【完結】また僕は如何にしてゾンビを怖がるのを止めて火炎放射器を愛するようになったか   作:クリス

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 書いていて思うこと、ヒャッハー!


第二十五話 あさひ

「どうしてよ……。どうして分かってくれないの?」

 

 誰もいない廊下を女が一人歩く。どこに向かっているわけでもない。ただ、歩く。まるでその顔は捨てられた仔犬のように悲しみに満ちている。

 

「私の仲間は貴方だけなのに……。やっと、出会えたのに……」

 

 接触したのは、ただの気まぐれであった。本田秀樹が会議室で見せた笑み。彼女、神持朱夏はその笑みに、その瞳に自らと同じものを感じた。彼女は確かめずにはいられなかった。そして確信した。彼はこの世でたった一人の理解者であると。

 

「なんでよ……。どうしてあんなつまらない奴らのことなんか助けるのよ」

 

 決められたレールの上をただなぞるだけの退屈な人生。誰も彼も笑っているのに自分だけ笑えない。何が面白いのか、何がそんなに楽しいのか。彼女は周囲が理解できなかった。親の期待に応え、教師の期待に応え、周囲の期待に応え、ただただ操り人形のように生きるだけの人生。

 

 でも、もう自由だ。もう我慢する必要はない。これは私の人生だ。私が主役なんだ。私は選ばれた。彼女は終わった世界を見て確信した。そして歓喜した。だが、他の生き残りはそうではなかった。誰も笑わない、楽しもうとしない。何故だ。こんなにも自由で楽しい世界になったのに。

 

「私たちは選ばれたのよ? どうして分かってくれないのよ……」

 

 いつしか神持は武闘派と呼ばれる集団に身を寄せていた。だが、彼女はそこでも孤独であった。誰も彼もが不幸面で、笑おうとしない。いつしか彼女は自分が選ばれた存在だと思うようになっていった。周囲が笑わないのはきっと選ばれていないからだ。彼女はそう思った。初めは、孤独を紛らわすための思い込みだったのかもしれない。だが、思い込みはいつしか確信へと変わる。しかし、いくらそう思おうとも押し寄せる孤独感だけは隠せない。

 

 そんな中、彼が現れた。自分と同じ目をし、そして誰よりもこの世界を楽しんでいる男。話したのはたった数回だが、それでも神持の直観は告げていた。彼は生まれて初めて出会えた理解者であり、真の仲間であると。それは一目惚れと言っても過言ではなかった。

 

 今までにそういう経験がなかったわけではない。男と交際したことは何度かある。だが、彼は違った。彼は生まれて初めて出会った同じ世界を見ることのできる仲間だった。彼と一緒ならきっと今までよりもっとこの世界が素晴らしく見えることだろう。だからこそ自分と同じく孤独を感じているであろう彼に手を差し伸べた。

 

「やっと仲間に会えたと思ったのに、どうしてこうなるのよ……」

 

 しかし、差し伸べた手は振り払われた。彼は理解者よりも仲間を選んだのだ。彼女は今までにない強烈な孤独感に襲われた。もう、全てがどうでもよく思えてきた。

 

 失意の中廊下を歩く。頭護は既に彼によって止めを刺されているだろう。武闘派はもう壊滅だ。だが、そんなことはもうどうでもいい。あんなつまらない奴が死のうが知ったことではない。

 

 彼女はふと、窓の外が気になった。視線の先には校門が見える。本来なら誰もいないはずなのに何やら人影が見える。持っていた双眼鏡を手に取り観察する。そこには見知った人物が映っていた。

 

「あら、あいつまだ生きていたのね……」

 

 校門には城下隆茂が必死に校門の土嚢を退かしていた。暗いためよく見えないが気が狂ったような動きだ。恐らく怪我もしているのだろう片足を引きずり何度も身体をふらつかせながら、しかし、確実に障害物を退かす。

 

「まさか……」

 

 やがて、校門を開けられるだけの土嚢を退かした城下は校門を開放した。これでは奴らが侵入してしまう。重大な裏切り行為だ。そして校門を開放した彼は闇の中に消えて行った。だが、あれでは長くはもたないだろう。

 

「頑丈すぎるのも考え物ね……」

 

 城下は本田に殺されていると思ったが、それは思い違いだったのだ。事実として彼は生きていて構内に奴らを侵入させる愚行を侵した。平時ならば極刑ものであったことだろう。

 

「もう、何もかもどうでもいいわ……」

 

 目の前で極大の危機が迫っているのにも関わらず彼女は上の空であった。しばらく、それを眺めた後、何かを思いついたかのように手を叩く。

 

「ふふふ、そうだ。いいことを思いついたわ」

 

