ホンダムを更新する筈だった。
まあそれはそれ。
楽しんでいただければ幸いです。
前回のあらすじ
ミヅキ「おい、きあいパンチしろよ」
そんな感じ
私がコブシ博士と出会って嬉失神した翌日。
私とママは朝ご飯を食べていた。今日は一日荷物の整理で終わりそうかなぁ……。
と、玄関のチャイムがなった。
「私出るね!」
「ありがとー」
パッと動ける私はとてもいい子である。これはきっといいことが起きるに違いない。
「は~い、どちら様で……」
「やっほーミヅキちゃん! 師匠だよ!」
「」
「えっ……?」
……
「はっ!」
「お、目が覚めたみたいだね」
「え、ククイ博士? あれ? 師匠は?」
「ここに居るよ」
と、ククイ博士の後ろから顔を覗かせる師匠。
あ、駄目だヤバいかも……。
「おやすみなさい……」
「おっと、わかった。慣れるまではこうしてククイ博士の後ろに隠れとくよ」
「え、なにそれ面倒なんだけど……」
「ミヅキちゃんが早く慣れてくれれば解決ですよ」
「早く慣れるんだミヅキ」
「え、普通にまだ無理です」
ククイ博士越しでも伝わるきあいパンチ力。これはマジヤバい。師匠ったらマジきあいパンチ。
でも師匠になってくれたんだからなんとか慣れないとどうにもならないよね。
「その、私も頑張るので、顔隠すとかなんかこう、コブシ博士感を薄めてもらえませんか?」
「顔隠すったって……どうしようかなぁ……」
「紙袋でも被ったらどうだい?」
「うーん……あ、そうだ。ククイ博士、あれ貸して下さいよ」
「あれ……?」
「ダイナマイトアローラ? だかなんだかのマスク」
「は? なにそれ。知らないんだけど」
「あれ、違ったっけな……うーん……あ、思い出したロイヤルマスクだ!」
「な、なんのことかな?」
「え、あれロイヤルマスクのマスクじゃないんですか?」
「ち、違うよ。というかアローラに来たばっかりの君が何でロイヤルマスクなんて知ってるの? マイナーでしょ?」
「空港の本屋さんの雑誌に載ってましたよ、ロイヤルマスク。今話題のご当地ロイヤルマスクなんですよね? あれでしょ? ロイヤルロイヤル! ってやるんでしょ? 面白そうですよね!」
謎の動きをしながら「ロイヤルロイヤル!』と叫ぶ師匠。ロイヤルマスクって知らないけど、師匠の言ってる通りならなんかヤバそうな人だね。
「いやそんなこと一度もやったことないし!」
「ん?」
「え?」
「いや、ロイヤルマスクが、だよ? ボクはロイヤルマスクじゃないから!!」
「えぇ~? ほんとですかぁ~?」
「ほんとだって! ていうか結局どうするのか決まってないよ!」
「だからロイヤルマスクのマスク貸して下さいって」
「だから駄目だって! ……いや違うそんなの持ってないって!」
結局、マスクの件はうやむやになった。ロイヤルマスクって何者なんだろうね。
「……仕方ない。じゃあ、こうしよう」
帽子についてる布? ひも? ひだ? 触手? まあよくわからないけど帽子についてるやつを顔に巻き付け、目だけを出す師匠。成る程、パッと見、ただの不審者だ。誰も師匠とはわからないだろう。さすが師匠、良い子は真似しないでねって言いたくなるようなことを平然とやってのける。私はいい子だから絶対真似しないもんね!
でもこれ、薄まってんの? 薄まってないよね師匠感。こんなんやるの師匠くらいだし。
「これで大丈夫そうかな?」
「……はい、大丈夫そうです」
「じぇるるっぷ」
でも意外と大丈夫だったのでよしとする。
うん、ほんと、不審者にしか見えない。そして逆に師匠感感じる。これで師匠感強まるってことは、つまり、師匠は不審者ってことだ。不審者を師匠に選ぶって……もしかして私の目は節穴だった……?
いやでもまあ、きあいを感じるのは視覚に限らないって本に書いてあったし、視覚的に師匠かはわかりにくくなったからこそ、きあいが強く感じられるのだろう。曇りの日の方が紫外線が強くなるらしい、これもそういうことだろう。
「それで、ご用件は?」
「ククイ博士からどうぞ」
「今日のお昼に島キングのハラさんのとこに行ってポケモンを貰うって話を伝えてなかった気がしたから、伝えに来たんだ。言ってたっけ?」
「初耳だと思います」
シマキングってなんだ。ニドキングみたいなものだろうか。アローラにはカントーのポケモンの通常種とは違う姿の奴がいるって言うし、シマキングもその一種かな。
いや待った。それだと私はポケモンからポケモンを貰うってこと? 違うよね?
