このすばShort   作:ねむ井

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『祝福』5,6、『爆焔』1、既読推奨。
 時系列は、5巻の後。


このなんちゃってメイドに美味しい鍋を!

 紅魔の里から戻ってきて数日後。

 

「今夜は鍋とやらをやってみようと思うのだが……」

 

 俺が屋敷の広間でダラダラしていると、俺との取引でメイド服を着ているダクネスが、そんな事を言いだした。

 

「今日の夕飯当番はお前なんだから、好きな物を作ったらいいじゃないか。もう春なのに鍋ってどうなんだとか、メイドの格好してるくせに鍋かよとか、言いたい事はいろいろあるが、別に反対はしないよ」

「私にメイドの服を着ろと言ったのはお前だろうが! というか、メイドは鍋をやってはいけないのか? 何か作法でもあるのか?」

 

 世間知らずで、鍋料理についてもよく知らないらしいダクネスが、自分の格好を見下ろして不安そうな顔をする。

 

「そりゃ、メイド服で鍋なんて……、…………」

 

 ……あれっ?

 鍋といえば和食のイメージだし、メイドさんが作ると言われると違和感があるが、異世界で和風だとか洋風だとか言っても仕方がない。

 それによく考えてみると、メイドさんが作ってくれた鍋とか、すごく食べたい。

 

「何も問題はないな。いいんじゃないか、鍋」

 

 俺の言葉に、ダクネスがほっとした表情になる。

 

「そ、そうか。……それでだな、私は鍋というものを紅魔の里で初めて食べたんだ。作り方がよく分からないので、教えてくれないか?」

「構わんよ。何の鍋にするんだ? せっかくララティーナお嬢様が作るんだし、ここは豪勢にカニ鍋なんてどうだ?」

「メイドの格好をさせておいて、都合のいい時だけ貴族扱いするのはやめろ。……何の鍋と言われても。鍋というのは、めぐみんの家で食べたような料理の事ではないのか?」

「お前は本当に世間知らずだなあ……。鍋っていうのは、いろんな食材をぶちこんで煮るだけのお手軽料理の事だ。いろいろと種類があるんだよ。あの時は肉を入れたが、魚を入れる事もあるし、亀っぽいのを入れる事もある」

「か、亀? ……亀を食べるのか?」

「俺のいたところでは高級料理だったよ。それで、どうするんだ? まあ、鍋なんてベースをきちんと作れば、よっぽどの事がない限り失敗しないだろうし、好きな物を好きなだけ入れればいいと思うけどな。なんでもかんでも放りこむ闇鍋なんてのもあるくらいだ」

「そう言われても、何を入れればいいのか……。めぐみんの家でやった時のような感じで、肉と野菜を入れればいいのか? ええと、あの時の食材は……」

 

 ダクネスが記憶を辿るように目を瞑り、うんうん唸りだす。

 俺はそんなダクネスに。

 

「白菜を入れておけば、とりあえず鍋っぽくなるぞ。食材よりもダシが重要だな」

「そ、そうなのか? なんだか、聞けば聞くほど全然お手軽料理に思えなくなってくるな。カズマ、すまないが買い物についてきてくれないか? 私だけでは、間違った食材を買ってきてしまう気がする」

「ひとりでお遣いも出来ないとか、お前はどんだけ箱入り娘なの? そのメイドの格好は飾りなのか?」

「だから、私にメイドの格好をさせているのはお前だろうが!」

 

 買い物についてきてくれと言うのは世間知らずのダクネスでも恥ずかしいらしく、ダクネスが顔を赤くして声を上げる。

 買い物か。

 ……ふぅむ?

 

「そういや、めぐみんが何か買っておいてくれって言ってたな。何を買えばいいのかはよく覚えてないが、商店街に行けば思いだすだろ。旅行から帰ってきたばかりだから食糧庫に空きがあるし、一緒に行って多めに食材を買い足す事にするか。いろいろな食材を買ってきて、鍋に入れるのも面白そうだしな」

「すまないなカズマ。助かる」

 

 そう言って微笑むダクネスに、俺は。

 

「よし、行こうか。家事をやるんだから、もちろんメイドの格好のままだよな?」

「それだけは断る」

 

 わがままなダクネスが普段着に着替えるまで、俺はしばらく待つ事になった。

 

 

 *****

 

 

「まずはダシに使う食材を買おう。とりあえず、ダシと白菜があれば鍋っぽくなるはずだ」

 

 肉屋や八百屋など、食料を扱う店が軒を連ねる区画で、俺はきょろきょろしているダクネスにそう提案する。

 