 先ほどまでのこの世の終わりの様な顔とは違い、今の彼女はまるで新しい悪戯を思いついた子供のように楽しげだ。好調した気分の中ある場所を目指す。少し歩いた後、ある扉の前に立つ。その扉の上には放送室と書かれたプレートが。

 

「秀樹君、私が貴方の目を覚まさせてあげる」

 

 扉を開け中に入り、あるものを探す。そして、見つけた。彼女はためらいもなくそのボタンを押す。その直後けたたましいサイレンの音が構内中に鳴り響いた。彼女が押したもの、それは防災用のサイレンを鳴らすためのものである。

 

 放送室を出て外を眺める。案の定、サイレンに引き寄せられ何十体もの屍人が構内に侵入しているではないか。だが、それが彼女の狙いである。本田秀樹はつまらない仲間に縛られて本来の自分を見失っているのだ。なら、その目を覚まさせてやればいい。きっと、彼は戦うだろう。そして思い出すはずだ。真の自分を。

 

「ふふ、ふふふ、あはははははは」

 

 彼女は一人狂ったように笑う。その目には涙が零れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな無事だな」

 

 屋上で頭護を決着をつけ僕は胡桃たちいる二階へと戻ってきた。あいつの死体はあのままにするのはあれなので後で焼却処理した方がいいだろう。ウィルスの温床となったら不味い。もう、ここにいる理由もないが後始末は自分でするべきである。

 

「ああ、こっちは何ともなかったぜ」

 

 見れば最後に見た時と寸分違わぬ様子だ。今さっきまで頭護に捕まっていた美紀も元気そうである。しかし、桐子さんたちの顔色はあまりよろしくない。というより何かを聞きたいというような顔だ。

 

「ね、ねえ。貴人はどうしたの?」

 

 本当に恐る恐るといった様子でアキさんが聞いてくる。どうしようか。正直に話すと不味い気がしてならない。右腕切り落とした上に斬首しましたとかどこの戦国時代だよ。一応、オブラートに包んで言った方がいいだろう。

 

「終わらせてきました。言い訳はしません。僕がこの手で殺しました」

 

 皆が俯いて黙り込む。まあ、そうなるだろうとは思っていた。でも、必要なことだった。あいつを野放しにしたら僕たちに何をするかわかったものではない。それに物事には限度というものがある。あいつはそのラインを揚々と踏み越えた。踏み越えたのならその先にあるのは殺し合いのみだ。でも、それはあまりに感情を無視した考え方だ。どんな理屈があろうと人殺しは人殺しだ。

 

 

 

 

 

「あの、みなさん。どうか、秀先輩を責めないでください」

 

「え?」

 

 突然、美紀が口を開いた。しかも、僕の弁護とはな。こんな狂った奴のことなんか弁護しなくてもいいのに。今でもあれは間違っていなかったと胸を張って言える。だけど、他人から見てどう思われるかくらいは自覚しているのだ。所詮僕はイカれた殺人鬼。否定するつもりはない。

 

「私だって本当は先輩に人殺しなんてしてほしくありませんでした。でも、あれは私を助けるためにやったことなんです。だからどうか責めないでください」

 

 そう言って頭を下げる。なんで、君が頭を下げるんだ。僕のためにそんなことしなくてもいいんだよ。頭に血が上る。だからだろうか、自然と口を開いていた。

 

「どうして美紀が頭を下げるんだ! そんなことする必要はない。僕にそんな価値はない! 僕は蔑まれて当「いいかげんにしてください!」は?」

 

 突然美紀が声を張り上げた。そして僕を見つめる。うん、どうみても怒っている顔だ。肩を叩かれる。振り向けば胡桃も怒っている。これは、よくない光景だ。

 

「まだ、そんなこと言ってるんですか!? 全然分かってないじゃないですか! やっぱ先輩って馬鹿ですよね!」

 

 また、馬鹿と言われた。僕はいったい何回美紀に馬鹿といわれなくてはならないのだろうか。横にいる胡桃もしきりに頷いている。

 

「前に先輩言いましたよね? 学園生活部は大事だって、家族みたいだって。自分はそうやって言うくせに私たちの思いは否定するんですか? 先輩が私たちを大切に思うのに私たちは先輩を大切に思うのは駄目なんですか?」

 

「そ、それは……でも、僕は狂っているし……」

 

 盲点だった。今まで考えたこともなかった。だけど、言われてみればその通りだ。自分の気持ちばかり優先して人がどう思うのか全然考えていいなかった。少し考えればわかるはずだ。前に悠里が自分を卑下した時、僕はそれを否定した。それと同じなのだ。どうして気が付かなかったんだ。

 

