孤独な少年と桜の乙女(次回更新未定)   作:宇彩

17 / 17
 久しぶりに高熱を出してダウンして時間があるのをいいことについつい桜さんの続きを書いてしまいました、作者です。学校で流行ってるしインフルかなーって思ったら扁桃腺だった…なんだか微妙な気分?笑
 久しぶりの本編更新です。いろいろと繋ぎの回なので八幡たちは出ません。あとこの前出した設定紹介の新キャラが登場します。視点変更多め。

楽しんでいただけたら嬉しいです。
では、どうぞ。


そして、守り神たちはこんな話をしている

――楓&?? side

 

 桜が自分の桜の木のもとに帰っていってから少し経った頃、楓は寝床に腰掛けて残っていた果実を一人もぐもぐと食べながら桜との話を思い出していた。公園のおじいさんのことがあってから人前に出るのを嫌がっていた桜が八幡の前に出たこと、同じ守り神や心を開いたおじいさんとしか話せなかった桜が八幡と遊んでいたこと、そして桜が恋をしたこと…。

 

「あの桜が恋ねぇ、意外……でもないか。昔から桜には驚くばっか」

 

 桜は見た目や性格のおっとりさとは裏腹に、昔からよく楓を驚かせるような成長や決断をしてきた。

 その中で一番印象に残っていること。それは守り神としてある程度成長したら考えなければならない、これから生まれた森を出て自分の木を探しに行くか生まれた木の守り神をするかの決断の時のことだ。ギリギリまで悩んでいた楓とは対象に、桜はすぐに森を出ることを決めた。それを聞いた楓はとても驚いて思わず桜に詰め寄ってしまったくらいだ。

 

ーー『そんなあっさり決められちゃうの!?』

『うん?だってもとからそうしたかったもの』

『でも森の外に守りたくなるような木がないかもしれないよ?そうなるとまたここに戻ってくるの大変なんじゃ…』

『でもなんだか自分が大好きだって思えるような、そんな桜の木が見つけられる気がするの。もしなかなか見つけられなかったら見つかるまで頑張って探しちゃうかも』ーー

 

 そうして森を出たあと、桜は全くこの森に戻ってこなかった。風の妖精などからたまに桜を見たという話を聞いていたので元気だとは知っていたが、生まれ育った森を出る勇気がなくここに残った自分とは違い自分の“大好きな木”を見つけられたのかもしれない桜は少し遠い存在に感じられた。

 

 そんな昔のことを思い出しながら小さくため息をついて背中から木の葉に倒れこみ小さく呟く。

 

「なんだろ、なーんか寂しいなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かーちゃん、どうしたの?」

「うわっ!」

 

 いままで自分しかいなかった棲みかの中で後ろから自分以外の声がして驚いた楓は、ばっ!と音が聞こえそうなくらい勢いよく起き上がり後ろを振り返る。すると太めの枝を組んで作られた椅子に、肩口で切り揃えられた髪をハーフアップにして大きなリボンで留め、水色と白のチュチュ生地のワンピースを着た小さな守り神がちょこんと腰掛けている。彼女は楓と目が合うとにこっと笑いながらひらひらと手を振ってきて、その相手を見て楓は強張っていた体を緩める。

 

「なんだはーちゃんか、びっくりした」

「なんかかーちゃんがさみしそうに見えたんだもん!なぐさめ?に来たよ!」

 

 楓のことをかーちゃんと呼ぶその妖精は、森の中で一番大きな老樹と呼ばれる樹から二人よりも遅く生まれた季節の知らせを運ぶ風の妖精の春香。昔から楓をかーちゃん、桜をさーねーちゃんと呼んで姉のように慕っている。楓と桜も自分よりあとに生を受けた春香のことをはーちゃんと呼び可愛がっている。

 前に楓が「なぜ桜はさーねーちゃんと呼ぶのに私はねーちゃんと呼ばないのか」と聞いてみた時の春香の返事が

「だってかーちゃんっておねーちゃんにかんじないんだもん。どっちかというと同い年みたいなかんじかな?」

と言われてしょぼんとしていたのも懐かしい思い出だ。そのとき桜は「同い年…はーちゃんと同い年みたいってどんだけよ…」と落ち込みながらぶつぶつと呟く楓の頭を撫でていたのだが、そのときの桜と楓の姿はさながら姉妹のようだった。楓お疲れ。

 

 閑話休題。

 

「で、かーちゃんはなにがさみしいの?」

「んー、桜のことでちょっとね」

「さーねーちゃん?そういえばさーねーちゃんぜんぜんあわないなぁ」

「さっきまで森に帰ってきてたよ」

「えー!あいたかったのになんでおしえてくれなかったの!」

「さっき果実を取りに行くときいるかと思って守り木見に行ったよ、そしたらはーちゃん他の妖精と起こす気にもならないくらい気持ち良さそうにすやすや寝てたじゃない」

「ううっ…」

 

