ソードアート・オンライン−−ギルド名『草生えるw』   作:tfride

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遊ぼうぜ


Ⅲ 第11話『ゲームオーバー≪死合終了≫』

かくして死銃対キリトの因縁が再び火蓋を切る、シノンの狙撃によりサイレントアサシンは破壊され有利に運んだ筈の接近戦はしかし、死銃が生成していたエストックにより反転していた。

後手に回り始めたキリトの額には汗が滲み、焦りが見え始めた。身体の各所には刺突によるダメージが見え始める。

 

「ハハハハハ」

 

「くっ!!」

 

どうする、どうすると内心で声を上げるキリトの耳が不意に何かの音を拾う。それは女神の福音か、悪魔の凶報か。

しかしこの場に置いて、意識を他に向けるのは愚作であった。

 

「ソコだ」

 

「ぐぁッ!?」

 

疎かになった防御の隙を突かれキリトの左肩は大きく抉られる、苦悶の悲鳴を耳に追撃の構えを取った死銃。

痛みによる硬直が命とりな事は重々承知の上、息を呑み、冷える背筋にキリトは慌てて飛びのき、死銃は予測の範囲内だと更に踏み込む。

 

エストックは刺突を繰り返すレイピアと同義、鋭い連撃により相手を刺し貫き確実に傷を与える、まさに蜂の如き連撃は今まさにキリトの心を捉えた―――

 

 

刹那

 

 

その一撃は逸らされる、第三者の何かにより刃先は大きく逸らされ、虚空を穿った。赤く光る眼光が明滅したその瞬間をキリトは見逃さず斬り返す。

即座に後ずさった死銃はエストックを一瞥すると再び構える。しかし見据えるのは対面するキリトではない、まさしく邪魔して見せた第三者である。

 

「…貴様」

 

低い声音は僅かな怒りを滲ませ、その先を捉える。そして姿を現したのは黒コートにゴーグルを取り外しニヒルな笑みを浮かべる大柄の男。

宛らガンマンの如くその手にはSAAが握られている、硝煙の上がる銃口を一吹きして仰々しく足を踏み出したその男は見せつける様にSAAをホルスターに戻した。

 

余裕か挑発か、少なくともその笑みに焦りは一切ない。まるでイベントを楽しみにしている子供の様に唇を大きく引き上げ、口を開いた。

 

「仲間外れは酷くないか? 俺も混ぜてくれよ、SAOサバイバーのよしみでな。」

 

キリトはその男を見つけ、安堵する。これはそう、彼らの儀式であり、変わる事の無い大事な定義。彼らのがこの顔をする時は『ソレ』が始まる瞬間である。

 

「…リク、やはり貴様は草生えるwの盾、リクだな!!」

 

「覚えててくれて感謝するぜ、まぁもっとも、ちっとも嬉しくないがなぁ…。」

 

キリトの隣まで足を進めたリクはステルベンに対峙すると、隣の彼を一瞥し再び笑みを浮かべてお決まりの言葉を吐き出した。

 

 

 

 

「さぁ死銃(デスガン)。遊ぼうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に躍り出たのはキリトだった、光剣を手に、斬りかかり、死銃はその状況が不利だと判断したのか後退しながらエストックを構える。

射線を即座に潰されたリクは右側に円を描きながら走りだし牽制する。

 

エストックは相手を真正面に捉えながら構え、突くという点から剣よりもワンテンポ早く隙のない動きを可能とする。

先程もそれによりキリトは後手に回らざる得なくなっていた。しかしこの場に置いてリクという協力者が援護に回った事により状況は好転する。

 

致命打になりうる死銃の攻撃は銃による援護で不発に終わり、着実に斬撃が通り始めた。

しかし相手を倒しうるまでの残弾は無い、援護も不可能になる。

 

5発目、SAA最後の弾となった時、リクはソレに歯噛みすると腰裏の40口径、スミス&ウェットソンを取り出し駆け出した。

 

『!?』

 

闇風程の速力を持って突貫した彼の姿に驚いた両者は一度飛び退くが、リクは更にその先、一歩先まで進み死銃の懐に飛び込んだ。

鉄仮面の赤い眼光と顔を合わせ、リクは笑う。

 

驚きながらも反応した死銃によりエストックが彼の肩に深く突き刺さる。ペインアブソーバーが働き彼の顔には衝撃と汗が滲むが笑みは絶えない。

 

「バーンッ!!」

 

突き出されたステルベンの腕に硬い感触が走り、それは声と共に衝撃と激痛に変わる。二発、途方もない衝撃が走り彼の腕の感触は消え失せる。

思わず仰け反った死銃が見たのはリクの肩に刺さるエストック、そしてソレを未だ握り続ける自身の腕だった。

 

「ッ!! オオオオオオオオオ!!」

 

怒りによる、激情に駆られた死銃がなりふり構わず取り出したのは黒い小さな拳銃、五四式「黒星」。

死を呼ぶための引き金だろうに、今まで使わなかった死の象徴を突き出したという事はつまりそこまで焦っているのだろう。

 

一発、サークルがリクの視線に映し出され彼はこれを回避する。

しかし連続して片手で40口径を撃ち放ったせいか、彼の手は痙攣してしまい、数秒は銃を撃てなくなっていた。

 

歯噛みしたリクを前にキリトが弾丸を防ぐように光剣を振り、その銃弾を斬り放っていく。

 

「下がれ、リクッ!! ここは俺が―――!?」

 

これが最悪の事態だと言うのだろう、数発銃弾を斬り払っていた光剣は明滅し光が失われる。度重なる戦いで光剣を酷使しすぎたせいだろう。

エネルギー切れを起こした光剣に、キリトは声を失い再び赤いサークルが二人に降り注ぐ。

 

ここまでか、僅かに諦めが顔を出したキリトを置いてリクは前へ踏み出した。

 

自分は最後まで遊ぶまで、その先に待つのが死であっても俺は最後まで遊び、死にたくない奴は生きれば良い。

 

そんな持論を並べてキリトを庇う様に踏み出したリクは、死の銃口を見据えた。同時に死銃に向けられる赤い射撃予測線も。

 

自然と吊り上った頬、先に進もうともがく狙撃手に賞賛の言葉を内心で並べリクは右手にナイフを構え、左手にはグレネードを手にする。

 

「チィッ!!」

 

サークルに反応し、隙を見せた死銃に再び接近、驚きの声が上がるよりも先に逃がさまいとナイフを突き立てグレネードを起動させる。

 

「ゲーム――――オーバー!」

 

満面の笑みを浮かべそう呟いたリク、その自爆に巻き込まれた死銃と共に爆炎に彼らは包まれ両者共に吹き飛んだ。

しかし、死銃は既に満身創痍だったこともあり即座に退場。

 

火傷のステータス異常を起こしながら僅かにHPを残したリクは砂漠に転がると、荒れ果てた大地の元空を見上げて乾いた息を吐いた。

傍らには何かが走ってくる音がする。しかしもう自分には戦う体力が無かった。

 

 

 

 


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