いつも頑張るお前の傍に。いつも支えてくれる君と一緒に。 作:小鴉丸
あ、誕生日は関係無いですよ?
~奏side~
「頼む! 課題を見せてくれ!」
「……やだ」
ある日の学校。俺は総士に現文の課題を見せてもらうために頭を下げられていた。この課題は今日の小テストに出る範囲でもあり、割と重要なものなのだが……。
「親友であるお前にしか頼めないんだよ!」
「教科書を読め、それで変な点数は取らないからさ」
うむむ……、と唸りながら思考する。
別に俺が頭いい訳じゃない、点数は平均点以上なだけだ。総士のように学年トップを狙えるような成績は生憎持ち合わせてない。
「く、後輩にも見捨てられた上に親友にまで見捨てられるのか……。なんて人生だ……っ」
十数年しか生きてないのに人生を語るか。
ぶつぶつバカらしい事を言う総士にクラスの仲のいい女子が近付いてきた。俺もそこそこは話す奴だったので会話に参加していた。
「また白羽くんの手伝い?」
「まぁそんなとこ」
「総士くん、あたしが教えてあげよっかー? いつも教えてもらうお礼にさ」
そう、総士はクラスの男女問わずから勉強について質問される事が多い。クラスじゃなくても後輩である龍斗や蘭達、そして俺も聞く時がある。
「え、マジで? ラッキー! ありがとな!」
明るくお礼を言う総士に女子生徒は顔を赤くして教え始める。
そんな光景を俺はもう一人の女子と見ていた。
「もうあの子ったら、柄にもなく照れちゃって」
「あぁ、あの人総士が……」
「うん好きなんだよ。残念だけどね」
ため息混じりに言う。
総士はモテる、それは一年から三年生の間でもだ。告られた数は本人曰く数えれないらしい。
難があるとすれば、それを総士は全て断っているという事だ。理由は恋愛に興味無い、既に彼女がいるなどと色々広まっている。
本当の理由を知っているのはごく僅かの人だけだ。
「イケメンだもんなぁ」
「ふふ、でもね。草薙くんも人気なんだよ?」
俺の呟きに予想外の返しをされる。
「は?」
「Eternal Happinessの草薙奏、白羽総士、九十九龍斗。この学校で有名だよー。中学の頃は凄かったでしょ?」
そんなにか? 自分らだと実感はないが……。
「有名って、流石にオーバーだろ。昔はみんなが楽しめればと思ってただけだし」
「実はね、私ライブ見た事あるんだ〜。とっても楽しかったよ」
笑顔で俺に言ってくる。
それはまたいつか見てみたい、と言っているようにも思えた。
「そりゃどーも」
適当にお礼を言う。
俺らの話が終わって総士に近付く。俺が近付くや否や、総士は抱きついてきた。
「わぁーーっかんねぇーー!! 必殺のカンペ作ろう! な!?」
先程まで総士に教えていた女子生徒は降参というふうに両手を上げる。
「殺すな。それとカンペ作るくらいなら補習や再テストでも受けろ、間違っても俺は親友に道を外して欲しくない」
「くっ──! 奏、お前は親友を見捨てるのか!?」
「見捨ててねぇ。嫌なら漢字ぐらい丸暗記しろ」
教室で叫ぶ総士と冷静な俺のやり取り。それをクラスメイトはまた始まった、という目で見ている。
「そもそもお前、教えても覚えないだろ」
「やってみないと分からないだろ!」
どっからその自信が出てくるんだよ。こっちは何回もやってんだぞ。
……なんというか、莉緒も九郎を世話する時はこんな感じなのか。と思ってしまう。
「……一応教えてやる。“見せる”じゃなくて“教える”だからな」
「ありがとう〜! 奏〜!!」
結果は目に見えてるけど……本人が頑張るなら別にいいか。
〜モカside〜
「つぐ〜! 宿題教えて〜!」
昼休み、なにやらひーちゃんがつぐに抱きついてお願いをしていた。その手には現代文の課題を持っていた。
「わわっ、ひまりちゃん!?」
「お願い〜! ここだけでいいからさ〜!」
既にご飯を食べ終えてのんびりとしていた蘭とともちんは呆れた様子でひーちゃんを見ている。
「現代文だなんて……総士みたいだな」
「でも現代文はつぐみの得意教科じゃん」
二人とも微笑みながら言う。
「──でも〜、総士の為に勉強したから現代文がずば抜けて点数いいよね〜。つぐは〜」
言っていて自分の胸が締め付けられるのが分かった。でもそんな感情は表に出さずにつぐをからかう。
「も、もう! モカちゃんってば……」
もじもじとして顔を赤らめるつぐ。
同じ女として見てもつぐは可愛いと思う。
女の子っぽいし、頑張り屋さんだし……そんなつぐを近くで見たいた総士は当然、その魅力に気付くだろう。
「(あたしは……)」
「モカちゃん? どうかしたの?」
声を掛けられて驚いて顔を上げると、目の前につぐの顔があった。心配そうな表情だったので慌ててなんとも無いふりをする。
「いやー。今日の夜ご飯はどうしようかなー、ってねー」
「相変わらずだな、モカは」
「あーもー! そんな事より教えてってばー!」
ひーちゃんがつぐを引っ張る。
そっか、つぐはあたしの気持ちを知らないんだった。総士もあたしの気持ちに気付いてないと思う。
そもそも二人は両想いなのだ。他人のあたしが入れる余地なんて無い。
「ひ、ひまりちゃん慌てないでよー! ごめんね、先に私達教室に居るから!」
ひーちゃんに腕を絡まされてそのまま校舎に戻る。そんな姿をあたしは見ながら色々な思いに浸っていた。
「……モカ。悩みがあるなら相談してくれよな? アタシ達、仲間なんだからさ」
やっぱりともちんはメンバーの少しの悩みに敏感だ。蘭の悩みなんてすぐに言い当てたりもする。
「(ごめん)」
心の中でともちんに謝る。
これはあたしの問題だから、結局は自分で解決しないといけない悩みだから。
「ふっふっふー。それじゃあ今日の夜ご飯について話そうかな〜」
「……ま、言ったからにはその相談に乗るさ」
十年以上の付き合いである幼馴染みに嘘をつくのはやっぱり辛い。
だけどこうしないとダメだと思う。
もしも弱さを見せたらあたしはダメになると思うから……、いつもの“青葉モカ”じゃ居られなくなるから……。
「ありがとー。ともちん〜」
誤魔化すように抱きつく。
蘭の心配そうな表情が一瞬だけ目に入る。まるで「無理しないで」と言うような目だった。
「(でも、違うから。あたしと──)」
──あたしとつぐは違う。あたしじゃ総士に振り向いてもらえない。
それは十年以上続いているから。
せめてモカに触れようと思いながら書きました。
誕生日おめでとうですしね()
それでは読んでもらいありがとうです! 感想などは気軽にどうぞです〜。