【完結】また僕は如何にしてゾンビを怖がるのを止めて火炎放射器を愛するようになったか   作:クリス

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 約2年ぶりに筆をとりました。ゾンビだらけだしこんなのがいてもいいですよね?


第一章 Home sweet home
第一話 にちじょう


 

 

 

 

 

 僕のいる場所はk県巡ヶ丘市、かつて男土と呼ばれた街である。

 

 唐突だが、世界は終わってしまった。

 

 死者が通りに溢れかえり今や何処も彼処も死に塗れている。

 

 誰もが一度は想像する世界の終わり。誰がこんなことを予測できたであろうか。

 

 それが現実になるのだと。

 

 死人が蘇り生き血を求めてさまよい歩く。奴らに殺されたものは例外なく奴らの仲間になる。

 

 そんなどこにでもある陳腐な終末だ。

 

 これは夢なんじゃないかと何度も考える。朝起きたらいつも通りの日常でいつも通りの平和な毎日が待っていると。

 

 が、夢は夢でしかなく現実は容赦なく残酷な事実を突きつける。

 

 

 多くの人間が死んだ。僕の家族、友達、知り合い。全てが死に絶えた。いや、違う。殺されたんだ。奴らに。そう!奴らに!!

 

 奴らはニタニタ笑いながら僕の大切なものを悉く奪って行った。そしてそんな奴らが僕の大切なものを蹂躙したその時。僕は一体何をしていた?

 

 なにもだ!

 

 そう!なにもしなかった!!

 

 奴らが殺すのをただ息を殺して最初から最後まで見ていた。

 

 

 奴らは僕の大切なものを奪って行った。そして自分たちが新たな支配者だと言わんばかりに歩いているのだ。我が物顔でのうのうと。

 

 許せるのか?

 

 否、許せるわけがない。

 

 だから僕は大切なものを奪った奴らを探し見つけ追い詰め八つ裂きにしてやった。

 

 だが、これは始まりでしかない。

 

 まず身体を徹底的に鍛えた。奴らを殺すためには強い肉体が必要だ。

 

 武器を手に入れた。作った物もあるし拾った物もある。とにかく使えそうな物はすべて使った。

 

 防具を身に着けた。僕は不死身のヒーローじゃない。少しでも長く奴らを殺すために身を護るものが必要だった。

 

 知識を深めた。より多く殺すにはより深い知識が必要だった。本を読みふけり見識を広げた。奴らを観察し記録を付けそこから法則を見つけ出した。

 

 そして思いついたアイデアは片っ端から試した。当然失敗することもあれば上手くいくこともあった。最初は失敗することが多かったが日を重ねるうちにそれは逆転していった。

 

 そして奴らを殺して殺して殺していく間にある変化に気づいた。

 

 

 僕はこの状況を楽しんでいたのだ。

 

 その事実に気づいたところで僕の日常にはなんの変化もなかった。それも当然だ。大切なものを奪った奴らに復讐してその無様な姿を見て楽しくならないわけがないのだ。

 

 端的に言って僕は狂っていた。

 

 僕は復讐の道中で何度か僕以外の生存者に出会った。僕は彼等を助けるために奴らを殺した。だが、彼ら彼女らは僕に怯えることはあっても感謝することは一度もなかった。僕は狂っていたが、他人から見てどう思われるかくらいは理解できた。

 

 だが、他人からどう思われようともはやどうでもよかった。僕の目的は奴らをこの世から一匹残らず根絶やしにすることである。例え、僕は道半ばでくたばることがあったとしても最後の最後まで一匹でも多くの奴らを殺してやるのだ。

 

 僕にしてきた仕打ちを忘れたとは言わさない。奴らの腐った眼に僕の姿を焼き付けてやる。そして最期のその時に思い出すがいい

 

 

 

 

 

 僕の名前を!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは駅。いや、正確には駅だった場所。かつては一日に何万人もの人間を運んだ巨大なシステムも今となっては血と臓物と腐肉に塗れた惨劇の舞台と化していた。そんな何もかもが終わってしまった世界。

 

 

 

 

 

 駅の改札口前、時間は午前8時。素晴らしい快晴のなかに僕は居た。耳につけたイヤホンから爆音のスラッシュメタルが流れてくる。全てを焼き尽くすような旋律を聞けば、どこからともなく昂揚感が湧き出てくる。ヘルメットで狭まった視界の中で、手にした右手に持ったノズルのレバーを握る。ノズルから伸びたチューブは左手に持ったタンクにつながる。中には僕のとっておきが入っていた。

 

 突如、轟音と共にノズルから噴射された液体が取り付けたガスバーナーに引火。炎が撒き散らされる。視界の先には腐臭をまき散らす屍人ども。当然火だるまだ。お客様、焼き加減はいかがでしょうか?

