ソードアート・オンライン−−ギルド名『草生えるw』   作:tfride

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Ⅲ 第3話『ハンドガンキラー』

「へぇ………」

 

リクは思わず息を漏らす、下の階に降りて間もなく、何やら自分が居るエリアの隣のチャレンジゲームブースが妙な賑わいを見せていた。

幾分、懐は潤ったし装備の補充も終わったという事なので少し覗いてみようかと足を進めている次第。

 

この階のチャレンジゲームは対峙したガンマンの弾丸を避け、ガンマンにタッチすればクリアとなるゲーム。

プール金は同じく500、上階のあのゲームよりは現実味があるゲーム内容であるから挑戦するプレイヤーは後を絶たないのだが、何時もよりも白熱しているようだった。

 

彼が視線を向けた先には先ほど出会った黒髪の初心者プレイヤーが、熟練者の如く弾丸を紙一重で避けガンマンに近づいていく光景。

鬼門の8mラインを超えると射撃速度が上がるこのゲームに物怖じなく、全力で全身する様に思わず息を漏らしたのだ。

 

その身体使いもさることながら弾丸予測線を見た瞬間、即座に反応してそれをかいくぐる度胸。

誰かに思わず影を重ねてしまったが性別が違うと頭を振っている間に、観客がざわめく。

 

下げていた瞳をすぐにそちらに向ければ実弾のリボルバーから光学弾が撃ち出されるという、理不尽が顔を出し、それを避けて見せたあのルーキーの姿。

誰も彼もが言葉を失う中で彼は思考する。

 

(………接近を物ともしない、紙一重を手慣れたようにこなす体裁き、しかも、アイツ、『見て』避けたな。)

 

本来なら弾丸予測線があんな至近距離で向けられれば避ける事など適わないだろう、だとすれば直感か見て避けるか。

ニンジャは絶対出来ないだろうな、歳だ。

が、長くVRをやっているプレイヤーならば可能な範囲だ、そう例えば――――SAOサバイバーならば。

 

あるいは本物の天才か、しかし、あの身体の身のこなしを現実でやるならともかくこの世界でやってのけれるとすれば間違いなく『こちら側』である。

ルーキーだと侮れば思わぬしっぺ返しを食らうだろうなとほくそ笑んだリクは、狙撃手のプレイヤーと話し込んでいる初心者に向かい歩き出した。

 

 

 

 

 

 

「装備はもう粗方決まってるのか?」

 

「えぇ、彼女AGI寄りのSTR型らしいから目星は着いているわ。」

 

「ほう、なら俺からいう事は無いな。そいで…あー、ルーキー? そんなに光剣が気になるか?」

 

賞賛の言葉を伝える為に話し込んでいた二人にそれとなく声を掛けたリクは、成り行きで彼女の装備を探す手伝いをする事になってしまった。

幸い、隣の狙撃手も彼を疑う事なく話をしてくれているので問題はなかった。

 

銃器は定石としてアサルトライフルにサブマシンガン、ハンドガンと防具を眺め、最後に携行品を見ようとしてる時だった。

三人で歩いていたはずが徐にルーキーが立ち止まりあまり人気のない装備の棚を眺めていた。

 

彼が指さす光剣の棚、複数の種類が並ぶソレを見つめていたルーキーはその通りと頷いて見せる。

リクが腕を上げた拍子にコートの中から垣間見えたSAAを隣の狙撃手は見逃さなかった。

 

(SAA、この世界で好き好んで使う人間なんてそうそういないレトロな銃。どちらかといえばコレクションされる部類の銃を使うプレイヤー何て珍しい。)

 

最近騒がれてるソロのハンドガンキラーも同じSAA、圏外を集団で歩いていると単身で襲ってくる凄腕の速射プレイヤー。AGI型だろうその俊敏さを前に壊滅したドローンは後を絶たないと言われてる。

 

(多分この前の『アイツ』だろう……。この人もそれとなく風貌が似てるけどコートも違うし偶然装備が似ている普通のプレイヤーか、彼の真似をしているプレイヤーなんだろうな。)

 

リクが呑気に構えている裏で勘ぐられていたという事実に当の本人が眺める先…。

 

光剣、さながらビームサーベルの如く、スイッチ一つで光の剣が飛び出す装備。リク自体、使用している場面を見た事の無い武器だったが何故か彼女はこの装備を興味深そうに見ていた。

