孤独な少年と桜の乙女(次回更新未定)   作:宇彩

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投稿が遅くなってしまって申し訳ありませんでした…
他作品を読ませていただいていたり作品の構想を練り直したりなどなどでなかなか執筆に当てる時間を作れず全然進んでいませんでしたが今日は一日時間ができたので(風邪を引いて一日布団の中だったので(笑))書いてしまいました。(笑)

桜の里帰り、今話で完結です。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
では、どうぞ。


番外編 桜の里帰り 後編

 次の日、私たちは朝早くに起きて支度をしてた後夏なので一応と帽子を被り人間態になってから楓が言っていた近くの公園へと向かった。昔楓とよく遊びに来ては草花や木の名前を調べたり落ちている葉や枝でいろいろ作って遊んだり、大きな公園の中央に流れる小川の水でお互い水を掛け合いっこして遊んだりしていた場所。久しぶりに来たその公園はとても懐かしく感じてついここに来た目的も忘れて二人ともしばらく散策していた。

 三十分位散策していただろうか、昔も今も変わらず公園の端にある花壇の前でしゃがんでいた私の方がちょいちょいとつつかれる。つついたのはもちろん楓だ。

 

「ずっと呼んでるのに夢中で気付かないんだから…」

「ごめんごめん、つい夢中になっちゃってた」

「来た目的忘れてない?はいこれ、袋二枚と軍手とか必要そうなもの案内所?で借りてきたから。ゴミは燃えるのと燃えないの分けておいて欲しいって」

 

 そう言いながら楓は少しあきれた顔をしながらそれらを差し出してくる。そうだ清掃のために来たんだと思い出していると顔を見て分かったのか楓は「ったく桜は抜けてるなぁ」と呟いているので「ごめんごめん」と謝りながら立ち上がる。

 そしてじゃんけんで公園の西側を私が、東側を楓がと分担して楓と別れる。いま私がいるのは東側の花壇なので西側まで移動しなければならないので整備された歩道をぽてぽてと歩きながらたまに足を止めては屈んで足元に咲く小さな花を観察してまた歩き始めて……の繰り返しで西の端に到着したのは楓と別れてから優に三十分経ってからのことだった。

 

 さて、と特に誰に言うわけでもなく呟き軍手をつけ空き缶やらお菓子の袋やら草の間や木の陰に結構落ちているごみをごみ用のトングでつかんで分別しながら袋に放り込む、放り込む、放り込む……。と、大分進んだところでくーっと伸びをする。

 

「って、やっと半分くらいなのにごみ多いな…」

 

 私たちが来ていたときはよく近所のボランティアの方が来て掃除をしていた覚えがあるのでそんなにごみは落ちていなかったが、今は清掃されていないという訳ではないだろうが頻度は落ちているのだろうか結構な量のごみが袋に溜まってきている。一度楓のところへ行って袋をもらってきた方がいいかもしれないな…と考えながら近くにあるベンチで少し休憩をする。ぼーっとしていると昔とある公園で出会ったおじいさんを思い出して懐かしい思いになってきた。住宅街の小さな公園だったけどおじいさんと清掃したあとこうやってベンチに座って和菓子を食べたなぁと少し思い出に浸ってからよしっと立ち上がって清掃を再開した。

 

 少し進んで小川の回りの清掃を始める。と、前屈みになってごみを拾っていると帽子がバランスを崩して頭から離れて小川の流れに合わせゆらゆらの流れていってしまった。気付いて慌てて追いかけていくと少し先で水遊びをしている小さな子供…お孫さんだろうか…と一緒にいるおばあさんが拾い上げてくれていたので小走りでおばあさんの元へ向かいお礼をいいながら帽子を受けとる。

 

「ごめんなさい、拾ってくださってありがとうございます」

「いえいえ。…あら」

 

 ぺこりと頭を下げながらそう言うとおばあさんは私の持っていたごみ袋を見て驚いたような顔をした。

 

「あなた、ここのお掃除をしてくれているの?」

「はい。昔よく遊びに来ていた友人と…」

「そうなの?この公園広いのに…若いのに偉いわねぇ、ありがとう」

 

 おばあさんは優しい笑顔を浮かべながらそう言ってくれ、いつの間にかおばあさんの側に来ていた女の子が「おねーちゃんだあれ?」と聞くと「ここの公園をきれいきれいしてくれてるんだって」とおばあさんが答える。すると女の子は「そうなんだ~ありがとうおねーちゃん!」とひまわりのような明るい笑顔を浮かべながら言った。嬉しくなった私も笑顔で「ありがとうって言ってくれてありがとうっ」と女の子に答えた。

 

~・~・~

 

「「疲れた…」」

 

 始めたときよりとは逆に日が傾き始めた頃、タイミング良く中央付近で落ち合った二人はベンチにドサッと腰かけてそう呟いた。結局お互い袋はどちらも満杯になるほどのごみを拾ったことに驚きながら拾うために屈んでいたために心なしか縮こまってしまったように感じる身体をぐぐっと伸ばしていると楓がこちらに顔を向けながら口を開いた。

 