「ダシというと、鶏ガラや豚骨だろう? それくらいは私にも分かる」

「そういうのもあるが、そっちは俺がよく分からないな。鶏ガラだの豚骨だのは、ラーメンのスープとか、中華スープに使うくらいしか分からん」

「……? なら、カズマが知っているダシを取る食材とはなんだ?」

「大体海産物だな。かつお節とか、昆布とかにぼしとか」

「どれも聞いた事のないものばかりだな」

「俺のいたところでは普通に使ってたんだけどな。ひょっとすると、こっちにはないかもしれん」

 

 ダクネスとそんな話をしながら歩いていると、店頭に並べられていたあるものが目に入る。

 黒っぽくて平べったいそれは……。

 

「おっ! これだよ。なんだ、こっちにも昆布はあるんじゃないか」

 

 そう。昆布である。

 

「昆布? それは……?」

 

 見た目は食べ物っぽくない昆布を、ダクネスが眉間にしわを寄せじっと見つめる。

 

「海藻だよ。海の底でゆらゆら揺れてるやつだ。これで鍋の汁のダシを取るんだ」

 

 と、俺がダクネスに説明していると、店主のおっちゃんが苦笑しながら。

 

「おいおいお客さん。いくらそっちのお嬢さんが世間知らずだからって、そんな大嘘を教えちゃいかんよ」

「「!?」」

 

 おっちゃんの言葉に、俺が驚愕しておっちゃんを見て、ダクネスがそんな俺を見る。

 いや、ちょっと待て。

 俺は嘘なんてひとつも……。

 

「昆布でダシを取るってのはその通りだが、海の底でゆらゆら揺れてるだなんて、冗談じゃない。昆布ってのは、空を飛び回って、近くにいる生き物の口に巻きついて窒息させるっていう、危険なやつだよ。毎年、昆布取り職人の中から犠牲者が出るくらいだ。ダシを取る時は、鍋に蓋をして、重しを置くのを忘れないようにな」

「…………」

 

 ダクネスの俺に向ける目が、からかっていたのかと責めるようなものに……。

 ……もうやだこの世界。

 

 

 

 俺とダクネスが、鍋に使う食材を買い集め、そろそろ帰ろうかと話しながら歩いていると。

 ――そこは商店街の端にある雑貨屋。

 その雑貨屋の前に、見覚えのあるくすんだ金髪と、透き通る水色の髪の持ち主が見える。

 店の前だというのに、酒を飲んで騒いでいる二人は。

 

「あははははは! あなた、なかなか話が分かるじゃない! そうなのよ! エリスったら、大人しそうな顔してるけど、昔は結構やんちゃしてたんだから!」

「そうかいそうかい。俺は昔から、そうなんじゃないかって思ってたぜ! エリスの胸は乳パッド入りだし、お前さんは女神アクアだってんだろ? 考えてみりゃ、そんなすごい相手と一度だけでもパーティーを組んだなんて、街中の奴らに自慢できるな!」

「いいわよ! 末代まで語り継ぎなさいな! やっぱり分かる人には分かるのね! ねえ、あなたはカズマと仲がいいみたいだし、あのクソニートにも私の偉大さを教えてあげてよ!」

「そ、それは……。げっ!」

 

 アクアの言葉に、少しだけ気まずそうに目を逸らしたダストが、俺とダクネスに気づく。

 アクアとダストの周りには、空の酒瓶がいくつも転がっている。

 ……ダストが、アクアを調子に乗らせ、酒を奢らせていたらしい。

 

「お、お前達は真っ昼間からこんなところで何をやっているんだ……」

「何よ! 今はこの人と楽しくお酒を飲んでるところなんだから、邪魔しないでよ!」

 

 呆れたようなダクネスの言葉に、アクアが頬を膨らませる。

 

「別に邪魔をするつもりはないが、こんなところで酒を飲んでいたら、店の主人に迷惑が掛かるのではないか?」

「ダクネスったら何を言ってるの? お店のおじさんだったら、とっくに酔いつぶれてお店の奥で寝てるわよ」

「市民に迷惑を掛けるのはやめろ! 彼らには彼らの生活がある。お前達みたいに、毎日遊び歩いているわけではないんだぞ」

 

 説教を始めたダクネスに、アクアが耳を塞いで聞こえない振りをする中。

 ダストがニヤニヤしながら。

 

「ようカズマ。お前んとこの女神に世話になってるぞ」

「お前、あいつをあんまり調子に乗らせるのはやめろよな。屋敷に帰ってきてから面倒くさいんだよ」

「俺は何ひとつ嘘はついてない。酒を奢ってくれるんだったら、俺にとっては誰だって女神様なんだよ。お前さんも俺に祈りを捧げてほしけりゃ、夕飯でも奢ってくれよ。ここんところ、ロクなクエストがなくて金がねーんだ」

