ダンジョンに出会いはある・・・?   作:ろとまる

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今回は少し長めにかいてみました。

5/26 
リヴァリエ→リヴェリアに訂正。
ご指摘ありがとうございました。
・・・思い込みって怖い・・・です。

6/2
修正いたしました。

6/5
修正しました。



白兎決意する。

「さて――――――そろそろ教えてくれるかな?ロキ。」

 

フィンがロキににこにこと迫る。

 

「うち、おすすめの子がおんねん。せやからみんなにもみせとーてなぁ」

 

ロキはキョロキョロと白兎を探すが見慣れたウェイトレスと自分の子どもたちしか

見えない。

 

「なら、わたしたちがここに出向くより来てもらった方がよかったのではないか?」

 

美しいという言葉では短慮すぎる。もうすこし相応しい表現があるのではないかと、そう思わせるようなエルフの女性、リヴェリア・リヨス・アールヴ。彼女は、ロキのいつもの気まぐれに頭を抱えながら口を挟む。

 

「みんなで、見た方がはやいやん!」

 

ぶぅとホッペを膨らませながら反論するロキに

 

「・・・・ロキ?おまえ、ただ飲みたかっただけだろう?」

 

静かにリヴェリアの冷たい視線が刺さる。さすがはこの大所帯をしきる副団長である。

 

「おーこわっ。これ以上睨まれると、ウチの酒まで取り上げられてまうからな!」

 

ロキはおもむろに立ち上がり

 

「今日は、みんなに紹介したい奴がおんねん!!どるるるるる(巻き舌ができない)

じゃん!白兎ちゃんです!!!」

 

 

と宣言し、主神であるロキの言葉どおりに、彼女が指差す方へ団員が、身体を向ける。

その視線の先には――――。

 

「え?」

 

当然のように何も知らず先ほどようやく皿洗いを終え、次の仕事をシルたちに仰ぎに来ていたベルがいた。

 

「え、な、なんですか?」

 

思わず視線に耐えきれずカウンターに下がるベル。

 

「また、かわいいどころが増えるな」

 

「戦えるのか?かわいいからいいけど」

 

「ん・・・?この匂い・・?」

 

口々に感想を漏らすファミリアの面々たち。

 

「“紹介”か。ロキは彼をファミリアへ入れたいのかい?」

 

そんな雑音など、気にも留めずフィンはロキに話しかける。

 

「せや?あかんか?」

 

「少なくとも常に人手不足であるうちのファミリアでは歓迎すべきところだ。」

 

フィンは立ち上がりベルの近くに行き

 

「まだ、当人の言葉は何も聞けていないからね。」

 

と、笑いかけるでもなく、おこるでもなく無表情でフィンは

ベルに問いかける。

 

「君はどうして―――――冒険者になりたいんだい?」

 

昨日からの2度目の質問。

(大丈夫。今なら、はっきり言える。

弱者でなんていたくない。

強者でありたい。

そして、いつか僕は昔、本で読んだような・・・。)

 

「英雄になるためです。」

 

ベルの発言に周囲は大爆笑。大半が馬鹿にしていた。

罵倒し、罵り、蔑み、誹謗し―――――。

 

そんなことを言えばこうなる結果くらい誰でもわかる。

だから、誰もが言わない。

かつて、一度は憧れたものだというのに。

フィンはジッとベルの顔を見た後告げる。

 

「なら、入団試験をしよう。ロキが勝手に期待を持たすようなことを言っていたら

申し訳ないんだけど、これは団の決まりだ。・・どうかな。4日後。うちのホームへおいで。

内容は・・・」

 

「はいっ!!!」

 

これにはさすがのフィンも、さきほどまで作っていた表情を崩しかけた。

 

「うれしいのかい?」

 

思わずそう聞かずにはいられないほどベルの顔は綻んでいた。

 

「はい・・・!せっかくチャンスを頂けるのなら!僕は、やってみたいです。」

 

「そうか、なら4日後待っているよ」

 

フィンは言い終わると席に戻り、、ベルも仕事の続きに戻る。

 

