ダンジョンに出会いはある・・・?   作:ろとまる

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ベートくんのドM描写を修正しました。
助けを乞う冒険者のレベルを下げました。
誤字・脱字報告ありがとうございました。

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修正しました。

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修正しました。


白兎お祭りへいく。

げっそりとしたロキと、心なしか落ち着かなそうなアイズが店から出てきた。

 

「すまんなぁ。付き合ってもろて。」

 

「大丈夫。」

 

「うーん!やっぱ、アイズたん、ぐぅかわやでぇぇぇ・・・・」

 

「さすよ?」

 

「なんやねん。ベル坊やったらええんか?ベル坊なら抱き着かせてくれるんか?」

 

「それは・・・嫌じゃない。」

 

「うわー。なえるわー。やる気なくなるわー。」

 

 

普段でも人通りの多いメインストリートなわけだが、今日はより、人であふれかえっていた。

 

「せやけど、ベル坊と約束してたんちゃうか?」

 

「してない。今日は、なにか用事があるみたいだった。」

 

「・・・・・女か?!」

 

「・・・知らない。」

 

(これまた、随分と“女の子”みたいな表情するようになって。まったくベル坊には感謝しきれんなぁ・・・。)

 

「・・・・・騒がしいな?」

 

「うん。」

 

二人の姿をみてギルドの制服を着た女性が必死に駆け寄ってくる。

 

「神ロキ!ヴァレンシュタイン氏!!お願いが・・・お願いがあるんです!」

 

 

 

 

 

 

 

~豊穣の女主人~

 

「へ?お財布をですか?」

 

「シルは、意外とそそっかしいにゃ。リューもいにゃいし、白髪頭お前がとどけてあげるのにゃ。」

 

「いつも、お世話になってますし行ってきます!」

 

「よろしくにゃ!」

 

(それにしても、すごい人だな・・・。早くシルさんに届けてあげなきゃ!)

 

人ごみの多さもさることながら、なにか異様な空気をまとっているオラリオ。

今日は年に1度のモンスターフィリア。

ベルにとってはオラリオにきてから、初めてのイベントである。

 

昨日の夜、ティオナ達から一緒にモンスター調教をみるように誘われたベルは、お腹が空いて待ちきれなかったティオナに置いて行かれ、

こうして急いでいる訳である。

 

(でも、先にシルさんをさがさなきゃ・・・。)

 

 

 

 

 

 

~出店周辺~

 

「おじさーん!これ4つ下さいなっ」

 

「はいよっ!」

 

「・・・・・・・・・・・あれ?」

 

「どうしたい?シルちゃん?」

 

「いや・・・そのぅ・・・。お財布忘れてきたみたいで・・・あはは。」

 

「そうかい。なら、こいつはサービスだ!いつもミアさんにはお世話になってるからな!」

 

「いえいえ!後でお支払にきますので!・・・ありがと・・」

 

「シ~~ル~~さ~~ん!」

 

「「え?」」

 

「はぁ、はぁ。お財布!届けにきました!」

 

「ベルさん!!ありがとうございます!」

 

「いえいえ!全然平気です!あの、お祭り・・・楽しんで下さいねっ!」

 

「えっ?!ちょっ、ベルさっ――――――」

 

「いやぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

「「?!」」

 

「僕、ちょっと見てきますね!」

 

叫び声に反応し、ベルは有無を言わさず走りだす。ベルの表情はいつもの頼りなさそうなものでも、ニコニコしているものでもなく、立派な冒険者のものだった。そんなベルの背中に向けてシルは

 

「気を付けて下さいねっ!」

と声をかける。

(ずるいなぁ。・・・でも、お腹が減ったらまた戻ってきてくださいね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~街中の一区画~

 

「お、おい!あんた・・・・!ロキ・ファミリアの凶狼だろう?!あいつ俺の妹なんだ!!

助けてくれ!!」

 

「はぁ?」

 

ベートは頼ってきた男に対して、

 

「てめぇ、冒険者だろうが!身内の面倒ぐらいテメェで見やがれ!」

 

そう怒鳴った。

 

「頼む!あれ、シルバーバックだろ?!あんなモンスター、駆け出しの俺じゃあ、とても・・・」

 

「はぁ?・・・そうだな。てめぇがあのサルに挑んで死んだら助けてやってもいいぜ!」

 

「くっ・・・・!!」

 

男は、必死に歯を食いしばって自分の武器を構えた。だが、一歩がでない。

もう自分の妹とシルバーバックの距離は5メートルもない。

そんな、男が涙を浮かべながら足元がガクガクと震えている姿をみて、

 

「っち!」

 

忌々しげにベートは舌打ちしながら、構えた時だった。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!」

 

ベートからは完全に死角だった方向から声が聞こえる。

その声の主はシルバーバックを背中から切りつける。

恐らく家から飛び降りながら切ったのだろう。その少年は着地もままならない様で

転がりまわっていた。

 

「くっ・・・!こっちだ!」

 

白頭の少年はシルバーバックに対して挑発するように声をかける。

 

「あいつ・・・。」

 

ベートもさすがに驚きを隠せなかった。先ほど横の男が言った通り、

シルバーバックはレベル1では荷が重い。おそらく今切りかかった白頭もそれくらいのことは分かるだろう。だが、挑んだ。

 

「ふん。・・・・おいっ!」

 

シルバーバックがベルに気を逸らされているうちに気絶していた少女を男に

渡すベート。

 

「ありがとう!ありがとう!」

 

「あぁ?!てめぇ、何見てやがる?!礼をいう相手が違ぇんだよ!」

 

