マイペースな夜鳥さん(仮題)   作:倭ねこ

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さっそくお気に入りされてたので続きに手を付けてみました
ありがとうございます!


狩りの話。少しグロいので苦手な方は注意


2:命を食べる

素振りを済ませた私は、早速実践練習として食べる獲物を狩りに来た。

 

マッカォ達が居る事が多いエリアを見渡せる場所でくるりと体を回転させて姿を眩ます鱗粉を纏い、1度木の枝に留まって優れた視力で様子を伺う。

 

 

「(……3匹。ドスマッカォは見当たらない。……1匹少し離れた所に居るね、狙うならアイツかな)」

 

 

じっくりと観察し、狙う個体を決める。例え弱肉強食の世界であれ、向こうから襲われ、身を守る為に仕留めるというならまだしも、食べもしないのに無駄に殺すのは流石に良くないだろう。

その為にはこの体で必要な食事量も把握しておく必要がある。

 

それ故、まず狩るのは1匹のみだ。それで腹が膨れるならばよし、そうでないならその時考えればいい。

 

 

 

……さて。私にとって、自分の食事がかかった初めての狩りだ。そこに生きる命を殺し、自分の糧とする為の。

 

他の命を食す事自体は誰でも……否、全ての生き物がしている事だ。ただ私達人間は、特に鳴き声を上げる生物の命を奪う瞬間に立ち会う事が少ないだけ。自分で仕留めるなんて事は尚更。

 

だからこそ、流石に緊張する。しくじれば食べられないばかりか反撃される可能性もあるし、相手の断末魔で躊躇ったりしても危険に陥るかもしれない。

 

 

「(……でも、それが自然の世界……『生きる』ということ)」

 

 

余計な(しがらみ)はない代わりに、何時如何なる時にも自分の命が懸かる。

 

だからこそ……自然は、そこに生きる生物は、美しく誇り高いのだろう。

 

 

1度瞼を閉じ、努めてゆっくりと息を吸い―――瞼を開く。

 

 

 

 

 

「(………………いくよ)」

 

 

 

 

 

勝負は一瞬。

 

お前は夜鳥。

朧隠の力も持つ夜鳥。

余計なことは考えるな。

急所を狙う事だけを考えろ。

姿を見る暇も与えるな。

 

 

 

 

 

一撃で仕留めるんだ。

 

 

 

 

 

トン、と留まっていた枝を蹴り、滑空する。

無駄な力は要らない。方向修正するだけでいい。気配を殺し、羽音も殺し、心も水鏡の如く静め、獲物を狙う脚の爪に一点集中する。

 

 

 

 

 

 

残り10メートル。標的に動き無し。

 

 

 

 

残り5メートル。動いたが、標的ではない。気づかれては居ない。

 

 

残り3メートル。翼を畳み、加速する。

2メートル。

1メートル―――――

 

 

 

「ギャッ……!?ガッ――――」

 

 

グシャッ…バキリ。

 

 

 

 

 

頭上を通り抜ける一瞬。

最期まで私に気づけなかったマッカォの首を素早く掴み、爪を突き立て―――一気に握り潰す。

 

そしてそのままUターンし、そのエリアを後にする。

 

 

 

―――近年ではペットになったり、猫カフェならぬフクロウカフェなるものが作られるほど愛らしく人気が高いフクロウだが、そんな愛らしい外見とは裏腹に握力はとても強い。

数字にして人間の約8倍―――軽く100kgを超える握力を持つ。その強さたるや、なんと猛禽類トップである。理由としては、脚の筋肉の付き方が特殊だからだそうだ。

 

そんな豆知識は、ホロロホルルにも当てはまったらしく。

私の脚に掴まれたマッカォは、僅かに驚いた声を上げたのみで、悲鳴を上げる間もなく首を潰され絶命した。

 

 

 

 

「……ギャ?」

「ギャギャ??」

 

 

 

 

そのため、残りの2匹は仲間が仕留められた事にも気づかなかったようだ。

ようやく1匹居ない事に気づいた様子の2匹を尻目に、

私は獲物を抱えて自分がこの世界でめざめた所へ戻る。なーんとなくだが、そこに寝床(?)がある気がする。

 

 

 

「(……しかし、自分でもびっくりする位スマートに狩れたな……もはや暗殺者だったよ)」

 

確かに意識こそしたが、まさかああまで体が思い通りに動くとは思って居なかった。予め行った素振りが功を奏したのか……正直、他のマッカォに気付かれる覚悟もしていたのだが……拍子抜けである。

 

 

 

 

「(でも油断はしちゃ駄目だね。今回上手くいったからって、次もこうとは限らない)」

 

 

 

 

