楽しみにしていてくださった方がいたら、本当にごめんなさい。これからはなるべく間隔が空かないようにしたいです…
タイトルがなんか不穏な感じです。今話のラストで納得してもらえると思います。(笑)
楽しんでもらえると嬉しいです。
では、どうぞ。
あの日からというもの、俺と雪ノ下はちょくちょく喋るようになった。最初こそ「何こいつ」みたいな目を向けられたが、お互い本が好きなのもあって好きな本の話をしていたりしている。今まで学校では桜くらいしか喋る人がいなかったから今までよりもほんの少し学校生活が楽しく感じるようになっていた。
だが、話すようになって分かったこともある。雪ノ下を見る周りの一部の女子の視線。多分そいつらは桜がいっていたように雪ノ下の容姿や男子からの反応を見て妬んででもいるのだろう。まあ、俺には関係のないことだ。雪ノ下はただ話をしているだけ。そう思っていた。
いつものようにクラスでの集会が終わり放課後になった。そろそろ半袖を着るやつがちらほら出てきたクラスメイトたちは皆仲良い奴と帰ったり校庭に走って行ったりしている。俺も、帰る準備をしてからこれから学級委員会があるという雪ノ下とニ、三言話をして別れ桜のもとに向かう。
桜の下を見ると、桜はいつものようにベンチでのんびりしていた。最近は俺がベンチに行くといつも先にいて待っていてくれるのだ。
「よ」
「あっ八幡さん!」
後ろから声をかけると桜は満面の笑みで振り返り、ベンチからちょこんと降りた。
「来てくれました!待ってましたよ!」
「基本的に暇だからな」
「…迷惑じゃなかったら毎日来てくれても良いんですよ?」
と桜は少し上目使いで言ってくる。うん、よく思うがかわいいな。妹にしたい感じ。
「迷惑じゃねーよ。そりゃ来るわ」
「ほんとですか!やったやった♪」
桜はそう言って嬉しそうに笑った。そして何かを思い出したような顔をしてからその場でくるんっとターンをする。するとワンピースのスカートが涼しげにふわっと広がった。
「そういえば桜さん夏アレンジです!どーですか?」
桜さん夏アレンジってそのままじゃねーかと思わず心の中で突っ込んでしまった俺はきっと悪くないだろう。桜の格好を見てみると、先週までは羽織っていたカーディガンがなくなりワンピースの袖からは白いスラッとした腕が伸びていた。そして下ろされていた髪はポニーテールにまとめられている。…かわいいな。
「まあ、確かに暑くなってきたしな。…いーんじゃね?」
「やったやった♪」
桜が嬉しそうにぴょんぴょんとしているのを見るとどーも自分より長く生きているとは思えねーなーと考えてしまう。と、前方から刺さるような視線を感じる。こいつエスパーかよと少しばかり驚きながら何食わぬ顔でベンチに腰かけるといつものように桜も隣に座ってきた。そしていつもと同じく他愛もない会話をする。妹である小町の可愛さを熱弁したら引かれたりするのもまあいつものことだ。そんな会話をしながら何か忘れている気がして自分の荷物に目を向ける。するとそれはすぐに分かった。
「あ」
「どうしましたか?」
「体操着袋教室に置いてきたわ。ちょっ取りに行ってくる」
「ありゃ、荷物は見てますね」
「おう、頼む」
うっかり机の横に掛けていた体操着袋をおいたまま忘れてしまったので教室に戻る。最上階にある六年生の教室に向かう途中の階段は、もう生徒がいないのかとても静かだった。
自分の教室の前に着きドアに手をかけようとすると教室の中から物音がするのに気付く。誰かいるのだろうか。まあ誰がいたとしても俺が行くと「うっわ比企谷菌だキモッ」と思われるまでである。あれっなんか目から汗が。覚悟を決めてドアを開けると、そこにいたのは自分の席の前に立ち尽くしている様子の雪ノ下だった。
「あら比企谷君。どうしてここに?」
「忘れ物してな。お前こそ何やってんだ?」
「色々よ。何も言わず早く帰ってもらえると嬉しいわ」
「りょーかい」
よく分からないが模索しない方が良さそうだなと思い自分の机に向かおうとする。そうなると必然的に雪ノ下が立っている方に向かうことになるわけで。
「どうしてこっちに来るのかしら」
「机の横に体操着袋を掛けっぱなしにしちゃったからな。それを取りに来た」
「…」
なぜか雪ノ下は俺の返事を聞くと諦めたような表情をして黙ってしまった。何だろうかと思いながら机の方に向かうとなぜ雪ノ下がそんな表情をしたのかが分かった。
今まで机に隠れていて見えなかったが、雪ノ下の足元には筆箱の中身やノートが散乱していた。その中には折られている鉛筆やくしゃくしゃになったノートもあった。驚いて雪ノ下の方を見ると、雪ノ下はあっと深いため息をついた。
「さっき学級委員会から帰ってきたらこうなっていたの。ランドセル持っていくべきだったわ…」
「…大丈夫か?」
「ええ、慣れているから」
とりあえず床に広げられている物を拾う。明らかに故意に落とされているノートを見ながらどうするべきかとなんとなく考えていた。すべて拾い終わったときにいつもの最終下校を告げる鐘が鳴った。
「…帰りましょうか」
「だな」
何となく二人で靴箱に向かう。ベンチにランドセルを置きっぱなしだったので少し靴箱の前で待ってもらって取りに行くと桜は俺が校舎に戻った時と同じ場所に座っていた。
「あっ八幡さん!遅かったですね」
「悪い」
「まったく、どれだけ待っ…」
「急いでるからもう帰るからじゃーな」
「えっあっまた明日です!」
桜の声を背中に聞きながら雪ノ下がいる所へ走って行き、そのまま帰路に付いた。
~・~・~・~
次の日の放課後は、鐘がなるまで教室でずっと勉強をしていた。昨日の帰りに喋っていた結果、雪ノ下に俺がどうしても苦手な算数を教えてもらえることになったためだ。
「こんな感じかしら。理解できている?」
「めっちゃ分かりやすいな。助かる」
「それは良かったわ。時間も時間だしそろそろ帰りましょうか」
「だな」
そうして次の日も、その次の日の放課後も喋ったり勉強を教えてもらったりしていた。
最後にベンチに行った日からちょうど一週間が経った月曜日、学級委員会があるという雪ノ下と別れ久しぶりにベンチへ向かう。桜の姿はなかったが、久しぶりに強い風を伴って現れた。桜は、怒っているような泣いているような表情をしながら口を開いた。
「八幡さん…どうして来てくれなかったんですか…」
「久しぶりだな。忙しくてな」
「だって毎日来てくれるって…なのに一週間も」
「忙しくてな」
「でもだって…」
「だから忙しかったって言ってんだろ」
同じようなことを繰り返すばかりの桜に少しばかりイラッとした俺はついいつもより低い声を出してしまった。桜はビクッと肩を震わせて細い声を出した。
「そんなに忙しいなら…もう帰ってください…」
「そうだな。帰って雪ノ下に教えてもらった算数復習しなきゃだ」
「…さようなら」
と言って桜は桜の木の幹に触れた。すると光が散るように消えてしまった。消える直前に溢れていたものであろう涙に反射していた光がまだキラキラと光っていた。
いかがでしたでしょうか。
今話を書いていてふと、今度桜視点で桜の日常とかの話を書きたいなーと思いました。夏休み中なら時間あるし書いてみようかな。検定の勉強や宿題の合間に案を浮かべてみます(笑)
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今回もお読みいただきありがとうございました!