もうなんかここに至ってキャラ崩壊という言葉に動じなくなった僕がいる
これが……大人になるってことか……
かつて、現代に生きていた頃――生前(?)というべきか――の私はよもやこんな事態になろうとは思っていなかった。
まあ、確かに夫は誰もが認めるイケメンクズ魔術師マーリンであるからして普通の人生が送れるなんて思ってもいなかったが。
「(死んだ目でキ〇ワイプを口にする)」
「ちょっ、待っ、お止めください
「ああっ、王太后様がご乱心に!!」
「おお……私は悲しい……このようなアンニュイ系美少女を隠されていたとは……」
「お久しぶりです、王太后様。それにしても相変わらずお美しい……あっいや、まだ何もしていないだろうマシュ⁉」
「これは……なるほど、確かに王の母に違いない……具体的にはその豊かな胸などが――」
「父上の母上ってことはつまり……祖母上か……?」
「(渋面で胃を抑える)」
周囲が美男美女で満たされている。
うち半数ほどが残念系の波動を放っているが、そんなものは関係ないのだ。
あまりにも存在感というかオーラが違い過ぎて消滅しそう。
座に帰りたい。
「これ祖母上が焼いたのか? 食ってもいい?」
「いいよ、好きなだけお食べ――もう食べてる」
カルデアに召喚されて一月。
私の霊基の本体とも言えるマーリンがクエストに行かせてくれないので、手慰みにアップルパイ(黄金の林檎使用)を焼いていたところだった。
アーちゃん(剣)がやってきて、それからアーちゃんオルタ(剣)もやってきて、そのあとにアーちゃん(槍)がきて……気付いたらこうなっていた。
いつの間にか増えてしまっていたアーちゃんたちが黙々とアップルパイを食べているところに円卓ーズが探しに来たんだっけか。
「
「アーちゃんはなんにも悪くないでしょ? それにアーちゃんと仲良くしてくれてた円卓の皆さんには一度ちゃんと挨拶しないといけないなとは思ってたんだから」
「それは……しかしこの後あのクズが……」
「はは……あ、トリスタンさんはそれ以上近づかないでいただけますか?」
「おお……私は悲しい……」
ランちゃんは昔(?)会ったこともあるからいいけど、トリスタンさんは生前(?)でも会ったことないし……正直ちょっと怖い。
「祖母上おかわり!」
「はいはい、ちょっと待ってねー」
「モードレッド、貴方は食べ過ぎだ!」
「うわぁっ父上⁉」
何やら後ろで愉快なことが起きているようだが、とりあえず追加で焼いてしまおう。きっとそろそろジャックちゃんとかナーサリーちゃんとか、あとジャンヌ(サンタ)とか来るだろうし。
それはそれとしてアーちゃんは後でお仕置きだ。
「モードレッド……モーちゃん……? モーちゃんはなんか牛みたいだな」
いい呼び方が思いつかない。
……いや、そんなすぐに決める必要もないか。
「多分、これから長い付き合いになるだろうし。そうだろ――マーリン?」
「気付いていたのかい?」
「他の男と話してる時にお前が傍にいなかったことがないからな」
そんなに心配しなくてもいいだろうに――⁉
「ちょっ、こん、な、んむっ……ちゅっ」
「いだだだだ⁉ そこに蹴りを入れるのはやめて⁉」
「アーちゃんとかがすぐそこにいるのに何するんだ⁉」
長年の積み重ねのせいでキスの一つで蕩ける身体になってしまったというのに。
これでは顔を出せないじゃないか。
「この変態! クズ! ハピエン厨!」
「いたたた、ごめっ……あ”っ⁉」
……はあ。
「……何でも筒抜けなんだからズルい。弱体化を要求する」
「それは聞けない相談だね……っと?」
ぽす、と。
「私はアーちゃんのこと、なんにも分かってあげられていなかったんだな」
「……それは」
「いいんだ。所詮私はちゃんとした母親でもなんでもない、赤の他人だから。あの子の母親代わりだなんだって言っても、そこはどうしようもない」
「……やれやれ。アルトリアも強情な娘だけど、君も大概だね」
「……うるさい」
私はアーちゃんの終わりも識っているから。
あそこに集まっていた円卓の騎士たちがどうなったのかも識っているから。
何一つ力になれず、話を聞くことしか出来ないこの身を呪うことしか出来ない。
「ありがとう。もう大丈夫」
「……行くのかい?」
「うん」
何度も同じところでぐるぐると悩んでうじうじと繰り返す自分が嫌になるが、それでも
けれど、この花の魔術師はそうやって私が落ち込んでいる時必ず傍で慰めてくれるのだから敵わない。
ちょっとうっとおしいときもあるけど、それはそれとして。
「――よし! とりあえず、娘の話をするとしよう……なんてな」
最初どこかにン我がママ王ゥ……っていうセリフを入れようかと思ってたんですけど、没にしました
第三部のメインヒロインは?
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沙条愛歌
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愛歌ちゃん様
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根源接続ラスボス系お姉ちゃん
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半ゾンビファブリーズ