なぜだ!?
まぁ、それは置いといて。
この物語「ハーマイオニーと天才の魔法式」は今日、5月6日に完結させる予定です。
0時に90話、12時に91話、18時に92話を投稿する予定です。
まぁ、予定は未定なのでその通りにならないかもしれませんが……。
それでは90話どうぞ。
太陽が昇る。
朝日を背に闇の帝王ヴォルデモートは両手を広げ、歓喜に震えていた。
達成感、幸福感、ここから始まる輝かしい未来。
確信していた。運命は自分を選んだ。世界はこのヴォルデモート卿に支配されるためにあると。
その光景を見ていたホグワーツ城の全魔法使いは絶望に沈んでいた。
朝を迎えたというのに真っ暗闇の中に突き落とされたかのようなかつてない絶望的な光景が目の前に広がっていた。
レナード・テイラーが、最強の魔法使いが、不死で無敵だと思っていたレナード・テイラーがピクリとも動かず地面に転がっている。
今まで信じていた全てが崩れ去ってしまったような現実だった。
「こ、殺される……。もう終わりだ……。」
誰かがそう呟いた。生徒の誰かだったのか、大人であったのか、それとも不死鳥の騎士団員であろうか。誰がそれを発しても結果は同じだっただろう。皆が同じことを思っていたのだから。
「に、逃げなきゃ!」
「あああああ! 嫌だ嫌だ!」
「死にたくない!」
「助けて下さい! 私は、いや私の一族はあなた様に永遠の忠誠を誓います!」
「退け! 邪魔だ! ここから逃げるんだよぉ!」
「落ち着け! 敵はたった一人だ! 皆で戦うぞ!」
「勝てるわけねぇだろ! 俺は死ぬのは御免だ!」
城の中はまさに混沌としていた。
半数が命乞いをして服従を誓っている。残りは逃げようとしたり、行動をとることもできずに立ちすくんでいる。戦う意志を持った者は一割にも満たないであろう。
その様子をしばらく楽しんだ後、帝王は城に向かって宣言した。
「
一時間やる。それまでに俺様の目の前にそいつらの死体を持ってこい。
それができなければ……全員がここに転がっているこいつのようになる。」
ヴォルデモートはレナード・テイラーの死体を踏みつけ、高笑いをする。
「は、はははは! はーはっはっはっ!」
「やめてくださいよ。せっかく魂だけが抜けた貴重な検体なんですから。」
声が消えた。その場にはただ風の音があるだけで誰も声を発することができなかった。
ホグワーツの全員はつい数秒前まで見ていた絶対的な恐怖の対象であったヴォルデモートなど目に入らなくなっていた。
ヴォルデモートは全身に掻く冷や汗を止めることができなかった。息をするのも忘れ、全身に鳥肌が立ち、自分の後ろから聞こえてきた声からは恐ろしい光景しか想像することしかできない。
(あり得ない……あり得ない! 奴は死んだ! 踏みつけている魂の抜け殻が確かにある! 幻聴だ! 認めたくないが奴の事を俺様がそれだけ恐れていたということだ。そうに違いない! だから死体を踏みつけたからそんな言葉が聞こえてきたのだ! 後ろには何もない、何も!)
意を決して振り向く。
そこには
傍らには全ての魔法生物を片付けて元のメイド姿に戻ったクーが控えている。
目から取り込んだ情報を脳が認識を拒んだのか、先ほどまで一秒でも隙があったら死ぬような戦いを繰り広げていたはずのヴォルデモートは十秒以上動きを止めてしまった。
そして、ようやく目の前の光景を正しく認識した時……帝王の膝は地面についていた。
「なぜだ……。なぜ、貴様はそこにいる? なにが、どうなっている?」
「ああ、簡単な話ですよ。先ほどまで戦っていたソレ、僕じゃありません。あなたと似たことをしたのですよ。複製した肉体に他人の魔法に細工をして疑似的に僕の魂として入れて記憶とかも操作し、レナード・テイラーであると行動させていただけです。おかげでソレとあなたとの戦いもじっくり観察することができました。色々と面白いものを観察することができました。ありがとうございます。」
笑顔で笑いかけてくる目の前の
自分はこいつを排除すれば世界を支配するなど容易いと、こいつが最後の障害だと信じて全力で、それこそ魂を賭けて戦った。
だが……こいつはそうではなかった。闇の帝王ヴォルデモート卿だろうが何だろうがどうでもいいのだろう。自分などちょっと使える魔法薬と大差ない扱いなのであろう。
ヴォルデモートの両目から涙が流れていた。あまりの怒りと悔しさ、絶望から長年機能をしていなかったはずの涙が溢れて止まらない。
苦労と時間をかけた魔法生物の改造。
醜い穢れたマグル生まれに、サラザール・スリザリンの血を引く尊い自らの魂を注入するというおぞましい行為。
不眠不休でこいつを殺すためだけに創り出した多くの魔法や作戦。
そして己自身の全てを賭けた死闘。
魂のほぼ全てを使ったあの世への強制昇天魔法。
その全てが……ただの茶番であったと宣言された。
魂は最早、ほんの一欠けらしか残っていない。
そもそも目の前に居るこいつが本物である確証もない。
もう、終わりだ。
「…………殺せ。貴様の勝ちだ……。いや、そもそも勝負にすらなっていなかったのか。」
完全なる敗北宣言だった。レオはその言葉を聞いて悩んでいた。
「うーん……。どうしようかな。殺すのは簡単だけど、もったいない気もする。でも生かしておくのもリスクがあるしなぁ。……あなたはどうあっても死にたい? 僕の研究に利用するためのみを価値として生きていきたいですか? 選んでください。」
「貴様の利になることなど断じてやらん! 敗者は死あるのみ!」
「そうですか。……まぁ、いつかは死ぬでしょう。」
レオが帝王に手を向ける。その手にある指輪のうち一つが光り輝く。
『僕、レナード・テイラーの目の前に居る存在、闇の帝王ヴォルデモート卿。本名、トム・マールヴォロ・リドル。1926年12月31日生まれ。これの体内の魔力を対象に発動。全魔力を消失させ唯の
指輪が輝きヴォルデモートに光を浴びせる。
その光を浴びたヴォルデモートの体内から何かが消え去った。魂を分割した時よりも決定的な何かがなくなってしまったのを感じた。
(な、何が? 何なんだこれは!?)
