神様に出会うまで   作:フキデバエ
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 課題に次ぐ課題で、執筆の時間が中々とれましぇん。
 これでもまだ余裕のある時期だってんだから大変ですね。忙しくなった時のことは想像したくない。
 まぁそれはさておき、この小説のサッカー協会ですが、設定が一部新作寄りになってます。具体的に言うと、女性でも出られる訳ですね。
 といってもオリキャラはいませんし、出すのが決まっているのは一人だけなんですけど。
 あと一人いた方が違和感ないかな、とは思っていますが、今のところTSするのは一人だけです。


chapter3.入部と暗雲



 きーんこーんかーんこーん。

 今日の授業が終わり、放課後が始まった。

 入部届けは今朝出したし、問題ないな。よし、俺はもう帰宅部じゃないぞ。

 配られたプリント類を整理してから、鞄を担いで円堂の席に向かう。今日から俺もサッカー部の一員だ、初日に遅刻する訳にはいかない。

 休み時間に円堂と話をして、練習前の作戦会議と同時に、部室で顔合わせをすることが決まった。そこでは主に俺のポジションや、帝国戦で見付かった問題点の改善点について考えるようだ。

 一応、部室には一緒に行く予定となっているので、俺は前方にある円堂の席に向かう。  


「パンチング技、熱血パンチ……あ」


 席を立ったまま、古めかしいノートとがっくつように向き合っていた円堂は、俺に気が付くと机上に積まれたノートの山を鞄に突っ込んだ。どれもこれも纏めて強引に、かと思いきや、一冊のノートだけは大切そうに鞄に仕舞う。


「あんま急ぐなよ。まだ部活は始まらないんだから」

「待たせるの悪いかと思ってさ……あれ?閉まんない」

「仕舞いきれてないからな」

「あ、本当だ……」


 ……やれやれ、教科書だってただじゃないんだから、もう少し丁重に扱えってば。普通に使って傷が付くなら良いけどさ。

 良くも悪くもサッカーバカか。まぁ、だからこそこいつに惹かれたっていう仲間もきっと居るんだろうけど。


「……あぁ、そういや風の便りに聞いたが、次の試合決まってんだって?」

「あ、そう言えば言ってなかったっけ。
来週に尾刈斗中と練習試合なんだ。今回も、負けたら廃部になっちゃうんだけど……」

「また廃部かよ……」


 学校はそんなにもサッカー部を潰したいのか。次の試合もこんなのじゃないだろうな。

 しかも、 尾刈斗中ね。帰宅部でいた分、他校の情報などは少しだけ調べていたが、中でも良く分からん奴らに目をつけられてしまった。


「尾刈斗中って、あの七不思議みてぇな噂が寄り集まって出来てるような学校だよな」

「知ってるのか?」

「少しだけ、な。サッカー部で言えば、高熱が出るとか、動けなくなるとか」

「俺達が聞いたのとおんなじか……」


 尾刈斗中と試合をすると、対戦したチームは高熱を出す。また、尾刈斗中のゴールへシュートを打とうとすると、足が動かなくなる。

 情報源によれば、尾刈斗中の"呪い"なんて噂もあるほどだが、実際に闘ったことがないので嘘かどうかは試合で確かめるしかない。

 最も、それが本当なら此方は成す術もないだろうが……そんなものが存在するなら帝国は40年間の無敗伝説を築くことは出来なかっただろう。今はまだ、ただの噂として見ていた方が良いかもしれない。


「あ、でさ、桜花。話の続きなんだけど……」

「……?何の話の続きだ?」

「ほら、負けたら廃部って話!」

「あぁーーあれ続くの?」

「こっからが大事なんだよ!」

「あ、そう……」


 そら、サッカー部の存亡を掛けた試合だし、重要なことかもしれないけど。そんな嫌な話、正直続けたくないんだが。

 そういう前置きがあって、ここからが大事とか言われると聞きたくなくなる。


「大丈夫だよ、こっちは悪い話じゃないから……」


 表情から思考を読まれたか、円堂は苦笑を浮かべている。相も変わらず廃部寸前の崖っぷちが、良いも悪いもないと思うけど。

 まぁ、他の部員もやる気を出しているらしいし、不都合なことばかりではないのだろう。話の流れからすると、勝った場合に何を得られるかが重要そうだ。リスクに見合った報酬であれば良いのだが。