隣の狙撃手が光剣の説明を簡単に述べていくと彼女の瞳は嬉々として輝き即座にお買い上げ、ドローンが瞬く間に現れ彼女に黒い光剣を譲渡した。

 

試し切り、とはいかないがどんなものかと少し離れ光剣を振るルーキーの姿を見てリクは瞳を細める。

 

(…身体の使い方、構えの型、我流だろうが剣の扱いに慣れてる。というか……何でだろうな、黒い装備に紫の剣、何処となくキリトに似ているような…。)

 

この世に自分とよく似た人間が三人いるという言葉を思い出して、小さく笑ったリクは次にALOに戻る事があれば彼にこの話をしてやろうと心で笑った。

狙撃手の彼女も剣裁きに賞賛の言葉を告げると、残高を確認してから銃の扱いのレクチャー、そして携行品を買い上げて店を後にする事になった。

 

時間を確認しBOB予選までの時間を確認したリクは一足先に店を出ると二人に告げ、好戦的な笑みを浮かべて言い放つ。

 

「じゃあな、次にこの世界であった時はよろしく頼むぜ。」

 

即座に切り替えられた狙撃手の視線にリクは肩をすくませて笑うと片手を振るい出口に向かい歩き出した。

 

(さて、歩きも良いけどバギーでいいかね。)

 

そんな事考えながらボンヤリ空を見上げるのだった。

 

 

 

 

 

BOB予選、滞りなく舞台は整い彼は問題なく第一戦へと身を投じていた。

腰元のSAAを撫でる様に触れるとコートを翻し、ゆっくりと足音を立てずに岩陰へと身を隠す。

 

BOB予選は一対一のトーナメント形式で進行されその舞台はランダムに設定される全体1kmの正方形のステージの中で殺し合うバトルロワイヤル。

今回彼が呼び出されたのは荒野フィールド、障害物は少なく、現在彼が身を潜めているような大型の岩が複数と砂丘程。

 

この場で優位に立てるのはどちらかを先に見つけた方となるが、見通しの良さからしてそれもあまり難しくはない。

リクの装備は全体が黒系統の色で統一されている事もあって擬態性能は著しく役に立たない。

 

先手を取りたい所ではあるが、お互いがお互いを探り合っている手前、あまり軽率な行動は控えられていたが。

 

「あー、性に合わねぇ……。」

 

痺れを切らしたリクはそう口にすると袖裏に両腕を忍ばせ立ち上がる、即座に彼目がけ赤い弾丸予測線が背後に形成され瞬く間に弾丸が彼に向かい殺到する。

しかし彼は予測済みだと言わんばかりの笑顔をコート裏で浮かべ片腕に持った投げナイフを投擲。綺麗な弧を描きナイフは相手に迫り、両足から砂塵を巻き上げAGIに任せた加速で弾丸予測線外に逃げおおせたリクはもう一方の腕から小型の黒い金属物を相手に投げつけた。

 

程なくして驚愕する相手の腕にはナイフが突き刺さり、引き抜こうとしたその瞬間に相手の身体に金属の球体が勢いよく当たり。

刹那、小規模の爆発を起こす。

 

小型の着弾式小型爆弾、ダメージを殆ど与える事の出来ない安物だが相手の手元で爆発すればそんなディスアドバンテージなど関係ない。

下手な閃光弾よりも目暗ましの役割を担うそれをリクは重宝していた。小さな悲鳴が聞こえリクはコート裏から『黒い自動小銃』を取り出した

 

ハンドガンである筈のそれのマガジンは通常よりも倍の長さを誇り、そしてその銃はセミ、フルオートの切り替えが可能であるという事。

両腕に二丁その銃を構えたリクはコートの下からでも分かるほどの凶悪な笑みを浮かべ銃口を相手に向ける。

 

Arrivederci(さよならだ)

 

程なくして勝者は決まり彼はマガジンをその場に落とすと、釣り上げた口端を戻す様に振る舞いエントランスへと送還された。

 

「…」

 

そして一番最初に目にしたのは先ほど、『男』だと判明した『キリト』というプレイヤー、かわった名前で黒ずくめ、加えて卓越したその剣裁きはSAO、ALOの友人キリトを彷彿とさせるが確かな確証もなく別人という可能性も捨てきれないため彼は何もキリトに話をしていなかった。

その彼が今、エントランスの中央モニターの近くで誰かと話をしている。相手はこちらに背を向けている為、向かい側のキリトの表情しか伺う事は出来ない。

 

