ーオリキャラ紹介ー
矢上スグリ(17歳)
帝丹高校2年生。百々月の友人で弓道部員、引っ込み思案な正確で百々月に精神的にも頼っている節がある。
矢上藤五郎(59歳)
スグリの父親で矢上貿易会社の創設者。一代で会社を築き上げた敏腕商人。
被害者、矢上定兼の父親。
最中景子(37歳)
大人の雰囲気がある美人、矢上家のメイド長で10年以上屋敷に仕えている。
神無月カナ(19歳)
矢上家に従えるメイド、まだ新人で入ってから日が浅い。
遠山渚(25歳)
矢上家に従える執事、5年ほど前から仕えている。優男系のイケメン。
村田登(40歳)
強面の料理人。20年以上屋敷で料理の腕を振るい続ける。
藤木正継(30歳)
矢上家の主治医、若いながらよい腕を持っている。5年前から矢上家の主治医として通っている。
「被害者は矢上定兼さん35歳。レストランチェーン《武蔵屋》の社長です」
武蔵屋は近年、全国に手を伸ばしている大手レストランチェーンで矢上グループの協力を得ながら急速に成長した。
矢上グループも20年前に藤山重工を買収し一大グループを作り上げた事で有名でこの跡取りとして定兼は期待されていた。
「ふむ、そして第一発見者が君かね。羽部くん」
「はい、正確には私を含む5名ですが」
通報を受けて駆けつけた目暮は少し疲れたような様子であった。なんても昼頃にコナンたちが外交官の殺害事件に出くわし、そちらに向かっていたかららしい。
「にしても一日に二件も殺しが起こるとはな。ゆっくり休めんよ」
「お疲れさまです」
「それで、関係者に話を聞きたいのだが…。この子は後だな」
目暮の視線の先にいるのはスグリ。彼女は百々月にしがみつき、赤子のように泣きながら離れようとしない。最愛の兄が死んでかなりショックだったのだろう。
「死因は索状痕からみて窒息死でしょう。凶器はそこに落ちている縄で間違いありませんね」
「しかし、停電して復旧するまで約30秒ほどで窒息死させられるのかね。犯人がこの部屋の外から入ってきたのならなおさらだ」
「窒息死を起こすまで平均的に五分近くはかかります。本当に窒息死なのですか?」
「所見ではあるがそれらしい症状も出ている。まず、間違いはないと思うが…確かに不思議だな」
鑑識として臨場したトメさんは部下に現場の写真を撮らせている間に目暮と百々月に現在、分かっていることを伝えていた。
「首の骨は?」
「折れてはいなかったな。典型的な酸欠症状だったが…」
「どうだね。羽部くん?」
「現状ではなんとも…それと警部。実は事前にこのようなものがこの家に届けられていました」
《32番目の悪魔に気を付けろ。さもなくば命はない》
「これは脅迫文。なぜすぐに警察に通報しなかったのですか?」
「このような物は沢山送られてきます。いちいち相手にしてはキリがありません」
そう答えたのは執事の遠山渚。
「失礼ですがあなたは?」
「執事の遠山渚と申します。5年前からここで働かせて頂いております」
「なるほど」
「身内を疑うよりまずは犯人を探してくださいよ。犯人は窓を蹴破って逃げたんですよ!」
「付近は他の警官たちが捜索しております。落ち着いてください」
食堂の割れた窓からは夜の寒い風が流れ込む。窓は内側から椅子を使って壊したのだと推測されている。食堂は一階にあるために脱出は容易だろう。確かに現在は警察が辺りを捜索しているが…。
「破片の散らばりから見て、割れた窓ガラスは内側から壊されていたよ」
「犯人は外部犯という可能性もあるか…」
「まぁ、可能性は低いですがね」
(まぁ、どう考えてもこの中に犯人がいるだろうからな)
矢上家は一般的な家庭ではない、セキュリティーはしっかりしている。外部から不審な人物の出入りはかなり厳しい、それに窓の外に散らばっているガラス片は綺麗な状態だ。
「そういえば、昼の外交官の殺人事件も毒物による窒息死だったな。猛毒によって神経を麻痺させたことによって殺されたんだ。それなら、すぐに殺せるんじゃないか?」