「この試合に勝ったら、フットボールフロンティアの出場料、学校から出してくれるって!雷門……えーと……」

「夏未さん、だろ。…………つか、マジか。本当に理事長の娘さんが言ったのか?」

「あぁ!勝てば出場は許可するって、しっかりこの耳で聞いたぜ!」


 スゲェだろ!!と、まだ勝ってもいないのに両手を上げて喜ぶ円堂。まだ早いだろうーーと言いたかったが、少なからず俺も感動している。

 廃部廃部と騒がれていたチームに、大舞台への切符が掛かった勝負が回ってくるなんて正しく奇跡だ。いつかは出ると言っていた円堂も、これは予想すらしていなかっただろう。

 フットボールフロンティアは、中学サッカー日本一を決める大会。今は鬼道 有人率いる、帝国学園が40年間優勝し続けている大会。

 そして、円堂の夢の舞台でもある。こいつのようにサッカーが大好きな奴なら一度は出てみたいと思う大会だ。それに出場出来るかもしれないとは……どうりで他の奴らまでやる気になっているわけだ。

 無論、まだ廃部の危機が去ったわけではない。ないが……勝てばピンチから一転、雷門も日本一を目指すチームの仲間入り。

 正しく"逆転"ーーそれは俺の好きな言葉で、好きな展開の内の一つだ。入部して早々、こんな燃える状況に巡り合えるとは思わなかった。

 そういうことなら、尚更頑張らない訳にはいかない。昨日は手伝うと言ってしまったし、
俺もフットボールフロンティアには、少しだけ特別な思いがある。日本一を目指すプレーヤー達とサッカーをする機会、みすみす逃したくはない。

 サッカーは、俺がこの世界に来て新しく見付けた生き甲斐だ。今の自分がどの程度なのか、是非とも試してみたい。


「……なら、まずは尾刈斗中だな。勝って、皆で出ようぜ」

「あぁ。そのためにも、まずは練習だ。
桜花、顔合わせしたら早速始めるぞ!」

「おう!」


 何か、急に調子づいてきたな。

 これからのサッカーも、まだまだ楽しそうでわくわくしてきた。

 ◇

 堅いアスファルトの地面の上に、投げ出された一つのサッカーボール。

 気付いた時には、既に小さく跳ねるだけの力もない。コロコロと、さっきまで居た道の反対まで転がりながら、色の剥げかけた白いラインを一つ越える。

 彼はふわっとした妙な感覚と共に、先程まで胸に抱えていた物が、此方に向かってくるのがわかった。けれど、それが一体どういうわけで、自分が今どんな状況かなのかは分からない。今の彼が最も頼りにしている体感(もの)が教えてくれたのは、足元がいつもよりすっきりしていることだ。

 耳元で響いた甲高い音。多分知っている、車が良く鳴らす音。それを出すときは危ないときだと、彼は両親に教わった。辛うじて動く首を回してみれば、ひどく驚いた様子の大人が、車の窓から顔を出して自分を見ている。

 遠ざかっていくその顔を、彼も不思議そうに見つめ返した。今、一番驚いているのは自分なのに。

 見ているのなら、分かってるんでしょうーーこの一瞬間のうちに、もしかしたらそんな考えがあったかもしれないが、走る車に向かって説明を求めることが無茶なのは、誰であれ考えるまでもない。……それにそもそも、彼は吃驚して声がでなかった。