「この際だからいいますけどね、いい加減、自分を悪く言う癖やめてくれませんか? 鬱陶しいんですよ。昔、先輩に何があったのか知りません。自分のことが嫌いで仕方ないのかもしれません。だけど、私の、私たちの気持ちまで否定しないでください!」

 

 きっぱりと言い切る。また、僕はやらかしてしまったようだ。人はそうそう変わらないというが全くその通りだ。そうそう身体に染みついた癖は変えられない。変わるのが良いことだとは限らないが変わるべき時もある。

 

 ふと、肩に手を乗せられた。胡桃だ。前に見せた慈しむような目で僕を見る。僕はやはり彼女達には勝てないな。

 

「美紀の言う通りだぜ。もうさ、そういうのやめないか。あたしからも言わせてもらうけどさ。別に秀樹が人を殺そうが、何をしようが、あたしたちは秀樹の仲間なんだよ」

 

 それに彼女だしな。決め台詞のように胡桃は言った。本当に、君達には勝てないな。いつまでたっても気づかされてばかりだ。自分が良い人だなんて思わないが、それは僕が思っているだけであって、決して押し付けていいものではないのだ。

 

 ゆっくりと深呼吸をする。この思いを伝えなくてはならない。言葉にしなくては伝えられない。だけど僕が口を開こうとすると、胡桃に制止される。

 

「あたし思ったんだけどさ。秀樹は自分が狂っているって言うけど、それって誰が決めたんだ? あたしか? 美紀か? 圭か? りーさんか? 由紀か? 瑠理か? めぐねえか? トーコさんたちか? それとも武闘派か?」

 

 思いがけない一言だった。確かに、そうかもしれないけど、でも、僕が狂っていることは紛れもない事実だろうに。いくら自己を弁護しようともそれだけは間違っていないはず。それが間違いだとするなら僕はなんだというんだ。

 

「親の仇を取るために戦う、人を助けるために戦う、姉に会いたい妹のために戦う、学園生活部を助けるためにたたかう。美紀を助けるために戦う。これって狂ってるって言えるか? あたしはそうは思わないぜ。これのどこが狂ってるってるんだ?」

 

 胡桃の目はどこまでも本気だった。本気でそう思っているのだ。言葉にならない。口が動かない。それを認めてしまえば僕はなんになるのだ。怖い。僕は久しぶりに恐怖を感じた。そんな僕を知ってか知らずか胡桃は僕に断言する。

 

「前にこの世界は楽しいっていったよな? あれ実はあたしも少し思ってるんだ。そりゃ、全部元通りになればって思う時はあるけどさ。みんなそうなんだよ。心のどこかじゃきっとそう思ってる。別に秀樹だけのことじゃねんだよ」

 

 自分の足元が崩される。それはいわば僕のアイデンティティだからだ。狂気こそが僕の原動力だった。皆を守る、この世界を楽しむ。それは狂気なくしては決してできないことだと思っている。でも、胡桃は違うと言う。胡桃は優しく諭すように僕に告げる。

 

「いいか。秀樹は狂ってなんかいない。そりゃ、ぶっ飛んでるとは思うけどさ。でも、それだけだよ。秀樹はただのお人好しの世話焼きでちょっと捻くれてるだけで誰かのためならどこまでも戦えるすげえかっこいいあたしの大好きな人間なんだよ。バーカ」

 

 人を殺した後にこんなこと言われてもなんの説得力もない。ないはずなのに胡桃の言葉は僕の心に染みこんでいく。否定したくてもできない。こうまで言われてしまえば反論など無意味だ。

 

 

 

 

 

「ああ、完敗だよ。認めよう。僕はただの人間だよ。ありがとうな」

 

「へへ、秀樹にはいつも助けられてるしな」

 

 結局、僕は化物でも狂人でもなかったのだ。どこにでもいるかはわからないが、ただの普通のちっぽけな人間だった。普通じゃないと自分に言い聞かせていただけなのだろう。そうしないといけないと思い込んでいただけなのだ。

 

「美紀もありがとう。そしてごめん」

 

「いいんですよ。言いたいことは全部胡桃先輩が言ってくれましたし。もうしないって約束してくれれば」

 

「ああ、約束しよう。僕はただの人間だよ」

 

 距離を置いて胡桃と美紀を見つめる。ああ、僕は生まれてきて本当によかった。彼女達に出会えて本当によかった。何度も思ったことだが本当にそうとしか言えない。運命なんてもの信じないが、この巡り合わせには感謝しよう。しばらく二人を見つめる。

 

 

 

 

 

「ゴホン! えーと、三人の世界に入り込んでいるところ悪いんだけどね。そろそろ戻って来てくれないかな?」

 

『あっ』

 

 やっと思い出した。今、桐子さん達が目の前にいるんだった。僕たちが突然、ホームドラマみたいなことを繰り広げ初めたのでさぞ困惑していることだろう。心なしか三人の顔が気まずそうな表情になっている。

