ロンは今後もあんな感じで進んでいきます。
では15話どうぞ。
十二月下旬になりすっかり冬である。吐く息も白くなり気温の低さを実感させた。
あれからロンはレオのことを敵視しているようだ。ハリーは特段そんなことは無いのだがロンと一緒にいるせいか会話することはない。
これらの情報はハーマイオニーからのものだが、レオとしては興味がない。
ハーマイオニーはすでにニコラス・フラメルと賢者の石について調べ終えている。賢者の石をホグワーツで守っているという事実から、この件が危険ということを理解したのかそれ以上は追求していないようだ。ハリーとロンはいまだに答えにたどり着いていないが、ハーマイオニーは教える気はないらしい。
「まったく、あの二人には呆れるわ。レオもハグリッドも止めろって言うのに聞きもしない。おまけにスネイプが犯人って決めつけているわ。確かにあやしいけれど他の可能性も考えられないのかしら?」
「まぁいいじゃないか、好きにさせておけば。生徒に出来ることなんて限られているし。それよりハーマイオニーはクリスマス休暇はどうするんだい? 僕は家に帰るよ。母さんがクリスマスパーティーは盛大にするんだって張り切っているんだ。ハーマイオニーやご家族も参加しないかって言ってるんだけどどうする?」
「是非参加したいわ! 実はパパとママは急な用事で休暇中は忙しくてほとんど家にいないみたいなの。それを聞いてホグワーツに残ることも考えてたけど、レオの家でパーティーがあるなら絶対戻るわ!」
「よし、決まりだな。母さんには連絡しておく。パーティーがもっと豪華になりそうだ。どうせだったら休暇中僕の家ですごさないか? 君がホグワーツでどれだけ実力をつけたのか見たいし、もっと魔法を教えてあげよう。」
「いいの!? 迷惑じゃなければお願いしたいわ。私の実力がどの程度になったか確認よろしくね、レオ先生?」
クリスマス休暇初日。
レオとハーマイオニーはホグワーツからキングス・クロス駅に向けての列車に乗っていた。
コンパートメントの中は二人だけであり、休暇中の予定を決めている最中であった。
「とりあえず真っ先に宿題を片付けてしまおう。その後はクリスマスパーティーを存分に楽しむ。残りの休暇はハーマイオニーのレベルアップと僕の指輪を完成させようかな。何か覚えたい魔法はあるかい?」
「そうね……。うん、やっぱり前にも言ったけど空を飛んでみたい! 他には何か攻撃呪文を覚えたいわ。トロールの件もあるし自分の身は自分で守りたいしね。」
「よし、飛行魔法と攻撃ね……。攻撃は色々応用が利く魔法を考えよう。それと追加で閉心術も教えておくよ。」
「閉心術?」
「心を読む、開心術の対になる魔法だ。これを覚えることで心を読まれないようになる。ハーマイオニーは例のものを知ってしまったから念のためにね。かなり高度な魔法だから多分習得は難しいだろうけど、知らないよりは確実に良いだろうしね。」
その後はキングス・クロス駅に着くまで二人は休暇中の詳細な予定や、クリスマスパーティーで何が催されるかなど話し合っていた。
キングス・クロス駅に着くとレオの母、フェリス・テイラーが待っていた。
「レオ、それにハーミーちゃんも! お帰りなさ~い。」
フェリスは二人をまとめて抱きしめる。レオは慣れていたがハーマイオニーは予想以上の腕力の強さに苦しそうに呻いた。
「母さん。ハーマイオニーが潰れてしまいますよ。」
「あらあら、ごめんなさいね。つい嬉しくなっちゃって。じゃあ、我が家へレッツゴー!」
久しぶりの我が子とガールフレンドが家に戻るのだ、フェリスのテンションは最高潮だった。レオたちは苦笑いしてフェリスの後に続いた。
テイラー邸に着いた二人は早速宿題を協力して終わらせる。レオはハーマイオニーに教えるプランの作成。ハーマイオニーはフェリスの手伝いをすることとなった。
クリスマス当日。
レオが目を覚ますといつもより多くのプレゼントが枕元にあった。
レイブンクロー生と勉強会に参加している他寮の生徒から合同で魔法薬の材料やお菓子の詰め合わせを貰った。
教授たちからはそれぞれの専攻分野の論文など一般にはプレゼントと言っていいのか悩むものだったがレオとしてはとても嬉しかった。