「ーーうっ」


 ストン、という衝撃と共に、それまでの不思議な感覚は払われた。急に全身に掛かった重みに堪えきれず、小さな呻きがあがる。

 それから息を整える間もなく、いつの間にか押さえ込まれていた全身が開放された。明らかに自分のものではない体温が、僅かに残って体を包んでいる。

 そこで漸く、少年は自分が誰かに抱えられていたのだと理解した。


「……はい、これ」

「あっ……」


 急に眼前に差し出された何かを、何も言えず押し付けられる。両手でやっと持てる大きさのそれが、自分の所有物であることに気が付くまでに時間は掛からなかった。


「ありがとうございます」


 頭を下げる。未だに状況は呑み込みきれないし、驚いて心臓も強く音を立てているけれど、先ずはお礼を言わなければならない。それだけは、何となく分かったから。

 すると、笑い声だろうか。相手が小さく声を漏らしたのが彼には聞き取れた。


「次からは、気を付けるんだよ」


 一瞬だけ、頭の上に感じた重みは、多分頭を撫でられたのだと思った。父親に比べれば小さな手。透き通るような綺麗な声から、女の人かな、と態々顔も見ずに予想する。

 なんてことを考えている内に、顔も知らない恩人は、彼の横をすり抜けていった。俯いたフリをして、ちらっと目だけでその姿を追う。顔ぐらいは見ておきたい。

 そんな彼の慎ましい視線は、突然の風が邪魔をした。揺れる金の髪が、視界の大半を埋め尽くす。

 この風が止めば、きっと腰のあたりまで届くほどに長い。それはまるで金糸を束ねたように美しく、目を引かれてつい振り返ってしまう。


「ーーーー」


 その人は女性的な風貌であるにも関わらず、纏う雰囲気は凛々しく、同時に可憐でもあった。大きめの赤い瞳。そして長い金髪。両性の内のどちらとも言えぬその美貌は、まるで勇者に力を授ける天上の存在のように感じられた。


「……かみさま……?」


 無意識の内に、少年はふっと湧いたその名を口にする。

 その呟きが聞こえたのか、どうなのかは分からない。だが、最後に一度だけ見えた横顔が、薄く微笑むのが見えたような気がした。


 ◇


 放課後の雷門中。病院の方角にあるサッカー部の部室へ向かう二つの人影。

 片や風に揺れる一房の癖毛、片やオレンジのバンダナが特徴的な二人の少年。

 霞城 桜花と円堂 守は、二人して苦笑を浮かべていた。困ったように頭を掻く桜花の様子は、まるで小さなやらかしを反省しているように見える。


「張り切りすぎたな」

「あぁ……」


 何のことはない。少しだけ廊下を走って、ありがたいお叱りを受けただけだ。

 滅多に見付からないのに、幸先悪ぃなーー桜花は期待して舞い上がっていた自分を恥じ、少しだけ冷静さを取り戻す。童心は大切だが、それに任せきってしまうと黒歴史ばかりが増えていく。

 対する円堂も、頬を叩いて気合いを入れ直した。今から大事な作戦会議だ、反省はしても気は落とせない。

 部室前に到着すると、中からは部員達の声が聞こえてくる……もう何人か揃っているようだ。円堂が一歩前に出て、入り口の扉に手を掛ける。


「よし、開けるぞ桜花」

「おう」


 桜花が部室の外観を眺めつつ相づちを打つと、円堂は扉を開けた。その際、勢い余ってすごい音が辺りに響いたが、円堂はそれ以上の大声を上げながら、部室内に突っ込んでいく。


「皆!今日から仲間がーー」


 ……が、折角入れ直した気合いも空しく、出掛かった言葉は直前で力を失った。まるで空気が抜けていくような声が、ゆっくりとフェードアウトしていく。

 急に静かになった円堂を不思議に思い、桜花も後ろから顔を出す。すると円堂程ではないが、彼も微妙な表情になる。

 というのも、部室の中の雰囲気は、お世辞にも良いと言えるものではなかったのだ。見るからに空気が沈んでいるというか、どんよりとしている。その原因なのであろう他の部員達は、
それぞれ困ったような、不安でいるような、また考え込むような面持ちで円堂と桜花を迎え入れた。


「どうしたんだよ、皆……?」


 昨日とは一転、まるで帝国との試合以前ーーとはいかないまでも、気分が落ち込んでいるようにしか見えない仲間達を、円堂は心配そうに見渡した。いつもの円堂であれば、ここでとにかく叱咤する場面。しかし、その場のメンバー九人(・・)を見渡してから、円堂はあることに気が付く。 


「染岡、まだ来てないのか?」


 そう、雷門のストライカーである、染岡の姿が見えないのだ。今日入部した桜花を除けば、今の雷門イレブンはギリギリ十一人。サッカー部室には、本来十人のメンバーが居る筈。

 放課後は始まったばかり、部活開始にはまだ少し早い。ただ、その人物によって違和感を感じる事は思っているよりも沢山ある。例えば今のように。

 染岡は帝国との練習試合以降、異様なまでのモチベーションを持って練習に取り組んでいた。あの豪炎寺に負けじと、自身も強力な必殺シュートを手に入れようと頑張っていた。

 熱くなりすぎて、所々でラフプレーが目立っていたのは問題だが、今朝の朝練までの染岡は、良くも悪くも部員の中で一番サッカーに熱中出来ていたと言える。

 そんな染岡がーー他の部員を疑うわけではないが、誰よりも遅れてくるとは思えなかった。

 円堂の考えは間違っていない。染岡は寧ろ誰よりも早く部室に来て、今日の練習に備えていた。なら、何故今は部室に居なくて、実際には何処に居るのか?それを知っている一年生はバツの悪そうな顔をして、二年生からは嘆息が幾つか発せられた。