「確かに、ならば何処かに刺された痕があるはずですが…」
手足、顔、首、腹部など見れるところはあらからた見てみるがそんな様子もない。毒物による症状なんて知らないから良くわからない。
「一度、持ち帰って体表検査をしてもらわんといかんな」
「そうでしょうね。犯人が目立たない所にしてしまえばわかりませんから」
そんな経緯もあり定兼さんの遺体は警察が預かり、検査をすることが決定した。父の藤五郎さんもそれに同意した上での決定であった。
その後、目暮を中心とする事情聴取に対し、全員が身元と年齢などを話し事件当時にいた場所などを確認した。
その時の配置がこちらになる。
その後に目暮の言葉により屋敷にいた六人は別室に案内され身体検査を行うこととなった。女性の担当には百々月も加わり隅々まで調べあげる。
「綺麗なお体ですね」
「ありがとうございます。あなたも若々しくて美しいですよ」
最初に身体検査を行ったのは最中景子。出るところは出てるし引き締まっているところは引き締まっている。まさに理想の体型、その上、筋肉質である。
「いえ、私はまだまだですよ。それにしても脚、すごい筋肉ですね」
「少し鍛えているので。一応、この前にムエタイの大会で優勝したんです」
「なるほど…私も鹿乃さんという知り合いがいましてね。彼女はシステマの使い手ですごい人なんですよ」
「なるほど、メイドはやはり強くなくてはなりませんからね。定兼さまもとても不用心でこの前、悪漢に襲われそうになったのです。その時は私が裏で叩きのめしました…心配だったのですが」
「そうでしたか」
景子は笑みを見せるがその裏には大きな悲しみが含まれていた。そして百々月はずっと聞きたかったことを口にする。
「定兼さんとはどのようなご関係でしたか?」
「…そうですね。婚約者でした、藤五郎さまからもお許しは頂いていて一段落したら日取りを決めようと話していたところです」
「景子さん…」
予想通りとはいえ、気持ちが落ち込む百々月に対して景子は優しく微笑みかける。
「羽部さま、スグリお嬢様をお頼みします。そしてこの事件の真相をつかんでください」
「分かりました。必ず、私が掴んでみせます」
「ありがとうございます…」
静かに目を閉じて安堵したような表情を見せる景子、再び開かれた彼女の瞳には決意の色が見えていた。
ーー
結論から言うと犯人に繋がりそうなものはなにも発見されなかった。
「定兼さん!」
「こら、きみ!」
身体検査も終わり一段落した頃。主治医である藤木正継が屋敷を見張っていた警官を押し退けて食堂に入ってきた。
「大丈夫ですよ。彼は私の主治医です」
「……」
「定兼さん…」
正継は涙を流しながら悲しんでいるのを横目に景子は渚に耳打ちをする。それを聞いた彼は僅かに目を開かせるがすぐに表情を元に戻すと僅かに頷く。
それに満足した景子は何事もなかったかのようにする。
「藤木さん…。一応、貴方にもお話をお聞きします。どうする羽部くん、犯人は分かったかね?」
「いえ、まだ確信は。と言うのもおかしいですね。まだ分かりません」
当初まで犯人に目星は付けていたのだがなにか間違っているような気がする。こんな違和感は初めてだ、なにか気持ち悪い感覚が百々月を支配していた。
「仕方ないな、今夜はもう遅いですからお帰りください。翌朝からもう一度、捜査を開始します」
時刻は深夜0時を回ろうとしている。精神的に疲弊している彼女らをこれ以上、拘束するのは申し訳ない。
「外部犯の線も少しだけ考えて捜査するつもりだ。私は鑑識の結果を待つために署に戻ろうと思うのだがどうだね」
「私も同行させてください」
「分かった。取り合えず署にいこう」
「羽部さん…」
「スグリ、今日はお父さんと寝ろ。いいな、一人で屋敷を出歩かないようにしろ」
「わ、分かりました」