察するに穏やかな談笑ともいかないらしく彼の顔はにわかに引き攣っている。どうしたことか、気になった彼は徐に歩みを進める。

徐々に聞こえてくる話声の端には『本物』『名前』だのと、聞きかじっただけでは理解できない言葉ばかりだがその相手の背中にリクは眉をひそめていた。

 

「…どうかしたか、キリト」

 

口元を晒しキリトに話しかけたリク、そしてその声に反応して振り向いたプレイヤー、フードを深く被りその顔には赤く光る眼光と髑髏のような悪趣味な仮面を装備した相手。

なるほど、こりゃ警戒もするだろうと腑に落ちた表情になったリクは視線をフードのプレイヤーから外してキリトに向ける。

 

「あっ、リク。い、いや別に……。」

 

「…リク…?」

 

「ん? あぁ、俺はリクって名前だが……何処かで会ったことあるか?」

 

己の名前に小首を傾げたフードのプレイヤーに怪訝そうな瞳を向けリクは問いかける、が相手は遅れて頭を振って否と答えた。

その様子に片目を細めたリクは、そうか、と簡素に返し正面に立つプレイヤーの風貌を一瞥する。

 

(仮面のせいで表情も伺えねぇ、嘘を吐いてる可能性もあるがGGOじゃ殆ど名乗ってない。プレイヤー名で素性を探られることもない、か。 仮に『別ゲー』の知り合いでも見た目が変わった俺を見分けるなんて無理だろうしな。)

 

黒いフードつきのコートに赤い眼の髑髏仮面、宛ら死神のようなその出で立ちにコイツが死銃だったりしてな、と冗談を心の中で呟いて再び口を開く。

だがその冗談が笑えない物に変わってしまう。コートの中から垣間見えた包帯が巻かれた腕に刻まれた文様にゴーグルの下でリクは瞳を鋭く研ぎ澄ませる。

 

「…いや…『どっかで遭ってる』かもな。 話は終わったか? キリト、とりあえず二回戦まで話でもしようぜ。」

 

先程とは打って変わり沈んだ声でそう告げたリクは彼の隣をすり抜けてキリトの肩に手を置き、足早に歩き出した。

 

(こんな所で遭うとはな…。 やっぱりあの場(SAO)で全員殺しておくべきだった……。)

 

今も彼の脳裏に深く刻まれている文様、棺桶に不気味な笑顔が特徴の殺人ギルド『ラフィンコフィン』のギルドマークにリクは悪態を着きながら苛立ちを隠すように振る舞う。

思い出されるあの死闘と感覚が頭を巡り彼は小さく舌打ちをした。

 

 

 

 

何を吹きこまれたのかは知りもしないのだが終始無言、俯いたままのキリトの様子にリクは瞳を細めると口を開く。

 

「…アイツ…知り合いか、それともどっかで遭ってるのか?」

 

「…」

 

「…『やられたらやり返される』」

 

「…えっ」

 

「もし、何かの仕返しでもされそうで怯えてるなら降りろ。辛いなら逃げろ、無理してもテメェが壊れたら元も子もねぇんだ。…俺だってそうやって生きてきた。」

 

彼が思い出したのは先ほどの耳に届いた『本物』『名前』という単語、そしてキリトの表情からでリクは別ゲーム内での怨恨、或いは逆恨みを推測して見せた。

根拠は何処にも無いにしろあり得ない話ではない。自身ですらALOで名前だけでSAOサバイバーからの一種の仕返しをされた記憶があるのだ。

 

「――何? 急に降りろとか、物騒な話をしてるじゃない。」

 

そして不意に言葉を誰かから掛けられリクは視線を横に向けると、先ほど自己紹介を済ませた水色の髪の狙撃手シノンが怪訝そうな顔で彼らを見ていた。

 

「あ? あぁ…シノンか。…別に物騒な話じゃない、限界なら落ち着くまで隠れてろって話だ。」

 

「…? 何の事よ。」

 

「ま、機会があればコイツが話すだろうよ。…キリト、それでも前に進むなら気持ちを切り替えろ。『死にたい』なら別だがな。」

 

ぶっきら棒にそう告げたリクは視線をキリトに向けるとそう吐き捨てた。ラフィンコフィン、『死銃』、どちらも共通するのは『死』という概念。

もしもコイツがSAOのキリトならば再び具現化した『死の可能性』に打ちのめされ震えているのも理解できる。

 