ベートはまた、男を一喝し、近くの家の屋根に一蹴りで飛び上がり、その場から離れようとした体を向き直し。・・・・観戦することを選んだ。

・・・臨戦態勢のままで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~シルバーバック戦~

 

うまいこといったな。と、内心ベルはほっとしていた。

少女と、シルバーバックの距離は自分が走っていったって間に合うかわからなかった。

だから、少し高い場所から助走をつけて飛んだのだ。

それで、気を逸らせればと思っていたが。

よもや、刃が届くとは思ってもなかった。

 

シルバーバックと戦うこと自体は初めてだが、リヴェリアからどういったモンスターなのかはあらかた教えてもらっていた。

・・・・まだ、一人で遭遇してはいけないモンスターとして、だが。

 

確か、リヴェリアから教えてもらったことは、と全力で内容を思い出す。

確か・・・。シルバーバックのやっかいなところは。

 

(早い・・・!)

 

初見殺しともいわれるシルバーバックの初撃の洗礼を受ける。

ベルはシルバーバックの爪の攻撃を避けそこね、もろに喰らってしまう。

経験と知識の差である。だが、知識があった分まだ生きている。

 

(後で、リヴェリア様にお礼言わなきゃな・・・・!)

 

シルバーバックに先ほどから一方的に攻撃を続けられるベル。

長い腕がやっかいでまともに本体にたどりつけない。

避けては切り、避けては切り。

 

(アイズさんの突きより全然遅い・・けど!!)

 

刃が通らないのである。シルバーバックは全身毛で覆われており、その毛が刃を通さない。

毛がないのは胸の部分と顔のみである。

今は伸びてきた腕を躱し攻撃しているが、この攻撃の仕方では先にスタミナが切れるのは

自分だということはベルも感じていた。

 

(魔石があるのは胸の位置・・・・!)

 

しかし、懐に入り込んで果たして刃が通るかという懸念がベルによぎる。

 

(もし、失敗したら――――僕は・・・・。)

 

その油断をシルバーバックは見逃すことなく、ベルを掴み上げ地面に叩きつけた。

 

 

・・・・何度も。

 

口からは血が止まらず、体中の骨がきしんでいるのが分かる。

身体がもう痛みを受け付けようとしない。

 

「がはっ・・・・・!!!」

 

しかし、普段のアイズとリューの熱烈な訓練のおかげで

どうにか意識だけは途切れずにいた。

 

 

(痛い・・・。痛いけど・・・。まだ、立てる。アイツの場所も何とか

見える。・・・あはは・・・なんだまだ、全然戦えるじゃないか・・・。)

 

よろよろと立ち上がる。

 

ベルは、その時ベル・クラネルは。

 

(倒したいなぁ・・・。アイツを・・・。

こんなところで。止まってる訳には行かない・・・んだ。

いつか・・・なるって決め・・・たんだ・・・。)

 

 

 

 

 

 

ザザザザザ―――――――。

                    何処で???

                      昔???いつ???

ザザッ――――――

                  ソコニハナニガアルノ?????

ザザザザザッ―――――――

               ち?手?血血地血血?!

ザザザザ――――

ザザ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あの人を・・・守るって・・・」

 

シルバーバックに対して正面に立ち構えをとる。

 

「今度は、笑って・・・・・もらうんだ・・・。」

 

シルバーバックはベルを挟みうつように両手で襲いかかる。

今までのように死角に避けるのではなく、

 

「だから、僕が、死ぬのは、ここじゃない!!!」

 

襲いかかるシルバーバックの右腕にのり、走る。

シルバーバックが振り払おうとするが、今のベルにとって

それすら遅い。

 

「いくよ!!!【シィア】」

 

そう、口にしながら

右肩から胸にかけて切り裂く。

 

ヘファイストスによって鍛えなおされた純白の短剣は

いま、産声をあげた―――――。

 

獣の無様な咆哮がいつもは人々が賑わっている区画に響く。

 

ベルは、自身の最速のスピードで、シルバーバックを切り刻んでいった。

短剣であるが故に切り落としたり、貫いたりはできないが、小回りの利くベルとシィアの攻撃は血管や、肉などを断ってゆく。

 

眼前のシルバーバックは膝をつき、もはや動くことも叶わない。ベルは少し距離を取り、

 

(魔石は胸の―――――――!!!)

 

最後の疾走の一撃でベルはシルバーバックを貫いた。

 

大歓声がベルを迎える。その歓声を耳にしながら、ボロボロにされたベルは歓声に答えられる筈もなく。その場に倒れこんだ。

 

「ありがとう!ありがとう!」

先ほどの男がもう聞こえないであろう、倒れんこんだベルに

ひたすら頭をさげ続けていた。

 

「のけっ!!ったく。なんで、俺が・・・・!!!」

 

ベートは倒れこんだベルをホームまで運ぼうと服の襟足を掴む。

そこに、金色の風が舞い降りた。

「遅かった・・・。」

 

「アイズっ?!いやっ!!これは・・・」

ボロボロになったベルとそれをめんどくさそうにつまむ自分。

さぞアイズには妙な光景に見えただろうと思い、言い訳に走ろうとするベート。

 

「・・・?私が運ぼうか?」

 

「ちぃっ!・・・ほらよ。」

しかし、アイズはベートに詰め寄るわけもなく普通に返答していた。

自分のひとり相撲だったことにベートは急に恥ずかしくなり、

ベルをアイズに預けて去っていった。

 

「・・・・?どうしたんだろう?」

アイズはベートの不可解な行動に首をかしげながら白兎をホームに運ぶのだった。

 

 

 

 

 

 




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