自分らしく生きた結果、見事ぼっちになりました!   作:Narvi

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 早めに投稿すべきと判断したので夜中に書いていたら止まらなくて、案外早くにできました。結構この作品は自分の中でも好きなのかもしれないです。

 今回は紗綾視点です。若干の過去描写もあるので説明口調が続きますが、どうかのんびりお読みください!

 内容的には、紗綾と唯斗の小さい頃から今までのことを紗綾視点で書いたものになってます。紗綾の心情に重点を置いて書きました。

 ちなみに読まなくても問題はないです。複雑なことや心理描写を特に気にしないで読みたいならむしろ読まないほうがいいかも?

 後半は二人の風呂シーンに入ります! よければ心境の変化や紗綾の性格を、楽しんで見ていってください!


3.5話 素直で純粋で、不器用な幼馴染――紗綾視点

 私の幼馴染はかっこいい。

 

 身長は私よりも頭一つ分くらい上で、体つきもスラっとしている。キリっとした目は、それでいて睨んでいるようには見えずそれは人の良さが伺える。黒い髪はくせっ毛で、特に何かしているわけではないらしいがかっこよく整っている。

 

 それは私が言うまでもなく、平坂唯斗はイケメンである。贔屓目ではない。客観的に見て、唯斗はイケメンなのだ。

 

 小さい頃の唯斗はあまり周りと仲良くするような性格ではなく、引っ込み思案だった。頭がよく、運動神経も悪くない。その上、顔もイケメンときたら、当然周りからはモテる。モテまくる。

 幼馴染の私は羨ましそうな目で周りから見られたし、唯斗に関するあれこれを根掘り葉掘り聞かれた。

 

 でも、唯斗は私しか知らない。唯斗の中では、私以外には何一つ存在しなく、結局私以外と必要以上に話すことは最後の最後までなかった。

 

『唯斗がずっと私のことを見てくれていたらいいのに……』

 

 何度そう思ったことか。

 

 しかし、それとは裏腹に唯斗は変わってしまった。

 

 別々の中学校に入学して、しばらくした頃。日が経つごとに元気をなくしていく唯斗に、私は寄り添うことしかできなかった。助けることはできない。ただそんな唯斗をじっと見ているだけ。

 

 小学生の頃から一緒にいた。それはもう姉弟のような関係だと思っていた私だから、いつまで経っても私を頼ってくれない唯斗に人知れずショックを受けていたのを覚えている。

 

 そして私自身も、唯斗の心に踏み入ることはできなかった。それは単純な心理で、嫌われたくなかった。本当に、それだけのことだった。

 

 結局、唯斗が私を頼ることはなかった。

 私が気づく前に、唯斗のおじいさんが解決したようだった。

 

 あくまで、私の出る幕はない。私は大きな勘違いをしていたのかもしれない。私は唯斗との関係を姉と弟のようなものだと思っていたが、それは間違っていて、本当はただのよくある友達の関係でしかない。

 不思議とそれがしっくりときたし、そう思えてしまった。

 

『紗綾にもずっと心配かけちゃってごめん。そして、ありがとう。俺はずっと紗綾のこと大好きだから!』

 

 この時には私はもう、姉と弟の関係ではいられなくなっていた。別に唯斗からしたら何も意識したものではないのかもしれない。

 

 ただ、これは私の気持ちなのに、相手の口からそれを確信にした。それのなんと不甲斐ないことか。

 

 何に対して悩んでいたのかは、中学校が違う私にはわからなかった。唯斗がそう言ってくれて、嬉しかった反面、その言葉を本当に受け取っていいのか。私にはそれがわからなかった。

 

 

 

 

 

 高校生活の始まり。その頃には自分の気持ちにも完全に割り切って考えられるようになってきて、逆に自分の感情をよく理解するようになった。

 

 高校でも唯斗は人気がある。本人は『自己紹介に失敗した……』と嘆いていたが、それは大きな間違いだったりする。

 何やら噛んだ、とか裏返った、とか言っていたが誰ひとりそんなこと気にしていなかった。

 

 むしろ好印象。それはもう、近寄りづらいくらいに。

 

『かっこいい……』

 

『めっちゃイケメンじゃない!? あの人!?』

 

 ――そうなんです! 私の幼馴染は本当にかっこいいんです!

 

 何も知らないクラスメイトにそう威張ってやりたかった。当然そんなことはしないが、私が幼馴染だということに気づかれるのは、毎日一緒に登校しているためにそう遅くはなかった。

 

「ねえねえ!」

 

「どうしたの?」

 

 これで何回目になるだろう。どうせ今回も同じ内容だろうな、と私は定型文でそう返した。

 

「紗綾と唯斗君って、付き合ってるの?」

 

「いや、付き合ってないよ?」

 

「え!? そうなの? 意外!」

 

 ――意外とはなんだ、意外とは。

 

 密かに怒りを浮かべる。

 

「え、っとさ。唯斗君って、彼女とか、いるの?」

 

 ――なんでそれを私に聞くの?