仮に他人のいざこざであろうとも幾らでも言い繕える様にリクは言葉を選び口にしていた。徐々に光が戻り始めるルーキーの目を見据えると同時にリクは次の戦いへと転送が始まる。

後の事は自分で決めろと言わんばかりに最後に「じゃあな」と言葉を残して転送されていった。

 

 

 

 

 

さて、次の作戦はどうするか。と気軽に考えた彼は手元にサバイバルナイフを取り出し、次に二丁のグロッグのマガジンを確認してから手持ちのアイテムを確認し思考。

 

「派手に、やるか」

 

今ぐらい、ハメを外しても誰も文句は言わないだろうと激しく躍動し始めた鼓動を肯定するようにグロッグを抜き、持ち得る限りの爆発物を実体化させコートの下に隠したリクはステージに放たれた瞬間、即座に加速する。

本能が、直感が相手の位置を言い当てている。降り立ったのは旧世代の遺跡、罅割れた石のタイルを蹴り上げ、カラカラとなる石の破片を巻き上げながら石柱に足を掛け、力のまま空へ飛びあがる。

 

流石はBOBと言った所だろう、何重にも敷かれた警戒網に触れたリクに瞬く間に弾丸予測線が向けられる。それを待っていたと言わんばかりに身体をよじり宙でグロッグを抜き放ち連射する。

弾丸予測線の軌道を捉え相手の現在地を見据えたリクはグロッグをホルスターに戻すと、ありったけの手榴弾を取り出しその場へ投擲、巻き上がる砂煙に悲鳴を耳にして地に足を着けたと同時にナイフを手に取る。

 

「反省会でもしてな!!」

 

何とか手榴弾から逃げ切ったプレイヤーが最後に目にしたのは目前に迫った銀色の刃だった。

 

 

 

 

 

 

予選も残り一試合、つまり決勝戦に控えたリクは心ここにあらずと言わんばかりにエントランスにて意味もなく中央モニターを見上げていた。

 

(…つまらねぇ)

 

そんな言葉が彼の脳裏に過ぎる、BOBが始まった当初は静かに波打つ鼓動が激しく昂るのを知っていたのにも関わらずにだ。

思えばこの一か月ムキになってBOBで優勝を勝ち取るために装備と、ブランクの克服する為に行動していたが常に一人だった。

 

それが理由かといわれれば否。人間は不思議な事に今まで楽しかったものが、別に気になる存在が現れる事で急に今までに興味を示さなくなるものだ。

つまり、現状、彼は噂であった『死銃』の正体。そしてこのゲームに置いて奴と戦い敗れれば『死』が待ち受けるという状態に心を躍らせてしまった。

 

不謹慎、あまりにも向こう見ず、内に秘めた歪んだ凶暴性が彼を今突き動かしている。

今か今かと、刃を研ぎ始めた本性はやがて始まる決勝戦を待ち望んでいる。

 

しかし彼はソレに腹立たしそうに顔を歪めると人気のない通路の隅へと姿を隠すのだった。

 

 

 

 

 

 

今朝から今に至るまで今日はどうにもおかしな一日だった。

気が付けば悪意のない勘違いから女の子の姿をした男子に初心者に対するレクチャーをしていたし、奇妙な格好のソロプレイヤーによく遭遇していた。

 

しかも両者共に、このBOBに参加しているという事実。私が装備を整える為にロッカールームに男子、キリトを連れて行こうとした手前でソロプレイヤーが当然の様に現れこう口にしたのだ。

 

『おい、ルーキー。男はこっちだ。』

 

思わず耳を疑った私は目を見開いて隣で慌てふためく長髪の中性的な顔つきのプレイヤーを見据える。

その視線に気づいてか、観念したように謝罪してきた彼に怒りが込み上げる。

 

もし狙って声をかけていたのならば今すぐ平手打ちをかまして、そのまま立ち去っていただろうが彼の表情は至極反省したように申し訳なさそうにしている。

はぁ、と一つ溜息を吐いて着替えが終わるまでこの場で待機する事を取り付け私は一人ロッカールームに入っていった。引き留めた理由は勿論、お話(説教)する為である。

 

私が踵を返した所でソロプレイヤーが彼に何かを口にして頭を小突かれていた。その様子にいい気味だと、内心でほくそ笑んでいた。

その後にしゅんと反省の色を露わにしていたキリトとソロの男、私を含め自己紹介という名の宣戦布告を突きつけソロプレイヤーの名前を知った。

 