 

「す、すいません……」

 

「別にいいよ。素晴らしきかな友情とでも言うべきかな?」

 

 リセさんだけは何故か目を輝かせている。何というかこの人はブレないな。美紀も胡桃も少し引いている。桐子さんが僕を見る。

 

「確かに、殺してしまったのは残念だと思っているよ。でも、多分、仕方がなかったんだよ」

 

 そして、悲しそうに言う。仕方ないで済ましていいことなのかはわからない。だが、もう起きてしまったことを覆すことはできない。殺したことを後悔はしていないし、今でも必要だったと思っている。でも、もう少し別の形で出会いたかった。そう思わざるを得ない。

 

「もう少しだけボクたちが早く話し合っていればこんなことにはならなかったかもしれないし、なったかもしれない。もう過ぎてしまったことなんだ。だから、この件でボクたちが君を責めることはない。みんなそれでいいよね?」

 

「あたしも同意かな。それにあんたが助けてくれなかったらあたしらどうなってたかわからないし。ヒカは?」

 

「本田君は、仲間のために戦ったんだよね。それは私たちが口を出すことじゃないと思うんだ。だから何も言うことはないよ」

 

「ヒカに同意かな。先に手を出してきたのは彼等だ。君は仲間を助けるために戦った。それだけだろう? 残念な結果だったけど仕方のないことだったんだと思うな」

 

 本当なら人殺しと罵られても文句は言えないのに、彼女達は許してくれた。僕はそれがうれしい。これで、一件落着か。やっと、一息できる。

 

「じゃ、ボクたちも戻ろうか」

 

「そうね、もうすっごい疲れたわ」

 

 戦いは終わったのだ。もう、僕が武器を振るう必要はない。でも、何か忘れている気がする。何だろうか。

 

「ねえ、そう言えば篠生はどうしたの?」

 

「確か、君は気絶させたと言っていたね」

 

「あっ、思い出した」

 

 忘れていた。右原篠生を気絶させていたんだ。確か、一階の教室に転がしておいたんだ。もう起きているかな。行かなくては。

 

「その篠生っていう人は生きているんだよな?」

 

「ああ、気絶させて一階の教室に転がしておいた。もう起きてるんじゃないか?」

 

「気絶って、相変わらず容赦ねえなおい」

 

 僕的には最大級の情けだと思う。殺さないだけでもありがたいと思ってほしいものだ。そう言えばみんな僕たちが襲われた理由を知っているのだろうか。

 

「そう言えば何であたしたち襲われたの?」

 

「あたしも気になってたんだ。説明してくれるか?」

 

 まだ、誰にも言ってなかったな。僕は皆に事の発端を大雑把に伝えた。高上の感染、そして武闘派の勘違いによる攻撃、そして壊滅。反応はまあ呆れ半分と言ったものであった。

 

 

 

 

 

「それって、結局全部勘違いだったことじゃん!」

 

「そうですよ。彼らがもう少しだけ考える余裕があればこんなことにはならなかったんだ」

 

 感染したのはどうしようもないことだ。だが、その後の血で血を洗うかのような抗争は避けることができたはずだったのだ。桐子さんの言う通りあと少しだけ早く話し合っていれば最悪の事態は回避できたはずなのだ。

 

「なんていうか、その、虚しいね……。本当にそう思うよ」

 

「そんなことがあったのかよ……。てか薬盛られてよく平気だったな」

 

「神持が薬の量を減らしてくれたみたいなんだ。そう言えばあいつどこに行ったんだ?」

 

「空気感染ですか……。隠していたことは後でみっちり聞かせてもらいますからね。兎に角今は戻りましょ? 話は後でいくらでもできます」

 

 それもそうだな。すっと立ち話も疲れる。そう思った矢先だった。突如、けたたましいサイレンが大学中に響き渡る。なんだこれは。あまりの音量に思わず耳を塞ぐ。

 

「なんだこれは!?」

 

 サイレンはしばらく鳴り響きようやく止まった。時間にして凡そ一分程だろうか。初めに異変に気が付いたのはヒカさんだった。

 

「みんな外を見て!」

 

 その言葉に従い窓から外を見る。何処からともなく奴らが押し寄せてきているではないか。さっきのサイレンに引き寄せられたのか。

 

「これは、不味いことになったね……。恐らく校門が破られたんだろう」

 

「ど、どうするのよ!」

 

 パニックになりかける。でも、何故だ。校門は土嚢で塞がれていたはずだ。あれは人が内側からどかさないと開けられないはずだ。何か忘れている。

 

「あの男か!」

 

「え、誰がやったかわかるのかい?」

 

