楽しんでいただけたら嬉しいです。
では、どうぞ。
退屈な授業と集会が終わり、土曜日に思ったように桜に謝りに行こうと席を立ちランドセルを背負う。教室のドアに手をかけちょうど出ようとしたとき何の用か担任に名前を呼ばれたので渋々担任がいる教卓のほうへ向かう。
「おう比企谷」
「なんすか?」
「昨日休んでた分の算数のテストを受けてほしいんだが」
「えー」
「あ、今から何か用事でもあるのか?」
「いえ。あれがあれなので…」
「よしじゃあテストやるぞ」
「うええー」
「や、る、ぞ?」
「うっ…はい」
どうやら帰ることは叶わないようなので諦めて背負っていたランドセルを机に下ろす。桜には明日謝りにいこう。
「はあ…ただいま」
「おっかえりー」
やっと担任から解放されて家に帰るとリビングから小町ののんびりとした声が聞こえる。疲れたし暑いのでアイスでも食べようかとキッチンに向かうと同じことを考えていたのであろう、アイスを食べている小町が話しかけてきた。
「あ、お兄ちゃん。もぐもぐ」
「なんだ?」
「明日さ、小町補習、もぐもぐ、だからさ、早めに帰ってきて夕飯作っ、もぐもぐ、てほしい」
「待っててやるから食うか喋るかどっちかにせい」
「じゃあ食べるから待ってて」
「はいはい。がっつかんでいいから」
「つ、つめたい…。頭が、頭がぁぁぁ!」
「突然のム○カ大佐的なノリやめい。というかその頭痛ってアイスクリーム頭痛って言うらしいぞ」
「わあーそのまんまな名前。んで、明日の夕飯を作って欲しいの」
「そらまたどうして」
「テストの点数アウトだったから追試☆」
「はあ…了解」
小町の発言に頭を抱え、なかなか放課後桜のところにいけないなぁと考えながら冷凍庫から引っ張りだしてきたアイスにかぶりついた。
木曜日になり今日こそは行けるだろうかと考えながら朝会を過ごしていると林間学校の話を始めたのでしょうがなく聞くことにする。それによると8月に千葉村で宿泊行事があるそうで、森でのオリエンテーリングやら肝試しやらキャンプファイヤーなどがあるそうだ。ふむ、やはりサボりたい。まあ自由行動時間は雪ノ下と本でも読んでいればいいとして。
そんなことを考えながらちらっと隣の雪ノ下を見る。ここのところ、正確に言えば火曜日から雪ノ下がいままでと少し違う気がする。なんというか避けられているような感じ。いままでなら一緒にペアを組んでいた授業でもここのところ組んでいないし、放課後も用事があると言ってすぐに帰ってしまうのだ。なぜだーなぜ避けられるーと頭を抱えていると気付かないうちに朝会が終わっていた。
放課後になり、一刻も早く桜に謝るべくすぐに荷物をまとめて隣の雪ノ下にまた明日と言い教室を飛び出し階段をかけ降りる。やっと桜の木に到着したときには息があがっていた。息を整えながら桜が現れるのを待つ。が、なかなか現れないので一度呼ぶことにした。
「桜」
シーン…
「この間のことを謝りに来た。出てきてくれないか?」
シーン…
声をかけても返事がない。いつもの強い風も桜の明るい声もない。出てきたくないほど怒っているのか、はたまた今日は珍しくここにいないのかと考え「また明日来る」と言い残してその日は帰ることにした。
だが次の日も次の週になっても、桜の木に呼び掛けても返事がなかった。怒っているだけならそろそろ出てきても良いのではないかと考えながら、さっきから頭の片隅にちらついていることについて考えてみる。それは、"この間の一件のせいで、桜の身になにかあったのか"というものだ。というのも桜は人間と違い基本的に実態がないため、これは想像だが消えることもあるのではないだろうか。いや、それだけはいやだと頭をぶんぶんと横に振る。だがもう明日から夏休みに入ってしまうため今日が桜に会う最後のチャンスだったのだ。
「桜…どこ行ったんだ…?」
そう呟きながら桜の木を見上げた。
その頃の桜はというと…
「ううっ…苦しいよ…」
いかがでしたでしょうか。
予告をしておくと、次回は桜さん目線の話を投稿します。
なぜ八幡が呼んでも桜は現れなかったのかを書こうかと思います。
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お読みいただきありがとうございました。