ダンジョンに出会いはある・・・?   作:ろとまる

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白兎ちょっと壊れそうになる。

その光景が目に入った時、思わずよろけてしまった。

自分がキレイだと触った真っ白い髪は薄汚れ、男の子にしてはキレイな肌も真っ赤に染まっていた。左足にはベルの身長より長い剣が突き刺さっていた。そして、一番好きだった紅い目は薄く開かれているだけだった。

ベートは、先に着いていたが手を出すことなくその場に留まっていた。

 

「あれ、生きてる・・・の?」

 

ティオナが思わず指を指しながら声を発する。その声色はいつもの、はつらつしたものではなく、震えていた。

 

「助ける。」

 

アイズが助けに入ろうと、レイピアに手をかけた時、後ろからフィンの声が聞こえてきた。

 

「ダメだ。」

 

アイズは信じられないようなものを見る目でフィンを睨む。

 

「どうしてっ!早くしないとっ!!」

 

これほど感情的になったアイズを見るのは一体いつぶりだろうかと。

フィンは感傷に浸りながらも

 

「これは、彼の戦いだからだ。」

 

「でも、もうあの子はっ!!!」

 

「アイズ。キミがベルの限界を決めるのかい?誰よりも何よりも強さを求めていたキミが。」

 

アイズは、フィンの言葉に耳を貸さずにベルのもとへ走っていこうとする。そんなアイズの前にフィンと・・・ベートが立ちふさがった。

 

「のけ・・・てよ。」

 

「いいや、だめだ。団長命令だ。大人しくするんだアイズ。」

 

ベートは何も言わなかったが、よく見れば彼のつま先は地面にめり込んでいた。アイズは目に涙を浮かべながらレイピアから手を放す。いくらアイズといえどフィンとベートを退け、ベルを助けに行くのは不可能に等しい。

だから、祈ることを決めた。もう、泣きながら祈ることの無意味さを知り、剣を取った少女が、力を求めた少女が、再び祈る。目の前の少年の為だけに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かが来たのは分かった。でも、誰かは分からなかった。

誰でもいいと思った。もうなんでも良かった。考えると、またさっきの痛みが苦しみが襲ってくる。だから、何も考えたくなかった。そうしていると、気づけば白い空間にただ一人。

今にも死にそうな誰かを見下ろしていた。血がドクドクと流れてとても痛そうだと思った。可哀そうだと思った。小さいし、細いし、ああ、やられているのは弱者なんだと、そう思った。

弱者なら、仕方がないよね。だって、弱いんだもの。だから、何も出来ずに死んでいく。

 

((あなたは、どうしたいの?))

 

「だれ?」

 

((・・・私のことはいつかわかるわ。ねぇ■■■?あなた、どうしたいの?なんで、ここにいるの?))

 

「分からない。でも、ここは・・・気持ちいい気がする。」

 

((・・・そう。なら、あなたはもうアソコに用はないわけね。))

 

知っているような、知らないような人たちが心配そうな顔や泣きそうな顔で何かを見つめている。でも、あまり自分には関係がーーーーーーー。

 

金髪の・・・少女が見える。少女は胸の前で祈るようなポーズをとりジッと見つめている。その目には・・・。

 

「僕は・・・。あの人を泣かしたままにしておくのは、いけない気がする。あの人を・・・あんな顔にさせたままには・・・したくない。」

 

((ふふ。そう?じゃあ、もう一度やり直すわよ?))

 

 

 

((あなたどうしたいの?))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミノタウロスが仰向けになっているベルの顔面をめがけて拳を振り上げる。さすがにここまでか、とフィンが槍を構える。

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

ベルは振り上げた腕めがけて切りかかった。

先ほどまで、絶命寸前だったとは思えぬ素早い動きに翻弄されたミノタウロス。しかし、すぐに態勢を直しベルに襲い掛かる。

そんなミノタウロスの攻撃を交わしながら、

 

「【ライジング】、【ライジング】、【ライジング】、【ライジング】

【ライジング】、【ライジング】、【ライジング】、【ライジング】!!