 あそこで殺さなかったのが間違いだったのだ。僕が思っていた以上に怪我が浅かったのだ。思えば、いくら僕が立ち去れと言ったところで本当に再起不能だったらあんな歩くことなどできない。大誤算だ。

 

「こんなことしている場合じゃないよ! 早く校舎の入り口を固めないと!」

 

「その通りだ。早く行動しよう」

 

 ヒカさんとリセさんに移動するべきだと促される。その通りだ。僕たちはその言葉に従い一階に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで一段落ついたね」

 

「ふう、一時はどうなるかと思ったわ」

 

 正面玄関の前で僕たちは一段落ついた。七人もいるのでバリケードの設置は思っていたよりも早く終わった。これでもうあいつらは入ってこれない。

 

「校門を開けたのが先輩が倒した人なのは分かりました。じゃあ、あのサイレンは?」

 

 僕は移動中に自分の予想を皆に伝えた。これは僕が招いた事態だと言ってもいい。僕があいつを殺すなり縛るなりしておけばこんなことにはならなかったのに。

 

「そう言えばアヤカはどうしたの?」

 

 そうだ。あいつはどこに行った? 僕はあいつだけは一度も傷つけてはいない。屋上前で別れた以来、一度も顔を見ていないのだ。もしかして、アイツがやったのか? でもなぜ? その疑問は直ぐに解消された。

 

『秀樹君聞いているかしら?』

 

「この声は!?」

 

 突然、校内放送から放送が始まった。この声を僕は知っている。こいつは神持朱夏だ。

 

『貴方のために素敵なプレゼントを用意してあげたわ。貴方もきっと目が覚めるはずよ。じゃあ、存分に楽しんでね』

 

 それだけ言うと放送は終わった。僕たちは顔を見合わせた。素敵なプレゼント、きっと構内に侵入したゾンビのことだ。楽しめとはきっと僕にあれらと戦わせるつもりなのだ。

 

「今の声ってアヤカよね? もしかしてさっきのサイレンって……」

 

「ええ、そうでしょう。彼女は僕に異様に執着しています。こんなことをしても何も不思議ではありません」

 

 あんたのしたいことはこんなことだったのか。僕はあの屋上で彼女を拒絶したことを後悔した。僕があんなことを言わなければ神持はこんなことはしなかったはずだ。少しでもあの人に共感してあげればこんなことにはならなかったのに。

 

 外には決して少なくないゾンビが入り込んでいる。これでは車ででることなどできない。それに、桐子さん達も満足に生活できないではないか。仕方ないか。僕はある決心をした。

 

「アヤカさんが!?」

 

 突然後ろから声が聞こえた。慌ててホルスターから5906を引き抜き声の主に銃口を向ける。が、すぐにアキさんに強引に手で下げられる。

 

「秀樹! 銃降ろして! シノウよ!」

 

 声の主、それは右原篠生だった。右肩には既に包帯が巻かれている。自分で治療したのだろう。だが、額にはまだ大きな瘤が出来ている。少し、悪いことをしたかもしれない。どうやら彼女には敵意はないようだ。銃を向けようとすると身体を大きく震わせて両手を上げた。だけどこれはかなり怖がられているとみていいだろう。

 

「本田君。もしかして戦うの?」

 

「篠生、あんた何言ってんのよ!? そんなわけないじゃない!」

 

 どうやら僕の考えはお見通しらしい。まあ、あれだけのことをやってのけたんだ。そう思うのは当然のことだ。そして彼女の考えは全く持ってその通りである。

 

「ええ、よくわかりましたね」

 

「ちょっ!? 君は自分が何を言っているのか分かっているのかい?」

 

 桐子さんたちが信じられないと言いたげな顔で僕を見る。まあ、普通に考えたら戦うなんて選択は思いつかない。でも、僕はこの手のことに関しては普通じゃないんだ。

 

「なら私も戦う」

 

 何故そんなことを言うのだ? それは彼女の目を見ればわかった。あれは全てを諦めた者の目だ。終わらせるつもりなのだ自分の人生を。

 

「篠生も何言ってんのよ!」

 

「悪いが、右原さん。あんたは戦わせない。怪我しているし、腹に子供がいる奴に戦わせるわけないだろうが」

 

 僕以外の全員が驚愕に目を染める。そして右原さんを見る。あ、少し赤くなった。

 

「それなら大丈夫。私は今までも「ばっかじゃないの!?」あ、アキさん?」

 

 そこには烈火の如く怒るアキさんがいた。かなり怖い。見れば桐子さんとヒカさんが少し震えているではないか。唖然とする右原にアキさんは続ける。

 

「お腹に赤ちゃんいるのに何戦ってんのよ! あんた馬鹿なの!? それに今までもですって? ふっざけんじゃないわよ! 子供命なんだと思ってるの!?」

 