「キャプテン、実は……」

「一年がまた豪炎寺豪炎寺って言って、怒らせちゃってさ。先に河川敷に行っちまった」


 絞り出したような少林の言葉を遮ったのは、それまで天井を見上げていた半田だ。台詞を奪われた小林と一年達は、驚くというよりも絶句して一斉に半田を見る。


「半田さん!」

「先に言っちゃわないでくださいよ!」

「だってお前ら、さっきまで上手い言い訳考えるとか言ってただろ……」

「それは……」

「そうっスけど……」


 身を乗り出して抗議されるも、半田は呆れ果てたとばかりの顔で言い返した。これまた後ろめたいことを暴露されたうえ、完全に八つ当たりだった一年はいとも簡単に勢いを無くす。


「昨日決めたばっかなんだからさ、そういういない人に頼りきった考え、良くないと思うよ?」

『…………すいません』


 続く松野 空介(マックス)の発言で、一年は完全に小さくなった。すると頃合いを見ていたのだろう風丸が、疲労の籠った声で口を開く。


「と、言うわけなんだ。どうする円堂?」

「うーん……」


 円堂は返答に困る。染岡がやる気を出してくれるのは、とても喜ばしいこと。豪炎寺が入部してくれない以上、現在の雷門のストライカーは染岡一人。必殺シュートは得点への近道になるから、身に付けようとしてくれるのは大歓迎だ。

 反面、悪い方向に熱くなりすぎるのは注意しなければならないし、何より、原因である一年生の豪炎寺に頼りきる姿勢は絶対に正さなければならないと思っている。

 しかし、幾つもの問題を一気に解決できるほど、円堂は器用ではなかった。そういう力は人並み以上に備えているものの、分散させるまでの技術はない。物事一つ一つに、とにかく真っ直ぐぶつかっていくのがこの男。実質、こういった話の中では腕が一本しかないのと同義なのだ。あまり多く抱え込むと頭がパンクする。

 今もそれをやろうとして、見事に思考が止まった顔をしている。その内煙でも吹きそうだと、それを見ていた全員が思っただろう。


「ていうか、後ろの彼は誰なのさ?」

「……あ」


 見かねて、意外にもサッカー部に残ったらしいメガネが話題を転換。他の面子も気になっていたらしく、これ幸いにと視線が桜花の元へ集中する。

 その桜花といえば、話についていけないうえ、先程の円堂の「あ」に嫌な予感がしていた。


「ごめん桜花、忘れてた!」

「……まじ?」


 表情こそ変えないが、気分は一気に落ち込んだ。目の前の親友が勢い良く振り向いたかと思えば、そのまま謝ってきた。内容は「お前の存在を忘れていた」である。順調に成長していれば精神年齢三十代の桜花でも、流石に少しヘコむ一言だった。


「……ま、いいや。紹介してくれ」

「お、おう。
……えっと、こいつは今日からサッカー部に入部する、霞城 桜花って言うんだ。四年前に初めて会ってから、ずっと一緒に練習してた奴で、スゴくサッカーが上手いんだ」

「帝国ほどじゃあ、ないけどな。
まぁ、そういうわけだ。呼び方は霞城でも桜花でも構わない。ポジションで一番好きなのは自由(リベロ)。それが無理ならキーパーとフォワード以外であれば人並みにはこなせると思う。取り敢えずよろしく」


