だけどそれが読者が求めている話とは別かもしれない。
悩ましいですな。
それでは68話どうぞ。
年も明けホグワーツでは平和に時間が流れている。
レオによる闇の魔術に対する防衛術は好評で生徒の実力は格段に上昇していった。
中にはレオに反抗的な一部の生徒やスリザリン生などは授業に反抗的な態度であった。
レオ自身もそういう生徒にはそこまで熱心に教えることはしなかった。
そんなホグワーツとは異なり世間では
魔法省は必死にそれらを隠蔽したり情報操作をしているが、もはや焼け石に水な状態だった。
スクリムジョールによる政権交代も秒読み段階だ。このままいけば夏前にはファッジ政権は終焉を迎えることになるだろう。
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イースター休暇も終わったある日。
レオは珍しくスネイプから呼び出しをされた。
魔法薬について久々に議論ができるかと少しワクワクしたが、どうやら騎士団がらみの案件らしい。
案内されてスネイプの自室に入るとそこにはハリー・ポッターがいた。
「本日の閉心術の授業はテイラーに手伝ってもらう。我輩は任務で少し出る。最初にこの特別授業について説明するので、その後はテイラーに教わるが良い。」
ハリーは嫌悪感を隠そうともせずレオとスネイプを睨んでいる。
「テイラー、闇の帝王への情報漏洩を防ぐためポッターの閉心術の習得は必須だ。今から我輩がポッターに開心術を仕掛ける。ポッターに何が足りないか教えてやるが良い。」
そう言うとスネイプはハリーに開心術を発動する。スネイプの技量を考えるとかなり手加減をしているのが丸わかりだ。この程度だったら開心術をかけられている方はすぐに気付くだろうし対処をしようともするだろう。
だが、ハリー・ポッターは成すがままに心を開いている。目線を逸らすことさえしないという有様だ。
「テイラー。ポッターの出来はどうだ? この閉心術の授業はすでにそれなりの回数を行っているが、ポッターはこの程度だ。このレベルの魔法使いを教えるには我輩では力不足だ。なにせこのような無防備な魔法使いなど見たこともない。」
ハリーは顔を真っ赤にしながらスネイプに食って掛かる。
「それじゃあ、そのテイラー先生は勿論完璧に出来るでしょうね。何せ天才様だからな。」
「当然だろう。
事前予告なしにいきなりの手加減なしの開心術。指輪で防ごうとも思ったが、それだとハリーは納得しないと考え自力で防ぐ。それもただ防ぐだけでなくあえて心の一部を読ませる。もちろんその心から読める情報はデタラメだらけのものだ。
「なるほど……。閉心術でも使い方によってはこのようなこともできるのか。あえて嘘の情報を流し相手を混乱させるとはな。流石だ、テイラー。レイブンクローに5点やろう。」
「それを看破できるスネイプ先生も相当な使い手ですよ。開心術、閉心術に限定するならばダンブルドア校長より上ではないですか?」
「ふ。それは買い被りというものだ。さて、我輩は一時間程度離れるがそれまでポッターはテイラーの教えをしっかりと学ぶが良い。」
それだけ言うとすぐに部屋から出て行ってしまった。
「それでは開心術、閉心術がどのようなものであるかの講義から始めましょうか。」
簡単な原理と対処法を教えるがハリーは敵対心からか一向に話をまともに聞かない。
一応は目を逸らすことだけは覚えたので進歩していないわけでは無いのだが、それでもヴォルデモートを前にその程度の抵抗は無意味に等しいだろう。
「うまくいかないな。ポッター君、いい加減僕に対して余計な感情は無くした方が良いと思うよ。閉心術は心を落ち着いた状態の方がより強固な壁を作れるからね。」
「やっている! そっちこそもっとまともな教え方はないのか? スネイプと一緒で僕に開心術を仕掛けるだけじゃないか。スネイプほど嫌な態度じゃないし、一応はアドバイスがあるけど全然成功しないぞ。」
「閉心術は自らの心に防壁を作るものだから、誰かが開心術使ってその状態から防御方法を自分なりに構築するのが一番なんだけどね。スネイプ先生の方法も強引だけど何も間違っていないと思う。」
「ああ、そうかい。おまえも閉心術をできないのは僕のせいだと言うんだな。」
「実際、閉心術は言葉で伝えても後は己自身でどうにかする必要があるからね。……そうなるとまずは心の平穏を維持する方法から学んだ方が良いのかな。君は精神の浮き沈みが激しそうだから何が有っても平常心を保つことから覚えよう。そうすれば必然的に心の防壁を作りやすくなるはずだ。」
ハリーは話は聞いても冷静になれるとは思えなかった。
相変わらず嫌悪や怒りを込めた目線を向けている。開心術を使わなくても分かってしまうほどはっきりとだ。
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セブルス・スネイプ、レナード・テイラー。どちらも嫌いな人間だ。スネイプはいつも目の敵にしてくるし、何もしてなくてもこちらの事を嫌ってくる。
テイラーはハグリッドがアズカバン送りになる原因になった。それ以上にヴォルデモート復活を防がなかった最悪の奴だ。
(クソッ! なんでこんな奴らに教わらなくちゃならないんだ。ダンブルドアもこいつらに任せないで直接教えてくれればいいのに。ヴォルデモートが復活したってのに魔法省はそれを認めない、世の中僕は嘘つき呼ばわり。それなのにテイラーは皆に認められて頼られている。なんでだ!? こいつはヴォルデモート復活の一因だぞ! それに騎士団にダンブルドアは入れる! 僕には何にも知らせてくれなかったのに!)
