ペルソナ4 有里湊のif世界での物語 番外編   作:雨扇

8 / 10
戦車:里中千枝コミュ
コミュ2


 5月上旬。

 

 放課後の教室にて。

 

「有里くんお願いっ!」

 

「何故僕になのかをまず訊きたい」

 

 僕は里中に問いただす。理由は「一緒に特訓して」と頼まれたからだ。しかも河川敷で。苦行だよ苦行。

 

「いやぁ……。だって強いじゃん?」

 

「強い人がいいなら鳴上の方がもっと適任」

 

 正論だ。と里中が呟く。別に特訓自体は僕もタルタロスでやってたからいいと思う。もう登りきったのにまだ依頼が終わってなくて文句言う順平とかゆかりを無理矢理連れてったものだ。

 

 問題なのは場所と人数だ。僕と里中の二人しかいないのはまだ考慮出来る。河川敷でやることが問題なのだ。

 

「あれ、里中に有里。帰らないのか?」

 

 鳴上だ。まだ帰っていなかったらしい。教室にいないなと思っていたのはただ自動販売機で飲み物を買っていただけのようで、まだ帰ってない僕らにこうして訊きにきたという。

 

「鳴上。今日暇?」

 

「あぁ。暇だけど……」

 

「よし里中行こう」

 

「え。あ、うん!」

 

 かなり無理矢理鳴上も巻き込んで河川敷へと向かった。

 

◇◇◇

 

 河川敷。

 

「なるほど、そういうことだったのか」

 

「鳴上くんが納得したことだし……いくぞー!」

 

 里中の合図と共に特訓を始める。どんな内容だったかは恥ずかしすぎて言えないがこれだけは言える。

 

「順平見ないで消えて」

 

「ヒドッ!」

 

 土手の方を見ると少年野球チームが練習をしていた。もちろん順平もいた。特訓場所とチームの練習場所が近かったせいでみんなに見られてしまった。

 

「恥ずかしいから。じゃないと“順平の所にだけ嵐を~”って願うよ」

 

「ヤメテッ!」

 

「僕は意外と幸運で有名だから」

 

「何に!?」

 

 しぶしぶ順平達には離れてもらった。少年たちに罪はない。悪いのはこの近くを指示した順平だ。

 

「有里くんあの人と知り合い?」

 

「まぁ。僕もたまに教えてもらってるんだ」

 

 里中は僕と話しながら蹴りの特訓をしてる。より足をあげることに挑戦しているようだ。鳴上はと言うと……。

 

「鳴上何してんの」

 

「え。猫とじゃれ……」

 

「天然なのかただのバカなのかどっちなの」

 

「鳴上くんは天然だと思います!」

 

 猫と遊んでいた。とても幸せそうだ。うん、別にいいと思うよ猫とじゃれるのは。やっぱ連れてくるの花村にすればよかったかな。ツッコミ要員足りない感じがする。

 

「湊へい!」

 

 順平が急に僕を呼んだ。足元を指差すから見るとボールがあった。順平の左手にはグローブがはめてあった。

 

「テキトーに投げればいいぜー」

 

 そんな油断してる順平。僕は思いっきり投げた。野球ボール持つとどうしても思いっきり投げたくなるんだよね。たまにだけど。

 

「うおっ!」

 

 あ、順平が尻餅ついた。

 

「速かったな今の!」

 

「そう?」

 

「速かったぞ。有里スゴいな」

 

「スゴいね有里くん! ただ眠いとか大食いとか、そんなじゃないちゃんとした特技あるんだね!」

 

「誉めてるのディスってるの?」

 

 こんな感じで騒ぎながら、暗くなるまで特訓は続いた。

 

ーーランクアップ。「戦車:里中千枝コミュ2」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。