ソードアート・オンライン−−ギルド名『草生えるw』 作:tfride
ティッシュをご準備ください
結婚式。
この響きを聞くだけで何ともめでたく、そして希望に満ちた生活の始まりと思わせる人は多いだろう。
今回はこの二人。
毎度毎度草生えるwのメンバーに胃を溶かされているキリトくん。
「おい待て、溶かされている前提なのか。俺の現実の体大丈夫なのか」
そしてその妃、血盟騎士団副団長…略してケツの副団長アスナさん。
「凄まじく不名誉な略し方するのやめてくれませんか」
この二人の晴れ晴れしい新生活を祝おうではないかと立ち上がったのがこの人物。
SAO商店にてギルドマスターをし、さらにはもはや草生えるwの集会場として使われているリズベット武具店を経営している、メイスマスターリズベット。
「ギルドホームで集会しなさいよ」
そしてリズベットが結婚式のプロデュースをお願いしたのがこの糞ギルド。
草生えるwの
「ほほう、結婚式とな」
「いつもあの二人にはお世話になっているからな。
「まずは式場だ!! そして仮装だ!! ゲー〇ドライバーもってこい!!」
「なんで俺たちに頼んだの? 滅茶苦茶するに決まってんじゃん」
Q 以上のことから推測できる結果は何でしょう。
A カオス
以上の事を踏まえてご覧下さい。
■
「俺は何でここに連れてこられたんだ」
場所は第一層の始まりの町。
時間は既に昼を過ぎており、解体され新しく編成されたアインクラッド解放軍が巡回をし、とても落ち着いている。
そんな中キリトは町中の安宿に入室していた。
アスナと新居の相談をしながら各層を出歩いていたところ。
from Ninja
『重要な話がある。時間があるときで良いからアスナと二人で始まりの町に来てくれ。前線関係じゃないから安心しろ。
来なかったら全層にキリト浮気疑惑流してやるから絶対来いよ』
アスナに土下座してついて来てもらったのは言うまでもない。
そして来て目に映ったのはあの四人組。
いつもと違って戦闘服ではなく、どことなく砕けた普段着であった。
が、来て早々。
「で、用ってなんだよ」
『まぁまぁまぁ』
「え、なんだよ」
『まぁまぁまぁ』
「おい待て何するつもりだ」
「アスナちゃんはこっちにどうぞ」
「い、いや、何するつもりですか」
「お茶菓子と紅茶用意したから」
「あ。…い、いただきます」
「ちょ、ちょっとまてアスナ」
『まぁまぁまぁ』
「待ってくれ、ほんとに何なんだ」
『まぁまぁまぁ』
「なんだそのロープは、なんで角に追い詰めるんだ」
「アールグレイで良いですか?」
「ありがとうございます、どこで見つけたんですか」
「生産系スキルばかり上げた賜物ってことでここは一つ」
「おいアスナ!何寛いでるんだ!!」
『まぁまぁまぁ』
「や、やめろぉおおおおおお!!」
以上が数十分前の出来事。
現在はキリトは猿轡をされて、貸し切りにしたカフェの柱にグルグル巻きにされ、アスナはというと。
「こちら新鮮な川魚のサラダです」
「もぐもぐ」
絶賛ニンジャの全生産系スキルをもって持成されていた。
「ふごぉおおおおおお」
翻訳―あすなぁああああああ
次々に準備がなされていく持成しに完全にくつろぎモードになっているアスナ。
最初はキリトの現状を流石に怪しく思い、抗議しようとするも。
「大丈夫何もしないから、ちょっと恩返しのために準備しているだけで」
「いやなにも縛ること…」
「だってキリトくんにそれ伝えたら、恥ずかしがって嫌がるじゃん?強引にでも受け取ってもらおうと」
「まぁ、確かにキリト君はそういうところが…あるのかな?」
「ソウダヨソウダヨー」
ローキの言いくるめにまんまと丸め込まれてしまった。
致し方ないとあきらめ、ふと外を見ると、彼ら四人だけではなくSAO商店のメンバーらしき人影がチラチラと見え隠れしているところから、これも何かのイベントだろうとあたりをつけ。
だったらなおさら縛り付けるなよと少し頭に血が上るキリト。
しかしながら未だに自分が連れてこられた理由がわからない。
普段は自分がイベントに参加する側だったため、こうしてイベントの裏側から見るのはなんだか新鮮な気持ちになった。