皆は先ほどの英雄になる発言をつまみにさらに盛り上がっていた。

 

「・・・どうして、あんな嘘を?」

 

君らしくもないとリヴェリアがエールを渡してくる。

 

ロキ・ファミリアにも入団条件は存在するが、入団試験などかつて行ったことはない。

 

「当てられて・・・しまったのさ。」

 

「私も、思わず笑いかけたが・・・」

 

「ああ、彼は本気だ。」

 

「思わず君が戦いたくなるくらいにかい?」

 

「そんなにわかりやすかったかな?」

 

「フィン。今の君は、団長でも勇者でもなく、冒険者の顔をしているよ。」

 

そんな子どもたちの会話ニヤニヤとしながら聞いていたロキだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~豊穣の女主人 バックヤード~

 

「大丈夫なんですか?きちんと試験内容聞いてなくていいんですか?」

 

「・・・え?」

 

シルのそんな一言に思わず真っ青になるベル。

入団試験を――――この都市有数のファミリアが自分を試してくれる

ということで頭の中はいっぱいだった。

 

「ど、ど、どうしましょう!!!!!」

 

それに応えるように、おまかせあれ!といった具合で離れるシル。

 

ベルが再び皿洗いに戻り、彼女から試験内容を聞き、お皿を割る枚数を更新してしまうのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~豊穣の女主人 中庭~

 

「・・・・ロキ・ファミリアの団長、勇者フィン・ディムナとの一騎打ちですか。」

 

夜、裏庭で現状をしっかりと言葉で伝えてくるリューに、うろたえるベル。

 

(しかし、単純に考えて恩恵もうけていない・・レベル1ですらないクラネルさんとの

一騎打ちなんて成り立つ訳がない・・ならば・・・。)

 

「・・・クラネルさん。もし、よろしければ私と戦いましょう。」

 

「え?」

 

「・・・夜、続きをするといってしまった手前です。」

 

「ほんとですか?!」

 

「しかし、私は・・・教えることに向いていない。

それでも、構いませんか?」

 

ベルは二つ返事で構えを取る。

 

「・・・クラネルさん。今日はもう終わりにしましょう。」

 

最初は、なにがおきたのかすらわからなかった。

基本的にけられて大樹にぶつかって失神する。このパターンが続いた。

 

2日目にはリューがまず、蹴ってくることが分かった。

・・・何処からかはわからないが。

一番怖かったのはリューのけりの威力がだんだんと強くなってきたことだった。

 

3日目最終日。

「・・・終わりですか?」

 

また、リューが視野から消えて何処からか蹴りが来る。

(このままじゃあ・・・また一緒だ)

 

((「敵意を知るべきです――――」))

 

(敵意―――。リューさんが僕に向ける敵意)

 

突如肌がちりちりする感覚に襲われる。

 

「ここ・・だっ!!」

 

ようやくリューの蹴りを捉えることができた。

 

リューの最初の蹴りが7割がた防げるようになったときに

 

「明日に備えてやすんだほうがいいでしょう。」

 

と、リューから終了の声がかかった。

ほとんどお店の手伝いをしていたか気絶していた気もするが、リューによる特訓は無事に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ロキ・ファミリア ホーム前~

 

(お・・・・・大きい!!)

 

さすがはこの都市で名を馳せるギルドだな。と、そんなことを思っていると門番が

 

「よう!英雄!ちゃんときたんだな」

 

と話しかけるが、ベルは

 

「は、はいっ!よろしくおねがいします!!」

 

と、緊張しすぎて門番の嫌味すら聞こえてない。そんなベルの肩に

 

「まってたよー!私がフィンの所まで案内してあげるね」

 

アマゾネスの少女がベルにくっつく。

文字通り。

アマゾネスの少女は露出が高く、ここ数日豊穣の女主人で、大分女性になれたとはいえここまで近距離で近付かれると、

 

「え?いやっ!?あのっ」

 

まるでいつかの再来である。

 

