幼馴染が根源の姫だった件   作:ななせせせ

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これで第二部完
短めです


エピローグ(トゥルー)

 ぱたぱたと慌ただしい足音が聞こえる。

 だから早く寝なさいって言ったのに……仕方のない子。

 

 半ば転がるようにして居間に飛び込んできたのは予想通り、二人目の娘。

 私譲りの金髪を一纏めにした活発な子だ。今年は受験の年だからと色々張り切っているみたいだった。

 まあ、それで寝坊しているところが、可愛らしい子だった。

 

 

「なんで起こしてくれなかったの!? 遅刻しちゃう!」

「三回くらい起こしたけど起きなかったって、みーくんが嘆いてたのよ?」

「みーくんんんん!! そこは頑張ってよぉぉぉぉ!!」

「うるせえ、みーくん言うな」

「あら、まだ出てなかったの?」

 

 

 もうとっくのとうに出かけたと思っていた長男がひょっこりと姿を現す。

 こちらは若い頃のお父さんにそっくりで、ほとんど彼の血をひいているのだろうと思われる子だ。唯一、目だけが私からの遺伝を現わしている。

 小脇にヘルメットを抱えているところを見ると、バイクで移動するつもりらしい。

 

 

「こいつ送っていかないといけないから」

「やたっ! お兄ちゃん大好き!」

 

 

 言いながらひしっと抱き着く妹をうっとおしそうに引き剥がしながら、みーくん――今年で22歳になる長男である――が私に顔を向ける。

 本当に若い頃の彼にそっくりでドキっとさせられることもしばしば。大丈夫かしら、変なのに付きまとわれてたりしそうで不安なのだけど。

 

 

「送った後に大学行くから」

「間に合うの?」

「今日は一限ないし、大丈夫だよ。それじゃ、行くぞ鈴歌」

「あっ、待ってよ!」

 

 

 我が家でも最も騒がしい子供が去ったのと入れ替わりに、一番大人しい子が入ってくる。

 まだ半分夢の中にいるかのような顔でふらふらとやってきたのは長女。

 

 

「おはよう恋歌。今日もお寝坊さんね。誰に似たのかしら」

「んー、お父さんかなぁ」

「あの人は早起きだから違うわ」

「じゃあおじいちゃん」

「そうね、それだわ」

 

 

 こんなに危なっかしい娘が生徒会長だったなんて。

 もう三年も前の話なのにちょっと信じられない。

 

 

「あれーみーくんはー?」

「鈴歌と一緒に出たけど?」

「酷いなーもー」

 

 

 これでもウチで一番優秀な魔術師なのだけど……本当に大丈夫かしらこの子。

 

 

「行ってきまーす」

「気をつけてね」

「ママもねー。じゃあ、お姉ちゃん行ってくるからねーまーくん」

 

 

 私がずっと抱っこしてあやしていた赤ん坊――沙条家十六人目の家族、まーくん――の額にキスをすると、そのまま姿を消してしまう。

 まあ、抜けているように見えてしっかりしている子だし、襲われても瀕死で止められるくらいには鍛えたし、大丈夫かな。

 

 それからしばらくすると、落ち着いた足音が聞こえてくる。

 歳を取っても、いえ、取ったからこそさらにかっこよくなった私の旦那様。

 

 

「はいあなた、お弁当」

「いつもありがとう。大変だろうし、作らなくてもいいんだぞ?」

「私が好きでしていることだからいいの。それより、時間は大丈夫なの?」

「あ、やべ。じゃあ行ってくる」

 

 

 玄関まで見送る、いつもの朝。

 力を使わなくたって、心の奥底の深い所で繋がっていることが分かる。

 どうしよう。毎朝のことだけど幸せ過ぎてどうにかなっちゃいそう。

 

 

「多分今日もいつも通りに帰ってくるけど、遅くなるようなら連絡入れるよ」

「分かったわ。行ってらっしゃい、あなた」

 

 

 何も言わずに、身体を寄せる。

 それだけで何を求めているのか察したらしい彼が苦笑する。

 仕方ないなぁなんて言いたげな表情のまま、そっと唇を重ねた。

 

 

「ん、んん……っぷは」

 

 

 時間にすれば30秒もない短い時間。

 それだけで、今日も一日頑張ろうと思える。

 気力は補充された。

 

 

「それじゃ、今度こそ行ってくるよ」

 

 

 私とまーくんの頭をそれぞれ一回ずつ撫でてから、彼も家を出る。

 

 昔は色んなことがあったけれど、今は特筆するようなこともない平凡な日々を送っている。

 胸元に揺れる安物のペンダントをそっと撫でて、家事をするべく部屋に戻る。

 

 

 

 

 ――今夜あたり、誘ってみようかしら。




グッドとトゥルーの違い?
数だよ

次の話は?

  • スイート
  • ノーマル
  • ビター
  • デーモンコア

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