「嘘吐け。リーンがこないだ、ゴブリン討伐に行ったのにお前が格好つけて前に出て、滑って転んで役に立たなかったから、討伐報酬を減らしてやったって言ってたぞ」

「あの女! ……いや待て。お前も誤解されやすいタイプだから分かるだろ? こういう場合、一方の言い分だけ聞いて判断するのは不公平ってもんだ。俺はあえて派手な動きでゴブリンの注意を惹きつける事で、仲間がゴブリンを討伐するチャンスを作ってやったんだよ。リーンの奴は後衛だから、そういう集団戦の立ち回りってのが分かってねーんだ」

 

 ……リーンは、ゴブリンにタコ殴りにされたダストが、助けてくれと泣きだしたとも言っていたが。

 

「まあ、今夜は鍋の予定だし、ひとりくらい増えてもどうって事ないと思うけどな」

 

 俺が何気なくそう言うと、ダストはその場に跪いて俺に祈りを捧げだした。

 コイツにはプライドってもんがないのか。

 

 

 *****

 

 

 アクアとダストが酒やつまみを買いこんでくると言うので、先に屋敷に帰ってきた俺達は、早速鍋の準備を始める。

 

「その前に、料理をするんだから、お前はメイド服に着替えてこいよ」

「……!? ま、待ってくれ。これは普通に料理当番なのだから、メイドごっことは違うだろう? せっかく私のために用意してくれたメイド服を汚すわけにはいかないし、普段着のままでもいいのではないか?」

「はあー? 家事をやるんだからメイド服に決まってるだろ。本当なら買い物だってあの格好で行かせるところを譲歩してやったんだ。うだうだ言ってないで、さっさと着替えてこいよ。それとも、お姫様の前で俺のKIMONO姿をお披露目してもいいのか?」

「くっ……! お、お前という奴は……! しかし、無理やり恥ずかしい格好をさせられると思うと、これはこれで悪くはないと思ってしまう私は、もう駄目なのだろうか?」

「お前は出会った時から駄目だったよ」

 

 ダクネスがメイド服に着替えるために自分の部屋へ行っている間、俺は台所に取り残される。

 今日の料理当番はダクネスだが、鍋の作り方を知らないらしいし、少しくらい手伝ってやってもいいだろう。

 俺が鍋に水を入れ、そこに昆布を浸すと……。

 水に濡れて元気になった昆布が鍋から飛びあがり、ものすごい速さで台所を飛び回ったかと思うと、俺の顔に張りついた。

 

「むが……!?」

 

 濡れた昆布に口と鼻を覆われ、呼吸が出来ない。

 力ずくで引き剥がそうにも、昆布はぴったりと張りついていて剥がれない。

 そういえば、昆布を売っていた店のおっちゃんが、毎年昆布取り職人の中から犠牲者が出ると言っていた。

 クソ、いくらなんでも、昆布なんかに殺されるわけには……!

 しかし、この状況で初級魔法は役に立たないし、スティールも自分自身を対象には出来ないようだ。

 何か、何か他に手は……?

 呼吸が出来ないせいで、頭がぼーっとしてくる。

 マズい。

 これは本当にマズい。

 意識が遠ざかっていき、やがて何も考えられなくなって……。

 …………。

 

「カズマ! おいカズマ! 返事をしろ!」

 

 ……気が付くと、俺は台所の床に仰向けになっていた。

 メイド服姿のダクネスが、必死そうな表情で何か言っている。

 昆布に巻きつかれ意識を失った俺を、着替えて戻ってきたダクネスが助けてくれたらしい。

 

「カズマ? 目が覚めたのか? 呼吸は苦しくないか?」

「お、おう……。マジで死ぬかと思った。助かったよ」

 

 立ち上がると少しふらつくが、問題はない。

 

「まったく! 人を世間知らずと言っていたくせに何をやっているんだ。食材の生死の確認は基本中の基本だぞ。食材に反撃されて死にかけるとは、お前は本当に鍋を作った事があるのか?」

「俺のいたところでは、食材に反撃される事なんてなかったんだよ」

 

 ダクネスが握りしめていた昆布を鍋に戻し、きちんと蓋をして重しを置く。

 昆布が飛びだそうと暴れているらしく、蓋に内側からぶつかる音が聞こえていたが、しばらくするとそれも静かになり。

 

「……ん。次はどうすればいい?」

 

 ダクネスが、食材の生死を慎重に確認しながら俺に尋ねる。

 

「そうだな、食材をひと口サイズに切っておくか」

 

 俺はダクネスが生死を確認した食材を切っていく。

 切った食材を大きな皿に並べていると、俺の横で食材を切っていたダクネスが不思議そうな顔をして。

 

「切った食材は、皿ではなくてこっちのボウルにでも入れておいた方がいいのではないか?」

「せっかくだし、お前に本物の鍋ってやつを食わせてやろうと思ってな。食卓に鍋を置いて火に掛けて、そこに食材を入れるのが本物の鍋ってもんだ。食卓に置くなら、ボウルより皿に食材を並べておいた方がいいだろ?」