「さて、帰りますか?遊んでいきますか?」

「体力がもうギブ…帰ろう」

「やっぱりね。じゃあそうしよっか」

 

 そう言ってベンチから立ち上がり案内所へ向かい借りた道具や拾ったごみを渡してから棲みかのある森へ向かい森に入ってからは妖精の姿に戻りふらふらと飛んでいく。棲みかに戻り寝床にばふっとダイブしてしばらくごろごろと転がり回ってから私は「そうだ」と言って起き上がり頭上にクエスチョンマークを浮かべている楓を見ながら口を開いた。

 

「こっちにいる間大分桜の木とか放置しちゃったし明日には帰ろうかなって思うんだけど…」

「え、もう帰っちゃうの!?」

「うん」

 

 楓は目を丸くしながら飛び起きる。反応が子犬みたいだなぁ…とほのぼのとしながら頷くと「ならちょっと待ってて!」と言って棲みかからどこかへ向かって飛んでいってしまった。しばらく待つと葉に包まれた大きな包みを持った楓がよろよろと戻ってきた。

 

「分かってはいたけど飛んでくるには重い…」

「なにこれ?開けていい?」

「まだだーめ!あともう一個持ってくるから」

 

 そう言ってもう一往復した楓はひとつを私の前に、ひとつを自分の前に置いて「開けてみて」と促してくるのでまるで貰った誕生日プレゼントを開ける時のようなわくわくドキドキした気分で葉を解くと、中には溢れんばかりのキラキラと輝く果実や木の実が入っていた。

 

「わあ、すごく美味しそう!」

「昨日、美味しい果物貯めてある所に行こうって約束したでしょ?だから持ってきてみたの。桜明日には帰っちゃうっていうから食べようかなって」

「でもいいの?貰っちゃって」

「だっていつか桜が帰ってきたときに二人で食べようと思ってたやつだもん」

 

 食いしん坊の楓がこんなに果実や木の実を貯めるなんで意外…大体見つけたらすぐ食べてしまうから…だったので少し驚いたが、自分のために採っておいてくれたのだと知ってとても嬉しくなり涙が出てきた。

 

「桜なんで泣いてるの!?も、もしかして嫌いなものが混ざってた!?」

「ううん。嬉しくって。ありがとう楓」

 

 そう言いながら抱きつくと楓は少し驚いたような顔をしてから笑顔で頭を撫でてくれた。

 

「楓は本当に最高の親友だよ」

「ん?なんか言った?」

「んーん」

 

 小さく呟いた呟きは楓には聞こえなかったようだったが、むしろ聞かれたら恥ずかしいので聞こえなくてよかったと思ったのだった。

 

~・~・~

 

「ううー…苦しいよ…」

「いつもはあんなにおとなしい桜がこんなになるなんて珍しい」

 

 あの後私たちは楓の持ってきてくれた果実や木の実を結構あったにも関わらず二人で二包み食べきってしまい二人とも満腹で寝床に転がっているのだ。

 

「どう?おいしかったでしょ」

「うん。やっぱりこの森ってすごいよね…」

「明日の朝桜が帰るときに手土産として持ってく分も渡すね」

「いいの?ありがとう」

 

 そんな話をしながら相変わらずころころとしているとまだ夕方にも関わらず清掃の疲れか眠くなってきた。寝返りをうって隣にいる楓を見ると幸せそうな顔ですやすやと寝息を立てているので私も寝ることにしようかと思い目を閉じた。

 

 次の日。

 

「じゃあまたね楓。いつかこっちにも遊びにおいで」

「今年のこの森の紅葉を見届けたら遊びにいこうかな」

「うん、楽しみに待ってるからね」

「こっちこそ!あ、そっち行ったら八幡さんとの進展聞くからね?」

「うっ…がんばります…」

 

 そうしてぶんぶんと手を振って見送ってくれている楓に手を振り返しながら私は帰路に付いた。

 

 途中で行きにも使った木で休憩を挟みながらいつもの校庭、いつもの桜の木に戻ってきたので桜の木に「元気でしたか?」と声をかけてからそういえばと辺りを見回すがいつものような校庭で遊ぶ子供たちの声は聞こえない。今日は平日のはずなのになぜだろうとしばらく考えているとひとつの結論に至る。

 

「そっか、もう夏休みに入っちゃったんですね」

 

 ということは八幡さんに会えるのは大分先なのでは…と考えて真っ先に八幡さんのことが思い浮かんでいたことに気付きぶんぶんと頭を振る。せっかく里帰りでリフレッシュしてきたんだから!と自分に言い聞かせてため息を付く。

 

「早く八幡さんに会いたいですね…」

 

 自分でも気付かないうちに呟いていた呟きを聞いたのか聞いていないのか、桜の木は優しく揺れていた。




いかがでしたでしょうか。

今回この話の中で出てきた「ごみ用のトング」、話を書くにあたって名前を調べてみたのですがいろいろな名前が出てきて???ってなってしまいました(笑)もしも正式名称を知っている方がいらっしゃいましたら教えていただけたら嬉しいです。

ご意見やご感想、ご指摘がありましたらお願いします。

お読みいただきありがとうございました。

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