『元』魔王の俺がヤンデレ女勇者と付き合っている件について   作:『向日葵』

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すいません遅くなりまくって!現場が今月まで忙しくてバタバタとしてました!いや、本当は書く時間あったんですけど、寝てましたごめんなさい。゚( ゚இωஇ゚)゚。!!




ヤンデレ女勇者のことを何も知らない件について

武器を無力化されたとはいえ、まだ切れ味には何の問題も出ていないはずの『デュランダル』を仕舞い、拳を前に構えをとる拳闘士ーーもとい、ヤンデレ女勇者レイカ。

 

対するは『怠惰ニ堕チル』を発現させた、いつもなら面倒の一言で何もしないはずだが、今回の件で珍しく本気になっている星魔王アルセリウス。

 

「「……」」

 

二人は、互いが互いの一挙一挙を見逃さんとばかりに睨み合う。時間と共に魔力が高まっていき、それと同時に緊張感が場を支配していくのが目に見えてわかる。この戦い、始まればどちらかが死ぬだろう。

 

……最も、『始まれば』の話だが。

 

 

「ーーはい、そこまで」

 

 

そしてついに、ヤンデレ女勇者ことレイカと星魔王アルセリウスによる本気の殺し合いが始まるかと思ったその瞬間ーー第三者の声が二人を止めた。

「……まぁ、方向音痴(アルセリウス)が一人でこんな所に来れると思ってなかったから、もう一人居るんだろうなとは思ってたんだが……やっぱりお前かーー『ハルト(・・・)』」

 

そう言って俺は、後ろを振り向いた(・・・・・・・・)

 

玄関側にいるアルセリウスやレイカと違って、俺が後ろを振り向く、ということは必然、そこにはリビングがあるわけで……俺も気付いたのは先程だが、何時から居たのだろうか、一人の男の姿が見える。

 

黒色の仰々しい、いかにも魔王というような大きいマントを羽織り、しかしそれでいて、整ったその顔には優しげな微笑みが浮かんでいるためか、仰々しいマントが台無しとなっている。

 

短めの黒色の髪に黒色の瞳、平均的な体格、角や尻尾などといったものもなく、何一つおかしな所など……マント以外は見受けられない外見。

 

とにかくそれらが相まって、こいつが魔王(・・)と思うやつは中々いないのだろう。

 

「あっはっは。やっぱりってことは、僕がいることも大体わかってたんだね。だからその二人が喧嘩になりそうになっても止めなかったんだ」

 

ーー『光魔王』ハルト

 

それが、『レムレース』という名の大陸を手にかける、魔王たるこいつの名前。

 

まぁ、ハルトならばアルセリウスや俺と昔からの付き合いもあるし、お人好しの性格からゼハートにも言いつけたりしないだろう。

……まぁ、恐らく二人ともバレて叱咤されるだろうが、そこは今は目を瞑るとしよう。最悪アルセリウスがハルトに全責任を負わせると思うし。ハルト、不憫な子。

 

とりあえず俺から、そんなお人好し故に損ばかりしてる魔王に一言。

 

「……どんまい」

 

「えっ?何で急にそんな哀れんだような目で僕を見るの?……ね、ねぇやめて?そんな目で僕を見ないで?」

 

「ん?あぁ、そのお茶美味しいよな?レイカの淹れたお茶だからな、美味しいよな」

 

「いやそういうこと言ってるんじゃないんだけど!?」

 

必死にツッコミを入れるハルトのその姿を見ていると、相も変わらず残念な魔王だなと本当に思う。なんかもう、魔王の『ま』の字も想像できない。……なんでお前魔王になったの?

 

「……ハル君、邪魔しないでほしいなぁ〜」

 

ーーと、ここまで口を閉ざしていたアルセリウスが、漸く言葉を発した。その何処かしら非難めいた口調に、アルセリウスがハルトに対して不機嫌ということは見なくてもわかる。

 

「そのお茶は私が魔王様のために入れたものですよ?不法侵入した挙句、何を勝手に飲んでいるんですか?殺しますよ?」

 

更にここで、別の意味で不機嫌になっているレイカが参戦。今にもハルトを殴り殺しそうな殺気を放っている。正直すごく怖いです。

 

「邪魔も何も、『星の魔力』を使えばここら一帯がどうなるかなんて分かりきってることだし、パワーバランスを崩しちゃダメってあれほど言われたでしょアルセリウス。第一僕達はお忍びでここまで来てるんだよ?騒ぎを起こせばゼハートに気付かれるのは目に見えてるじゃないか……あと、お茶に対してはごめんなさい、許してください」