 格好のつかない自己紹介だと、桜花は内心で苦笑した。いきなり存在を忘れられる男、サッカーが上手い、とか言われたが、本人はもう説得力はない気がしている。

 とはいえ、別に目立ちたい訳ではないので、ある程度認められるように頑張ろうかと思った。

 ーーとうとう、サッカー部に入部した。所謂原作知識なるものは無いが、桜花はたった今介入を果たす。

 これから、桜花は前世で知ることのなかった数々の困難に、雷門イレブンの一員として立ち向かうことになるだろう。


「ーーさて」


 まぁ、それはそれとして。

 顔合わせは済んだ、と桜花は十分に空気を取り入れたあと、一つの話題を終わらせた。


「自己紹介はこの辺にして、だ。
練習は河川敷でやるんだな?早く行こうぜ、」

「いや、霞城さん。これから会議ーー」

「あぁ、そうだな!」

「え?」


 自己紹介を自分から切り、突然ノリで出来たような言葉を口走る桜花。そこへ宍戸が決められていた予定の説明にと割り込むが、更に割り込んできた円堂の声に動きを止めた。


「き、キャプテン、会議はどうするでやんす?」


 ぽかんとしつつも、疑問を投げ掛けた栗松は明らかに間違っていなかった。今日も会議がある筈だった。そう本人から聞いたのだしある筈だ。絶対、勢いで決めているだろうと栗松は確信していた。

 ただ、例え勢いでも果たしてそれが間違っているかどうかは別である。


「問題は山積みだけど、中には練習して解決できるものもある。
染岡が先に行って頑張ってるんだ、負けていられない!」

「…………それは、まぁ」


 間違ってない、と思う。円堂の言う問題の一部が自分たちだと考えると、余計に文句は言えない。

 染岡が勝手に練習を始めた原因は、間違いなく一年生だ。自分の力をあてにせず、まず誰かに頼る前提で考えていた自分たちが間違っていた。

 同じストライカーの染岡は、そのようなこと考えるまでもなかった。だから対抗意識を燃やして、今も必殺技の習得に必死になっている。豪炎寺には負けたくない、と。

 態度はともかく、自分から強くなろうという気持ちがある。それは円堂も同じことで、自分には少しだけ不足していたのではないかと、今では思う。

 それらを含め、荒れている染岡のことも考えると、円堂は会議に頭を使える状況ではない。先程だって煙を吹き掛けていたのだ、ここは寧ろ桜花の勢いに乗るべきではないだろうか。

 そこまで考えて、栗松は半端に開いた口を閉じた。


「そうと決まれば、早速練習だ!行くぞー!」

『キャプテーン!?』


 止めるもののいない円堂は、サッカーボールの山から一つを掴みとって出ていってしまう。一年生が揃ってその背に大声を上げたが、一方桜花を含む二年生は、


「しょうがないな、あいつは」

「言ってることは間違ってないし、いいんじゃない?」

「全員居ないのに会議ってのも何だしなぁ」


 満更でもなさそうにして、一人、また一人と円堂に続いていった。


「いやぁ、やっぱ円堂 守はそうでないとな。
どうせ会議ってキャラじゃねぇんだから、今は特訓だけしてりゃ良いんだって」


 じゃなきゃ頭が故障するぞ、そういって桜花も円堂に続く。その後、ハジメテノレンシュウダー、なんて奇声が外から聞こえた気がした。


『…………』


 残された一年生は、全員で顔を見合わせ、


「……マネージャー呼んでくるでやんす」

『頼んだ』


 先輩がやるなら、やるしかないと思ったようだ。



「ーーあれ、影野は?」


 河川敷への道中、円堂は一人だけ同級生が足りないことに気が付いた。


「あれ、確かに……」

「いつもならこの辺りで出てくるんだけどな」

「さっきは居たよね?」

「あの髪の長い奴なら、出ていくときに見たような……」

『うーん……』


 一体いつ居なくなったのか、部室にいたところまでは、全員がその姿を見ているのだが。記憶が曖昧で思い出せない。

 あの男、存在感を出したいがために入部しただけあって、物凄く存在が希薄なものだから……。


「……栗松、遅いなぁ」

「もう部活始まっちゃうよ、先に行く?」

「俺達もマネージャー探した方が……」

「ーーーー遅刻するよぉぉぉ?」

『びゃあぁぁあッ!?』


 結局、後に一年生とマネージャーを引き連れ河川敷までやって来るのだが、今はまだその時ではない。



 本来はもう少し長いですが、8000近くなったんでここらで切ります。
 実は前の一話と二話も、合わせて一話だったのですが、キリが悪いから分割したんですよねー。尾刈斗戦までは書き貯めたものを修正して投稿しているので、正直もう少し付け足すべきだったかと今更ながら後悔しています。読み返すと手抜き感がすごいんですもの。

 ま、やらないんですけど。

 影野は一年を態々待っててくれた良い先輩。引率までしてくれて、気が利きますね。これは存在感あがる。

 連れてくる部分はカットだ。






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