あと後半の桜さんが…(笑)
今回も短めな文章ですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。
ゴールデンウイークも明け、十日ぶりの登校。生徒達は昨日までの休みが抜け切らないのか妙にうるさいく、逆に眠そうでもう既に寝てしまっているやつもちらほらいた。まあ俺もずっとごろごろしていて体力がなくなったのか給食を食べ終わったあたりから眠気と戦う羽目になったが。満腹になったあとの算数は眠い…国語とかならまだ好きだからいいんだけどな…
そんなこんなで今日の授業も終わり、クラスメイト達はゴールデンウイーク明けだからかいつもより解放感に浸って校庭で騒いでいる。俺もランドセルを背負い体育館に向かう。え、なんで体育館なのかって?それはついさっきクラスメイトがいなくなった教室で担任の体育教師に
「お、ちょうどいいところに比企谷」
「はい」
「このボールを体育館の倉庫に戻しておいてくれないか?戻すの忘れててな」
「先生が戻せばいいじゃないですか」
「今から会議なんだよ…ああ帰りたい…」
「心の声だだ漏れですよ」
「んんっ…ってわけで頼むよ」
「分かりましたよ」
頼まれことをしたからだ。先生お疲れ様です…。
とりあえず早く桜の所へ行かないと怒られそうなので早足で倉庫に向かいボールをかごに戻す。用事を済ませた俺は教室に忘れ物をしたのに気付いたので、そのまま桜の木の方には向かわずに校舎に戻ろうと渡り廊下を通る。
その時、体育館の裏手から何かを叩くような音とはっきりとは聞こえないが人の話す声が聞こえた。何事かと考えていると校庭に体育館の方から何人かの女子が走っていくのが見えた。いつもの俺なら「何だったんだろうなぁ」と考えてそのまま校舎に向かうところだが、先ほど走り去った女子達の顔が俺にいろいろ言ってくる時のクラスメイトの歪んだ笑顔に似ていたので少し嫌な予感がして音のした方に向かう。すると、体育館の裏の校庭から見えないあたりに一人の生徒がしゃがんでいるのが見えた。遠目だからよく分からないが膝を押さえているようだったので女子に近付いていく。
「おい」
「…何かしら」
俺が声をかけるとその生徒は少しびくっとしてから返事をした。近付いてよく見るとその生徒は同じ学年の女子だった。確か学級委員長をしているやつだったか、男子も女子もよく騒いでいたな。名前はたしか雪ノ下だったか。そんなことを考えながら膝に目をやる。
「膝、大丈夫か」
「大丈夫よ。そんなに大事でもないわ」
それを聞いた俺ははあーっと深くため息をついてからランドセルをおろしてポケットを探る。すると探していたものはすぐに見つかったのでそれを取り出して雪ノ下の方に突き出す。
「これは?」
「え、何お前絆創膏知らないのか」
「そうじゃないわ。なぜこれをってことよ」
「昔から妹が危なっかしいから絆創膏はポケットに入ってるんだよ。て、それはともかく膝洗ってからこれ貼れ。出来れば保健室に行って消毒してもらってからの方がいいが、あんまり怪我した理由とか聞かれたくないだろうからな」
「…そうね。どうもありがとう、比企谷君…だったかしら?」
「なんで名前…」
「同じクラスでしょう?まさか忘れたとは言わせないわよ?」
「今年になってからあまりクラスに関心ないから気付かなかった。すまん。お前の名前は?」
「雪ノ下雪乃よ。…そろそろ帰らなくちゃ。それじゃあ」
「おう」
自己紹介の時とか自分が終わったらさっさと寝ていたからクラスメイトを把握していなかった。まさか同じクラスだとは思っていなかったがまあもう話すこともないだろう。そんなことを思いながら歩き去る背中を見ていた。
…あれっ。
「やべえもうこんな時間か!」
そんなことがあったためクラスが解散してから四十分以上は経っていた。桜のことをすっかり忘れていたことを思い出した俺はクラスに忘れ物を取りに行ってから桜の木の方に向かう。ベンチには少し離れて見ても分かるくらいに落ち込んで座っている桜がいた。
「…おい」
「え?あ、八幡さん!」
声をかけると少し涙目の桜が振り向いて、俺の顔を見るとパッと笑顔になった。
「その、遅くなってすまん」
「本当ですよ…もう帰っちゃったのかと思いました…」
「ちょっといろいろあってこんな時間になった」
「約束忘れてたわけじゃなかったんですね…よかった…」
「分かった俺が悪かったからもう泣き止め」
と言いながら俺は桜の頭をなでる。
「ひゃっ」
「あ、すまん。妹をなでる感じでつい」
「いえ…」
と言う桜の耳は真っ赤だったので、よほど嫌だったのかと思い手を頭から離す。すると桜は俺の腕を掴んで手を自分の頭に乗っけた。
「待たせたんだからこれくらいしてくれてもいいと思います」
「はいはい。ってかお前ちっちゃい子みたいだな」
「うるさいです。一言余計です」
と言いながら桜が落ち着くまでなでているとやっと落ち着いたので手を離す。にしても桜って髪さらさらなんだな、守り神様なのに。そんなことを考えていると桜は俺の方を向きながら口を開いた。
「そういえばなんでこんなに遅かったんですか?」
「それはな…あ」
さっきの出来事を思い出して俺は固まる。そういえば俺さっき結構大胆なことしたな。ただでさえ人と、特に女子なんて小町と母親…は女子ではないな、と桜…こいつは神か、くらいしか話したことないのに初対面(クラス同じだけど知らなかったし)の女子によくあんなにきょどらないで話せたな…通報されなくてよかった…
「…いろいろとあった」
「目が泳いでますよ。…まあ忘れていたわけじゃなくってほんとによかったですっ」
桜は満面の笑みでそう言う。十日ぶりに見るその笑顔はとてもきらきらとしていた。ってかやっぱりこいつってかわいいな。小動物みたい。」
「ひょえっ!?」
桜が急に変な声をあげながらまた真っ赤になった。え、俺なんか変なこと言ったか?
こんなことを考えていると校庭に鐘の音が響く。もうこんな時間かと思いながらランドセルを背負ってベンチから立ち上がる。
「じゃあまた明日な」
「明日はもう少し早く来てくださいよ?」
「分かってるって。じゃあ」
「はいっ!また明日」
と言いながら桜はいつもと同じように歩き出した俺に笑顔で手を振ってくれた。
いかがでしたでしょうか。
ゆきのんの登場が少し不自然かなーとも思いますが…
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お読みいただきありがとうございました。