「そ、それは……」

 

 反論のしようがない正論に右原は言葉を濁らせる。これに関しては僕の同意だ。周りを見れば全員が頷いている。

 

「武闘派だからとかそんなのどうでもいいわよ! あんた自分がどれだけ無責任なことしてるのか分かってんの? 分かってるわけないよね。何で誰にも言わなかったのよ!」

 

「それは、だって……」

 

「口答えしない!」

 

 こうしてアキさんの説教が始まった。右原が何か言ってもすぐさまアキさんや桐子さんたちが正論で論破していく。何か昔の僕を思い出す光景だ。僕たちはすっかり蚊帳の外になってしまった。

 

「なあ」

 

「なんだい?」

 

 胡桃が声を掛けてきた。肩にはシャベルを担いでいる。何をしたいのかはもう聞くまでもないな。

 

「銃の弾あと何発ある?」

 

「ショットガンが十四発、拳銃が四五発だ」

 

 二人で窓の外のゾンビ共を観察する。この様子だと多くて精々、二百匹くらいだろうか。気が付けば美紀も呆れ半分と言った様子でこちらを見ている。

 

「どのくらいいると思う?」

 

「まあ、僕の見立てじゃあ二百もいないだろうな」

 

「じゃあ、秀樹が銃で六十匹くらいやったらあとは百四十か」

 

 思ったより少ないな。胡桃はそう言った。僕も同じことを思った。

 

「はぁ、あの、もう何も言いませんが気を付けて下さいね」

 

 既に僕のことをわかりきっている美紀は溜息をつきながらも見送ってくれるようだ。いつの間にかアキさんの説教も終わっていたようだ。僕たちに近づいてくる。その後ろには涙目の右原がいる。

 

「で、さっき戦うって言ってたけど本当かい?」

 

「ええ、ちょっとばかし構内の掃除を」

 

「そ、そんな無茶だよ!」

 

 まあ、普通はそう思うだろうな。僕だってそう思う。だが、それはあくまで僕たちが普通の高校生だったらの話だ。普段は普通でいることが大切だと思っているが今回ばかりは事情が違う。

 

「ヒカの言う通りよ! あんた何言ってんのよ!」

 

「アキ先輩。こうなったら先輩たちに何を言っても無駄なんですよ」

 

 流石、美紀。頭を押さえながらじゃなかったらもっと嬉しかったけどな。

 

「いや、あんた何平気そうな顔してんのよ! こいつが言ってることわかってんの?」

 

「ボクも同意見かな。いくらなんでも無茶すぎるよ」

 

 ふむ、まあ、知らないならこんなものか。彼女達は知らないのだ。僕が、僕たちが今までどんなことをしてきたのか。どんな脅威と戦ってきたのか。

 

「外を見ればわかるだろう? もうこんな大量に押し寄せてきている。いくら君たちが戦い慣れているからといってこれは無理だよ」

 

 無理? たった二百程度で無理なんてこの人は何を言っているんだろうか? 僕とこの人たちとでは基準が著しくずれているようだ。

 

「桐子さん。貴方は一つ勘違いをしている。この程度の逆境など僕たちに降りかかった今までの苦境に比べたらピンチのうちにも入らないんですよ」

 

「なっ!?」

 

 呆気にとられる桐子さんたちを尻目に僕と胡桃は玄関の窓に近づく。外にはそれなりの数の奴らがいるが、まあ所詮、それなりだ。ヘリが落ちてきたときの方がもっと多かった。

 

「じゃあ、とっとと車に行こうぜ。アレ、使うんだろ?」

 

「そうだね、折角作ったんだ。使わなければ損だ」

 

 窓を開けて窓枠に足を掛ける。まずは、車まで強行突破してから車で校門まで急行、それから校門の封鎖かな。

 

「先輩! 程々にしといてくださいね!」

 

「あたしが見張ってるから大丈夫だよ!」

 

 無言でサムズアップし外に出る。まだ気が付いていないようだ。胡桃後に続く。銃は校門を封鎖してから使おう。安全装置を掛けホルスターに仕舞う。代わりに腰からククリナイフを勢いよく引き抜く。

 

「よし、胡桃いくぞ!」

 

「ああ!」

 

 胡桃は何も言わなくても僕がしたいことを分かってくれるからいい。僕が学園生活部に染まっていったようにみんなも僕のやり方に染まってきている。それが良いことか悪いことなのかは歴史が決めることだろう。

 

「待ってくれ!」

 

 いよいよ一歩を踏み出そうとした時、桐子さんに引き止められる。早くいきたいんだけどなあ。仕方ない。振り向けば全員が僕を見ていた。

 

「君たちは、いや、君は一体何者なんだ?」

 

