ある新鎮守府と料理人アイルー   作:塞翁が馬

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 今話でサイファーも述べるのですが、件の超巨大深海棲艦のイメージはラオシャンロン+オストガロア+アトラル・カというちょっと混ぜすぎな物でした。

 そして、その見た目をそのまま文に起こしたところ、艦これどころかモンハンの雰囲気にすらあっていません。どちらかと言うと、バイオ5のウロボロス・アヘリか、同じくバイオアウトブレイクファイル2のニュクスみたいになってしまいました。

 どうしよう、一気に対象年齢が上がっちまったぜ…。


二人の空母の憂鬱

 翌日、提督は多目的室に現在鎮守府に所属している全艦娘とサイファーを呼び、昨日の会議の内容を説明した。

 

 謎の超巨大深海棲艦が突如姿を現したこと…。その侵攻により、最上位に位置する戦績を誇る鎮守府が壊滅してしまった事…。そして、もしかしたらその超巨大深海棲艦の討伐命令がこの鎮守府にも下るかもしれない事…。

 

 更に、壊滅させられた鎮守府に所属していたサラトガ、プリンツ、ポーラから超巨大深海棲艦の容姿が語られる事となる。

 

 曰く、パッと見た姿は四つ足であり、そして顔と尻尾が付いた生気の感じない真っ白い潜水艦…艦娘のような人型ではなく、普通の軍艦としての潜水艦を指している…の様な感じらしい。

 

 そして、異様なのがその体の至る所から様々な種類の…それこそイ級の様な駆逐級からヲ級やレ級といった大型の深海棲艦、更には鬼クラスや姫クラスの深海棲艦と思しき残骸が突き出ていたそうなのだ。他の深海棲艦を強引に体内に取り込もうとしたが、完全には取り込めなかった…と言った感じだそうだ。

 

 勿論、壊滅させられたという鎮守府もただ指を咥えて見ていたという訳では無く反撃を試みたのだが、何百という攻撃機や爆撃機で爆撃しようが、46cm砲や51cm砲を当ててもまるで手応えが感じられなかったと言うのだ。

 

 一応、攻撃を続ければ極稀に身体を怯ませたりはしたらしいが、明確にダメージを与えられたと感じられた場面は一切ないと三人とも断言している。

 

 さらに厄介なのが、この体内に取り込むという性質は無機物や艦娘にまで及ぶ様だ。便宜上は壊滅、という事になっているのだが、実際は鎮守府の殆どがその巨体に飲み込まれたらしい。残念な事に、その勢いのまま半数以上の艦娘も飲み込まれて生死不明…生存も絶望的と言われている。

 

「なんやねんそれ…。ほなら、一体どうしたらええんや…?」

 

 三人の語る謎の深海棲艦の姿や能力に、赤城に少し遅れて建造された新たな艦娘である龍驤が冷や汗を掻きながら質問するが、これに答える声は無い。サラトガ達は勿論、他の艦娘達もどうすればいいのかなど分かる訳ないのだから当然なのだが、それでも龍驤は口にせずにはいられなかったのだろう。

 

「提督、その謎の深海棲艦が今どこにいるのかは分かるのですか?」

 

 暫く沈黙が続いたが、それを吹雪が破り提督に問う。しかし、提督は首を横に振った。

 

「残念ながら、それほどの巨体を持っているにも拘らず、今現在の居場所は一切掴めていないのだ。恐らく、海中深くに身を潜めているのだろうと推測されている。基本の形状は潜水艦らしいからな。不可能ではないだろう」

 

「この深海棲艦の影響で、特に潜水艦の艦娘に注意喚起が促されています。万が一鉢合わせでもしたら、成す術無く取り込まれてしまうかもしれませんから…」

 

 提督の説明に、大淀が言葉を付け加える。この鎮守府にはまだ潜水艦の艦娘は着任していないが、耐久力に難がある上に少し使いづらい面もあるが、戦略上外す事の出来ない重要な艦種だ。いずれは建造しなければならない。

 

 特に、潜水艦の艦娘のみで艦隊を組んだ場合、出撃をしながら資源も備蓄する事が出来るというとある海域があるのだが、それもこの深海棲艦のおかげでおいそれと出撃させる事が出来なくなってしまった。下手をすれば、艦隊を出撃させてそのまま全員轟沈報告すら上がらずロスト…なんていう悪夢のような筋書きが成り立ってしまう恐れすらあるからだ。

 