 

「……う〜」

 

ハルトの最もな言い分に、睨みつけ唸るだけで、何も反論できないアルセリウス。それ程までにゼハートの怒りは恐ろしいものなのだ。

……しかし奇遇だなハルト。俺もここで騒ぎを起こそうが起こすまいがゼハートに叱られてるお前らの姿が目に見えるんだが。

 

「ここは一旦引くよ。クルトが生きてるって分かっただけでもとんでもない朗報じゃないか」

 

「でも〜!あの女がそのクーちゃーー「ア・ル・セ・リ・ウ・ス?」ーーぬぐっ、わ、わかったよぉ〜!!」

 

有無を言わさず言いくるめられて、遂には逆ギレするアルセリウス。その姿は駄々っ子のそれなのだが、聞き分けてくれるだけまだマシなのだろう。

 

……まぁ、でも、今回の件でこの二人が俺を心配してくれてたのはわかった。友などいないと思っていたのだが、存外そうでもないらしい。だからだろうか、不思議と胸が暖かくなるのを感じた。

 

「ーーありがとうな、アルセリウス、ハルト」

 

ならば俺は、素直にこいつらに感謝しよう。心配してくれてありがとう、友と思ってくれてありがとう、と……おい、なんだその顔は。

 

「く、クーちゃんがお礼の言葉を口にしましたよ〜!?明日は槍でも降ってくるんじゃないですか〜!?」

 

「ぼ、暴力の化身とまで言われ、その言葉通りの粗暴な性格をしていたクルトが、お礼だって!?ぼ、僕は明日を迎えられるのだろうか……?」

 

「幾ら何でも酷すぎねぇか!?」

 

こ、こいつら、人が珍しく感謝の言葉を口にしたと思えば……!

 

はぁ、とため息を一つ吐き、憤る気持ちをなんとか抑える。まぁ、怒りを周りにぶつけてないこの時点で、昔よりも丸くなったとは俺も思っているさ。

 

「んー、クルトが丸くなったのも……全部君の影響なのかな、『ベルトナム』の勇者さん?良ければお名前を伺っても?」

 

「……では、改めまして。こちらの魔王ーー『クルト・グランツェフ』様と正式にお・つ・き・あ・い、させてもらってる、ヤシロ・レイカです。よろしくお願いしますね?まぁ、ここであなた達は私に倒されるんですから、覚える必要ありませんけども?」

 

もう我慢の限界だとでも言うように、更に殺気を濃くするレイカ。この様子だとこいつ、俺に使った『呪い』を発動させるのかもしれない。……どうする?止めるべきか?

 

「はいステイだよアルセリウスー、落ち着こうねー?……ふぅん、ヤシロ・レイカ、ねぇ?」

 

しかし落ち着いた態度を見せるハルトは、その顔に含みを込めた笑みを浮かべると、レイカにこう質問をした。

 

 

 

 

 

 

「ーー君ってもしかして、日本人?」

 

 

 

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

 

 

 

「ーーさぁ、旅に出ましょう魔王様!!まず手始めにあの雌豚がいる、『マグフィリア』に行きましょう!!絶対行きましょう今すぐ行きましょう!!」

 

「はいはい、わかったから走るなって、こけるぞー?」

 

大丈夫ですー!と元気いっぱいに返事をして俺の前をとてとて走っていった途中に盛大に転けたレイカが、涙目になって戻ってきたのでとりあえず頭を撫でる。

 

ーーあの後、結果的に言えばアルセリウスとハルトは撤退していった。

 

ハルトが最後にした質問、ニホンジンという言葉。その言葉にレイカの動きは目に見えて止まり、その間にハルトはアルセリウスを腰に抱えて撤退していった。……最後に、不敵な笑みを残したまま。

 

ハルトのあの確信したような笑み、ニホンジンという発言、そしてレイカの挙動。なんだろうか、ハルトのやつは、俺の知らないレイカの秘密を知っているというのだろうか。

 

「……魔王様?」

 

ワシャワシャと撫でていた手のひらからひょこっと顔を出し、こちらを心配そうに見つめてきたレイカの瞳がなんだか気恥ずかしくて、目をそらしてしまう。……なんだろうこの感情は。

 

ハルトは知っていて、俺は知らない『何か』がある。……結局俺は、レイカのことを、何一つ知らないのだと痛感した。




ちょっとごちゃごちゃしてしまいましたかね……時間ある時に整理していきたいとおもいます!

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