「な、なるほど。確かに、貴族の夜会なんかでも、そういった趣向の料理はある」

 

 俺の言葉に、ダクネスが納得したようにコクコクとうなずいていた。

 

 

 

「――というわけで、今夜は鍋だ」

 

 テーブルを囲んで、ダクネスがそんな宣言をする。

 テーブルの真ん中には、冒険者用の簡易コンロに乗せられた鍋が置かれ、その周りには切った食材を並べた皿がある。

 

「ぶははははは! おいおい、ララティーナお嬢様。貴族令嬢からメイドに転職したのかよ? おう、酌しろやメイド! 酒だ酒! 酒持ってこい!」

「私も私も! お酒持ってこーい!」

「う、うるさいぞ! 引っ叩かれたいのかお前は! アクアも一緒になって騒ぐのはやめろ!」

 

 すでに酔っ払っているダストが、メイド服を着たダクネスに絡み、アクアが一緒になって騒いでダクネスを怒らせる中。

 めぐみんが目をキラキラさせて。

 

「ほう! 鍋ですか。いいですね、とりあえずなんでもかんでも煮ておけば食べられるようになるので、紅魔の里にいた頃はよく食べていました。まあ、固形物が入っている事はあまりありませんでしたが……」

「そ、そうか。今日は好きなだけ食べてくれ」

 

 コメントに困る事を言うめぐみんに、ダクネスが苦笑しながら食材を鍋に入れようとすると。

 

「あっ、駄目ですよダクネス。それはすぐに火が通ってしまうので、後で入れましょう。最初に入れるのはもっと硬そうなやつにしてくださいよ」

「か、硬そうなやつと言われても。……これか?」

「いえ、そうではなくて……。まどろっこしいので、菜箸を貸してください」

「す、すまない」

 

 ダクネスから菜箸を取り上げためぐみんが、手際よく食材を鍋に入れていく。

 ダクネスが困った顔で俺を見てくるが、めぐみんに任せておいた方がおいしい鍋を食べられそうなので放っておこう。

 と、そんなダクネスにアクアが。

 

「ねえダクネス。今日の食事当番はダクネスなのに、めぐみんが鍋を作ってくれてるし、なんにもしてないダクネスは台所からお酒を取ってきてくれないかしら? 棚の奥に、とっておきのお酒を隠してあるのよ! 今日は気分がいいから、あれを開けちゃいましょう! ほら、早くしてー、早くしてー」

「わ、私だって、買い物に行ったり、食材の下拵えもしたし、何もしていないわけではないのだが……!」

 

 アクアの言葉にダクネスが抗議するも。

 

「あ、ダクネス。台所に行くのなら、ついでに柚子を取ってきてください。香りづけに使うと美味しくなりますよ」

 

 めぐみんにまで言われ、ションボリと肩を落として台所へ行く。

 鍋を作るのは初めてだと張り切っていたのに、気の毒に……。

 俺がダクネスの煤けた背中を見送っていると、酔っ払ったチンピラが。

 

「おうカズマ! メイドなんか放っておいて、お前さんも飲め飲め!」

 

 何が楽しいのかゲラゲラ笑いながら、俺に酒の入ったカップを突きだしてくる。

 

「そうだな。鍋が煮えるまでまだ時間が掛かるだろうし、やる事もないから俺も飲もうかな」

 

 俺はダストからカップを受け取って……!

 

 

 

 ――数分後。

 

「ど、どうしてこうなった……?」

 

 酒を持って台所から戻ってきたダクネスが、俺達を見て呆然とする。

 ダストが持ってきたのがよほど強い酒だったのか、酔っ払いの放つ気に当てられたのか、あっという間に酔っ払った俺は。

 

「おっ、来たなエロメイド! ほら、そんなとこに突っ立ってないで、早くこっちに来て酒を注いでくれよ」

「カ、カズマ? 言っている事が、そこのチンピラとほとんど変わらないのはどうかと思うぞ」

 

 俺を見て嫌そうな顔をするダクネスに、引き合いに出されたチンピラが文句を言う。

 

「あん? おいララティーナ。メイドのくせにご主人様の言う事が聞けねーってか? お仕置きだな。これはお仕置きが必要だ。そこで三遍回ってワンと鳴け!」

「いいぞララティーナ! スカートをひらっとさせるのを忘れるな!」

「お、お前達は私をなんだと思ってるんだ? というか、ララティーナと呼ぶのはやめろ!」

「ダクネスったら! この私を差し置いて芸をするつもりなの? いくらメイドさんの格好をしているからって、やっていい事と悪い事があると思うの」

「アクアまで何を言っているんだ! お前達はメイドというものを誤解している!」

 