「…話を聞く限りは不気味なモンスターだニャ。残骸を取り込むという事は、オストガロアみたいな感じかニャ? …でも、無機物も使うみたいだからアトラル・カかニャ? という事は、巨大な外郭を操っている本体がいる…?」

 

 重い雰囲気の中で、サイファーも難しい顔をしながら謎の深海棲艦について考え込む。しかし、実際にその姿を見た事が無い以上、いくら考えようが推測の域は出ない。

 

「さて! 皆さん注目して下さい!!」

 

 そんな中、突然大淀が両手を打ち鳴らしながら自分に注意を引く。

 

「そういう訳ですので、我が鎮守府は練度、艦隊、資材その全てに更なる補強を掛けなければなりません。そして、その一環としてサラトガさん達のコネを頼りに違う鎮守府の艦娘の方々と演習を行う事になりました。ハッキリ言って、練度に雲泥の差があるのですが、その方が経験も早くたまると思いますので、胸を借りるつもりでいってみましょう!」

 

「…へっ! 面白え、やってやろうじゃねえか!」「うげっ、マジ~…? めんどくせぇ~…」「夜戦ならどんな相手にだって負けないよ!」「うーちゃんもやる気満々ぷっぷくぷーだぴょん!!」「早く一人前のレディになる為には仕方のない事ね!」「頑張ります!」

 

 大淀の檄に、それまで青い顔で俯きがちだった艦娘達が(一部を除いて)一斉に気合の入った声を上げる。どうやら、大淀の激は功を奏した様だ。

 

「あの、提督…」

 

 そんな中、赤城が提督の名を呼ぶ。提督が振り向くと、赤城と龍驤も提督を見上げていた。

 

「演習は望むところなのですが、私や龍驤さんが使う艦載機は何とかならないでしょうか? 旧型機では、発艦させたところで確実にその殆どを撃ち落され、結果的にボーキサイトの消費が跳ね上がってしまうと思うのですが…」

 

「それに、カッコも付かんしなぁ。いきなり烈風や流星改! とまでは言わへんけど、せめて零戦の52型くらいは乗せたいんやけど…」

 

 赤城の言い分に龍驤も加わる。とはいえ、少なくとも赤城の言っている事は尤もだ。特にボーキサイトは貴重な資源なのだから、無駄にする訳にはいかない。

 

「…すまん。艦娘の建造に注力していた所為で、武装の方はまだ殆ど手を付けていないんだ。今急いで、武装の方も開発しているのだが、もう暫くかかりそうだ。ただ、一応あてはある…ある、んだが…」

 

 申し訳なさそうに赤城と龍驤に謝る提督だったが、不意にその視線をサラトガに向ける。釣られて赤城と龍驤も顔をサラトガの方へ向けた。

 

「…? 何かご用かしら?」

 

 三人の視線を感じ取り、優雅な笑みを向けながら手を振るサラトガ。そして、そこから微かに見える彼女が搭載している艦載機。

 

「…へ? 提督まさか、ウチらにヘルキャットやドーントレス乗せようとしてんの?」

 

 視線をサラトガに向けたまま提督に聞く龍驤。心なしか顔が若干引き攣っている…様に見える。

 

「やはり駄目か?」

 

「い、いや、駄目な事はないんやけど…。そりゃ、九六式艦戦に比べりゃ遥かに戦力にはなるいうんは分かっとるんやけど、その、なあ…」

 

「他国の艦載機だからといって乗せたくない、などと言う気は一切ありません。実際、優秀な艦載機なのは身をもって知ってますからね。ですが、一度引導を渡された事のある爆撃機を乗せるとなると、どうしても抵抗感は拭い切れません…」

 

 気まずそうに顔を顰めながらもごもごと言葉にならない言葉を吐く龍驤と、厳しい顔つきで心境を吐露する赤城。どうやら完全に苦手意識を持っている様だ。

 

 しかし、今この鎮守府でまともな艦載機と言えばサラトガが搭載している艦載機しかない。加えて、幾千の戦いを乗り越えてきたのだから、艦載機の熟練度も相当な物の筈。もしかしたら艦載機の性能以上の能力を発揮できるかもしれない。

 

 散々悩みはしたが、結局二人はサラトガの艦載機を貸して貰うように頼み込むのだった。




 原作ではヘルキャットを乗せようがドーントレスを乗せようが反応は一切変わらなかった…筈ですが、実際はどうなんでしょう? やっぱり嫌がったりするのか、それとも全く気にしないのか…。

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