ダンブルドアからは色々な国のお菓子の詰め合わせだった。生徒のものとは内容がかぶっておらず見たこともないものばかりだったのでありがたく頂戴した。
リビングに行くとすでにハーマイオニーとフェリスがパーティーの準備をしていた。
「メリークリスマス。ハーマイオニー、母さん。」
「メリークリスマス! レオ!」
「メリークリスマス! はい、母さんとハーミーちゃんでの合作のプレゼントよ!」
ハーマイオニーとフェリスからのプレゼントは特大のクリスマスケーキと豪華な食事だった。
今日は朝から晩までパーティーが続くようだ。飽きないように料理も洋食、中華、アジア、日本、ファーストフード、等々見たこともないような料理まで並んでいた。
「ふっふっふ。母さんの力作よ! ハーミーちゃんにも色々手伝ってもらったのよ。魔法でいつでも出来立て状態になっているから好きな時に食べられるわ。」
「フェリスさんって料理上手なのね……。私ほとんど何もしてなかったんだけど……。」
「今年はハーマイオニーがいるからいつも以上に張り切ってるね。ああ、そうだ。はい、これ。ハーマイオニーへのクリスマスプレゼント。」
レオは一冊の本を手渡す。表紙にはタイトル等は何も書いていなかった。
「……? これなんの本?」
「これは僕が作った魔法や魔法薬を纏めた本だよ。まだ世間に発表していない魔法なんかも含まれているよ。ハーマイオニーだけに特別。本の中身は君にしか認識できないようになっている。」
「こんなすごいプレゼントもらってもいいの!?」
「もちろん。クリスマス休暇中や機会があればこれからはこれを教科書にしてレベルアップしていこう。」
ハーマイオニーはギュッと本を抱きしめる。
フェリスはその様子を見ながら口をとがらせて不満そうに呟いた。
「はぁ~……。我が子ながらロマンチックのかけらもないプレゼントねぇ……。ハーミーちゃんこんなのでいいの?」
ハーマイオニーははっきりと宣言した。
「はい! 最高のプレゼントです。」
「あぁ……。プレゼントじゃなくてね、レオでいいか聞いたんだけど……。もしかして自覚無しなのかな?」
レオもハーマイオニーも頭に疑問符を浮かべる。
(レオは当然として、ハーミーちゃんもまだ自分の気持ちに気付いていないのね。母としてはこんな息子にこれから出会いなんてきっとないのだから何としてもいい関係になってもらわなきゃ!)
フェリスは一人決意を固めるのだった。
夜には父、アースキンが帰宅してパーティーが本格的に始まった。
料理はほとんど絶品であったが、中には罰ゲームのような料理もあった。食べてしまったアースキン曰く、「金星人の食べるものだ」との事。
パーティは盛り上がり、話題はホグワーツでの生活に移っていく。
「レオ! 相変わらずレイブンクローはガリ勉か? あいつらいっつも同じ量なのに俺のこと脳筋だって言うんだぜ! フーンだ、今や俺は闇払い局の副局長だもんな。学年で一番の出世だ!」
「酔っているね、父さん。レイブンクローの皆は勉強熱心でとても良いと思うよ。それに父さんが脳筋なのは間違ってないよ。」
「そうよ~。あなたは学生時代から今でもずっとそうじゃない。」
ハーマイオニーはレイブンクロー生が脳筋と言われるのがイメージできなかった。
「父さんはね、魔力の量が常人の百倍から千倍あるなんて言われているほど魔力量が尋常じゃないんだ。その膨大な魔力にものを言わせて無言呪文をマグルのマシンガンのように連射するわ、難しい呪文も魔力で強引に成立させたりしているんだ。他のレイブンクロー生からしたら脳筋とも言いたくなるよ。」
「そうなのよ。学生のころから何でも魔力で解決。頭を使うより体力だ! 魔力は体からだ! なんて言っていたんだから。」
「ほいほい、そうですよ。脳筋ですよ。そういう母さんだって周りから史上最強のいじめられっ子だって言われてたじゃないか。」
「史上最強……? フェリスさんがですか?」
ハーマイオニーはアースキンの脳筋よりも、このおっとりしたフェリスが史上最強なんて言われている姿に無理があると感じた。