「おっと、それはごめんよ。今日はお祭りでね、島の守り神に捧げるポケモンバトルもやったりするんだ」
「へえ。誰が戦うんですか?」
「初めてポケモンを貰うトレーナー同士のバトルだったりすることが多いけど……」
「ってことはそこが私のデビュー戦ですね! わかりました!」
「いい返事だ。バトル、期待してるよ! じゃ、ボクの用件は終わり! また後でね!」
「はい! それで、師匠のご用件は?」
「うん、バトルまで時間あるし、島キングに挨拶する前に島の守り神に挨拶しに行こうって誘いに来たんだよ」
「成る程、わかりました! って島の守り神ですか? 一体どんな……」
「まあポケモンだし、会えるかはわかんないけどね。どうする?」
「うーん……」
「行ってきなさいよミヅキ。どうせ部屋の片付けは飽きちゃったでしょう?」
「え、いいの?」
「ただし、帰ってからちゃんとやること」
「はぁい……というわけで師匠! 行きます!」
「よし! じゃあ出発だ!」
「あ、まだご飯食べてる途中なので待ってくださいね」
「あ、うん」
━━━━━
真の英雄は目で殺す、という。
一級の英雄ならば、できて当然のこと。力を持つものならば、視線1つで物理的破壊を生じさせることができる。
それは、眼力のようなものなのかもしれないし、英雄に至った者が持つ超能力のようなものなのかもしれない。
さて、それは人間の話。
ポケモンならどうだろうか。
シンオウ地方の神話によれば、ヒトとポケモンは同じであったらしい。結婚して子を成す者たちもいたそうだ。ルージュラやサーナイトのような、比較的人間に近い容姿をしたポケモンがいるのがその証拠であろう。
さて、人とポケモンが同じであることが指すのは、そう、ポケモンもまた、目で殺すことができるということだ。
人間にすら可能であるなら、ポケモンには造作もないだろう。ポケモンは我々人間よりも遥かに優れた力を持っているのだから。
だが、待ってほしい。「にらみつける」「へびにらみ」等、目に関する技は存在する。だが、目を使った攻撃技は存在しない。
だとすると、ポケモンはどうやって「目で殺す」のか。
その謎を解く鍵が、きあいパンチである(既に読者の皆さんは察していただろうが)。
きあいパンチは攻撃技である。であれば相手を殺す(もちろん比喩である。殺すことができるのは事実であるが)ことは可能だ。
今更、「目からきあいパンチなんてできるわけない」と思われる読者は居るまい。
ここまで読んできた読者の皆さんからしたら蛇足でしかないかもしれないが、一応解説しておく。
(中略)
まとめると、
きあいパンチは腕の有無に関わらずすべてのポケモンに可能である。そして、ほとんどのポケモンには目がある。よって、きあいパンチは目で撃てる
といったところだろうか。
ご納得頂けただろう。
コブシ・レン 著『我々はまだきあいパンチを知らない』より
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「とまあ、こういうわけだから、貰うポケモンがどんな子でも心配は要らないよ」
「成る程ぉ」
「どんな子達なんだろうね。ワクワクするなぁ」
「師匠がワクワクしてどうするんですか」
「いいじゃないか別に」
「いいですけど」
所変わってリリィタウン(とか言う所)。師匠と二人、島の守り神に挨拶しに向かっている。
勿論、師匠の格好は帽子巻きスタイル。
美少女(私のこと)と並んで歩いている姿は、率直に言って変質者だ。
道中、貰うポケモンにローブシンみたいに立派な腕がついてなかったらどうしよう……、みたいなこと私がを呟いたら、師匠がその不安を吹っ飛ばしてくれた。
まあ、言ってることのほとんどは意味わかんなかったんだけどね!
師匠ができるって言ってるんだから、たぶんできるんでしょ。私は師匠を信じるし、未来の私のポケモンちゃんを信じることにした。根拠はない。
師匠の言うことを無条件に信じる私は素直かわいい。それは間違いない。
「あ、おまわりさん! あいつです!」
「む、本当だ! あからさまに不審者だ! そこの二人、止まりなさい!」
「それにしても師匠、守り神に挨拶なんて、随分信心深いんですね」
「いや、信心深いって言うか……神って居るからさ」
「え、居るんですか? どこに?」
「シンオウ地方とか……あと神って言っていいかわからないけど反転世界とか」
「待てって言ってるだろう!」
「え?」
「ちょっと話を聞かせてもらいましょうか」
「ちょっ」
そのままおまわりさんに連れていかれそうになる師匠。
「え、師匠? 何かやったんですか?」
「身に覚えがないんだけど……」
「そんな怪しい格好して歩いてるのを見過ごせるわけないだろ!」
あっ……。
これ、私のせい?