と、そこであの四人組が、いつもとは違った真剣な顔で指示を出すところを窓越しに見た。
あぁ、あいつらあんな顔もできるんだな。
いつもにやけた顔で平気で酷いことを仕出かすあの四人とはかけ離れた一面に少し見入っているが…。
しかし現状ここにいたら
おいしく頂かれる。
何とか抜け出そうとするもニンジャが定期的にこちらの確認をするため下手に動けない。
とここでニンジャがキリトたちのところへ戻ってきた。
「ちょっと様子を確認してくるから、おとなしくしててくださいねー」
何ともフラグじみた言葉を二人に掛けると、そそくさとその場を去っていった。
これは勝機とばかりにキリトがもがくよりも早く、アスナがその場に駆け付けた。
「だ、大丈夫キリト君!!」
あぁ、アスナ心配してくれてありがとう。
けど口元にソース付けて来てくるのはどうかと思うんだが。
と、そんなキリトの心情をよそにアスナはキリトを開放すると。
「あの人たち何をしてるんだろう…。なんで私たちを此処に留めておくのか分からない」
「そうだな…明らかに見世物にしようとしている事は確かだろうな」
そういいながらキリトの見つめる先に、リクを筆頭に複数人で巨大な十字架が建てられていた。
貼り付けにして殺す気なのだろうか。あぁやりかねない。
「逃げようか」
「逃げよう」
そう言ってそそくさと立ち去ろうとするキリト達。
が、玄関を開けようとした先にはリズベットが…。
『で、でたぁああああああああ』
「人をバケモノみたいに扱うのやめてくれない?」
そう言いながらストレージを開き、何着かの服を取り出すとアスナに投げ渡した。
「ほらアスナ、好きなの選びなさいな」
その言葉に困惑していると、何かを察したのかリズベットが続けて口を開いた。
「その様子だと、また何も伝えられずにここに拉致されてたのね…」
相変わらずだわとため息をつきながら、リズベットはパンフレットのようなものを二人に見せた。
―招待状
プレイヤー、キリト、アスナ両名の結婚に祝辞を送るため、第一層教会を貸し切り簡易的な結婚式を挙げたいと思います。
つきましては下記ご指定の日程に始まりの町に――
と丁寧に彩られた封書につづられていた。
が、ここでキリト。
「いやまて、なんでこいつらが俺たちが結婚すること知ってんだよ」
その言葉に視線を不意にずらしたリズベット。
「お前が犯人か」
「そ、そうよ。知人がこの世界でとはいえ結婚するんだから当然じゃない。あの四人に結婚式の準備を頼んだのよ」
何とも人選が狂ってはいるが、確かに彼らにイベントを任せれば問題は無いだろう。
問題はその規模である。
「ところで結婚式のまねごとをするんだから、来席者とかもいるんだろ?」
「えぇ、これがリストよ。大概があんた達に関わったことのある人たちだから問題ないでしょ?」
そう言って渡されるリストには、クライン達風林火山のメンバーや、血盟騎士団全員。
「まじかよ…」
なんやかんやこの作品初登場のシリカや、新編成されたアインクラッド解放軍。
「ちょっと待て、いい感じにまとめている様だけどそれだけでも500人超えてるだろ」
「…そうね」
「おい」
大企業社長の結婚式でもまだしめやかにするだろうと思っているキリト。
が。
「ねぇリズ、このドレス誰が作ったの?」
「ニンジャさんと私で。デザインは私が決めたから安心しなさい」
「なんで乗り気なんだよ」
女の子ですもの、ウエディングドレスに憧れるものなのです…と言わんばかりに顔をほころばせてドレスを選んでいるアスナ。
「ほらほら、キリトも着替えなさんな」
そう言って渡される…いつもと違った色合いの…真っ白のタキシードを渡されて。
「まぁ……今日ぐらいはいいか…」
あの四人がこれだけ全力で取り組んでくれるのだ。
その恩は無下にはできない。
そう思い、キリトもタキシードに袖を通すことにした。
今のうちに逃げればよかったものの…。
■
「それでは新郎新婦の登場です」
そう言って開け放たれる扉。
本来は父親などが新婦を連れてくるはずなのだが、ここは現実と切り離されたゲームの中。
簡略化するために新郎と新婦を一緒に入場させることになったのだが、その現状がカオスだった。
