖だ』

 

それは書庫にひっそりと残されていたもの。永年ともにあった杖から結晶の錫杖へと持ち替えた、ローガンの遺した至高の一本だ。

 

『私が思うに、これはお前が持つに相応しい』

 

『だが、私には……これを使う資格など……』

 

『ならば、私と共に来い』

 

手を伸ばしかけ、しかし思い(とど)まろうとするグリッグスに、彼はきっぱりと言い放つ。

 

『私はこれより、あらゆる世界の神々を殺す。その中でお前は魔術を磨き、極めればいい』

 

『な、何を言って……』

 

『過ぎ去った時は戻らない。ローガンは死んだ、私が殺した……故にお前が、ローガンの遺した魔術を継ぐのだ』

 

兜の奥より注がれる視線。それはどこまでも真っすぐで、ただグリッグスのみを見つめている。

 

変わり果てた雰囲気を纏っていても、その目だけは、以前と何一つ変わってはいなかった。

 

 

 

白竜()の妄執など踏み潰し、己の力に変えてやれ』

 

 

 

『ッ!!』

 

その言葉が、グリッグスを突き動かした。

 

気が付けば、その手にはローガンの杖が握られていて―――彼は『闇の王』の配下となる道を選んでいた。

 

過酷なる旅路の中で己の力を磨き、ローガンを超える魔術師となる為の道を。

 

そして、なにより―――……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かつての誓いを思い起こしたグリッグスは目だけを動かし、横へと視線を向ける。

 

そこには未だ抵抗を続けるロイエス騎士たちの姿があった。深手を負っている彼らは、それでもなお闇の騎士たちを相手に戦っている。

 

身を挺して戦い続け、リヴェリアが詠唱を行う為の時間を稼ぐ。その行動はまさに、英雄譚に謳われる騎士の在り方そのものだ。

 

(それなら、私たちはさしずめ“悪”の手先といったところか)

 

ふっ、と自嘲するように笑みを浮かべたグリッグスは瞳を閉じ―――、

 

(……それでいい)

 

無造作に杖を振るい、ソウルの矢を放った。

 

弾けた青い閃光は一直線に突き進み、全身に傷を負っていた一人のロイエス騎士の膝を撃ち抜いた。

 

『ッ!?』

 

崩れ落ちる巨躯。

 

仲間の身に起きた異変に他のロイエス騎士たちが驚愕するも、続けざまに飛んできた三つのソウルの矢が残る三人の膝を同様に打ち抜いてゆく。元々脚を負傷していたロイエス騎士に至っては、膝から下が千切れ飛んでしまった。

 

ただのソウルの矢でこれ程の威力を出せるのは、一重にグリッグスが積み重ねてきた魔術の研鑽の結果に他ならない。それを当然の事と理解する彼は、突然の援護射撃に驚く闇の騎士たちにきっぱりと言い放つ。

 

「君たちは彼らを始末しろ。私は前へ出る」

 

そうして悠々と―――目の前に広がる戦場に、グリッグスは足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そうだ。私は君たちにとっての“悪”で良い)

 

 

 

(魔術を極める為。師を超える魔術師となる為に、この道を選んだのだから)

 

 

 

(そして、なにより―――……)

 

 

 

 

 

―――『闇の王()』と共に在り続けると、そう決めたのだから。

 




恐らくは年内最後の投稿となるかと思います。

コロナに振り回されっぱなしな2020年ではありましたが、2021年は良い年となるといいですね!今作も2021年中の完結を目指して頑張りますので、どうぞ宜しくお願い致します!

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