「いやぁ、助かったよコゴミさん」
結局連れてかれた師匠。私も必死に説明したけど、脅されてるとか勘違いされてかえって師匠が問い詰められる始末。昨日のお姉さん(コゴミさん)に連絡して、なんやかんやあって無事解放された。一件落着。
でも……。
「朝起きたらいないし電話きたと思ったらなんかしょっぴかれてるし……なに考えてんの!?」
「いやあ、起こしたら悪いかなぁと思って」
お姉さんは激おこです。一難去ってまた一難だね。さすが師匠。
「どうしてこうじっとしてられないワケ!? いくら旅先だからって、仕事あるでしょうが!」
「いや、仕事はするさ。データ取りを」
「だったら計測機器の1つでも持っていきなさいよ!」
「結局俺の目が一番正確なんだよね」
「そうだろうけど……」
え、そうなのか……。師匠すげー。
「でも!! ……ちゃんと、おはようとかさ……言いたいじゃん」
「え……ごめん」
かわいい。コゴミお姉さんがかわいい。怒ってるけどかわいい。年上だけど思わずかわいいと思ってしまった。恐ろしい人……!
「全くもう……それで? 今何しに向かってんの?」
「ちょっと島の守り神に挨拶を……」
「そんなの行かなくたって……それあたしも行きたい!」
行きたいの!? と声に出さなかった私は我慢強い子。あとで自分にご褒美をあげよう。
そして、結局メンバーにお姉さんも加えることになった。やる気のある人を師匠が拒むはずがない。いわんやコゴミお姉さんをや(反語)。
お祭りの屋台には目もくれず、でもバトルの会場になるであろう広場はちゃんと確認しておいた。
木製の土俵みたいなステージだった。いかにも試練の場って感じ。戦う場所を見て私もなんかワクワクしてきた。早くポケモンちゃんにも会いたいな。
と、そんなことを考えながら私達は参道に入った。
ついさっきまではワイワイガヤガヤとしていたが、静かなものだ。
神聖な気配とでも言えばいいんだろうか。思わず姿勢を正してしまうような……。
こういう雰囲気の場所だと師匠も神妙な感じになるようだ。
「嗚呼、いいなぁ……」
「え……?」
「間違いなく、居る。歓迎してくれてるみたいだね……!」
と思っていたがそうでもなかった。師匠が何かを受信した。私置いてきぼりだ。寂しいのでコゴミお姉さんの方を見る。きっとお姉さんなら私の気持ちをわかってくれる。
「……」
お姉さんはお姉さんで念入りに拳を固めていた。やる気満々じゃないですかやだ。完全に置いてきぼりじゃん。
「あの、挨拶、するんですよね?」
私はこう、お参りする的なニュアンスの挨拶を想像してたんどけど。
「ああ、
あっ……。師匠の顔が、ちょっと頭おかしい博士の顔から、歴戦の戦士の顔に変わっているのを見て、自分の考えが間違っているのを悟った。
一歩一歩、遺跡に近付く度に、雰囲気が濃くなる。成る程、師匠の言っていたことがわかった。確かに何かがいるのだろう。この雰囲気を作り出すほどの力を持った何かが。それがきっと、この島の守り神。なんだか緊張してきた。どのみち、今回私は見てるだけだろうけど、こうして立ち会うだけで、得られるものは多い、そんな気がする。
そして、遺跡にたどり着いたのだが……。
「カプゥーコッコ!!」
雄叫びをあげながら雷を撒き散らし勢いよく飛んできた何かと、
「
それを迎え撃つ師匠のきあいパンチとの激突による余波で、私の意識はあっという間にさよならバイバイしたのであった。
読んでいただきありがとうございました。楽しんでいただけたなら何よりです。
仕事が忙しいせいで現実逃避(投稿)もまともにできやしない。とまあ、ここで愚痴ってもしょうがないですね笑
最近の私には謙虚さが足りてない気がする。
ちゃんと感想には返事を書こうと心に誓う(書けるとは言ってない)。
次回予告
カプゥーコッコ!! カプ、カプカプ、カプゥコッコ。カプ? カプ、カプゥ……カプゥーコッコ!! カプカプゥ、カプゥ? コォッコ!!
カプゥ、カプゥカプップ カプコッコ
カプゥー↓↓コッ↑↑コォ↓↓
カプカプカプカプ、カプゥコッコ!!
↑これが今の私の精一杯です。
ちゃんとした怪文書とか書けるようになりたいなって思う。