翌日、俺達は大変な事実を知ることになった。
俺達パーティーは借金を背負うこととなったのだ。合計、3千万。というのも、めぐみんが爆裂魔法を古城に撃ち込んでいた為である。あのデュラハンを倒した報酬を差し引いて、この額。
一体どれだけするんだ、あの古城……
というわけで、借金を返すために俺達は嫌でもクエストに行かないといけなくなったのだ。
「どのクエストがいいかな……」
「これなんていいんじゃないか?」
カズマ君の問に俺が指さしたのは、ゾンビメーカーの退治。最近、墓地に悪霊の類が多く住み着いているらしい。その根源と思われる、ゾンビメーカーの退治をすればいいという事だ。
うちには自称女神もいることだし、問題は無いだろう。何故かわからないが、アンデッドに相当嫌悪感を持っているようだから、放り出すこともない。割といい仕事である。
もっとも、その女神様は日も登っているうちから酒を飲んでいる訳だが────
……うん、なんか慣れた。エリス様には悪いが、女神様ってのは元々ああいうものなんだ。
そう言い聞かせる。
カズマ君も同じようで、呆れた顔でアクアの方を見ている。
「ふぅん、墓地に出現するゾンビメーカーの討伐ね」
「どうしたんだ、レン」
レンがまた考え事をしている様子。さつきの時のことを考えると、少し無視出来ない。
「少し思うところがあってね。まあ、気にしなくていいわ」
「気にするなって言われてもな……」
「ま、ネロの時みたいに、誰かが死ぬような事じゃないから大丈夫よ」
レンの考えていることがわからない。いや、もともとよく分からない子ではあるのだが……
分かってるのは、夢魔でツンデレということだけだ。
────────────────────────────その夜
俺達一行は墓地に向かった。もちろん、クエストを進行するためだ。
「敵感知に引っかかったな。いるぞ二体、三体、四体……あれ、多いな……」
カズマ君は敵感知のスキルを使い、墓地の様子を探ったようだ。
「そうなのか? ゾンビメーカーっていうくらいだからゾンビの軍団でもいるかと思っていたんだけど……」
「いえ、それは有り得ないです。カズマには教えたのですが、ゾンビメーカーが生み出すアンデッドはせいぜい2~3匹程度です。あの、私少し嫌な予感がするので帰ってもいいでしょうか?」
墓地に数十数百のゾンビでもいるのかと思っていたが、数はたかが知れているらしい。
実際、それくらいの数なら俺ひとりでもどうにかなるし、今回の主役はアクアになるだろう。となれば、めぐみんは帰ってもいいのだが────
「アンデッドが多いなら、爆裂魔法も映えるだろうなぁ」
「早く行きましょう、カズマ!!」
カズマ君の一言により、俄然やる気になったようだ。身代わりが早いな……
「あれが、ゾンビメーカーか?」
墓場の中央で青白い光が走っていた。
よく見るとその青い光は大きな円形の魔方陣が出しているようだ。その傍らにはに黒いローブを着た人物がたっている。
「あれゾンビメーカーじゃなくて、リッチーじゃない?」
アクアが急に前へ出る。
「まじか……?」
カズマ君が問う。
リッチー? リッチだろ? たしか、魔法使いや僧侶が不老不滅のためにアンデッドとなったものだったか?
