孤独な少年と桜の乙女(次回更新未定)   作:宇彩

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今回も非常に亀更新。もっと早く書けるようになりたいなと思う最近。

というわけで後編です。後編と言っても繋がっているのは買い物のところだけですが(笑)

楽しんでいただけたら嬉しいです。
では、どうぞ。


孤独な少年は、モヤモヤの正体に気付かない 後編

 

 そうして小町と他愛のないような話を交わしながら歩くこと数分、アウトレットモールへやってきた。入口の自動ドアを抜けると、すーっと涼しい風が肌を包む。暑い屋外から入った時のすーってする感じいいよなーとしょうもないことを考えている俺とは違い、小町はフロアガイドの前に移動して鼻歌を歌いながら目的のお店を探している。ちなみに俺は後ろからついていくだけだ。先ほど俺は本屋に行きたいと小町に提案したが笑顔で却下されたのでついて行くことになったのだ。まあ可愛い小町のお願いなら仕方がないな。え、シスコン?何のことか分からないなぁ。

 

 小町に連れられて(半ば引きずられて)来たのは雑貨屋的な所。まあ確かにこのお店なら小学生女子が好きそうなものはありそうだなと思いながら店内を見渡していると服の袖がちょいちょいと引っ張られる。何事かと思い後ろを振り返ると小町が「あっちにいるねー」と言い残し行ってしまった。置いていかれて急に手持無沙汰になったので、とりあえず一番近くの髪留めやらアクセサリーやらよくわからんのやらがあるエリアに行ってみる。うわあこんなのつけるやついんのかよ…と思うものが結構ある中で、ふとひとつの髪留めに目が行く。

 それは、桜が着ているワンピースの色によく似た綺麗な桜色のシュシュ。きっと桜のあの綺麗な黒髪に合うだろうなぁと考えながら、自分が無意識のうちに桜のことを考えていたことに気付いて苦笑いを浮かべる。そろそろ意地を張るのもやめて桜に謝りに行こうかななどと思っていると、ちょうど買い物が終わったらしく小さな紙袋を片手に下げている小町が俺を見つけ嬉しそうに走ってくる。いや待て走るなよこけるぞ。

 

「おまたせ~帰ろっ」

「はいはい。てか走るなよ危ないだろ」

「だってお兄ちゃんがいたから」

「うっ…許す。さてじゃあ帰るか」

「はーい」

 

 シスコン?もうなんとでも言え。小町は可愛い、これテスト出るからな。というか俺は一体何言ってんだろうな。

 そうして家に到着。軽くスキップしながら自室に戻る小町を見送ってから俺も自分の部屋に戻る。気付かないうちに結構疲れていたのか、部屋着に着替えそのままベッドにどさっと倒れ込み寝てしまった。

 

 そうして翌日。

 

「げほっ」

「お兄ちゃんが風邪なんて珍しいね。はいこれ冷え○タね」

「おうサンキュ。うー気持ち悪ぃ…」

「きっと疲れてたんだよ。日曜日だしゆっくり休むんだねー。あ、お粥かなんかいる?」

「とりあえず少し寝るからいーわ」

「りょーかい」

 

 昨日買い物から帰ってきて寝てしまったあれはどうやら体調不良の予兆だったようだ。まあ簡単に言えば熱でました、風邪引きました、はい。

 小町が部屋から出ていくのを見送ってからふっとため息をつく。確かに最近本を読んでいたりして夜更かししていたなーと考えながら、起きていても具合が悪いだけだと思い寝ることにした。

 目が覚めたのは夕飯くらいの時間だった。結構寝たんだなと思いながら喉が乾いているのに気付きキッチンへ向かうと、リビングでソファーに転がってテレビを観ている小町と目が合う。

 

「およ?体調はどーよ」

「大分よくはなったがまあまだ万全ではないな」

「明日学校は?」

「朝の体調にもよるが一応休むかもな」

「そうしたほうがいいかもね。あ、お粥作ろうか?」

「そうだな。頼んでもいいか?」

「りょーかいです♪じゃあついでに小町たちの夕飯も作ろうかな。できたら呼びに行くから部屋にいてもいいよー」

 

 その言葉に甘えさせてもらい呼ばれるまで自分の部屋にいることにした。どさっとベッドの上に横になる。風邪引いてるときって少しの移動でも体が辛くなるんだよな。そして待つこと数十分、下から小町の呼ぶ声が聞こえたのでお粥をいただき汗を吸ってしまった部屋着を着替えてからもう一眠りする。結局次の日も学校を休み一日寝て過ごした。体調は寝て過ごしたそのお陰もあってか明日には学校に行けそうな位に良くなった。

 

 次の日、いつものように登校し自分の席に向かう。いつもは同じくらいの時間に登校している雪ノ下がいないことを少し不思議に思いながらランドセルから取り出した本を読み始める。読み始めて少し経った頃、隣の席に人が座る音がしたので隣を見るとちょうど雪ノ下が椅子に腰かけるところだったので声をかけることにした。

 

「おはよ。珍しく朝会ギリギリだな」

「あっ…」

「ん?どした」

「…いえ、なんでもないわ。

 おはよう。今日は少し寝坊をしてしまったわ」

「ほう、お前にしては珍しいな」

「そうね。ところであなた体調はもう大丈夫なの?」

「お陰さまで」

「それはよかったわ」

 

 と、そこでちょうど鐘が鳴り担任が入ってきて出席確認が始まる。担任の話を左耳から右耳にスルーしながらボーッとしていると朝会が終わったようでクラスメイト達がガヤガヤし始めたので、とりあえず何か大切な連絡を聞き逃していたらまずいと思い雪ノ下に聞くことにする。

 

「あの担任なんか大切そうな連絡してたか?」

「あなたもしかして聞いていなかったの?」

「聞き流してた」

「はあ…そうね、たしかもうすぐ夏休みってこととあと林間学校の話かしら」

「はぁ?林間学校?」

「夏休み中にあるそうよ」

「サボりたい」

「思考が腐っているわね…」

 

 雪ノ下は頭に手を当ててはぁ…と深いため息をついた。いやだってサボりたいもん。林間学校なんてリア充(笑)達が楽しめばいいと思うもん。この口調だれだろうなよく分からん。

 

 もうすぐ始まる楽しい夏休みと憂鬱な林間学校のことを考えうーんと唸っている俺を見る雪ノ下の目が何かを言いたそうな寂しそうな目だったことに俺は気付かなかった。




いかがでしたでしょうか。

ご意見やご感想、ご指摘がありましたらお願いします。

お読みいただきありがとうございました。

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