大柄な体をコートの裏に隠し、コートとゴーグルでなるべく顔を隠した男の名はリクというらしい。

自己紹介ならと彼は目の前で装備を取り外し素顔を晒した。キリトもアバターの中ではかなり希少な類に入るが彼も同じように希少な種類のアバターを手に入れたようで。

 

顔にかからない様に調整された黒髪、装備を外した瞬間に垣間見えた鋭い眼光。

低い声音によく合った何処かの蛇の称号を与えられた兵士のような風貌のアバターであった。

 

その声も何処かで聞いたような気もするのだがどうにも思い出せない。暫くして粗方の説明の後に今回の件でキリトには決勝まで勝ち進まない限り許しはしないと無茶ぶりをして私達三人はそれぞれ一回戦に転送されていった。

 

そして、現状。

 

予選決勝にて直前まで何やら考え込んでいたキリトとの一騎打ちになり、どうやらその気持ちを振り切ったのか真正面から対峙してきた彼との戦闘の後。

ヘカートによる速射を紙一重で避けたキリトに対し、それを予測していた私のサブマシンガンによる銃撃で何とか勝利をもぎ取る事が出来た。

 

二人してエントランスに転送されると何やら中央モニター周りが酷く賑っている。思わずキリトと顔を見合わせてモニターが見える位置に行きモニターを覗くとそこにはリクが一人。

フィールドの中央で物陰に隠れずに棒立ちしていた。

 

「はぁ…?」

 

変な声が私の口から飛び出したが隣のキリトは真剣な眼差しをモニターに向けている。彼の剣技は飛び込んでくる銃弾を弾き飛ばす程に卓越した物で、その直感も確かなモノと言える。

もしや彼はこの映像から何かを察したのかもしれないと私が考えた瞬間だった。

 

何かを感じ取ったのか、即座に身を翻したリクの腕から拡張マガジン付きのグロッグが弾き飛ばされる。

一、二度、身を後退させたリクは視線の先で挑発するように現れたプレイヤーを見据え静かに向き直った。

 

(そうか、決勝の時点で本選への参加条件を満たしたから相手は態と彼の武器を狙ったのか。)

 

 

「本選への参加も決定したことだ、ここは簡単にケリを着けないか?」

 

歩み出たのは紅いベレー帽にグリーンべレイの装備をモチーフにした容姿のプレイヤー、その手にはアサルトライフルAK47が握られている。

嫌な笑みを浮かべそう提案した男のルールはこうだ。

 

お互いに持ち得たハンドガンによる速射勝負、リクがまず最初にハンドガンを拾ってからお互いに20歩分の距離を取り、放り投げたマガジンが地面についた瞬間に撃ち倒した方が勝ちというルール。

宛ら荒野の決闘のような内容ではあるが。先に彼の武器を撃ち抜き態々提案するところを見るにこのプレイヤーはフェアな勝負をする気など更々ないのだろう。

 

現に了承を示した彼が銃を拾う為に踵を返した瞬間にはアサルトライフルを握る手に力がこもっていた。

そして彼が一歩踏み出した瞬間、男はアサルトライフルを構えようとして――

 

砕け散った。

 

 

 

 

「!?」

 

「…まさか」

 

隣のキリトが息を呑み、私はモニターの映像越しに何が起きたのかを確認する。

何時の間にか正面を向いていたリクの手に握られていたのはSAA、銃口先から白煙を上げるシングルアクションアーミー。

 

銃声は一つ、だが彼が徐に捨てる弾丸は6発。

徐々にざわめき出すギャラリーの中で私は思わず笑みを浮かべてしまっていた。

 

(みつけた…!)

 

遂に見つける事が出来た、ハンドガンキラーを、冥界の女神が仕留め損ねた強者を。

彼は相手の真意を逆手に取り逆に不意討ちを仕掛けた。SAAによる速射6連撃を。

 

常人よりもずば抜けたその技術と才覚、相手にとって不足などない。

BOBという最高の舞台の上で、彼を倒せば私は更に強くなれる。

 

 

 

経った今、リクは一人の狙撃手に文字通り目標を固定(ロックオン)された。




推しの配信が物騒で、やたらと『ゆび』を要求してくるからキーボードタイピングできなくて遅れました。

って遅くなった言い訳考えたんだけど。

どう?

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