「まじまじ、それにしてもなんでリッチーがこんなところにいるのかしら?」
アクアはその場で両腕を組む。
「やけに冷静だな、アクア。お前なら飛びかかると思ったんだが……」
先日、さつきを見つけるなり追いかけていたから、問答無用で浄化しに行くと思ったがそうでは無かった。
「うぅ……それは、私だって思うところがあったのよ。アンデッドといえど、そいつにも事情はあるでしょ? まずは話を聞こうと思ってね」
「おい、お前なんか変な薬でも飲んだか?」
カズマ君はマジでアクアのことを心配している様子である。
「飲んでないわよっ! ほら、行くわよ!!」
アクアも一応は女神ということなのだろうか。これも、きっとさつきのおかげだろう。
「リッチーがこんなところに現れるとは不届千万! 成敗してくれるわ!!」
前言撤回。人の行いというものはそうは簡単に変わらないのだろう。
「や、やめてぇぇえええ! いきなり現れて、なぜ、私の魔法陣を壊そうとするの!? やめて!やめてください!」
リッチーは魔法陣を踏みにじるアクアの腰に、泣きながらしがみついた。
「やめてください! この魔法陣は未だ成仏できない迷える魂たちを天に返しているだけなんです!」
確かにリッチーの言う通り、青白い人魂のような物が魔法陣に入るとそのまま青白い光とともに、天へと吸い込まれていく。
「リッチーのくせに生意気よ! 話くらい聞いてやろうと思ったけど、そんな気もなくなったわ! 見てなさい、アンタ共々墓地まとめて浄化してあげるわ! ターンアンデッド!!」
墓地全体が聖なる光に包み込まれる。リッチーもその光に包まれ────
「か、体が消えるっ! 止めて止めて、私の体が無くなっちゃう! 成仏しちゃうぅううう!」
号泣しているリッチーの影がだんだんと薄くなっていく。
「あっはっは、愚かなリッチーよ! 自然の原理に反するもの、神の意に背くアンデットよ! さあ、私の力で欠片もなく消滅しなさい!!」
これではどちらが悪なのかわからない。このリッチーにも言い分はあるようだし、一方的に、というのは好きではない。
「やめんか、この駄女神」
ナイフの柄の底でアクアの脳天を強打する。アクアはというと、その場にしゃがみこみ、脳天を両手で抑えている。
「大丈夫か?」
「ええと、はい。ありがとうございます……」
さっきまで消されそうになっていたのに、リッチーは俺に微笑む。
……別に可愛いとか思ってないからな。
「なんだか楽しそうね、ウィズ」
「それに楽しくないですよ! 死にかけたんですからっ! って、レンさん? どうしてここに?」
どうやら、ウィズというリッチーとレンは知り合いらしい。
「あなた、死人でしょ? 私がこいつらのパーティーに入ってるって言ったらわかる?」
「レンさんの話してたパーティーってこの人たちのことだったんですね」
ウィズさんは納得がいったようだ。
「そういうこと。で? あんたがここに来てたのは知ってたけど理由を聞こうじゃない? もちろん、志貴たちにもわかるようにね」
「はい。私は見ての通りリッチー、ノーライフキングなんてやってます。アンデッドの王なんて呼ばれるくらいですから、私には迷える魂の話が聞けるんです。この共同墓地の魂の多くはお金がないためロクに葬式すらしてもらえず、天に還る事なく毎晩墓地を彷徨っています。それで、一応は、アンデッドの王な私としては定期的にここを訪れ、天に還りたがっている子達を送ってあげているんです」
ノーライフキング、ね。向こうに敵意がないのが幸いのようだ。たぶん、本気で戦ったら五分といったところか……
「なるほどな。だけど、そういうのは町のプリーストに任せればいいんじゃないか? それが仕事なわけだし」
カズマ君の疑問に、ウィズが言いにくそうにチラチラとアクアを見る。
「そ、その……この町のプリーストさん達は拝金主義……お金が無い人たちは後回し、と言いますか……」
ああ、なるほど。そういう事か。誰だって金にならない仕事なんてしたくはない。こういう、金を持ってない人々の墓地は後回しにされて当然というわけだ。
「理由はわかったよ。だけど、浄化するのにアンデッドを生成してたら本末転倒じゃないか?」
「あの……それなんですけど、私がここに来ると私の魔力に反応して勝手に目覚めちゃうんです……」
「それなら問題ない。うちのアークプリーストがその仕事を請け負う」
ウィズさんを帰した後、有無を言わせず、アクアに働かせました。
「で、このクエストはどうなるのでしょうか?」
「あっ……」
ゾンビメーカーの討伐だったのだが、俺達はゾンビメーカーを狩ってはいない。となれば、クエスト失敗というのは当然だろう。
俺達はギルドで解散した。
「にしても、ウィズさんがあの魔道具屋の店主さんだったわけか。知っていたならなんで教えてくれなかったんだよ」
ウィズさんからもらった紙を見る。書かれているのはやはり、あの魔道具屋だった。
「聞かれなかったからよ。そもそも、ウィズになんの用があったの?」
「色々と聞かないといけないことがあるんだよ。にしても、店を構えるアンデッドって……」
一体この世界、何がどうなっているんだ……?
「それを言ったら手伝っている教授だってそうでしょう」
店主がリッチーで店員が吸血鬼。そんな店が駆け出しの街なんかにあっていいのかはいささか疑問ではある。
ウィズとのファーストコンタクトでした。
うん、普通。何もなさすぎてわらう
本当は、何かぶっこみたかったんですけど、無理でした……
今回ダクネス空気の空気。いたの?レベルでした()
一応いました。ドM要素出す必要性なかったので……
ごめんなさい
このままストーリーに乗るのも悪くないですが、オリジナルを数回挟みたいかな?
気力が持てば……