 僕は何者、か。何て答えればいいのだろうか。少しだけ考える。背後は胡桃が警戒してくれているので心配する必要はない。そうだな、これがいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私立巡ヶ丘学院高校学園生活部、副部長。本田秀樹。ただの人間だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 胡桃と走りながら裏門近くに止めたバン目掛けて走る。僕の前には七体のゾンビが行く手を阻んでいる。邪魔だな。

 

「一番槍はあたしがもらった!」

 

 先に仕掛けたのは胡桃だ。一瞬でゾンビに近づきシャベルを振るう。目にも留まらぬ速さで振るわれるシャベル。瞬く間に三体が倒れる。僕も負けてられないな。

 

「オラッ!」

 

 一番近くにいるゾンビの脳天目掛けてククリを振るう。顔が真っ二つになりゾンビが倒れ伏す。勢いに巻き込まれないようにククリを引き抜き次のゾンビの首に一閃。首が胴体から切り離される。

 

 三体目は既に僕の至近距離まで近づいている。すぐさまククリを左手に持ち替え5906を引き抜き安全装置を解除、発砲。額に9mmの穴が開きゾンビは二度と誰にも迷惑をかけることはなくなった。

 

「銃は使わないんじゃないのか!?」

 

 四体目の首が飛んだ。しまった胡桃に取られてしまった。少し鈍ったな。もっと早く倒せるはずだ。走りながら近づくゾンビを片っ端から倒していく。時には同時に、時には背中合わせに、まるでワルツを踊るかのようだ。僕は踊れないが。

 

「一発くらいなら誤射だよ!」

 

 近ずくゾンビの後ろに回り込み後頭部と下顎をホールド。そのまま捻じ切るかのように圧し折る。既にかなり倒したはずだ。

 

「ふーん。ちなみにあたしはもう十二匹倒したぜ! これで十三匹!」

 

 また首なしの死体が一体増えた。いくらなんでも強くなり過ぎじゃないか? 昔はあんなに健気だったのに。あの時の胡桃が懐かしい。

 

「僕は、十五匹倒した! これ十六匹!」

 

 ククリを首目掛けて振るう。もうククリは血塗れだ。でも、まだまだ序盤。もうすぐバンだろう。当たり前だがバンに近づくにいつれゾンビの数は減っていく。もうすぐ夜も明けることだろう。

 

「そう言えば! あの放送の女はどうするんだ!?」

 

 神持のことだろう。僕は未だに思い悩んでいた。彼女を倒すべき敵と見なすのか、手を差し伸べるべき同類と見なすべきなのか。彼女は僕らに一度も危害を加えていないのだ。桐子さんたちを捕まえたのは頭護と右原だ。彼女達の証言からもそれは裏付けられている。

 

「本当ならこんなことをした報いを受けさせるべきなのかもしれない。でも、僕はあいつがどうしても敵に見えないんだ」

 

 あの屋上前で見せたあの表情。あれを見てしまってから僕は彼女のことをただの狂人だとは思えなくなってしまった。きっと、彼女は学園生活部に出会わなかった僕なのだ。表裏一体とまでは言わないが僕と彼女は非常に似通っている。

 

「なら、秀樹の好きなようにすればいいじゃん」

 

「僕の好きなようにするか。難しいこと言ってくれるね」

 

 でも、そうだな。僕の好きにさせてもらおう。もうバンは目と鼻の先だ。走っていくと視界の先にゾンビが一体。僕は胡桃と競うかのようにゾンビに殺到する。

 

『もらった!』

 

 右からは胡桃のシャベルが、左からは僕のククリナイフが同時に首目掛けて振り抜かれる。ゾンビの首が宙高く飛ぶ。夜の空にゾンビの首が一つ。これで第一目標は達成した。すぐさま車に乗り込む。

 

「あたしが運転する!」

 

「任せた!」

 

 胡桃が運転席に乗り、僕がバックドアから勢いよく乗り込む。すぐさま発進するバン。流石に構内は狭いのであまりスピードは出せない。流れ去る景色を眺めながら僕は例の物を用意する。リコイルスターターを勢いよく引けばエンジンの軽快な音が車内に木霊する。

 

「持ってきて正解だったな!」

 

「ああ! でもエンジンがうるさい!」

 

 あまりに重く嵩張るため車内に置くしかなかった。これを持っていくように佐倉先生を説得するのは本当に骨が折れた。帰ったら二人で反省文だろうな。エンジンに繋がった50リットルの容量を持つタンクの栓を捻る。

 

「車ぶつけるぞ!」

 

 ゾンビを撥ねているのだろう。鈍い音が聞こえる。だが、これは校門に近づいてる証拠だ。

 

「秀樹、校門が見えたぞ! 掴まってろよ!」

 