イライラする。
こいつさえいなければ、こいつが悪い。いなければ全てが上手くいった。
そうだ、こいつが悪い。仲間に引き入れているダンブルドアも悪い、憎い。いなくなればいい。そうすれば……。
(あ、あれ? 何だこれ……。何でダンブルドアまで? 僕は?)
思考が変になっていた。まるで自分じゃないかのようだ。
気が付くとテイラーが僕の事を凝視していた。まるで実験動物を観察するような眼だ。でも分かる。僕を見ていない。
その眼に恐怖を覚えて思わず目を逸らしてしまう。
ふと目に入った物があった。憂いの篩だった。前に校長室に有ったものだ。
何でここにあるのか疑問に思って近づいて中を見た。
中には銀白色の物質が漂っている。それが一瞬、僕の顔、いやアレは……!
(父さん! 今、一瞬だけど父さんの顔が見えた! この記憶には父さんが関連しているのか!)
そう確信したら中に何の躊躇いもなく突っ込んでいた。
そんなことをしなければ良いと後で死ぬほど後悔することになるとは知らず。
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ハリー・ポッターの雰囲気がいきなりおかしくなった。何だろうと思っていると何かがハリー・ポッターの体と繋がっている。
『眼』を使うと明らかに別の魂が干渉しているのが視える。
(極小だけど体の中に別の魂があるな。それを利用して外部から干渉している。……ああ、ヴォルデモートか。ポッターが赤ん坊の時に魂の一部が引っ付いたか。本体が復活した影響で活性化でもしたのかな。)
干渉は短時間だったのですぐにハリーは正気を取り戻した。しかし閉心術を習得しなければどんどんヴォルデモートの魂に侵食されていくだろう。
(取り除くか。いや、魂の浸食を観察するのもいいかも。……ダンブルドアは気づいているか。だからこその閉心術の授業なんだろう。いざとなったらどうにかするんだろうな。それまでは静観するか。)
そうして考えているとハリー・ポッターの姿が消える。その場には憂いの篩があった。
どうやら記憶の中へ入っていったようだ。
連れ戻すためにレオもその中へ入っていった。
記憶の中ではハリーに似た男がニヤニヤと嫌な笑い顔で若い頃のスネイプと見える男を逆さづりしてズボンをずり落しているところだった。ハリー似のそばにはスネイプと同じように若い頃のシリウス・ブラックが笑っており、少し離れたところにはリーマス・ルーピンとピーター・ペティグリューもいる。
そしてその光景をハリーが信じられないモノを見る目で立ち尽くしていた。
レオがハリーに近づくと動揺し始めた。
「テ、テイラー。こ、これは違う何かの間違いだ。父さんがあんな、あんなはずじゃ……。」
ハリーの父、ジェームズ・ポッターを中心にしたグリフィンドールの一団が惨めな恰好をしたスネイプを嘲笑っている。見ていて気持ちが良い光景とはとても思えなかった。
『はははは! 良い格好だなスニベルス! 自慢の闇の魔法はどうしたんだい? ああ、そうだ僕が口を開けないようにしたんだっけ。ははははは!』
『おいおい、プロングス。いくら何でもスニベルスが可哀そうだろう。さっきの呪いで傷もついてるし医務室まで連れてってやろうぜ。もちろんこのままでな!』
『流石はパッドフットだ。そうだ! どうせだったら全裸にした方が傷の具合も診やすくて良いんじゃないか。』
その発言にグリフィンドールから笑い声が上がる。ルーピンはとりあえず同調して笑っている感じだが、ペティグリューは嫌悪の表情を浮かべている。
スネイプは悔し涙を浮かべ必死に魔法から逃れようとしている。
『ポッター!!』
そこへ怒号が轟いた。
現れたのは若き日のアースキン・テイラーだった。
『ポッター、またお前か。いい加減その振る舞いはどうにかできないのか。』
『いやだなぁテイラー先輩。そこのスニベルス君が僕に攻撃してきたのが悪いんですよ。それに闇の魔法を使ってましたしね。』
『そうだとしてもやりすぎだ。降ろしてやれ。』
『はいはい。ほーら!』
ジェームズはわざと勢いをつけてスネイプを降ろした。
それをフェリス・テイラー、当時はエリソン姓だった、が急いで動いてキャッチした。
それを面白くなさそうに舌打ちするジェームズとシリウス。
『はは、惨め極まったなスニベルス! ハッフルパフの最下位のエリソンに助けられるとは闇の魔法使いになんてなれないんじゃないか?』
フェリスはそんなジェームズの言葉など気にせずスネイプを助け起こした。