「あ。そーいや、自己紹介がまだだったね!私はティオナ・ヒリュテよろしくねー」

 

ぶんぶんと握手しながらニコニコするティオナ。

 

「あ、ベル・・・ベル・・・クラネルといいます」

 

真っ赤にしながら答えるベルが面白かったのかティオナは、道中ベルにちょっかいをかけまくっていた。そのおかげもあってかフィンが姿を現した時もそこまで緊張はしなかった。

 

「ありがとうティオナ。戻っていいよ」

 

「ほーい。じゃあ、えいゆうくんがんばってね!」

 

ベルの肩をたたきながら思い出したように

 

「今日は、コレつけてないんだね~」

 

と、頭に手を置きウサギの形を作るティオナ。

 

「~~~っ!!」

 

ベルは思わず恥ずかしくなって下を見る。

 

(でも、ティオナさんのおかげで全然、緊張してない。)

 

ゆっくり顔をあげるとそこには、数日前に見たときとなんらかわりない、勇者 フィン・ディムナが立っていた。

 

「さぁ、始めようか。」

 

まるでこれから、お昼ご飯を食べるかのようにフィンは、言葉を発した。

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

ベルが構えるとフィンは消えた。ベルの右後ろから敵意よりもっと激しい感覚に襲われる。

たまらずベルは転がりながら避ける。

 

「へぇ?」

 

これにはフィン含め見ていた幹部たちも感嘆の声を上げた。

 

「こいつはなかなかやるのう。」

 

「確かに。フィンの一撃めをかわすのはレベル2でも厳しい。」

 

「ベルたん、がんばってやー!」

 

ドワーフのガレス・ランドロック、リヴェリア、ロキ、ティオナの横にはティオナと顔だけはそっくりなティオネ、そして金色の髪を靡かせる少女がこの戦いを見守っていた。

 

「避けてるだけでは勝てないよ?」

 

何度か木槍でベルを攻撃した後にフィンが言葉を発する。

 

(確かに。攻撃を当てなきゃ倒せない。

でも、思えばリューさんにも一度も攻撃あてれなかったな・・・)

 

 

 

最終日にしてようやく気付いたのだが、リューの動きには一貫性があることに。

最初に、視界から外れ、蹴りを入れる。そこを防御したら、ナイフで牽制しながらまた視野から消える。

 

彼女の素性は、なんら知らないがおそらくこんな強い人が素人の自分を倒そうとすればいくらでも手段はあるはずだ。

 

(そうか!きっとリューさんは!!)

 

ベルは走った。フィンに向かって。・・・・真っ直ぐに。

眼の光がより一層紅くなって何をするかと思えば、真っ直ぐに走るだけか、と。フィンは槍の先を下げ穿ち上げて終わらそうとしていた。

 

(これは少し期待しすぎたかな?)

 

そもそもフィンの中では、自分の攻撃が避けれた時点で

合格点を出すつもりだった。

しかし、あまりにもあっけなく避けてしまった為、ベルの様子をもう少し見ようと

おもい続けていたが―――。

 

ベルを最大限の殺意を放ち穿ち上げようと矛先を上げるフィンだが。

矛先は空を切る。

 

「なっ?!」

 

一瞬だけベルの姿を見失うフィン。

まさか小人族である自分が構える槍の下をくぐってくるなんて――――。

 

 

 

(視線が外れた!!!いまだ!!)

フィンから発せられているものはもはや敵意ではない。

――――殺意だ。

でも、場所はわかる。どうすればいいのかもリューさんに

教えてもらった。

 

(英雄になるなら・・・逃げれないっ!!)

 

ベルは姿勢を低くしフィンの槍の下をくぐり、その勢いで

立ち上がる。

 

 

頭突き。

 

 

といわれる技である。

 

とっさに下がったフィンだったがさすがに避けきれず、

槍を上に投げ下手でもっていた手でベルの頭を打つ。

 

「げふっ・・・!!」

 

という鳴き声と共に白兎は、倒れこんだ。

 

 

 




次回はいよいよアイズたんとベルが会える・・!!かな?

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