「え? ちょっ!?」

 

 車が急激にスピンする。強烈な遠心力に耐えきれず身体を思い切り車内にぶつける。痛いなぁ。

 

「秀樹! 前見ろ!」

 

 胡桃が叫ぶ。バックドアの先には大量のゾンビが僕たちに近づいている。すぐさま立ち上がり車外に飛び出す。勿論ノズルを持ってだ。

 

「こっちにも近づいてる! 早くしてくれ!」

 

「おう!」

 

 ノズルの先端に取り付けられたガスバーナーを点火する。そしてノズルの先端を校門に向ける。広角モードに切り替える。エンジンよし、タンクよし、バーナーよし、全部よし。

 

「だ、だ、ズゲ、で……」

 

 一番先頭にいるのは城下じゃないか。既に身体中食われている。もう殆どゾンビと言っても過言ではないだろう。やっぱりあの時殺しておけばよかった。そうだ、あの時の約束を思い出した。

 

「なあ、さっき僕は言ったよな」

 

 後はノズルのコックを捻るだけ。どんどん近づくゾンビ共。まだだ、まだ。

 

「次会ったらもっと燃えやすいものを用意してやるって。だから」

 

 まだ、まだだ。まだ、今だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「持ってきてやったぞ」

 

「え゛?」

 

 コックを捻る。その瞬間、超高圧の可燃性の液体がノズルから放たれガスバーナーに引火。轟音共に数千度の炎が校門に向けて放たれる。固定式の動力噴霧器を改造した火炎放射器だ。背負い式の火炎放射器も凄まじいものであったがこれは更にその上をいく。

 

 瞬く間に校門が炎に包まれる。校門付近に固まっていたゾンビは一網打尽だ。流石にこれは気分が高まるな。

 

「最っ高だぜ!」

 

 しばらく燃やした後コックを閉める。炎が消え視界が元に戻る。まさに死屍累々と言ってもいい風景が広がっている。だが、まだ終わらない。すぐさまノズルを持ったまま車の運転席付近に行く。

 

「うげぇ。やっぱおっかねえわ……」

 

 サイドミラーで一部始終を見ていた胡桃が毒づく。まあ、あれは仕方がない。でも、今のでざっと六十は倒せたはずだ。もう一度、今度は校舎方面にいるゾンビ目がけてコックを捻る。

 

「うわ! 熱! 運転席なのに熱ッ!」

 

 胡桃が何か言っているが今は無視だ。校門とは違い、数が多い。何度も何度も炎を噴射する。コックを捻るたびにゾンビ焼死体が量産される。体感時間にて数十分。実時間にして恐らく数分。タンクの燃料が尽きたのだろう。コックを捻っても燃料は噴射されなくなった。

 

「胡桃! 校門閉めるの手伝ってくれ!」

 

「よし来た!」

 

 ガスバーナーとエンジンを止めククリを引き抜き校門に近づく。根こそぎ燃やしてしまったためか近くにゾンビは見当たらない。急いで鉄門に手を掛ける。猛烈に熱いが今は気にしている場合ではない。

 

「閉めたぞ! 手伝ってくれ」

 

 胡桃と協力してまだ無事な土嚢を積み上げる。何個か袋が燃えていて使い物にならなかったがこれで校門の封鎖は完了した。

 

「ふう、これで第二目標終わったな!」

 

「まだ、気を抜くのは早いぞ」

 

「わあーてるよ!」

 

 車から降りた胡桃が僕の隣に立つ。手にはシャベル。背には車内に置いたままだった弓と矢筒を背負っている。僕もあれを取ってこよう。バックドアから入り、56式と装弾クリップをポケットに詰めるだけ詰める。ショルダーバッグには既に火炎瓶が満杯だ。

 

 56式のボルトを引き弾を装填する。安全装置を掛ける必要はない。何故なら目につく全ての動く物体は悉く僕たちの敵だからだ。桐子さんたちは美紀が引き止めてくれているだろう。きっと今頃質問攻めにあっているに違いない。少し悪いことをしてしまったかもしれないな。

 

「なんか作戦はあるか?」

 

 不敵な笑みを浮かべながら胡桃が訊ねる。分かっているくせによく言う。僕も負けじと笑みを返しながら返答する。

 

「決まっているだろ? 見敵必殺(サーチ&デストロイ)だ」

 

「ま、そう言うと思ったぜ。じゃあ、どっちが多く倒せるか、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──勝負だ!──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕たちは同時に駆けだす。もうじき夜が明け、全てが終わる。

 




 いかがでしたか? 満を持して登場した火炎放射器。やっぱ火はいいですね。いよいよあと少しで最終話です。ここまで読んで下さりありがとうございます。

 では、また次回に。

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