 

 楽しくなってきた。次はどいつがあいてだ?そうだあいつらがいい。視線の先には屍人どもの群れ。ただ己の欲望ままに死肉を貪る哀れな生者の成れの果て。知ったことか死ねばいい。

 

 自作の火炎放射器を床に置きショルダーバッグの中にある火炎瓶を手に取る。ライターで火を付け狙いを定め。投げる!

 

 ガラスの割れる音とともに屍人は炎に塗れた。そうだ、燃えろ燃えてしまえ。今日は気分がいい。音楽プレーヤーの音量を最大にする。

 

「燃えろ燃えろ死人共め!死んだゾンビだけが良いゾンビだ!!まったく最高に愉快だ!!」

 

 ギターのリフに合わせて僕は背中にかけているライフルを手に取りボルトハンドルを勢いよく引っ張る。初弾が装填される。燃え残りのゾンビを視界に収めた。ライフルを構え、狙い、撃つ。

 

 炸裂音と共に7.62x39mm弾がゾンビの額に吸い込まれ、頭が破裂する。ビンゴ!ゾンビは汚らしい脳みそを床にまき散らし誰にも迷惑をかけることはなくなった。

 

 僕は視界に映るゾンビ共に銃を撃ち続ける。撃つ度にこの世から汚らわしい化物が一匹ずつ消える。そうだ。お前たちは死ぬべきなの存在なのだ。いちゃいけないんだよ。

 

10発発砲したところで弾倉の弾を撃ち尽くしボルトが解放される。給弾口を開けるその姿はまるでもっと獲物をよこせと僕に訴えているようだ。

 

 銃声でゾンビ共が集まってきた。僕はその訴えに応えるべくポケットから装弾クリップを取り出し銃に込めボルトを引く。発射準備完了。ついでに火炎放射器と火炎瓶の残量も確認、まだまだ余裕だ。

 

「いくぞッ!腐れゾンビども!!纏めてあの世に送ってやるっ!!!!」

 

 世界は終わってしまった。だけど僕は戦い続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、あれから事が済んだのは1時間たってからだった。僕はゾンビどもを殺して殺して殺しまくった。持ってきた武器を使い切ってからは刺し殺し殴り殺した。何もなかった駅の改札口の床は今じゃ焼け焦げた死体の山で覆われている。

 

 そこら中からガソリンと死肉の焼ける匂いがプンプンする。そう、勝利の匂いだ。戦果は上々、敵影は目視できず。最高の勝利だ。

 

「ふん、ざまあないな。クソゾンビ共め。さて帰るかな」

 

 踵を返す。さあ、凱旋のときだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2015年■月■日

 

 巡ヶ丘駅で奴らの大量駆除を実行した。正確な数は数えていないがおそらく150匹以上はやることができたと思われる。置き土産にスピーカー付き簡易ナパーム爆弾も設置してきた。今頃起爆しているころだろう。 

 

 試しに作った火炎放射器の威力は文句なしの一言に尽きる。射程が短いことと燃料がすぐになくなってしまうことを除けばゾンビ共を殺すのにあれほど効率のよい武器はあるまい。が、使っている最中危うく火事になりかけたのはまずかった。使う場所を良く考える必要がありそうだ。それに両手がふさがるのもいただけない。背負式に改造してみるか。

 

 銃の弾はまだまだ余裕があるが火炎瓶を予定より多く消費してしまった。近い内に補充しておく必要がある。それに医薬品も減らしてしまった。これも調達するべきであろう。そういえば近くに小学校とモールがあったな。そのどちらかに行けばいい。

 

 今までに一体何匹の奴らを殺したであろうか。減らしても減らしても限がない。僕のやっていることは無駄なのだろうか。僕一人が幾ら殺したところで奴らにとっては痛くも痒くもないのかもしれない。

 

 だが、それがどうした。僕はなんのために生き残ったのだ。10年かかろうが20年かかろうが必ず成し遂げてやる。この世からあいつらを根絶やしにするまで諦めてなるものか。

 

 

 

 

 

 

 







 いかがでしたか?このssは基本的にこんなノリでずっと続きます。学園生活部との甘い恋愛やめぐねえと由紀ちゃんの感動のストーリーは主人公に火炎放射器で汚物と一緒に消毒されましたので悪しからず。

 

 

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