扉を開けた瞬間聞こえてくる奇声。
並べられたはずの椅子は全てがひっくり返っており、正装をもって式に臨むはずである来客は酒に酔っているのかの如く暴れている。
「ちょっと待ってろ」
そう言いながらリクが先頭に立ち、自分だけ中に入ると、いきなり扉を強く締めた。
瞬間、凄まじい轟音と共に何かかが殴られる音が続き…。
そして再び扉が開かれると、そこはまさに教会。
皆が静かに新郎新婦の入場を待っていた。
「何したんですか」
「お話を」
絶対言葉だけで済ませてない音が聞こえたがこの際気にしないでおこう。
そう思って一歩一歩進んでいく二人。
通りがかる人たちが一言一言キリト達に告げていく中、クラインが。
「キリの字ぃいいいいいいいいいいいい!!」
と言いながら膝から崩れ落ち。
「お前だけずるいぞぉおおおおおおおおお」
仕方がない、主人公だもの。
あらゆる理不尽を覆し、ヒロインと結ばれる運命にある主人公だもの。
というよりこの空気でよく叫べたなと思いつつ、そんなクラインはさておき。
しかし最も二人の目に入ったものは、十字架にかけられたクラディール本人であろう。
「あれは…」
と、そこで先導するように歩きつつ、突撃してきそうなクラインを殴り飛ばしながらニンジャが一言。
「なんかキリ〇トみたいな見た目してんじゃん」
「教徒に怒られてしまえ」
その真下に待つ神父役であろうウサギが白い紙を口元にマスクのようにかぶって髭に見立てながら聖書…のようなガイドブックを持っていた。
その表紙にはご丁寧に『せーしょ』と書かれており。
「もうどこから突っ込んでいいのかわからん」
いろいろ考えることを放棄したキリトはもう流れに任せることにした。
「えーごほん。汝ぃーキリトはぁー、この女アスナを妻としぃー」
「この空間にまじめにやってくれる人間はいないんですか?」
アスナの呟き空しくは足は続く。
「良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も……お腹がすいた時も仮面ライダー録画し忘れて喧嘩した時も」
「は?」
「新しいベルト買ったのに捨てられた時も」
「まて、それお前の実体験だろう」
すると再びリクが現れ、ウサギの首根っこをつかんで裏に引きずり込んでいく。
「い、いやだ!! あれは勘弁して!! 死んじゃう!!」
「むしろ死んでくれ」
そうつぶやいたキリトは悪くない。
するとローキが立ち代わりで台に立ち。
「汝キリトは、この女アスナを妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
「ローキさん…俺はあんたが神父でよかった」
ウサギがいなければ何とも静かに進む式場。
誓いの言葉を交わし、指輪を交換し。
キス…はさすがに二人の羞恥心マックスになるので止めておき…。
何ともスムーズに進む式。
だがみな忘れてないだろうか。
これは草生えるwがたてた式なのだと。
■
ライスシャワーというものをご存じだろうか。
式の終わりに新郎新婦が退場する際に米をかけるあれだ。
人数の問題もあり他プログラムは後にということだったので、先に主役を退場させる算段だったのだろうか。
しかしながら、問題はその米の投げ方にあった。
「なんでお前らシングルシュートで投げてくるんだよ!!」
我らが主役目掛けて一斉に投げつけられる殺意に怯えながら階段を駆け降りるキリト。
アスナは何故か既にどこかに退散しており、狙いはキリトのみ。
しかもその全員が。
「死ねキリトぉおおおおお!!」
「俺らのアイドル奪いやがって!!」
「死んで償え……!!」
殺意しかない。
圏内だとわかっていてもにじみ出る恐怖がキリトの足を速く動かせる。
仕方がないとキリトは目の前の倉庫のようなものに駆け込みドアをぶち破った。
「く、くそ、ここでいったんやり過ごして…」
瞬間、キリトがまばゆい光に照らされる。
「な、なにが…」
そう言うキリトの視界には、招待された様々なプレイヤーが列を構えキリトを取り囲むように陣取っていた。
「さぁ最後のプレイヤーが現れました!! それでは始めて行きましょう!!