「テイラー! 貴様何をした!? 俺様にいったい何を!?」
「ああ、あなたの中の魔力、魔法使いとしての才能を全て消去しました。これであなたはマグルです。スクイブですらない、完全な
「何だと……? この俺様がマグル!? ば、馬鹿な……。そんな馬鹿なこと出来るはずが!」
「今使った指輪は『改変』。魔力を使いあらゆる物質・生物・事象・法則を好きなように変えることができます。まぁ、色々と条件なんかもありますけどね。それに凄いことをしているように感じるかもしれませんが、これも普通の魔法を発展させただけですよ。」
レオの言葉を否定しようとする。だが、先ほどまで感じていた魔法の感覚、それを全く感じることができなくなっていた。魔法を発動しようとしても初歩の物を動かすような魔法さえ使うことができない。
「さらに追加しましょう。クー、体内に賢者の石を埋め込んでくれ。」
「了解いたしました。」
クーから触手が伸びヴォルデモートの体内に侵入してくる。
そしてその体のいたる所に極小の賢者の石を植え込んでいく。
これでヴォルデモートは体を完全に破壊されない限り死ぬことはなくなった。
ほぼ永久に魔法を使えぬ肉体として生きていくのだ。
忌み嫌っていた存在と同じモノに変えられてしまった、更にはそれが永劫にわたって続く絶望で周りが見えなくなったかつての帝王は元凶に向かって走り出した。
ただがむしゃらに攻撃を加えること、この体では殴りつけることしか頭には無かった。
だが、悲し事に唯のマグルが最強の魔法使いに出来ることは何もなく、一瞬で気絶させられて拘束されるという結末であった。
「じゃあ、後は不死鳥の騎士団や魔法省の人に任せて研究室に戻るとしようか。」
レオは魂の抜けた先ほどまでの影武者を研究室に転送して自身もクーを連れて転移した。
残されたのは数多の帝王の死体と魔法生物の残骸、戦闘の破壊痕。
そして絶望が張り付いた顔をして倒れているマグルとなった哀れな帝王だけであった。
ホグワーツにいる魔法使いたちはしばらく何も行動ができなかった。
だが、次第に状況を理解して喜びを爆発させた。
ここに戦争が終結した。
はい、皆さんの予想通り生きていました。
さっきまでのレオは影武者でした。
肉体面はレオと同等のスペック。
魔法技量に関してもレオの記憶を植え込んでるので相当なものです。
但し、『眼』に関してはレオ本人の魂と密接に関係していたため再現できなかったので
影武者と視界をリンクさせて影武者本人も気が付かないようにしていました。
お辞儀の強制昇天魔法の際に良く解析しようとリンクを切ったため見えなくなりました。
魂は捕らえた死喰い人を利用してました。
感想でも言われてましたが、87話でハーマイオニーがレオのハグを拒否したのは影武者だったからです。
お辞儀が勝った時ホグワーツが絶望していますが、実はお辞儀はかなり消耗しているので全員でかかれば打倒することは可能でした。
それをしたら即座にお辞儀は逃げて、魂の量産をしていたでしょうけどね。
その発想が出ないぐらいの絶望がホグワーツに襲い掛かっていたということです。
ちなみにお辞儀はこの時点でハリー・ポッターの存在が頭から消えてました。なので差し出すリストに名前が出てません。
・指輪紹介 『改変』
この世の物質、生物、事象、法則を改変することが可能。
制限として一日につき一度。大量の魔力を消費するためレオやアースキン以外は使用不可。大規模・精密・正確な改変ほど難易度と魔力消費が多くなる。なので世界中の物理法則をいっぺんに変えるとなると途方もない時間が必要。
チートに見えるかもしれないが、普通のハリー・ポッターの魔法でも限定的な物理法則の改変や物質の発生などやっているのでこれはそれを究極までに突き詰めた感じである。
レオとしてはあまり使いたくないものでもある。
理由は何でもできるからつまらないのである。
お辞儀マグルになる。
お辞儀として何が屈辱か考えた結果、マグルとして永劫の時を生きることかなと思ってこのような感じになりました。
これでヴォルデモート卿としては死んだことになりますね。
次回は戦後の魔法界についてですね。
それでは次回お楽しみに。