 と、俺達がダクネスにバカな要求をしていると、鍋を真剣な表情で見つめていためぐみんが。

 

「出来ましたよー。ほら、早く鍋から出さないと、食べ頃を逃してしまいますよ! お酒なんか後にしてください!」

 

 なんという鍋奉行。

 めぐみんの勢いに俺達がついていけないでいる間に、めぐみんが俺達の取り皿に煮立った食材を入れてくる。

 

「ありがとうめぐみん。……ああ、これは美味いな」

 

 ダクネスが、入れられた食材を素直に食べる中。

 アクアがいきなり立ち上がり、決然とした表情で。

 

「鍋に芸と言えばこれしかないわね! 私だって、宴会芸スキルを極めた者! ダチョウさんの名人芸にだって負けるつもりはないわ! さあカズマ! 心の準備は出来ているから、いつでも来なさいな! ほら、早くしてー、早くしてー」

 

 熱々の食材を顔に押しつけられて熱がるという、ダチョウさんのリアクション芸。

 あの名人芸を見せようと、アクアが俺の方に顔を近づけてくるが……。

 

「お前は何を言ってんの? ああいうのは、嫌がらない相手にやったって仕方ないだろ。それに、この手の芸にもっと向いてる奴がいるじゃないか」

 

 俺とアクアは、アクアの言葉の意味が分からず、きょとんとしているダクネスを見る。

 

「な、なんだ? これ以上、私に何をやらせるつもりだ?」

「そんな事より、さっさと食べてほしいのですが……」

 

 自分が監督した鍋が食べ頃を失うのが許せないらしく、文句を言うめぐみんを、俺は気にも留めず。

 箸でつまんだ大根を、ダクネスに近づけていく。

 

「カ、カズマ? 急にどうしたんだ? こ、これは……! これはいわゆる『あーん』というやつか……!? そ、そういう事はもっと人目のないところで……!」

 

 なぜか頬を赤くするダクネスの鼻に、俺は熱々の大根を押しつけて――!

 

「熱ッ!? 貴様、いきなり何をする!」

 

 いきり立つダクネスに、俺とダストが爆笑する中、アクアが悔しそうに頬を膨らませていた。

 

「……そうね。悔しいけど、コレに関しては私よりもダクネスの方が上手かもしれないわね。いいわダクネス。あなたに【上島さんの生まれ変わり】の称号を授けてあげましょう」

「上島さんはまだ死んでないだろ」

 

 

 

「め、めぐみん。今日の料理当番は私だし、私も食材を入れる役をやりたいのだが」

「駄目ですよ。食材を入れる順番も分からないダクネスに、隣同士にすると味が移ってしまう食材や、先に入れてしまうと鍋全体の味が変わってしまう食材の事が分かるんですか?」

 

 食材を入れる役を代わってほしいと提案したダクネスが、鍋奉行と化しためぐみんに一瞬で黙らされる。

 

「……食材を入れる役を代わってほしいというのは、それほど大それた願いなのだろうか?」

 

 めぐみんに交代を断られたダクネスが、ションボリした様子で俺に聞いてくる。

 そんなダクネスに俺は。

 

「あひゃひゃひゃひゃ、うけるー」

「お、お前という奴は……!」

「まあ、今のめぐみんは止められないし、美味しい鍋が食べられるんだからいいじゃないか。落ち込んでないで、次のが煮えるまでお前も酒でも飲んでろよ」

「い、いや……。遠慮しておこう。この状況で私まで酔っ払うと収拾がつかなくなりそうだ」

 

 ダクネスの視線の先では、ダクネスのリアクション芸に対抗意識を燃やしたアクアが、次々と宴会芸を披露し、それにダストが笑い転げている。

 と、ひと通り芸を披露して気が済んだのか、アクアはめぐみんが見守っている鍋に白滝を投入しようとする。

 

「アクア! 一度に食材をたくさん入れると、鍋の中の温度が下がるのでやめてください! 今は食材を入れたばかりなので、少し待っていてくださいよ!」

「何よ! めぐみんのけちんぼ! 私は今、とっても白滝を食べたい気分なの!」

「白滝ならさっき煮えてたではないですか。どうしてあの時に食べなかったのですか? 誰も食べないからと、ダクネスがひとりで大量の白滝を食べたんですよ」

「さっきは白滝の気分じゃなかったんだから、しょうがないじゃない」

「ああもう! この酔っ払いは! 今煮てるやつが仕上がったら、次は白滝を入れてあげるので待っていてください。ほら、アクアの好きなカエル肉もありますよ」

「えー? カエルなら唐揚げが食べたいんですけど」

「それ以上わがままを言うつもりなら、生のままの白滝を口に詰めこみますよ!」

 