そう自分に言い聞かせ、巣の中に静かに着陸する(やはり目覚めた場所の近く、大木の(うろ)の中に巣があった)。

なぜなら、相手はそこに現実に生きている。ゲームのように常に同じ動きをする訳では無い。それに、例え獲物相手でなくとも同じ獲物を狙ったモンスターとの小競り合いだって充分ありうる。

 

だからこそ、手に入れた食料は感謝して食べなければ。

 

 

 

「(いただきます)」

 

 

 

流石に翼で手を合わせる仕草は出来ないので、代わりに目を閉じて軽く頭を下げてから口を付ける。

 

脚で抑え、鱗を剥がし、骨や硬い部位は握り潰して柔らかくし、爪で適当な大きさに切り分けながら啄み、食べ進める。

食べ進める度に鉄の匂いが強まり、臓物や骨が露わになっていくが、これもまた、特に抵抗も嫌悪感もなかった。生の肉を食べた記憶は無いと思うが、なかなか美味しい。鳥竜種だからなのかは知らないが、味は何処と無く鶏肉っぽい気がする。獲物を狩るために発達した後ろ脚は締まっていてとても美味だった。

 

程なくして、潰したり裂いたりと上手いこと工夫しながら全て平らげた。ごちそうさまの代わりに最初と同じように目を閉じて軽く頭を下げ、嘴や脚に付いた食べかすを綺麗にする。

 

 

「(んー、腹八分目って感じかな……)」

 

 

満腹って程ではないが、もう一匹食べたいという程でもない。ご飯をもう1杯お代わり欲しい、その位の腹具合だ。

 

人間世界ならここで止めるが、安定して食料が手に入る訳では無い野生の世界なら、食べれる時に食べた方がいいだろうか……

 

 

 

「(それじゃ、こんどは虫を食べてみるかな……)」

 

 

 

移動中にオルタロスや普通の虫などを見かけていたので今度はそちらへ向かう。ゲームでいう古代林エリア4の辺りだ。私の……夜鳥の能力的にも動きやすいし隠れやすい……と今なら感じる。

 

 

さて、オルタロスは……と見回すと丁度よく1匹見つけた。…………おぉ?お腹の袋が膨らみオレンジに透けている……ハチミツを溜め込んだのか。

 

これは思い掛けずいいデザートが出来た。

 

……と、虫の体内にあるというのに抵抗もなく考えてしまうあたりすっかりこの状況に適応してしまっているようだ。まあ変に抵抗感があっても色々しんどいと思うので深く考えないことにする。

オーストラリアだかの先住民もお腹に蜜を溜め込んだ蟻をおやつにするそうだから問題ないよね、うん。

私今鳥(型モンスター)だし。虫だって立派なご飯だし。人間だって地方によっちゃ虫食べるし。大丈夫大丈夫。

 

 

「(そんじゃ、いただきまーす)」

 

 

お腹いっぱいに蜜を貯めて動きの鈍いオルタロスに忍び寄り、嘴で一撃。

大顎で反撃を貰わない様に、真っ先に頭を真上から啄み、口に入れる。ほんのり苦くてちょっと酸っぱい……蟻酸のせいかな?味にも影響があるとは初耳だ。

 

次は腹袋をつついて穴を空け、中のハチミツを舐める……

こっ、これは……

 

 

「(う……う……

 

 

 

ウマ―――――――!!!)」

 

 

 

なんだこれ。なんだこれ……こんな美味しいハチミツ食べたことないよ!薬の材料にする位だからこの世界のハチミツは上質なんだろうとは常々思っていたが、まさかこれ程とは……

ドスプーs……げふん、アオアシラまっしぐらなのも頷ける。普通のハチミツでこれなら渓流で取れるロイヤルハニーは如何程か……いつか渓流行きたい……食べてみたい……

 

 

苦酸っぱいオルタロス本体と素晴らしく美味しいハチミツを交互に食べながら、そんな事を思う私であった。




初めての狩りとか弱肉強食に関する心情はどうしてもありきたりになってしまいますね……

こういうのも楽しいですが、緩い話も書きたいな……


フクロウの雑学は調べて書きましたが間違ってないかな…?
実際ペットのフクロウを不用意に腕に乗せたら強く掴まれて大けがしてしまう人はたまにいるらしいですが…
食べ方もフクロウが大きめの獲物をリアルにムシャァしてる出来るだけ生々しい画像や動画が見たかったのですが見つからず……(飼われてるフクロウがネズミを啄んだのち丸呑みとかが関の山)
飼育の餌で与えるウズラとかの捌き方動画を参考にする位で……骨も食べやすいように調理バサミで肉ごと刻むようなので自力でやるならこんな感じかな……と。


オルタロスの味も「虫 蟻 味」でググって参考に書きました……フクロウの食事風景といい……こんな検索履歴人に見せられない……

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