幼馴染が根源の姫だった件   作:ななせせせ

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そういえば友人とエロゲを作ろうという話をしていまして
もしうまくいけば冬以降のコミケでサークル参加しているかもしれません

残念、この回では終わらなかった!


22

 いつだって世界はこんなはずじゃなかったことばかり。

 わたしが視ることの出来る未来だって、何かきっかけがあれば変わってしまう可能性がある。

 

 そういう意味ではわたしのこれ(未来視)はどちらかというと予測に近い。

 

 ……いつぞやもあったような気がするけど。

 具体的には小学校の時にもあったような気がするのだけど。

 その時も色々と振り回されたような気がする、というか振り回されたのだけど!

 

 

「ああぁぁぁぁ……きゃぁ!?」

 

 

 ベッドの上でゴロゴロと悶えていたらつい誤って落ちてしまった。

 別に痛くはないけど、ちょっと恥ずかしい。

 あれ、前もこんなことが……いえ、気のせいよね!

 

 

「うふ、うふふふ、あははは、あっははは!!」

 

 

 思わず、笑いながら両手を広げてくるくると回って踊る。

 たった一つの情景を視ただけだというのに、幸福感と全能感と優越感が溢れて仕方ない。

 今なら並行世界のわたしにだって勝ててしまいそう。

 

 何せ、遂に(・・)わたしたち(・・・・・)は結ばれる(・・・・・)のだから。

 

 今回ばかりは勘違いではないし、失敗も(多分)ない。

 だって――全裸で一緒に寝ているなんて、そんなの結ばれたとしか思えないでしょう?

 どういう流れでああなるのかは分からないけれど、それはあまり重要じゃない。

 ベッドイン。ベッドインなのだ。

 彼の全てを、綾香でもなく美沙夜ちゃんでもなくそのへんの有象無象でもない、このわたしが手に入れたということ。

 

 ……いえ。ちょっと落ち着きましょう。

 確かにあれはそういう関係に至ったとしか考えようがないけれど……ん? あれ?

 そういう関係(・・・・・・)っていうことはつまり、そういうことよね?

 

 どうしよう。どんな顔をして彼に会えばいいのか全く分からない。

 気を抜くとすぐに頬が緩んでだらしない笑みを浮かべそうになるし、かといって真面目な顔をして彼と会ったら変なことを口走ってしまいそうだし。

 

 ……えへへ。

 

 

 

 ……あ、とりあえず朝ごはんを用意しないと。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 朝食を食べたお父さんが二日酔いで痛む頭を抱えながら玲瓏館の家に向かったのを見届けて、お皿を洗い始める。

 何をしていても頭に浮かぶのは彼のことで――といっても大体いつもそうなんだけど、そういうことではなく――他のことを考えようとしても、どうにも集中できない。

 

 ……子供の名前は何がいいかしら。

 やっぱり彼の名前からとって海という字を入れたいところ――!

 

 

「お、おひゃ……おはよう。その、ご飯出来てるから」

 

 

 突然彼が出てきたことで変な声が出てしまった。

 というか、こんなに近づくまで気付かないなんて。ちょっとしっかりしないと何か失敗してしまうかも。

 

 ああ、でも。そんなことより、昨日のことを謝らなくちゃ。

 

 

「あー、うん。……おはよう。悪いな、作ってもらって」

「う、ううん。全然いいの」

「それでも、お前には感謝してるんだ。それは分かってほしい」

「え、ええ。分かってるわ」

 

 

 ……あれ? なんていうか、あまりにも普通の会話じゃない?

 昨日のことなんかなかったみたいに今まで通りというか。

 もしかして、そういうことなのかな。昨日の夜は何にもなかったっていうことで水に流してくれているとか。

 

 いえ、きっとそう。彼はとても優しいから。謝る必要なんてないと、そう思っているのかもしれない。

 

 ――思わず彼の前から逃げるように自分の部屋まで来てしまった。

 

 

「……駄目」

 

 

 一瞬。

 ほんの一瞬だけ、わたしよりも綾香や美沙夜ちゃんのような子の方が相応しいような気がして。

 

 

「……ダメ、それ以上は」

 

 

 彼を傷付けてしまうわたしなんかよりも、傍にいて守ってあげられるようなあの子たちなら。

 いえ、あの子たちでないと。

 

 

「……だめ」

 

 

 結局、わたしは壊すことしか――

 

 

「そんなことっ! って、これ……」

 

 

 変に冷静なところを残していたからか、彼が大荷物を持ってどこかへと移動しようとするのを知覚する。彼のことであればこの国から出たって分かる。

 間違いない、彼は逃げようとしている。

 

 何処へ?

 何で?

 何から?

 

 分からない。

 何も、分からない。

 

 ただわたしの中にあるのは深い悲しみと怒りとをぐちゃぐちゃに混ぜたナニカだった。

 

 

「う……う、うぅ」

 

 

 彼を追って逃げられない様に捕まえようか。

 その衝動の赴くままに全てを壊して、ただ一つの欲しいものだけを残そうか。

 それとも、この恋を諦めるべきか。

 

 

 相変わらず、わたしの中は荒れ狂っていて。

 何一つ考えの纏まっていないまま、家を飛び出した。




ちなみにこの先は3ルート分岐
うち一つは第三部妹たち編に繋がり、もう一つはバッドエンドに繋がり、最後は第一部最終話の流れへと繋がります

次の話は?

  • スイート
  • ノーマル
  • ビター
  • デーモンコア

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