 荒ぶるめぐみんに恐れをなしたのか、アクアがすごすごと退散する。

 

「大変だわカズマ。めぐみんが反抗期よ。このままじゃ、カズマの服と一緒に洗濯するなとか、カズマの入った後のお風呂には入りたくないとか、最近カズマが臭いとか言って、ちょっと面倒くさい事になるに違いないわ」

「言っておくが、俺はめぐみんのお父さんじゃないからな。というか、あいつにはちゃんとしてない親父さんがいるだろ」

「それなら反抗期もしょうがないわね」

「おい、うちの父をちゃんとしてない扱いするのはやめてもらおうか! 確かに父が変てこな魔道具ばかり作っているせいでうちは貧乏ですが、人から言われるとイラっとするんですよ!」

 

 口々に好き勝手な事を言う俺とアクアに、めぐみんが声を上げる。

 と、そんな中。

 めぐみんの注意が俺達に向いた隙に、ダストが鍋の中を勝手に掻きまわしながら。

 

「なあ、頭のおかしいの。お前ら、魔王の幹部や大物賞金首を討伐して、めちゃくちゃ儲けてるんじゃないのかよ? カエル肉や白滝なんかじゃなくて、もっと高級なもんを入れろよ。霜降り赤ガニとか、極楽ふぐとかねーのか?」

「ちょっ!? 自分用の箸を鍋に突っ込むのはマナー違反ですよ! というか、私の事を頭のおかしい爆裂娘と呼ぶのはいいですが、その略し方はやめてください! さもなくば、いかに私の頭がおかしいのかを思い知る事になりますよ!」

「けちけちしねーでカニ食わせろや!」

「ああもう! 誰ですかこのチンピラを連れてきたのは!」

 

 荒ぶるめぐみんをものともせずに、鍋をつつきまわすダスト。

 そんなダストの様子に、アクアが感心したように。

 

「やるわねあのチンピラ。目を紅く輝かせているめぐみんを相手に、一歩も引かないわ! ねえめぐみん、私も白滝よりカニが食べたいんですけど!」

「そんなもんあるわけないでしょう!」

 

 ダストが引かない事で調子に乗ったアクアが、めぐみんに一喝されションボリする。

 

「カニもねーのかよ! ちっ! しけてやがんな!」

「ねえカズマ。この私のために、カニを買ってくる栄誉を与えるわ!」

「おいお前らいい加減にしろ」

 

 酔っ払って勝手な事ばかり言う二人に、俺は毅然と。

 

「俺はふぐを食べたい」

 

 そんな俺達に、目を紅く輝かせためぐみんが。

 

「この酔っ払いども!」

 

 

 *****

 

 

 俺達が鍋と酒を楽しんでいた、そんな時。

 広間の照明がチラチラと瞬くと、明かりが消えて急に真っ暗になった。

 

「おっ? なんだなんだ? 停電か?」

「照明の魔道具が壊れたみたいですね。部品が劣化しているのは分かっていましたし、そろそろだと思ってました。カズマ、替えの魔道具はどこに置いてあるんですか?」

「……? 替えの魔道具なんてもんがあるのか?」

「そろそろ交換しないといけないから、買っておいてほしいと言ったではないですか」

 

 あっ……。

 

「すまん、忘れてた。そういや、めぐみんに何か買っておいてくれって言われてたから、ダクネスの買いだしに付き合ったんだった」

 

 という事は、真っ暗な中で鍋を食わないといけないのか?

 それって……。

 

「……闇鍋」

 

 ボソッと呟いた俺のひと言に、アクアが。

 

「いいわね! こんなタイミングで明かりが消えるなんて、これは闇鍋をする流れに違いないわ! 水の女神としては、このビッグウェーブに乗るしかないと思うんですけど!」

「ぶははははは、いいぞ女神! 俺も手伝ってやろうじゃねーか!」

 

 乗り気のアクアに、ダストがすかさず続く。

 

「あ、あなた達は何をバカな事を言っているんですか? そんな事をしたら、鍋がめちゃくちゃになるじゃないですか!」

 

 めぐみんが制止するも、酔っ払いの勢いは止まらず、鍋にどばどばと何かが投入されていく。

 真っ暗な中、めぐみんの目が紅く輝くのに、ダクネスが慌てて立ち上がり。

 

「ちょっと待て! 今、ランタンを持ってくる! あ痛!」

 

 暗くて何も見えないらしく、家具につまずいて転びながらもダクネスがランタンを取りに行き。

 

「早く! 早くしてくださいダクネス! 私の鍋が大変な事に!」

 

 ――ダクネスがランタンを手にして戻ってくる頃には。

 

