この素晴らしい世界に殺人貴を!   作:朎〜Rea〜

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短いですが、本日二話目!


トメィト!!

「トマトが食べたいよぉ……」

 

 それは、さつきの一言だった。俺はウィズさんの店に遊びに来ていた。特に何を買いに来たわけじゃない。無駄に高いし、何に使うのかわからないものばっかりだし。

 

 ちなみに、さつきはウィズさんのところに居候することになっていた。レンの手回しのお陰だろう。しかし、この店、本当に大丈夫なのか……? リッチーに吸血鬼が二人。普通にやばくないか……?

 

「トマト?」

「うん。なんか、最近モンスターの血液ばっかりで飽きちゃったの」

 

 そもそもの前提が違う気がする。吸血鬼だろ? 赤けりゃなんでもいいのか……?

 

「そういえば、こっちに来てからトマトは見てないな」

「南アメリカのアンデス山脈高原地帯原産のナス科ナス属の植物か。こちらでは相当高価なもののようだ」

 

 教授が奥から出てくる。

 

「高価な? どういうことです?」

「1玉50万エリスとなっているようだぞ」

「は……?」

 

 意味がわからない。そういえば、キャベツは売却価格が1万だったっけ。あれも、普通に買えば高価なものだ。

 

「トマトは捕獲が難しいですからね。あれを捕まえるのは至難の業です」

 

 ウィズ談。捕まえる? もう何か、この世界の野菜ってどうなっているのか本当にわからない。俺らの常識はどこに行ったのやら……

 

「そういえば、今って丁度トマトの季節ですね」

 

『緊急クエスト、緊急クエスト!! 冒険者の皆さんは至急ギルドに集まってください! 繰り返します────』

 

 ……もうなんか、嫌な予感しかしなかった。

 

────────────────────────────ギルド

 

「志貴さーん、こっちです!」

「もうみんな集まってるのか?」

「はい。あ、さつきさんも一緒なんですね」

「うん、宜しくね」

「いやぁ、今年もこの季節ですか。あ、私は今回ここで待機するのでヨロシクお願いします」

「珍しいな。いつもなら爆裂魔法を撃てるからウキウキしてるだろ、お前」

「今回はワケが違いますからね。まだ死にたくはありませんし……」

「死っ!?」

「大丈夫よ、めぐみん。なんたって私がいるんだからっ!!」

「あ、いえ。そういう訳ではなくてですね……」

「ああ……早く来い……トマト……私をもっと……!!」

 

 そんな中、ダクネスの興奮は相当なものだった。なんか、キャベツの時よりやばい。あの変態と同じパーティーだとは思われたくない。

 

「とにかく、本当に私は行きませんから。志貴、さつき、カズマ、キャベツは飛んでいましたが、トマトは降ってきます。気をつけてください」

 

「みなさん! 来ました!! どんどん狩っちゃって下さい!」

 

 そう言われて、勢い良くギルドの外に出る────者はいなかった。ただひとりを除いて……

 

「……なんだこれ」

 

 ギルドの外はまさに地獄絵図。世界は赤一色に染まっていた。

 

 空から雨の如く、トマトが降っていた。

 

「素晴らしい……素晴らしいぞっ!!」

 

 あっという間に全身が真っ赤になるダクネス。なんていうか、グロイ。

 

 これが、赤い雨水であるなら、ザーという効果音だったのだろうが、相手はトマト。ベチャッ、とかグチャッという何かが潰れる効果音しか聞こえてこないのだ。

 

「ダクネスに続けー!!」

 

 ギルドを出た冒険者は脳天にトマトを受け、次々に倒れていく。

 

「……」

 

 俺とカズマ君はそれを唖然と見るしかなかった。さつきなんて、目に涙を浮かべている。

 

「トマトは人間に食べられるくらいなら、殺して自分も死ぬといういわゆるヤンデレのようなのです」

 

 めぐみんの説明。

 

「意味がわからないぞ……なんでトマトがヤンデレなんだよ……」

「冒険者の知識がどうとか聞いたことがありますが……」

「日本人のバカヤローッ!!!」

 

 そう叫ばずにはいられなかった。

 

────────────────────────このすぱ

 

 どうにかこうにか外に出た。

 

 いやもう、体中がトマトの残骸だらけ。考えてみてほしい、トマトが全力で人間に当たっていく姿を……

 

 無理? いや、トマトが人間に当たった瞬間、弾けるんだよ。グチャッ、とかいいながら。

 

「こっのぉー!」

 

 さつきはさっきからパンチでトマトを潰している。これもこれでなんかグロい。トマトがさつきの拳に当たった瞬間、鮮血(汁)を吹き出して、潰れるのだ。なんかもう、見てはいけないもののように感じる。

 

 かくいう俺もなかなかうまく捕獲できていない。状態を良く捕獲しようとすると、降ってくるトマトのスピードを殺した上で、捕まえなくてはならない。それが出来なければ、トマトは潰れてしまう。

 

「なんだ、簡単じゃない」

 

 レンの頭上には氷の盾。足元を見ると、氷漬けにされたトマトが山のように転がっていた。

 

 こういう時、魔法っていうのは便利だよな……

 

「店主よ、ここが稼ぎ時だ」

「分かってます、ネロさん!!」

 

 魔道具屋も、レンと同じようにトマトを凍らせ、新鮮なまま捕獲しているようだ。

 

「カズマ! レンたちと同じことをすれば稼げるわよ!!」

「任せろアクア! フリーズ!!!」

 

 現実は上手くいかないものである。フリーズによって、さらに固くなったトマトがカズマ君とアクアの頭上に降り注ぐ。

 

 中途半端に凍ったトマトは凶器であり、消耗品であった。地面に当たった瞬間に、砕け散っている。もちろん、アクアとカズマ君はそれに当たって相当のダメージを受けているようだ。

 

 哀れ……

 

 しかし、斬ってもダメ、殴ってもダメ、蹴ってもダメというのはタチが悪い。一部の冒険者はネットなどを張っているが、それはトマトによって突き破られている。一部捕まえられそうになるが、捕獲されたトマトが降ってきたトマトに潰されて結局無駄になっているようだ。

 

 本気になったトマト、恐るべし……

 

 今回は経験値と思って割り切った方がいいかもしれない……トマトで金儲けするという手段は持ち合わせていない。

 

「アクア! 水だ!! プールを作れば捕獲できる!!」

 

 なるほど。カズマ君はやはり頭の回転がいいらしい。水ならばネットと違い、傷つけることもないだろう。

 

「任せなさい!! セイクリッド・クリエイト・ウォーター!!」

 

 天より降り注ぎし、洪水。もはや、天災の域だった。水の女神とは、伊達ではないらしい。

 

「俺はプールを作るって言ったんだよ! なんでこの量を────うわぁぁぁあああああ!」

 

 トマトの鮮血だらけだった街は、綺麗になった。街の外には新鮮なトマトが転がっている。どうやら、気絶しているらしい。

 

 しかしその日、街が半壊した。

 

────────────────────────────このすば!!

 

 トマトはなかなか高く売れ、俺達は普通なら小金持ちを通り越し、大金持ちだった。

 

 だが、街を半壊させたアクアのいる俺たちパーティーは連帯責任で借金を負うこととなった。合計1億。前途多難もいいところである……

 

「ハア……トマトになぶられ、洗濯されるとは……今までの中でも最高だったぞ……」

 

 これは、ある変態騎士の言葉であった。




はい、街半壊を回収。まあ、前話よりマシでしょう(*゚-゚)

明日はお休みかな?
書けたら載せます。

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