第一回! チキチキ! 聖杯戦争!!」
「ちょっとまてぇえええええええええ!!」
ウサギのなんかよくわからないテンションに乗せられた様々なプレイヤーたちが一斉に雄たけびを上げ自らの士気を見せつける。
「まぁまぁキリト君、君がこの戦いに勝てば草生えるwが新居購入の半額を負担しよう!!」
「え、まじで?」
負担してくれるという言葉に一瞬食いつくキリトだが、しかしイヤイヤと首を振り。
「ちょっと待て、負けたらどうなるんだ」
「なんかよくわかんないけど嫌なことをする」
「超抽象的だな」
次第に目が慣れてきたのか周りの状況が見えてきた。
倉庫を少し改造したのか、ちょっとした集団ゲームができるように芝生が敷かれており、この後どんなゲームを繰り広げられるのか見えてきた。
「とりあえず体を動かす系なのが分かったけど…どんなゲームをするんだ?」
するとどこから取り出したのかマイク片手に。
――ゲームは厳選なくじ引きによって決まります!――
「なんかこの流れどっかで見たな」
■
第一回
あみだくじ
「実力関係ねぇ!!」
競技のため黒服に着替えたキリトが叫ぶ。
■
第二回
かるた
「マッチ一本火事の元」
「せいや!!」
「流石二刀流」
「いや関係ないだろ」
■
第三回
椅子取りゲーム
「はぁああああああああ!!」
「アスナ(さん)(ちゃん)はぇぇえ!!」
「なんでアスナが参加してるんだ…」
■
第四回
黒ひげ危機一髪ならぬ
ウサギ危機一髪
「なんで俺が黒ひげなんだよ!!」
「仕方ないだろ、くじに従え」
そう言いながら容赦なく剣を突き立てるニンジャ。
「やめろぉおおおおお」
「あたれ!!」
そう言いつつダークリパルサーをねじ込むキリト。
「おおおおおおおおおおお!?」
そして…。
「はぁああああ!!」
連撃で次々に穴に剣を差し込むアスナ。
スポーン
がしゃーん
そして頭上の照明に頭を突っ込むウサギ。
「ウサギが死んだ!?」
『いつものことだ』
■
第五回
100m走
開幕スタートダッシュを決めるウサギ。
「ややややややややややっふぅうううううう」
「な、なんじゃありゃぁ!?」
■
時間は既に夕方。
朱色に照らす太陽がまぶしく、思わず目を伏せてしまいそうになる。
そして競技に疲れ仰向けに手を組み倒れている約100名。
故に眩しかろうと目を皆伏せている。
そして黒鉄宮前のオブジェクトの前で白い灰になっているキリト。
皆が皆この惨状について一言に纏めるならばこう答えるだろう。
地獄絵図。
そしてそのキリトの前に立ち並ぶ四人組…。
「死して屍拾うものなし」
「いや死んでないから」
そんなこんなで自らの結婚式を盛大(?)に祝ってもらったキリト君。
もちろん喜んだことだろう。
それはもう泣きながら…。
余談ではあるが、結局勝敗は分からず、キリトは新居を自腹で買ったのであった。
「マジで何だったんだ…」
用意できました。
あ、用意してもらっただけです。