 

ベルは詠唱を止めない。しかし、ベルの周囲に光は纏ってなく、やけくその魔法詠唱だと誰もが思った。

 

リヴェリアがだけが魔力の高まりを感じていた。

(何故だ。魔力は確かに放出されている。だが、魔法が発動していないのは、一体・・・・。)

 

リヴェリアは目を凝らしベルの体を観察する。

 

「まさか、重複詠唱だと?!」

 

「詠唱?だけど、ベルの魔法は発動してないんじゃ・・・。」

 

「いいや。魔法は発動している。ベルの左手を見てみろ!」

 

「「「なっ!!」」」

 

「・・・・きれー。」

 

思わずティオナはそう漏らしていた。

ベルの魔法は身体を強化するだけでなく、体の一部に魔力を貯蔵することが許された魔法。

 

「【ライジング】、【ライジング】、【ライジング】、【ライジング】

【ライジング】、【ライジング】、【ライジング】、【ライジング】!!

 

ベルは自らの魔力許容量を超える魔法を行使する。本来ならばどんなに魔力があろうが不可能な芸当である。放出するなら未だしも留めておくことなど魔法に長けたリヴェリアにすら不可能なことだ。

それを可能にしているのは------。

 

「シィア!!【穿て】!!!!」

 

純白の短剣が伸びてミノタウロスの左肩を貫く。突然の攻撃に怯むミノタウロス。しかし、ミノタウロスはすぐに冷静さを取り戻し再び大剣を構える。

 

「はぁ、はぁ、・・・・ふーっ。」

 

アイズとの朝の練習中満身創痍で追い詰められたベルが、巻き返すときにする呼吸。彼女だけが知っている彼の癖。いつしか、アイズは祈りのポーズを止め彼の戦いを見つめていた。

 

ミノタウロスは突進力にものを言わせて突撃してくる。

 

「リューさんよりも遅いんだよぉっ!!【抉れ】ぇぇっ!」

 

ミノタウロスの突進力を利用して、回転をしながらミノタウロスの左側を

文字通り抉る。先ほどまで槍のような形状をしていたシィアは元の刀身から複数の鋸を出した姿に変質していた。

 

「GAAAAAAAAAAA!!!!」

 

ミノタウロスは絶叫する。今までおそらく経験したことのない痛みだろう。膝をついているミノタウロスにベルは切りかかる。

 

「若いな・・・。リヴェリア。」

 

フィンが指示すると、リヴェリアは

 

「フィン。帰ったら、ベルと再戦してみるといいだろう。」

 

リヴェリアの言った言葉の意味がフィンには分からなかったが、

すぐに理由は理解できた。

 

飛びかかったベルにミノタウロスは自らの使えない左腕をもぎ、投げつけてきたのだ。流れるように大剣を握りしめベルに襲いかかる。

ベルは冷静に投げつけられた腕の上に乗り、ミノタウロスの目をめがけて

 

「【穿て】ぇぇぇぇっ!!」

 

ベルは目を穿ってからミノタウロスの前に立つ。

珍しくダンジョンに風が吹く。シィアから発光する光はベルの全身を包み暗いダンジョンを照らすかのようだった。

 

 

「・・・・アルゴノゥトみたいだ。」

 

そんな光景を見ながらティオナが呟く。

 

「【裂け】そして、」

 

今度のシィアは、日本刀のような長さになりミノタウロスの右腕を落とす。

 

「【穿て】ぇぇぇぇ!!」

 

シィアはミノタウロスの魔石を穿つ。ミノタウロスは消える間際。

 

『オレガ、ジャクシャダッタ・・・カ。』

 

確かにそう言って消えていった。

崩れ落ちるベル。そんなベルを受け止めるようにアイズが走る。

 

(どうして、どうして、キミはそんなに強くなれるの?)

アイズはギュッとベルを抱きしめる。

 

「そういうのは起きているときにしてやるといい。まずは治療だ。」

リヴェリアはアイズの頭を撫でながらベルに回復魔法をかける。

 

「ベート。キミもよく我慢したね。」

 

ポンポンとベートの肩を叩くフィン。

 

「・・・うっせ。」

 

ベートはその場に座り込んだ。

 

「あ、ティオネ達だぁ!おっそいよぉ!!!もーすっごかったんだからぁ!」

 

まるで自分のことのように話をするティオナ。

そして、ベルはガレスに担がれてダンジョンを後にする。

 

こうして、ベル・クラネルの初めての冒険は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 




一部完ってところです。
暫くまた書き溜めたいと思いますので、
お待ちいただければ幸いです。

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