「おお、そうなんだぞ。母さんは子供のころからゆるくてな。成績も悪く……いや最下位だった。そんでもって俺らの在学中は悪戯仕掛け人ていう馬鹿どもがいてだな。よく母さんがターゲットにされていたんだ。実は母さんとのきっかけもそいつらから守ったのがきっかけなんだ。そんで、いつまでも守られるのは嫌だって言って魔法を覚えようとしたのはいいんだが、勉強ができなかった母さんは一つの結論に達した。」
「どんな結論だったんですか?」
「肉体は魔法に勝る。」
「……!? え!?」
ハーマイオニーは聞き間違いかと思って、レオの方を見た。レオは事実だと目で語っていた。
「極限まで肉体強化の魔法を極めてな、さらにはマグルの武術まで見様見真似で練習するようになった。気づいたら魔法は見切って躱す、目にもとまらぬスピードで接近する、防御などお構いなしに拳や足が飛んでくる。そんな素敵な女性に変身していた。悪戯仕掛け人の一人が平手打ちされてその場で回転した時には人生で一番驚いたな。だけど、悪戯仕掛け人も火が付いちゃってフェリスへのいじめに近い嫌がらせは続いたんだよな。まぁ、仕掛けるたびにボコボコになっていたが。周りから見たらいじめられている子が気づいたら相手を打ちのめしているように見えたからそういう二つ名がつけられたんじゃないかな。」
「あの人たち、ものすごーくしつこかったわ。最後は私とアースキンの二人で徹底的にお仕置きしたわ。そういうきっかけで私たちお付き合いが始まったの。」
それから両親は思い出話からののろけ話になってしまい。レオとハーマイオニーは勉強すると言って逃げ出した。
残りの休暇はハーマイオニーの特訓に費やした。
ホグワーツでも独自に勉強していたのか予想以上にレベルアップしていた彼女にレオは驚くと同時に満足感が得られた。教え子の成長は嬉しいものなのだ。
研究室内の魔法開発実験スペース。とにかく広く、そして練習用の人形があるだけの空間だ。
「じゃあ、最初に攻撃魔法を教えよう。『
レオは手を前に出す。前には的として人形が設置している。呪文を唱えると人形は吹っ飛ば
された。
「今のは手の先から、真っ直ぐに、手のひら範囲で吹き飛ぶ程度の力で使ってみた。これから応用を見せよう。」
二回目は人形は横に倒れた。三回目は上に浮く。四回目には人形が胴体から切断された。
「この魔法は応用が利く。二回目は力場の発生座標を人形の真横に設定して、力の範囲を広く弱くした。三回目は人形の足裏から浮く程度の力に。最後は効果範囲を薄く刃のようにして力を強くした。結果、人形は断ち切られた。」
ハーマイオニーは魔法の攻撃は呪文を言って相手を呪うことばかり想像していたから、かなり驚いた。
「この魔法の利点は目に見えないことだ。他の魔法は呪いが閃光などでこちらに飛んでくることが多い。そういうものは躱すことも可能だ。しかし『
(簡単に言ってくれるわね……。でもすごい応用が利く呪文ね。流石だわ。)
ハーマイオニーは苦戦しながらも
飛行魔法は苦手なのか浮く程度になってしまったが、これも慣れが重要なのでそのうち自由に飛べるようになるだろう。
閉心術はレオに心を読まれるのが嫌だったのかあまり特訓はできなかった。最低限の心を読まれる感覚を感じ取ることで目を合わさないことを覚えたので上々だろう。
楽しい休みはあっという間に過ぎていった。
ホグワーツに戻る日。キングス・クロス駅。
「では、行ってきます。父さん、母さん。」
「行ってこい! もっと立派になってくるんだぞ。」
「体には気を付けるのよ。ハーミーちゃんも色々がんばってね!」
「休暇中は本当にありがとうございました。楽しかったです。」
列車の窓から別れの挨拶を済ませる。二人は休暇を終えて再び学び舎に戻っていった。
ハーマイオニー強化回でした。
勉強は五年生レベル、魔法戦闘は三~四年生レベルです。これからさらにレベルアップするかも。
フェリスとしてはハーマイオニーはすでに嫁扱い。
でも当の本人たちはいまだ自覚無し。特にレオは恋愛などどんなものかさえ分かっていない。
レオの両親についてはそのうち人物紹介みたいなので詳しく紹介したいですね。
悪戯仕掛け人はあの四人です。平手打ちで回転したのはジェームズです。
ピクルVSジャック・ハンマーの二回戦目の決着をイメージしてもらえばOKです。
では次回お楽しみに。