 春香は「でも会いたかったの~!」といいながら足をバタバタしているので、楓は少し微笑んでから春香の隣の椅子に腰かけて自分の膝をとんとんと叩く。そうすると先ほどまで少し拗ねていた春香はぱあっと笑顔を浮かべこちらに歩み寄ってきて膝の上に収まった。彼女は昔から泣いてたり拗ねていたりする時に膝に座らせると途端に静かになるので、よく桜と膝に乗っけていたのだ。

 楓はそのまま春香のさらさらとした白っぽい銀色の髪を優しい手つきで撫でると、彼女は「えへへぇ~…」とほにゃんととろけた笑顔を浮かべながら猫のようにすりすりしていた。

 

「なんか春香見てるとこっちまで癒されるよねー…」

「えへへ…あ、そういえばさーねーちゃん元気だった?」

「うん、桜にはまた驚かされちゃった」

「どーしてー?」

 

 こてんと首をかしげる春香にこれまた癒されながら、楓は先ほど思い出していた桜のことを八幡や雪乃の話も含めて春香に話した。

 

 

 

「なるほどなるほど…好きっていうのとか恋っていうのとかはーちゃんにはまだよく分かんないけど、さーねーちゃんなんだかかっこいいね!」

「確かにそうかもね、あとはーちゃんにはまだ少し早かったかな」

 

 そしてそういえば、とふと疑問に思い春香を撫でる手はそのままに彼女に尋ねた。

 

「そういえばはーちゃんはなんでまた急にここに来てたの?」

「そうそう、いいたいことがあったの!明後日くらいにね、どっかの森に妖精のみんなで夏ですよーって知らせしてきなさいって老樹さまがいってね、だからしばらくあそべなくなっちゃうの」

「へー、今度はどこ行くの?」

「……覚えてない!けど大丈夫だと思うよ!」

 

 そう言って胸を張る春香を見て、きっと老樹様に行き先をもう一度確認してから行くんだろうなーと考えていると彼女はこくこくと頷き…

 

「うん、大丈夫!ほかのみんなについて行くから!」

「そういうことかいっ!」

 

 

ーー楓&春香 sideout

 

 

 

ーー桜 side

 

 

「んーっ!到着っ!帰ってきたよ桜の木さんっ!」

 

 生まれ故郷の森からやっと校庭の桜の木の元に帰ってきて、珍しくずっと離れていた寂しさからか妖精の姿のまま桜の木にちょいっと抱きつくと桜の木は少しだけ嬉しそうに、それでいて少しだけ鬱陶しそうに風に乗ってゆらゆらと揺れた。

 

「ごめんなさい、少し寂しかったので…」

 

 誰に言うでもなくそう呟きながら桜の木から少し離れてベンチにちょこんと腰掛ける。すーっと深呼吸をするとくあっと小さな欠伸が漏れた。

 

「向こうにいる間は楓と話すのが楽しくてあんまり寝てなかったし、いろいろやって疲れたし、飛行も結構体力使うし…少し疲れちゃいましたね。今日はもう寝るとしますか」

 

 時刻はもう夕方、日の入りの遅いこの時期の太陽でももうだいぶ傾いていて日の入りも近い頃だろう。桜は桜の木の上の方のいつも眠るときに使っている少し太い枝のところまで飛んでいき、定位置に降りてごろんと寝転がった。

 

「お休みなさい、桜の木さん。それに…八幡さんも」

 

 そう呟き桜は目を閉じた。

 

 

ーー桜 sideout

 

 

 

ーー春香 side

 

 

「あ、はーちゃんおかえりー」

 

 楓の家から守り木の住みかへ帰ってきた春香は、そう言って出迎えてくれた自分と同じくらいの大きさの妖精に挨拶をしてから先ほどの楓との話を思い出して今度行く場所を聞くことにした。

 

「ただいまー!あ、ねえねえ」

「どうしたの?」

「老樹さんがお知らせしにいってねっていってたのってどこの森だっけ?」

「森?えーっと、“千葉村”?だっけ?そんな名前のとこだったよ。はーちゃんもしかして忘れてたんだ~」

「わっ、忘れてなんかないもん!あ、あとさっきかーちゃんと話しててはじめて聞いたんだけどさ」

「うん?」

「こいってなあに?」

「……なあにそれ?」

「わかんないの」

「私もわかんないやごめん。明日一緒に老樹さんに聞いてみようよ」

「うんっそうしよー!」




いかがでしたでしょうか。

時間があるときに書き溜めたこれからのプロットがノート5ページ分にもなっていて結構驚き。これなら割とすぐに更新できるかも。まあ勉強しなければ…受験のために苦手すぎる英語をどうにかせねば…


ご意見やご感想、ご指摘がありましたらお願いします。

お読みいただきありがとうございました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。