「あひゃひゃひゃひゃ、なんだコレ! 面白いな闇鍋!」

「あははははは! なんだか楽しくなってきたんですけど! ねえ、もう他に余ってる食材はないの? もっとたくさん入れたいんですけど!」

「いい加減にしてください! せっかく美味しい鍋だったのに、台無しですよ!」

「そんなに怒るなよロリっ子。そんなだから、お前さんは胸が育たないんだよ」

「ぶっ殺!」

 

 俺とアクアが上機嫌で食材を次々投入する中、怒り心頭のめぐみんが、さらに煽られダストに襲いかかっている。

 

「な、なんだこの臭いは! おいお前達、一体何を入れたんだ!」

 

 そんなところに戻ってきたダクネスが、テーブルにランタンを置くと……。

 ランタンの明かりに照らしだされたのは、いろいろな食材が大量に放りこまれ、透明だったスープが黒っぽく濁った鍋。

 ぐつぐつと煮立つ鍋の表面で泡が弾けると、辺りに異臭が漂う。

 

「「「「「…………」」」」」

 

 調子に乗っていた酔っ払いさえもドン引きし、静かになる中。

 めぐみんがおたまを鍋に突っこんだ。

 

「入れてしまったものは仕方ありません。美味しくはないでしょうが、せめて楽しく食べようではないですか。闇鍋というのはそういうものなんでしょう? 不味いものを不味いと言い合いながら食べるのも、たまには悪くないかもしれません」

「「「!?」」」

「た、食べるのか? これを食べるのか?」

 

 めぐみんの言葉に、食材を放りこんだ俺とアクア、ダストが驚愕の表情を浮かべ、ダクネスがオロオロとうろたえる。

 

「当たり前ですよ。闇鍋とか言って鍋を台無しにした挙句、美味しくないものが出来たからといって食材を無駄にするようなら、そんな愚か者には我が爆裂魔法でも生温いでしょうね!」

 

 食べ物を無駄にするという事に怒り、目を真っ赤にしているめぐみん。

 紅魔の里ではまともに食べられない生活を送っていたというめぐみんは、食べ物を無駄にする事が許せないらしい。

 自分のしでかした事に今さら気づいたらしいアクアが、青い顔で。

 

「ね、ねえめぐみん。これを食べるっていうのはどうかと思うの。絶対に美味しくないし、こんなの食べたらお腹を壊すんじゃないかしら? ほら、冒険者って体が資本なところがあるでしょう? 凄腕冒険者の私としては、こんなバカな事で体調を崩すわけにはいかないと思うの」

「何かあってもアクアの治癒魔法があるから心配いりませんよ。それに、アクアは羽衣の効果で状態異常に掛からないでしょう?」

「どどど、どうしましょうカズマさん! 私があまりにも有能なせいでピンチだわ!」

「おおお、落ち着けアクア。まだ慌てるような時間じゃないはずだ」

 

 俺とアクアが慌てる中、ダストが落ち着いた口調で。

 

「……ふう、食った食った! ごちそうさん! それじゃ、長居するのも悪いし、俺はここらで帰る事にするわ」

「いやふざけんな! お前だって鍋にいろいろ入れてたくせに、ひとりだけ逃げようとしてんじゃねえ!」

「そうよ! あんたがいなくなると、その分私の食べる量が増えるじゃない!」

「おい放せ! 冗談じゃねーぞ! あんなもん、人間の食うもんじゃねーだろ!」

 

 帰ろうとするダストを、二人掛かりで押さえつけていると。

 

「出来ましたよー」

 

 めぐみんが俺達の席の前に、よく分からないものがたっぷりと盛られた取り皿を置く。

 

「ほら、三人とも。座って食べてくださいよ。せっかくの闇鍋が冷めてしまいますよ」

 

 めぐみんに促されるままに、俺達は椅子に腰を下ろし……。

 

「うっ! おいコレ何入れたんだよ! 超臭いぞ!」

「ごぽって言ったわ! ねえコレ、食材が出しちゃいけない系の音を出してるんですけど!」

「畜生! やっぱりここに来たのがマズかったんだ! こいつらに関わった俺がバカだった!」

 

 と、俺は素晴らしい事を思いついた。

 

「おいアクア。今こそお前の体質が役に立つ時だ! このどす黒いスープに指を突っこんで水にしちまえ。そうすりゃ、どうにか食べられるようになるはずだ」

「おお! さすがねカズマさん! 狡すっからい事を思いつかせたら右に出る者はいないわね! 任せなさいな! この変てこスープを女神の力で浄化してあげるわ!」

 

 アクアがスープに指を突っこむと……。

 …………。

 

「……なんにも変わらないんですけど」

 

 えっ。

 

 …………えっ?