 

 直接聞けば、なんて言えるわけがなかった。

 

「う~ん、いないんじゃないかな?」

 

「え!? ほんと!?」

 

「うん。まだそういうのはいいかな、って言ってたし……」

 

 ――嘘だけど。

 

「……え」

 

「あれ? どうかした?」

 

「……あ、いや! 何でもない!」

 

 唯斗のことを色々聞いてくる女には、大抵こう言えば引いていく。それはもうわかりきっている。

 

 去っていく女子生徒。その背中を見て、何となくそれを今の私に重ねる。

 

 ――ああ、私って、最低だ……

 

 そうは思っても、やめられない。やめたくはない。

 

 でもその理由に答えを出すことは、私自身が許さなかった。

 

 

 

 

 

 

 唯斗に友達がいないのは私のせいなのではないか、と思うときがある。

 

 中学の時は別々だったから聞いた話でしかないが、唯斗は活発で誰にでも優しく、明るい性格だったらしい。当たり前だが友達もたくさんいただろう。

 

 しかし高校生になって、一人も友達がいない。

 事実、女友達がいないのは私のせいである。

 

 当然自覚はあった。最低な人間だと思う。

 

 私は結局逃げているだけだった。唯斗に釣り合わないからと幼馴染という関係を利用して世話を焼き、そばにいる理由を半ば強引に作り上げている。そして、それを武器に唯斗に近づく人を脅している。

 

 だからこれは本当に気まぐれだった。私でもよくわからない。謎の感情が、私を突き動かしたのだ。

 

 

 

 

 

 

「おじゃまします……!」

 

 私は意を決して風呂場へと入った。唯斗は驚いた表情で私の顔を見る。その視線は徐々に下へと向かって――

 

「そんなに見ないでよ、変態……」

 

「変態呼ばわりするくらいなら入ってくんな!」

 

 耐えかねてそう言うと、唯斗は声を張り上げ、効果音がつきそうなくらいの勢いで私に背を向けた。

 

「もう体は洗った? 私が流してあげるよ!」

 

「もう勘弁してくれ……」

 

 それはこっちのセリフでもある。私の元気もここで限界だった。

 

 

 

 

 ――気まずい……。

 

 とりあえず、何か言わないと。そう思って、私はつい、本音をこぼしてしまっていた。

 

「ねぇ……」

 

「……ん?」

 

「えっと、ね。高校生活、大丈夫かなぁ、って」

 

 もしかしたら私のしたことによって、傷ついているかもしれない。それだけは、絶対に許されない。

 

「唯斗は少し遅れて入学したから……友達と話してるところも見ないから――」

 

「それは紗綾が心配することじゃないよ」

 

「でも……」

 

 ――本当は私がいけないんです。

 

 そう言えたらどれだけ楽だったことか。しかし、唯斗は振り向かずに話を続ける。

 

「これはおじいちゃんの受け売りなんだけどさ、『好きに生きればいい。自分らしく生きなさい。そして、その道に誇りを持ちなさい』。少しは自分を優先したって、紗綾ならバチは当たらないよ」

 

 ――自分らしく……生きる……。

 

 ――唯斗はそう生きることを決めたから、変われたの?

 

 それは聞くまでもなかった。ずっとそばにいた私だからわかることだった。

 

 ――自分らしく生きる、かぁ……。

 

 もしかしたら私は、ちょっと難しく考えすぎていたのかもしれない。

 私は唯斗の気持ちをわかってあげられなかった、なんて思って悔やんできた。唯斗に友達ができないのは私のせいだと思っていた。

 でも、そんなことはちっぽけなものにしか過ぎないのかもしれない。

 

 そもそも、結局私たちの関係に血の繋がりなんてない。わからないことがあったって、それは当然のことだろう。

 

 案外、私たちは似た者同士だったのかもしれない。私の場合それに気づくのが、たまたま遅れただけ。

 

「っ!?」

 

 唯斗が声にならない音を発した。

 

「ちょっと紗綾さん!?」

 

「はい? なんでございましょうかー?」

 

「いきなり抱きつくのはいかがなものでしょうか!? てかなにその口調!?」

 

 自然と抱きついてしまっていた。しかし、なぜか今は恥ずかしさよりも嬉しさの方が断然勝っていた。

 

「ありがとう! 唯斗のおかげで私、気づくことができたよ!」

 

「いや何が!? てか離れて!!」

 

「本当はわかってるくせに……嫌ですー、離れませーん!」

 

 ――私だって、唯斗を好きでいていいんだ!

 

 そう気づかせてくれた私の幼馴染はやっぱりかっこよくて、抱きつく力をさらに強めた。




 すんなり書けたわけじゃなく、紗綾の性格は1話から3話まで書いて固まっていた割に難産でした……。

 自分なりに思い描く紗綾の性格↓
『唯斗のことが好きだけど、昔の記憶がネックになっている上に、唯斗がモテていることを幼馴染だから知っていて、無理だと諦めてしまっていた。資格がないと思っているが、それでも唯斗と離れたくなくて、嫌われたくなくてそばにいて世話を焼いている。
 ちょっと思い込みが激しくて、深く考えてしまう、素直で純粋で不器用な少女』

 って感じになりました。箇条書きが苦手で文にしてます……。
 唯斗と同じですぐに抱え込んでしまうんですが、おじいちゃんの言葉を受けて変わった唯斗と違って紗綾はそのまま高校生になってしまったんです。

 唯斗の昔の姿に似ているのかな? ただ逃げたり隠すのが長年の経験と、昔の唯斗を見て身についてしまったのがそれを長引かせる原因になってしまいました。

 当然ヤンデレでもツンデレでもないです! 普通の愛だよ! でも、愛は重いから気をつけてね! どうなっても知らないよ??←

 紗綾さんの性格がうまい具合に表現できていたら嬉しいです。要望とか、どういうの書いて欲しい、とかあれば感想である程度聞きます。アンケートではないので、自由にこういうシーンが見たい、とかあれば教えてください!

 ※次回予告は3話をご覧下さい。なお、番外編に関しましては週一更新には含まれませんので、次回投稿はいつもどおりに行います。

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