心配そうにこちらを見るスグリの頭を撫でると百々月は目暮に同行する。屋敷自体は警察が監視するから心配ないだろうがもしもの事がある。危険があることを言い含めると一度、矢上邸から引き上げるのだった。
(新一ならもう解決していたかな…)
やはりコナンなしではキツイところがある。彼の助言などで今まで乗り越えてきたが今回は完全に一人、やはり後手に回ってしまう気がした。
ーー
矢上定兼殺人事件捜査本部。そんな場所に平然と座っているのが羽部百々月。個人的にこんな場所にいて大丈夫だろうかと疑念は湧いてくるが…もう慣れた。
個人的に自身の順応能力の高さの方が驚きである。
「ご遺体の体表検査を行ったところ。毒針で刺されたような形跡は発見されませんでした。凶器は部屋の片隅にあったカーテンの開閉に使う紐だということは分かったのですが…」
検査の結果を刑事が目暮に伝えるが分かったことはそれぐらい。指紋は家のものであるために全員のものが付いており証拠にならない。そんな報告を片耳に入れつつも撮られた写真などを物色していると不自然な物を確認した。
「目暮警部」
「何か見つけたかね?」
「景子さんの手袋なのですが、中にゴム手袋が入っていますね?」
「そうだな…手が汚れないようにじゃないのかね?」
鑑識が現場入りしてから一番最初に撮られた写真には僅かだがゴム手袋がある。手首から服の袖までの小さな間だが手術で使うような薄いゴム手袋だろう。
「身体検査では着けてなかった…」
どこかのタイミングで捨てたのか、なぜそのようなことを…。
「手袋の写真を」
「あぁ…」
何かを思い付いたように百々月が動き始めそれに従う目暮。その様子に周りの刑事たちも視線を集める。
「やっぱり、少し焦げてる。すいません目暮警部。一つ調べて欲しいことがあります。それと行きたい場所が、なんとか融通を利かせてくれませんか?」
「分かった。なにかね?」
調子が出始めた百々月の言葉に目暮は頷き行動を開始するのだった。
ーー
「なんでこんな事になってしまったのでしょう…」
玄関の戸棚に頭をグリグリして悶えている。神無月カナは気持ち悪い動きをしながらため息をついていた。そんな様子を玄関で見張っていた警官たちが珍生物を見るかのように見ていた。
「景子さんも渚さんもいないし!顔の怖い村田さんしかいないし!」
「誰が顔が怖いって…」
「ひいやぁぁぁ!」
村田料理士、突然の出現にカナは驚き飛び上がりそのまま着地と同時に土下座。見事である。
「最中ならすぐに帰ってくる。頼まれてたケーキを家に持っていっただけだ。定兼ぼっちゃんと食べる予定だったケーキをな」
「そうですか、そういえば。景子さんって村田さんのケーキしか食べてませんね。」
「そういや、そうだな。なんでだろうな」
カナの言葉に村田は顎に手を当てて頷くのだった。
ーー
「う…がぁ……」
最中景子の住居、その部屋の中で彼女は悶え苦しんでいた。
「貴方…とう……は…た………」
典型的な呼吸困難。彼女は息も絶え絶えにその相手を睨み付け、必死に抵抗する。
「あ…ぁ……定兼……」
愛しいその人。死んでしまったその人の名を呟きながら彼女は意識を手放すのだった。
ーーーー
その翌朝。徹夜明けの百々月たちは景子の住んでいるマンションを訪れていた。
「景子さん。最中景子さん…開けてください」
「分かりました」
目暮はマンションの管理人に言うと鍵を開けさせる。ゆっくりと室内に入る。百々月たちはリビングで首をつっている景子の姿を見つけた。
「くそ、遅かったか!」
そんな光景を見た百々月の怒号は虚しく鳴り響き彼女は顔をゆがませるのだった。
うん、とっても難しい。
オリジナルがこんなに難しいとは予想以上でした。
自分自身が途中でなに書いてるか分からなくなるという謎現象を体験しつつ取り合えず区切りの良いところまで持っていけたかな?オリジナルは次回で終わります。
そのつぎは闇の男爵にいきましょう。
そしてとにかく最後まで読んで頂いてありがとうございます!