 

「なあ、ちょっと待ってくれ。コレって本当に、何が入ってんの? ハンスの毒でさえ浄化したアクアの浄化が効かないって、そんなもん口にして俺達は大丈夫なのか?」

「なんだなんだ? ひょっとして食ったら死ぬ系のもんでも入ってるのか? そりゃさすがに捨てちまった方がいいんじゃねーか? 俺達は生きるために食うんであって、食って死ぬなんて、逆に食いもんへの冒涜ってやつだと俺は思うぞ」

 

 ダストがめぐみんを説得しようと屁理屈を言うも。

 

「アクアが浄化できないものと言うと、私が知っている限りではカエルの粘液とかではないですか? あれなら口に入れても死ぬわけではないですから、心配いりませんよ」

「いや、待ってくれ。なんでカエルの粘液なんてもんが食卓に並んでるんだよ?」

 

 俺のもっともな疑問に、ダクネスが恐る恐るといった様子で口を開く。

 

「あれはやはり、食べ物ではなかったのか? す、すまない。その、鍋というのは何を放りこんでも美味しく食べられるという話だったから、とりあえず買ってきたものをテーブルに並べておいたのだが」

「お前のせいか! カエルの粘液なんか食べられるわけないだろ! あれはただ、一緒に買うと他の食材も安くしてくれるって言うから買ってきただけの、廃棄品だよ!」

 

『切り傷が治るガマの粘液!』とかいう話で売りこまれ、それなりの量を買いこんだのにさっぱり売れないと、店主に泣きつかれたのだ。

 

「そ、そうだったのか……?」

「まったく! お前はどこまで世間知らずなんだよ! これは責任を取ってお前が食え!」

 

 俺がダクネスに取り皿を押しつけていると。

 

「何を言っているんですか? これは皆で食べるに決まっているでしょう」

 

 めぐみんが俺の前に新たな皿を置く。

 ……クソ、逃げられない!

 自分の取り皿にもしっかりとよそっためぐみんは。

 

「私の目の前で食材を無駄にする事は許しません。これ以上駄々を捏ねるようであれば、明日は皆で爆裂散歩に行く事になりますよ。その時は、ダクネスも一緒にお願いしますね。私を背負って帰る人がいないと困りますから」

 

 何それ怖い。

 俺達を爆裂魔法の的にすると言うめぐみんに、恐れをなしたアクアが震えながら。

 

「……ヤバいんですけど! 目がマジなんですけど! 私の曇りなき眼で見たところ、完全に本気で言ってるんですけど!」

「お、おう。お前の目は節穴だが、めぐみんがマジなのは俺にも分かる。まあ、めぐみんは食うにも困る子供時代を過ごしてたらしいし、そんなめぐみんの前で、食べ物でバカな事をした俺達が悪かったよ。ここは大人しく食っておこう」

「そう言って誰かが口を付けるのを待ってるのはどうかと思うんですけど!」

 

 俺とアクアが言い争う中、めぐみんが最初に皿に箸をつけて……。

 

「ど、どうだ?」

「危なそうだったらすぐに言ってね! とっておきのヒールを掛けてあげるわ!」 

 

 全員の視線を集め、めぐみんは居心地悪そうにもごもごと口を動かしながら。

 

「その、普通ですね。美味しくはありませんが、言うほど不味くもないです」

 

 そんなめぐみんの言葉に、ダクネスが恐る恐る鍋を口にして。

 

「……た、確かに普通だ」

 

 マ、マジで?

 予想外のリアクションを見せる二人に、この状況を作った俺とアクア、ダストが、それぞれの様子を窺い合いながら同時に鍋を口にする。

 ……味は普通だった。

 めぐみんの言うとおり、美味しくはないが不味くもない、普通の鍋だ。

 

「普通ね。なんていうか、ダクネスの料理みたいね」

「!?」

 

 アクアのコメントに、ダクネスがショックを受けたような表情になる。

 そんなダクネスにダストが。

 

「おいおい、お前さんは貴族だったりメイドだったりするくせに、こんな気持ち悪い料理を作るのか? まあ、食えなくもねーけどな」

「ちちち、ちがー! 私の料理はもっと普通の……!」

 

 ダクネスがなんか騒いでいるが、俺達は黙って鍋を食べる。

 

「……いや、なんだコレ。こんな見るからに口に入れちゃ駄目な系の見た目してるのに、味は普通っておかしいだろ。こういう場合、ダクネスとかが食べてあまりの不味さの倒れるってのがお約束じゃないのか?」

「わ、私がか!? 勝手な事を言うな! 不味くないのならいいではないか!」

「闇鍋って、もっと楽しい感じになると思ってたわ! こんなに盛り上がらないんだったら、美味しい鍋が食べたかったんですけど!」

「わがままを言うな! というか、止めたのに勝手に変な食材を入れたのはお前達だろう!」

 

 ……それはそうだが。

 なんていうか、食えないくらい不味かったらもっと盛り上がったと思うのだが、普通に食えるせいで何も言う事がなかった。

 


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