だが、アースキンはいい加減我慢の限界が来ていた。
『いい加減にしとけよ、糞メガネが。』
『あ? いい加減にするのはそっちでしょう? いいか。そこにいるセブルス・スネイプは一年の頃から闇の魔法にどっぷりだったんだ。どう考えても将来は闇の魔法使いだ。そんな奴を攻撃して何が悪い? 庇ってどうする? 知性を重んじるレイブンクローとは思えない行動だな。ああ、そうか脳みそ筋肉で出来てるんでしたっけ?』
『本気でそう思ってるの?』
フェリスの言葉にシリウスが返した。
『当然だろ。闇の魔法は悪だ。だったらそいつは悪人さ。こいつだけじゃない。スリザリンの連中は闇の魔法使い予備軍だ。今の内からアズカバンにでもぶち込んでおけばいいんじゃないかな。そうすればホグワーツは平和になって皆喜ぶだろう。』
『グリフィンドールもスリザリンと大差ないわね。あなた達も人間としては闇の魔法使いと同じくらい最低よ。』
『……今までは手加減してたが、本気でその性根を叩きのめす必要があるみたいだな。』
『アースキン、私も手伝う。あの眼鏡叩き割ってやるわ。』
『そっちこそ覚悟しろ。今までの僕たちだと思うなよ。いくぞ皆!』
ジェームズの言葉に周りにいたグリフィンドール生が一斉に杖を構える。
ルーピンは少し離れた位置でそれを見ており、ピーターはアースキンが来た時にはすでに逃げていた。
『実を言うと、本命はあんただ。スニベルスはおまけ。スニベルスを庇うあんたも闇の魔法使い候補だと僕らには思えるんだよ。それに邪魔なんだよ、お前。僕らが何かするたびに邪魔をしやがって!』
周りのグリフィンドール生はジェームズとシリウスの言葉に誘導されてアースキンのことを闇の魔法使いになると思い込んでいる。グリフィンドール特有の正義感が暴走した結果がこれだ。
『正義感も結構だが、俺は一度も闇の魔法使いを肯定したことが無いぞ。スネイプも悪い。だが、お前らの弱い者いじめを見るのが耐えられんだけだ。』
『言ってろよ! 吹っ飛べ!』
そう言ったジェームズが吹き飛んだ。
フェリスの全力身体強化の拳が鼻を砕き、眼鏡をひしゃげさせ顔面に突き刺さった結果だ。
司令塔のジェームズがいなくなったことで混乱したグリフィンドール生は無計画にアースキンに魔法を放つが、全て防がれる。
その光景を呆れながら見るレオと絶望を通り越して無表情で見ているハリーのそばに大人になったスネイプが現れた。
その表情は憤怒で真っ赤になっていた。
二人は記憶から引っ張られて憂いの篩から戻された。
最後に見えたのはグリフィンドール生が一人一人吹き飛ばされるという地獄絵図だった。
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スネイプの部屋に戻ってきた三人。
「出ていけ……。出ていくんだ!!」
ハリーはいつもの反抗的な態度もなく静かに出ていった。
レオも流石に見たものがまずいと思ったので謝罪をして出ていった。
ホグワーツは平和ですが世間では着実に闇の勢力の影響が増しています。
スネイプの閉心術授業の手伝い。
ハリー(ついでにロン)はもうちょっと冷静になれよと突っ込みたくなりますよね。
まぁ年齢を考えれば妥当なのかな。
お辞儀に乗っ取られかけるハリー。
原作と比べて負の感情が大きいから影響も大きくなってますね。
目の前には憎きレオもいますから当然かな。
勝手に記憶に入るハリー。
お辞儀の影響で心が弱い中で父親の影が見えたのでついつい入ってしまった。
待っていたのは理想像とはかけ離れた父親でしたけどね。
過去の父親達。
ジェームズとシリウスはフェリスへの悪戯を妨害したり、スネイプを庇うアースキンを鬱陶しく思っていた。けれどいつも返り討ち。
今回は人数集めて袋叩きだ! → やっぱり勝てなかったよ……。
ちなみにジェームズとシリウスの悪戯はウィーズリー双子の悪戯と比べて悪質。
双子は皆を笑顔にするが、ジェームズ達は自分が笑いたいために悪戯していた。
スネイプはジェームズ達をボコボコにするアースキン達を見て更に力(闇の魔術)を欲するようになる。スネイプが死喰い人になった一因がアースキンにもあるのであった。
アースキンはスネイプのことを庇うというよりは弱い者いじめが嫌いなだけ。
仮に他の生徒がやられていても同じように行動していた。
この後はボコボコにされたジェームズ達と一緒に仲良くマクゴナガルに長時間説教されてました。これ以降はジェームズ達も少しは大人しくなっていきました。
それでは次回お楽しみ。