幼馴染が根源の姫だった件   作:ななせせせ

57 / 60
ご無沙汰しております。
ななほしてんとうとかななせとか名乗ってるナマモノです。
コミケがなくなったので原稿をやる気が起きず、ずっとだらだらしてしまうこの日この頃皆さまいかがお過ごしでしょうか。

周囲の大学生曰く外出自粛やらでとても暇だそうですね。僕は職場にテレワークが実装されたのでようやく暇な時間が出来ました。

あ、今回の僕の作業用BGMはバカサバイバーとWild challengerでした


4

 どろどろと。

 溶けた鉛みたいに重苦しいものが鳩尾の辺りに溜まっている。

 

 綾香のお蔭で多少紛れたとはいえ、あの女への感情が薄れるわけもなく。

 帰ってからもそれはずっと私の中に留まったままだ。

 

 

 ――ほんとに、あの(アマ)ァ……!!

 

 

 お兄様もお兄様だ。

 どうしてあの女を今になってもまだ引きずっているのか。

 こんな天才JK魔術師美少女が近くにいるというのに。

 

 

「……美沙夜? 帰っているのか?」

「お父さま?」

「ああ……今、入っても?」

「ええ、どうぞ……」

 

 

 珍しい。

 いつもなら夕飯の時まで部屋に籠って作業をしているか、次の聖杯戦争に備えて準備をしているのに。

 

 

「入るぞ」

 

 

 部屋に入ってきた父は少し顔を赤くしていた。

 僅かに漂ってくるのは酒の匂い。

 

 ……本当に、珍しい。

 ほとんど飲まないのに。

 

 

「それで、何か話があるんでしょう? 長くなりそうならお茶を……」

「いや、いい。一つだけ確認しておきたかったことがあったんだ」

「……?」

 

 

 真剣な顔だった。

 いつかの、聖杯戦争を思い出すような。

 嫌な予感……というほどではないにせよ、何かざわつくものがあった。

 

 

「――今でも彼のことが好きか?」

 

 

 だからこそ、その質問は鋭利な刃物のようで。

 思わず顔を背けそうになってしまう。

 

 ああ――なるほど。

 それは確かに素面ではいられない。

 

 

「……はい。この先何があっても、私が恋願うのはあの人だけです」

「……そうか」

 

 

 ……。

 そのまま、二人とも黙り込む。

 きっと今父の頭の中では計算がされているのだろう。

 

 やがて、何か重いものを吐き出すような溜息を一つ吐いて、玲瓏館の当主である父は口を開いた。

 

 

「――聖杯戦争が、始まる。前回は不完全に終わったが、今回は違う。絶対に儀式は完成させなければならない。……きっと多くの血が流れる」

「……はい」

「そしてそれは、玲瓏館であろうと例外ではない」

「……分かっています」

 

 

 きっと、もうお兄様と会うことを許してはもらえないだろう。

 魔力も持たないあの人は、どう考えたって狙われる。

 聖杯戦争に参加するのなら切り捨てるべき甘さ。

 いつかはそうなるかもしれないと、覚悟していた。

 

 していたはず、だった。

 ずきりと痛む胸を抑えて俯く私に父は決定的な一言を告げる。

 

 

「――だから、参加するのは私一人でいい」

「っ、それは!?」

「玲瓏館美沙夜、今日をもってお前を破門する。今後この家の敷地を跨ぐことは玲瓏館現当主の私が許さん」

「まっ、待ってください! 私は――」

「なにも聞く気はない。さっさと出ていけ」

 

 

 ……、

 

 

「あ、れ……?」

 

 

 一瞬の浮遊感。

 何か魔術を使用したのだろうという推測は出来ても何をされたのかまでは頭が回らない。

 混乱した思考が絡みついて身体もうまく動かず、視界がぼんやりと白く滲んで呼吸の仕方もよく分からない。

 

 

「どうし、て……っ?」

 

 

 私は玲瓏館(・・・)として育てられたのに。

 ぐちゃぐちゃの思考は「破門された」という事実だけが巡っている。

 自分のアイデンティティを根底から、それを作り上げた人に否定されたのだからそれも当然か、という諦念が滲む。

 

 小さく震える身体を抱きしめてふらふらと足を動かす。

 ばらばらになりそうな心を、身体に触れることでなんとか抑え込んでいるような感覚。

 まだ夏に差し掛かったくらいだというのに、恐ろしく寒い。

 まるで真冬――いや、それ以上に。

 

 

「お、お兄様……お兄様のところに、いけば……」

 

 

 今なら家にいるだろうから。

 あの人なら、何も言わずに私を抱きしめてくれるだろうから。

 もう私に残されているものはあの人しかいないから。

 

 それを邪魔するというのなら――

 

 

「っは、あっははは!!!! ……本気であの女になろうとしてるなんて、無様を通り越して滑稽よね」

 

 

 セミロングの金髪。

 青い瞳。

 薄緑のワンピース。

 

 それらは確かに記憶にあるあの女のそれと相違なく。

 だからこそ違いが気になって仕方がない。……特に胸。

 

 

「貴女のそういう所、本当に――反吐が出る程嫌いなのよ」

 

 

 だから、本気で殺り合いましょう――綾香。




唐突ですが僕の性癖を一つ暴露します。
女の子が泣き叫んだり放心してるときの絶望顔です。


……と、それはともかく玲瓏館父娘想いらしいからこれくらいは……まだ……ヘケッ
実際魔術師として考えたら後継をこんなあっさり捨てるような真似せんよなぁ……
独自設定……シナリオ崩壊……でも半ゾンビ美沙夜ちゃんとか僕くらいしか喜ばないだろうから……_(:3 」∠)_

あっ、多分混乱する人がいると思うので先に時系列をご説明しておきます。
Fate/prototypeの聖杯戦争が起きたのは1991年と1999年です。
今回玲瓏館父が言っているのは1999年の聖杯戦争になります。
色々推察した結果なので正確かどうかは微妙ですが、1999年時点で完全無敵根源接続系お姉ちゃんが23歳で、綾香が17歳……になるはずなんですよね。

第三部のメインヒロインは?

  • 沙条愛歌
  • 愛歌ちゃん様
  • 根源接続ラスボス系お姉ちゃん
  • 半ゾンビファブリーズ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。